スリー・キングス(1999年アメリカ)

Three Kings

湾岸戦争が終結しつつあるイラクを舞台に、3人の米兵が戦争そっちのけで金塊強奪を計画し、
メディアの連中を牽制しながら実行に移す様子をブラック・ユーモアを交えてに描いた、一風変わった戦争映画。

監督は96年に『アメリカの災難』で高く評価されたデビッド・O・ラッセルで、
当時は『マルコヴィッチの穴』などと並んで、新感覚の映画として注目を集め1億ドル以上もの興行収入をあげました。

ちなみにそんな『マルコヴィッチの穴』を監督したスパイク・ジョーンズも、本作に俳優として出演していて、
新世代を代表する存在として期待していたのですが...残念ながらニューシネマ・ムーブメントにはならなかったなぁ。

決して出来が悪い映画ではないと思うし、内容的にも注目される理由は分かるので、
本作を観る限り、デビッド・O・ラッセルには僕も期待したものだけど、だけどまだ発展途上にあるというイメージかな。
映像表現も被弾して内臓を弾丸を貫くグロテスクな描写なんかも、発想は面白いけど、まだまだアイデアだけって感じ。
だけど、この映画にはそういった経験を生かして、近々にもブレイクするではないかという爆発的なエネルギーを感じる。

反体制的なメッセージが映画の中にあって、戦地でロールスロイスを乗り回したり、
人質に捕えられたというのに、呑気に目の前にあった携帯電話を使って自宅の妻に電話して、自分の居場所を
軍本部に連絡させるなんて、戦争の現実や緊張感といったものもそっちのけに描くシニカルさも良い意味で機能する。

ただ、映画全体を俯瞰的に見ると、なんか...流れが悪い。そのせいか、どうにもノレそうでノレない感じだ。
映画に勢いも生まれず、メリハリも上手くついていないものだから、どこが作り手が最も見せたかったところなのかも
最後の最後までよく分からず・・・という感じで、結果的には物語のアイデアの良さだけであったようにも思えてしまう。

でも、何か一つ違っていれば、この映画はもっと面白くなったはず。そんな紙一重な作品だとも思えるんですよね。

湾岸戦争では、既にメディアが果たす役割がとっても大きなものになっており、情報戦でもあったわけですね。
イラク現地の米軍がキャンプ地では、メディアがかなり入り込んでいて、その情報をどう扱うかということは
軍部とメディアの駆け引きもあったわけで、お互いに利用し合う“持ちつ持たれつ”のような関係性だったのですね。
アメリカのメディアが報じる内容をイラク側も把握していることが描かれているし、これは現実にもそうだったと思う。
だからこそ、米軍なんかは流す情報を巧みに利用していたのでしょうし、これは立派な情報戦だったことの証左だ。

ここは良いテーマだったと思うので、もっと映画的にはメスを入れて欲しかったなぁ。
デビッド・O・ラッセル的には反戦のメッセージもあったのだろうから、軍とメディアの癒着もしっかり描いて欲しかった。
それは映画の冒頭に描いたつもりかもしれませんが、情報操作も含めて、もっと他にも描くべきことはあったはずだ。

それゆえか、映画自体にどれだけテーマ肉薄し、どれだけ訴求するものになったかという点で物足りなさが残る。
ここは問題作扱いされるくらい、突き抜ける勇気を作り手に持って欲しかったな。なんか、悪い意味で中途半端ですよ。

戦争の現実を映すとか、政治思想がどうとかはともかくとして、イラク兵の捕虜の一人のお尻に
フセインが隠したとされる金塊の地図が挟まっているのを取り出して、秘密裏に現地民を騙して強奪しようというのは、
前述したように発想として面白く、どことなくイーストウッド主演で作られた70年の『戦略大作戦』を思い出しますね。

でも、時代は違っていて第二次世界大戦を舞台にした『戦略大作戦』とは違っていて、
本作は湾岸戦争が舞台ですから、使われる武器や道具も違う。そこで大義を持って来ているかのような顔して、
現地民を言いくるめて金塊の在処を探すというから、映画の中盤はほぼほぼコメディ映画のテンションと言っていい。

そこから、映画の後半に流れ込むわけですが...マーク・ウォルバーグ演じるトロイがイラク軍に捕まって、
拷問を受けるシーンがあります。ここで突如としてシリアスなシーンになるのですが、正直言って、これは長過ぎた。
そして、この拷問シーンが生きたのか生きていないのか、よく分からない呆気ないラストの処理までが今一つかな。
どうせなら、ここも戦争をモチーフにしたブラック・コメディとして、しっかりと突き抜けて欲しい。ここがホントに勿体ない。

実際問題として、金塊強奪に成功したとしてもどうやって大量の金塊を母国に持って帰って現金化するのかとか、
現実に照らし合わせると疑問がなくはないのですが、それは一旦置いておいて発想としては面白かったのですがね。

お膳立てはしっかりと出来ている映画なので、あとはチョットしたことだったと思うし、
妙にシリアスなシーンに時間を割こうとしたり、作り手が社会的なメッセージを込めようとした部分が無ければ、
映画はもっと良くなったはずだ。突き抜けるためにメリハリをつければいいわけで、コメディとシリアスさを交互させる
必要もなく、この映画の場合は僕はもっと不条理さや理不尽さが笑いに代えられるというニュアンスで良かったと思う。

そう、この映画には不条理な部分と理不尽さが足りない(笑)。戦争の現実だって、そんなことの連続なのだろうし。

良くも悪くも映画を綺麗にまとめようとする作用が働いてしまったのか、僅かなボタンのかけ違いなのだろう。
だからこそ、惜しい映画という評価が多かったように思うし、デビッド・O・ラッセルの可能性は感じさせる作品なのです。

とは言え、これが1億ドル以上もの興行収入を叩き出したというのは、映画の中身がウケたというよりも、
当時、映画俳優として上り調子だったジョージ・クルーニー主演という土台があったからこその記録なのではないか。
この自己中心的にしか行動せずに、最後の最後まで要領良く“美味しい”部分を持っていくのは、なんとも彼らしい(笑)。

そんなキャラクターがピッタリだったのは、これはこれでデビッド・O・ラッセルが適材適所に生かせた面だろう。
どこかドジな部分を僅かに残すというのも、ジョージ・クルーニーの虎の巻のようなキャラですけど、本作あたりが始まり。
本作のキャラクターは後に『オーシャンズ11』などのヒット作でも生かされていると思うが、本作はその原型だと思える。

マーク・ウォルバーグも当時はブレイクしつつある若手俳優でしたが、映画の冒頭から「撃っていいのか?」と
戸惑いながらイラク兵を銃撃するシーンから分かる通り、やや主体性が無いキャラクターなのだけれども、
第一子誕生を目前にして、なんとしてでも無事に母国アメリカへ帰還しなければならないという目標の直前になって、
金塊強奪作戦に加わってしまい、挙句の果てに捕虜になってしまうなどピンチの連続になる若手兵士を好演しています。

黒人兵士のアイス・キューブはそこまで目立っていたわけではないので、もう少し見せ場を与えて欲しかった。
彼もまた腕っぷしが強く忍耐強い性格だけど、普段は空港職員で手荷物チェックを身近にしているため、荷物に詳しい。
そんな職業柄を生かしたエピソードがあるのも面白く、掘り下げればもっとインパクトあるキャラクターになったと思う。

まぁ、映画の中盤を境に調子が明らかに変わっていく映画なので、前半が好きな人はコメディにして欲しかった人。
後半が好きな人は真面目な戦争映画にして欲しかった人、という感じですかね。僕は前者の方だったんだけど。
その方が映画の特色が出たと思うし、どこか風刺的なニュアンスがあってアメリカン・ニューシネマ期の作品みたい。

コメディ主体の映画というには、前述したように不条理さや理不尽さが足りないので、なんだか中途半端ではある。
何度も言いますけど、本作はそういった部分を解消するだけで大きく変わるし、そこまで大々的な変更ではなくって、
ホントに少しのボタンのかけ違いという感じでする。でも、結果的にはそこが大きく、優れた企画を生かし切れなかった。

デビッド・O・ラッセルは力があるディレクターで、その片鱗は見せることができたけど、
正直、この後にハリウッドで評価を上げるまでには、まだまだ時間がかかりました。この頃はもっと早いと思ってました。

これはこれでギャグのようなシーンだとは思いましたが、撃たれた兵士に救命措置を講じようとする
ジョージ・クルーニーを観ちゃうと、どうしてもTVシリーズだった『ER −緊急救命室−』を思い出しちゃいますね。
本作の頃はジョージ・クルーニーも『ER −緊急救命室−』の仕事を掛け持ちしていた頃で、動向が注目されてました。
やっぱり医療行為を行っている様子を演じさせると、ハリウッドではジョージ・クルーニーの右に出る者はいませんね。

ちなみに、最後は人道的な部分に目覚めるということは、反体制な映画という印象を薄める目的だったのかな?
結局は最後にアメリカ国民としての幸福に落ち着くのを観ると、湾岸戦争を批判一辺倒で終わらせなかった印象だ。
ジョージ・クルーニーの声が強かったら、こういう終わり方ではなかった気もするので、チョット意外なラストではある。

まぁ・・・湾岸戦争自体は、当時から大義があるのかと問われていた戦争でもあって、
多くの議論を呼んだ戦争で、単にイデオロギーや宗教に関わるものではなくって、石油利権などの狙いもあって
直接的に戦争には関係しない一般市民も多く犠牲となったり、戦争犯罪の被害にあったりするものだったので、
暗い影を落とした戦争の中でも、何かしら明るい要素を作りたかったのかもしれませんが、賛否あるラストかもしれない。

(上映時間114分)

私の採点★★★★★★☆☆☆☆〜6点

監督 デビッド・O・ラッセル
製作 チャールズ・ローヴェン
   ポール・ユンガーウィット
   エドワード・L・マクドネル
脚本 デビッド・O・ラッセル
撮影 ニュートン・トーマス・サイジェル
音楽 カーター・バーウェル
出演 ジョージ・クルーニー
   マーク・ウォルバーグ
   アイス・キューブ
   スパイク・ジョーンズ
   ジェイミー・ケネディ
   ミケルティ・ウィリアムソン
   ジュディ・グリア
   ノーラ・ダン

1999年度ボストン映画批評家協会賞作品賞 受賞
1999年度ボストン映画批評家協会賞監督賞(デビッド・O・ラッセル) 受賞