フィラデルフィア・エクスペリメント(1984年アメリカ)

The Philadelphia Experiment

このタイトルになっている「フィラデルフィア実験」というのは、アメリカでは有名な都市伝説らしい。
なんか、第二次世界大戦中に駆逐艦が敵軍に察知されないように消磁するために行う実験のようで、真偽は不明だ。

70年代後半から、内容的にややカルトなSF映画が製作されていたので本作もその一環っぽいけど、
映画の出来としてはそこそこのクオリティだと思うし、チープの映像表現は玉に瑕(きず)としてもスリリングで良い。

93年に完全にB級なSF映画として安っぽい続編が製作されたり、何かと不遇な作品に思えますけど、
内容的にそれなりのインパクトはあると思うし、「クラッチがない!」とオートマの車の運転の仕方が分からないとかで
所々ボケをかましてくれたりしていて、それなりに楽しめる。まぁ、最後の解決に至るシーンはややお粗末でしたが・・・。

84年のテレビに映る当時のレーガン大統領を観て、「なんか見たことがある」と言うセリフも
かつては俳優だったロナルド・レーガンのキャリアをギャグにしたものであって、時折、こういうコミカルさが楽しい。

同じタイムスリップをモチーフにした映画という点では、80年の『ファイナル・カウントダウン』を想起させるけど、
船ごとタイムスリップしてしまう『ファイナル・カウントダウン』と比較すると、主人公と同僚の2名のみタイムスリップして、
41年後の1984年という、まるで別世界なアメリカの砂漠地帯で右往左往する姿を描いていて、上手く絞り込んでいる。

あれもこれも描こうとしたり、関係する登場人物を増やしたりして焦点が定まらないよりも、ずっと良いですね。

それから、当初の予定ではジョン・カーペンターが監督する予定だったらしいのですが、
何故かスチュワート・ラフィルに交代し、ジョン・カーペンターは製作総指揮でクレジットされるに留まっている。
シナリオも相当な改変があったそうで、ひょっとするとプロダクションとジョン・カーペンターがぶつかったのかもしれず、
個人的にはジョン・カーペンターがどう本作を撮ろうとしていたのか、興味があるところ。もっとB級に寄ったでしょうけど。

主演のマイケル・パレは『ストリート・オブ・ファイヤー』、そして本作と話題作に立て続けに出演したおかげで
“ブラット・パック”と呼ばれる当時の若手スターたち並みに、スターダムを駆け上がっていくかと思いきや、
本作以降は低迷してしまい、80年代後半からはビデオスルーとなるような劇場未公開作のB級映画ばかりに出演。

その予兆は本作から出ていますが、まだこの頃はイケメンな若者という感じで、
ヒロインのナンシー・アレンとは成り行きで行動を共にすることになり、いつしかお互いに恋愛感情を持ちますが、
マイケル・パレはナンシー・アレンよりは結構年下なので、マイケル・パレの若さとセクシーさに惚れたのかな(笑)。
正直、突如として巻き込まれたヒロインからすると、何故にマイケル・パレ演じる主人公に惚れたのかが分からなかった。

これは結構大事なところだったとは思うんだけど、主人公が必死に自分の置かれた状況を説明するも、
誰も第三者は信じる状況にないのは当然で、あまりに可哀想だと同情した感じではあるのですが、納得性に欠ける。
彼女が思わず主人公の境遇に同情したり、彼の主張を真実だと確信するのに決定的な出来事を描いて欲しかった。

この部分だけは本作の最も弱い部分かもしれない。ヒロインとの恋愛が重要だからこそ、ラストがあるわけだし。

映画の焦点でもある「フィラデルフィア実験」というのは、第二次世界大戦中にロングストリート博士が
消磁する実験を行って、結果として時空を歪めて軍艦1隻が行方不明になるという実験失敗に終わっていながらも、
更に41年後の1984年にもう一回実験を行っていて、砂漠の町をゴーストタウンにしていたという性懲りの無さ(苦笑)。

米軍もいくら軍用技術の研究とは言え、こんな危険な実験を何度も行うことを許可していたなぁと思うし、
しかも1984年の実験ではあまりにエネルギーが大きかったために、地球滅亡の危機に瀕していたという始末。

しかも、この後始末をつけるためにロングストリート博士も主人公に頼らざるをえないという有様で、
少々、チープな雰囲気のあるSF映画としては崇高なミッションを描いた作品でもあって、地味に壮大なスケールだ。
しかし、そんな危機を救う実行部隊が主人公ただ一人というのが情けなく、何も責任をとらない博士もスゴいですね。

このロングストリート博士をあまり突飛な存在として描いていないですけど、もっとクローズアップしても良かったなぁ。
実験のコンセプトも内容も結構クレージーだし、実際に失敗しているわけですからね。それが大きな扱いではなく、
最後の後始末は誤ってタイムスリップしてしまった若者に託すというのですから、これはスゴい話しですよねぇ(苦笑)。

それから、タイム・パラドックスも絡んでくるストーリー展開ではあるのですが、
主人公の相棒的存在であったジムが、1984年の途中で凄まじい電磁波を浴びて身体が消滅してしまいます。
これはタイムスリップを意味していたようで、追々、ジムが1943年に無事に帰還している事実を掴む主人公ですが、
年老いたジムがすっかり心を閉ざして主人公に非協力的な態度を示す理由が、僕には分かるようで分からなかった。

この辺りの心の動きは、もう少し分かり易く描いても良かったかな。まぁ、ショッキングな体験ではあるけれども・・・。

監督のスチュワート・ラフィルもよく頑張った作品だとは思いますが、細部はどうしても至らなかった部分はありますね。
ジョン・カーペンターよりは王道な路線で映画を撮ったと言えるけど、あと少しのところで行き届かない感じでしたね。
一つ一つのシーンを観ても、演出面に於いては決して下手なディレクターではないと思えるだけに、なんだか勿体ない。

ただ、80年代は映像技術の発達も著しくなった時代であって、SF映画も数多く製作されました。
その中で本作はどうしても見劣りするのも、また事実。映像的にもどうしても、他作品と比較するとチープに観える。
これは製作費の問題、プロダクションの問題もあったのだろう。時空の荒波の表現にしても、稲妻にしても安っぽい。
でも、これは寛容的に観て欲しいところ。このチープな映像センスも、これはこれで本作の特徴と言ってもいいだろう。

前述したタイム・パラドックスについては、これもまた弱い。ここもSF映画ファンにとっては賛否が分かれるだろう。

唯一、主人公と一緒にタイムスリップしてしまったジムが体調に異変をきたし負傷して入院したところ、
時空の荒波に吸い込まれて1943年に戻ったかのようなニュアンスで描かれていて、ここはタイム・パラドックスを
絡めて描くことができそうだったけど匂わせるだけで、結局はまったくそういったストーリー展開にならずに終わる。

これはジム自身が全てを知っているからこそ、1984年の主人公の行動を邪魔しないようにしたと思えば、
都合の良い解釈のような気がするけど...個人的にはここでタイム・パラドックスの影響を描いて欲しかったなぁ。
映画のクライマックスがあまりに迫力不足で拍子抜けしたので、ラストくらいは複雑性を出してかき乱して欲しかった。

そのせいか他のSF映画とまともに比較されるとツラい内容の映画になってしまいましたねぇ。
“土台”としては悪くないと思うし、少し客観視して観ると見どころはそれなりにある作品だったので勿体ないですね。

強いて言えば、この映画のラストは40年間もの時間をスッ飛ばして84年に生きる女性に恋したからと言って、
時空の荒波で生じている問題を解消して、主人公が勇壮に84年に“戻ってくる”というのは奇想天外なラストですが、
いろんな捻じれた問題はともかくして、やっぱり最後は愛だよね!と作り手が開き直ったかのような爽快さがある。
まぁ、この辺は賛否が分かれるだろう。ひょっとするとジョン・カーペンターが持っていた意向とは違ったのかもしれない。

話題性や技術的なセンセーショナルさでも他のSF映画には見劣りするかもしれませんが、
個人的にはもっと評価されてもいい作品だと思うし、以前はテレビでは結構放送されていましたので、
それなりに人気はあったと思いますが、最近はすっかり忘れられてしまった作品という感じで、なんだか悲しいですね。

タイム・パラドックスという観点では、過去に戻って現代を変えないように奮闘するという物語が多くて、
『ファイナル・カウントダウン』や85年の『バック・トゥ・ザ・フューチャー』もそうだったですが、本作は過去の人間が
未来に来ちゃって困惑するというタイムスリップというのは、少々珍しい設定だった気がします。そこから時空の荒波で
引っかかっている軍艦をレスキューすることで、未来を変えないようにするわけですが、これは本作の大きな特徴です。

まぁ、絶賛するほどの出来ではないにしろ、是非とも再評価を促したい一作で不遇な作品に思えちゃうんだよなぁ。

マッチョマンなマイケル・パレがもっと積極的にアクション・シーンをこなしていれば、もっと評価されたのかも。
よくよく観ると本作のマイケル・パレは、カー・チェイスがあるにはあるけど、あまり肉体を使ったアクションはないのです。
それがナンシー・アレンといつの間にかイチャイチャし始めちゃうから、SF映画としてのインパクトは弱くなったのかな。

(上映時間102分)

私の採点★★★★★★★☆☆☆〜7点

監督 スチュワート・ラフィル
製作 ジョエル・B・マイケルズ
   ダグラス・カーティス
原作 チャールズ・バーリッツ
   ウィリアム・L・ムーア
原案 ウォーレス・C・ベネット
   ドン・ジャコビー
脚本 ウィリアム・グレイ
   マイケル・ジャノーヴァー
撮影 ディック・ブッシュ
音楽 ケン・ワンバーグ
出演 マイケル・パレ
   ナンシー・アレン
   ボビー・ディ・シッコ
   エリック・クリスマス
   ルイーズ・レイサム
   キーン・ホリディ
   マイケル・カリー
   スティーブン・トボロウスキー