トロイ(2004年アメリカ)
Troy
ホメロス原作の『イリアス』をモチーフに、架空の物語を構築して描いた歴史大作。
実はこの映画、僕は3、4回は観ていて最初の頃は延々と続く内容に、途中でリタイアしたくなっていたのですが、
繰り返し観ていくたびに段々、本作の魅力が分かってきた気がします(笑)。最初の頃より、印象がかなり良くなった。
監督はドイツ出身のウォルフガング・ペーターゼンで、おそらく最初で最後の歴史大作ではないかと思いますが、
本作の前に撮った00年の『パーフェクト・ストーム』が鳴り物入りで劇場公開された割りには、散々な評判で終わり、
続く本作もアゲインストな風が吹いていた中で、このような大作の企画を任されたのだろうけど、頑張りましたね。
まぁ、かなりの創作であって史実に基づかない、独自解釈で描いたトロイア戦争を描いているので、
歴史好きには不評でしょうし、取って付けたようなアキレス腱の語源を示唆するような描写もなんだか笑えるし、
それ以前にも筋肉をつけてマッチョな姿を見せつけるブラッド・ピットも、なんだか合ってるような合ってないようなだし、
チグハグ感があることは否定できない。けれども、繰り返し描かれる合戦シーンの迫力は、やっぱり悪くないと思う。
オーランド・ブルーム演じるトロイの王子は、エーゲ海一帯の統治を目論むアガメナムンの弟の妻に横恋慕して、
夜な夜な彼女の部屋に侵入しては逢引きを重ねて、隙を見ては彼女と一緒に駆け落ち同然にトロイに連れて帰る。
これはどう見ても無謀そのものだし、そりゃギリシア軍側は怒るわけでトロイへの侵略の口実を与えたようなものだ。
トロイの王子という立場でありながらも、後先考えずに私利私欲だけで動く浅はかさが見ていられないし、
何より人妻である王妃ヘレンと散々、愛を語り合い、トロイに連れて行くことが正義であるかのように語っていたのに、
いざギリシア軍がトロイの市街地に迫っていることに気づくと、真っ先に自分たちが逃げることしか考えてない(苦笑)。
この王子の兄貴は腕っぷしも強く、トロイの最強の闘士として知られていたにも関わらず、
いざ弟のこととなると甘々な対応で、この時代に生きていた闘士とは思えないくらい、芯の強さを感じさせないキャラ。
こんなことでは、トロイの民衆を守れるわけがなく、案の定、ギリシア軍の侵攻を受けるわけですが、
激怒して乗り込んできたアガメナムンの弟から、一対一の決闘を申し込まれると、王子も覚悟を決めたように振る舞う。
べつに命を賭けてまで闘うことを賛美するつもりはないし、こんな決闘に現代の感覚で言えば同意できないけれども、
この時代ならば“そういう時代”だろうし、現実にこういった決闘もあったのだろうと思うと、一概に否定はできません。
だから、命を賭けて王妃との愛を貫く姿は尊いものでもあるのかなぁと思って観ていたら、
本作のオーランド・ブルームは最初っから一方的に押し込まれて、いざ最期を迎えそうになると兄に命乞いしてしまう。
勿論、これは人間として当たり前の反応であり、自分だってこうなるだろう。この人間臭さが生々しい反面、
これではトロイの民衆を従える王子としての威厳はゼロと言っていい。それゆえ、この前提に説得力が無いのも事実。
この描き方は賛否があるだろうし、僕もここでのオーランド・ブルームを少し情けなく描き過ぎではないかと感じた。
しかし、ここでオーランド・ブルームとブレンダン・グリーソンが見せた剣闘シーンはなかなかの臨場感だ。
それだけではなく、エリック・バナとブラッド・ピットが対決するシーンにしても、スピード感と大迫力の剣闘シーンで良い。
結局、この剣闘シーンは本作の大きな武器となっているのは間違いないです。演出としても、最も力が入っている。
これら剣闘シーンが良過ぎたせいか、クライマックスのトロイ陥落を狙うシーンがハイライトとしてはチョット弱いかなぁ。
そして、このクライマックスは前述したアキレス腱の語源となったシーンがあるわけですけど、
これが取って付けたようにしか見えず、なんとも微妙。そして、弓を放ったのが人物も伏線はあったけど説得力が弱い。
なので、アクション・シーンとしても上手くいった部分と上手くいかなかったシーンが、対照的にハッキリしていると思う。
ウォルフガング・ペーターゼンはこういったエキサイティングなシーン演出を施すこと自体は、
過去の監督作品でそれなりの腕を持っていることを見せてくれていたので、十分に出来るディレクターなのですが、
ここまで良い、良くないの差がハッキリしてしまったのは意外で、せめてラストに良い部分を持っていきたかったところ。
とは言え、日本では劇場公開当時から評判が芳しくなかった作品で、あたかもキャスティングのおかげで
ヒットしたようなものと揶揄されていた面もありましたが、僕はそこまで悪い出来の映画ではないよと擁護もしたいです。
(・・・初見時は確かに印象が悪くって、上映時間の長さもあって途中で何度もリタイアしたくなったけど...)
かなりCGも使ってはいますが、幾度となくギリシア軍がトロイに攻め入ろうと大挙する映像は素晴らしい迫力。
映像技術的にも良いと思いますし、特に海岸沿いから俯瞰したショットで映されたギリシア軍の陣容は圧巻です。
女優陣としては王妃を演じたダイアン・クルーガーはその美貌が印象的ですけど、
僕はエリック・バナ演じる王子の兄貴の妻を演じたサフロン・バロウズのエキゾチックさが強く印象に残りました。
この頃は出演作品が何本かありましたけど、なんとなく気になる女優さんって感じで、本作も良い存在感だったと思う。
それから、ブリセイスを演じたローズ・バーン! 彼女も本作がハリウッド・デビュー作でしたけど、良い役もらいました。
いつの間にか、ブリセイスがアキレスと恋仲になってしまうという奇想天外さは本作だからこそ出来た扱いでしょう。
そして、チョイ役扱いではありましたが、ベテラン女優のジュリー・クリスティが出演しているのも嬉しい。
当時はブラッド・ピットとオーランド・ブルーム共演作として話題になりましたが、それ以外のキャスティングも良いです。
それでも、何を差し置いてもブラッド・ピットの本作撮影のために作り上げた肉体美が圧倒的ですらある。
ここまで鍛え上げた肉体を披露したこと自体が初めてと思いますが、劇中では終始上半身裸みたいな状態ですからね。
トレーニングを積んでストイックにこれだけの肉体を作り上げるのも大変ですが、この反動も大きかったでしょうね。
当時のブラッド・ピットは40歳近い年齢でしたから、さすがに大変だったでしょうし、リバウンドもあったかもしれません。
それだけブラッド・ピットなりに本作の撮影には賭けるものがあったということなのでしょうねぇ。
そうなだけに劇場公開当時、真偽不明ですが...彼が本作の出来に満足していないとコメントしたのは重たいですね。
それから、正直言って、映画の尺自体が長いかなぁ。2時間30分以上あって、かなり体力を要するなぁ(笑)。
そこまで間延びしているとか、悪い意味で中ダルみしているわけではないのだけれども、かなり長くは感じるかなぁ。
この内容であれば、見せ場をもう少し絞って、エピソードも凝縮して編集していれば、あと20分は削れそうなんだけど。
そうすれば、映画の印象はグッと良くなったと思うんだよなぁ。なんだか、こういうところは損していると感じられてしまう。
もう一つ言うと、やっぱりオーランド・ブルーム演じる王子のキャラクターはもっと魅力的に描いて欲しかった。
初見時から僕がどうしても気になって仕方がなかったのは、彼の描き方ですね。正直、情けないキャラで印象が悪い。
映画を最後まで観て感じましたが、やっぱり彼の存在は本作に於いて、極めて重要な存在であることは間違いない。
だったら、もっと魅力あるキャラクターとして描かないと盛り上がらないと思うのですよね。説得力も帯びないですしね。
意気込んで駆け落ちしようとしていたにも関わらず、命乞いするに至ってしまった姿から、
何か一つでもいいから強い覚悟を見せるような、成長した姿が欲しい。このままでは、典型的な温室育ちの王子。
そんな王子の不倫の恋に始まるトロイア戦争となっていては、歴史が好きな人から批判されるのは至極当然だろう。
おそらく、ウォルフガング・ペーターゼンもそれを分かっていて、敢えてこの内容で映画化したのでしょうけど、
この王子のキャラクターはもう少し共感を得られるように描かないと、、映画としての魅力も磨かれないと感じました。
このパリス王子は史実としても、確かにトロイア戦争の引き金となった人物であるようですし、
ギリシアの王妃を奪っておきながら相手を挑発して、いざ闘う局面になったら怖気づいて逃げ出してしまったらしい。
しかし、史実ではこの失態を兄であるヘクトルに叱責されて、結局は王妃を奪われて激怒したアガメナムンの弟と
直接対決することになっている。この辺は情に流されるヘクトルというように、映画の中で脚色されていて、
最後の最後まで王子は真正面から闘うことを選択せず、戦争の陰に隠れているように描かれているので微妙だなぁ。
とまぁ・・・かなり独自の解釈で描かれたトロイア戦争の映画化ですので、フィクションだと認識して観た方がいいです。
どこか寓話的というか、史実に忠実に映画化した作品なわけではないことを前提にして観ないと、楽しめませんね。
そういえば、ヘクトルやパリスの父親として久しぶりのピーター・オトゥールが出演していて出番も多かったですね。
愛する息子であるヘクトルを殺されて複雑な心境のところ、アキレスの寝室にやって来るシーンは本作のハイライト。
正直言って、ピーター・オトゥールは晩年、出演作品に恵まれませんでしたが、まだまだ良い味のある役者さんでした。
(上映時間162分)
私の採点★★★★★★★☆☆☆〜7点
監督 ウォルフガング・ペーターゼン
製作 ゲイル・ガッツ
ウォルフガング・ペーターゼン
ダイアナ・ラスバン
コリン・ウィルソン
原作 ホメロス
脚本 デビッド・ベニオフ
撮影 ロジャー・プラット
音楽 ジェームズ・ホーナー
出演 ブラッド・ピット
エリック・バナ
オーランド・ブルーム
ダイアン・クルーガー
ショーン・ビーン
ブライアン・コックス
ピーター・オトゥール
ブレンダン・グリーソン
サフロン・バロウズ
ローズ・バーン
ジュリー・クリスティ
2004年度アカデミー衣装デザイン賞 ノミネート