ワーキング・ガール(1988年アメリカ)

Working Girl

ナンダカンダ言って...実は僕、この映画は結構好きなんですよね(笑)。

80年代以降は数多くのサクセス・ストーリーがヒットしましたが、新入社員と言われるポジションから
徐々に中堅社員と言われるポジションに差し掛かりつつある30歳前後の女性をヒロインにしているのもミソ。
と言うのも、80年代前半はハリウッドでは“ブラッド・パック”と呼ばれる世代の若手俳優たちが出演した映画がヒットし、
その世代が中堅クラスになったら・・・という設定であるようで、現在進行形で映画がつながっているように感じられる。

この手の映画をマイク・ニコルズのようなタイプのディレクターが撮るなんて意外と言えば意外でしたが、
基本をしっかりと押さえてキッチリ良いラブコメに仕上げたなぁと思いましたよ。どうしても『エイリアン』の印象が強い、
シガニー・ウィーバーをこういう使い方ができるなんて驚きでした。チョット彼女は可哀想な役どころではありましたけど。

そもそも、ハリソン・フォードとメラニー・グリフィスというカップルもラブコメで映えるのか?と聞かれると、
確かに不安に感じられる面もあるんだけど、本作でのメラニー・グリフィスはキッチリと“できるオンナ”を演じている。

脇役では、まだ売れて名が知れ渡る前のアレック・ボールドウィンがヒロインを裏切るゲス野郎として登場。
ありがちなキャラクターではあるけれども、恋人であるヒロインと同棲するアパートにお互いの知り合いの女性を
ヒロインの留守中に連れ込んで、ベッドルームでベッドインするという最低野郎でありながら、友人の結婚式に便乗して
浮気現場を目撃されて別れたも同然であったにも関わらず、大勢の前で堂々とプロポーズするという厚かましさ(笑)。

このプロポーズをヒロインが断ったら、いきなり激高して逆ギレしだすとか、どうしようもないゲス野郎ですけど
それを実に堂々と演じていて、この役柄にアレック・ボールドウィンはピッタリでよく頑張ったなぁと思いましたね。

彼以外にも、ヒロインが勤めていた証券会社の上司としてオリバー・プラットがお調子者キャラで出演したり、
そんな彼がヒロインに次期ポジションとして仕事を斡旋した、同じ会社の別部門の上長としてケビン・スペイシーが登場。
これがまたトンデモないセクハラ野郎だったというオチもお約束ですが、まぁ・・・ケビン・スペイシーらしいキャラですね。

それから、本作の主題歌として使われたカーリー・サイモンの Let The River Run(ステップ・バイ・ステップ)は
日本のテレビドラマで別ヴァージョンが使われ、日本でも有名な曲なんですが...カーリー・サイモンの歌唱力が光る、
インパクトがとても大きな曲ですよね。僕の中では、この曲と言ったら本作だというくらいイメージがピッタリなんですね。

と言うのも、この主題歌が流れるオープニング・クレジットからハドソン川(?)をゆったりと進む、
通勤者が多く乗るフェリーの窓から客席に入っていく空撮が素晴らしく、曲の躍動感とピッタリなカメラなんですね。
撮影監督としてミヒャエル・バルハウスを起用しただけあります。あまり評価されなかったけど、本作のカメラは良いです。

映画はニューヨークの証券会社で秘書として勤務するヒロインのテスを中心に描いているのですが、
彼女は学歴が無いことがコンプレックスで実際に学歴が無いことを理由とされて、出世が阻まれている状況でした。
それでも夜学に通って知識を付け、日々、新聞や雑誌のチェックを怠らずに敏感で居続けたことで、投資や企業活動に
対する興味や知識レヴェルは高く持ち続けており、密かに能力を蓄えている日々。それにも関わらず上司と衝突して、
チャンスをフイにしたテスは、最後のチャンスとして同じ年齢のキャリアウーマンであるキャサリンの部署に移動します。

初の女性上司の部署に所属したことで意気に感じていたテスで、とあるラジオ局の買収案を提案するテスでしたが、
そのアイデアをキャサリンが内密に悪用していることを知り、キャサリンが足の怪我で休養に入ったことに乗じて、
テスは“非常手段”をとることを選択して、キャサリンの恋人でありビジネス・パートナーであるジャックに接近します。

ここからテスの逆襲が始まるわけですが、実はキャサリンとの関係に終わりを感じていたジャックは
最初っからテスの魅力にメロメロだったことで、仕事で共にする時間が長くなるにつれてテスも恋愛感情を抱きます。

まぁ、キャサリンを演じたシガニー・ウィーバーは憎まれ役なんで損な役回り、最後も酷い言われようでしたけど、
映画の中で彼女が計画していたこと自体は、ビジネス・モラル的にもかなり問題のある行動でしたので納得性はある。
実際問題として、あのままキャサリンが主導でテスのアイデアを乗っ取って進めていたとしたら、どこかで行き詰って
苦しい立場に追い込まれていたと思うので、ある意味ではキャサリンにとっても傷が浅いうちに明るみなったのかも。

彼女には申し訳ない言い方ですが...まぁ・・・彼女が憎まれ役のようなキャラクターを徹底して演じてくれて、
実際に映画でもコテンパンに打ちのめされる姿を演じてくれたからこそ、本作はサクセス・ストーリーとして備えるべき、
良い意味での痛快さを観客に味わせることができている。こういう基本的な部分を押さえたことが、本作の勝因と思う。
(そんな痛快さを後押しするようにカーリー・サイモンの躍動感ある主題歌が、花を添えているわけですね)

マイク・ニコルズは舞台劇出身の映画監督ですので、時に仰々しい演出になってしまったり、
ステレオタイプな映画に陥ってしまうことがあるのですが、本作ではそんな傾向はなく、オーソドックスな作りになってる。
これが大正解だったわけで、オスカーにノミネートされたのはやり過ぎな気がするけど、評判が良かったのは納得かな。

ヒロインのメラニー・グリフィスはハリウッドでも売り出そうとしていた時期だったのでしょうが、
どうしてもドン・ジョンソンとのゴタゴタなど、ハリウッドでもお騒がせ女優なポジションを抜け出せなくって、
本作も相手役のハリソン・フォードですら軽い扱いにして、彼女を際立たせようとしたもののブレイクはしなかったですね。

言わば、これは「キャリアvsノンキャリア」を描いた映画ということもできて、ノンキャリアが評価される痛快さに
恋人までも奪ってしまうなんて、現実世界では結構ゲスい話しではありますが、それをキレイに描いてしまうのが凄い。

日本は急速に少子高齢化が進んでいる社会ですが、かつてほどではないにしろ学歴不問の社会とは言えません。
そもそもキャリア形成が違っていたり、初任給が違ったり、アッという間に大卒の方が年収を抜き去って行ったり、
企業によっては学閥があったりと、ナンダカンダ言って、未だに学歴が全く影響していないとは言えないのが現状だ。
勿論、学歴が無い人でも企業の経営者として成功している人も日本には多くいるし、成功物語は数多くあります。

だからこそ、本作のような物語を観て爽快感を感じる人も少なくはないだろうし、共感を得易かったのだろう。

まぁ、中身的にはこうした分かり易くノンキャリアで恵まない女性の代表というヒロインのテスが努力して、
成功を収めるというコンセプトが、偽善的に映る人もいるだろうけど、そうした見方も否定されるものではないと思う。
ただ、僕はそういう見方もある一方で、この映画はもっとシンプルに観た方が純粋に楽しめるだろうと思ったのですね。

映画がコミカルな意味で、グッと面白くなっていくのは怪我して入院していたキャサリンがヘリで
ニューヨークに戻ってきてからだろう。服用した薬のおかげでやたらとハイになっていて、余計に“扱いづらい”状態。
勝手にプロジェクトをジャックと進めていたテスは、目の前にラジオ局買収を進めるタスクがあるにも関わらず、
戻ってきたキャサリンの相手をしなければならない。そこからキャサリンに呼び出されたジャックがアパートに来て、
薬を買ってくるように言われたテスが隠れて、バレないようにするシーンがあって、チョットしたドタバタ劇が展開します。

呼び出されたジャックはジャックで、別れを切り出す予定だったキャサリンが思いのほか早く帰ってきて、
しかもランジェリー姿で待っていて、やたらと精神的にハイなものだから、何も言わずに早く立ち去りたいわけですね。
しかし、やたらとキャサリンが誘惑してくることにジャックがタジタジなのが面白く、陰でテスがドキドキしているのも良い。

結局は女性上司であることに大きな期待を抱いていたテスでしたが、皮肉にも女性が敵対する存在となってしまう。
これはこれで皮肉なことでもありますが、実力主義の社会に出てしまえば、性別は関係なくなってしまうということです。
いろんな性格やクセのある人がたくさんいますから、油断していると利用されてしまう立場になる恐ろしさは感じますね。
実際、テスもキャサリンのことを信用し切っていたわけで、キャサリンの策略を知ったのも偶然だったわけですからね。

ややもすると、安っぽいラブコメになってしまいそうなものですけど、マイク・ニコルズは上手くバランスをとっています。

ちなみに劇中でもテスのアイデアの目的の一つとして語られていますが、日本企業の買収を防ぐということは
当時のアメリカ経済界では大きなミッションであったのかもしれませんね。おりしも、日米貿易摩擦が問題になって
日本ではバブル経済が膨れ上がっていた時代ですから、日本経済がまだ元気だった頃を象徴しているエピソードだ。

ひょっとしたら、まだアメリカ社会にはこの頃の日本へのイメージが残っている人も少なくはないのかもしれませんね。
もう、約40年が経とうとしていますので、こんなバブリーな時代ではないですから、今はそんな勢いは無いですけど。
貿易摩擦やバブル経済を肯定するつもりはありませんが、そんな懐かしい時代の空気を内包する作品でもあるのです。

(上映時間113分)

私の採点★★★★★★★★★☆〜9点

監督 マイク・ニコルズ
製作 ダグラス・ウィック
脚本 ケビン・ウェイド
撮影 ミヒャエル・バルハウス
美術 ダグ・クラナー
編集 サム・オースティン
音楽 ロブ・マウンジー
   カーリー・サイモン
出演 ハリソン・フォード
   メラニー・グリフィス
   シガニー・ウィーバー
   ジョアン・キューザック
   アレック・ボールドウィン
   フィリップ・ボスコ
   ノーラ・ダン
   オリバー・プラット
   ケビン・スペイシー
   オリンピア・デュカキス
   ジェームズ・ラリー

1988年度アカデミー作品賞 ノミネート
1988年度アカデミー主演女優賞(メラニー・グリフィス) ノミネート
1988年度アカデミー助演女優賞(シガニー・ウィーバー) ノミネート
1988年度アカデミー助演女優賞(ジョアン・キューザック) ノミネート
1988年度アカデミー監督賞(マイク・ニコルズ) ノミネート
1988年度アカデミー主題歌賞(カーリー・サイモン) 受賞
1988年度ゴールデン・グローブ賞作品賞<ミュージカル・コメディ部門> 受賞
1988年度ゴールデン・グローブ賞主演女優賞<ミュージカル・コメディ部門>(メラニー・グリフィス) 受賞
1988年度ゴールデン・グローブ賞助演女優賞(シガニー・ウィーバー) 受賞
1988年度ゴールデン・グローブ賞歌曲賞(カーリー・サイモン) 受賞