アイランド(2005年アメリカ)
The Island
2005年の夏休み映画としてメガヒットが期待されていた、規模の大きなSF映画。
この時期のマイケル・ベイの監督作品は、少々うがった見方をされ過ぎたというのはあったかもしれないですね。
とは言え、個人的には記録的な不入りだったとは言え、予想外に面白かったというのが本音なんですね。
強烈に管理されたことが明白な謎の施設で集団生活を強いられている若い男女を主人公に、
毎日のように繰り返される抽選で当選した仲間が、大気汚染でダメになった地球の中でも汚染されていない、
“アイランド”と称されるユートピアへ行けるという制度があって、その当選を待つというチョット笑える設定なんですね。
この奇異な設定さえ飲み込めれば、僕はこの映画、十分に楽しめると思いました。
原作がどうなっていたのかは分かりませんが、無機質な印象のある施設での生活ぶりや外界に興味を持つ過程など、
SF映画の基本的なポイントはしっかりと押さえた内容になっており、それなりにエキサイティングに出来ています。
映画の途中で描かれる未来世界である2019年のような世界は訪れませんでしたが、
それでもここで展開された迫力満点のカー・チェイスは満足度が高く、『トランスフォーマー』っぽい描き方で印象的。
この辺はマイケル・ベイの得意技という感じですけど、編集のテクニックにも優れているのではないかと思う。
彼も『アルマゲドン』あたりから当時の映画ファンの風当たりが強くなっていたから大変だったように思いますが、
その中でも本作は過小評価だったような気がします。失敗作として酷評されるほど、悪い出来だったようには思えない。
施設の中で暮らす人々の健康チェックということで、神経系を調べる謎の自走式の球体を眼球から入れるという
グロテスクなシーンとか、部屋のトイレでは便器に分析装置が接続しているのか、尿の成分がすぐに分かって、
その日の食事制限に直結するとか、極度な管理社会を象徴する描写があって、これらは僕は結構好きなアイテム。
管理する施設側の責任者として、如何にも悪いことしてますよ的な博士役でショーン・ビーンが登場。
今回は結構な知能犯という設定で、インテリっぽく見せてますけど、さすがに幾多の映画で数多く悪役を演じてきた
ショーン・ビーンだからこそ、そのアドレナリンを抑え切れないのか(笑)、本作も終盤では医師であり博士であるとは
思えないくらいの肉体派なアクション・シーンを少しだけ見せてくれる。しかし、これは他作品に比べると、ホントに僅か。
まぁ、彼の役どころも肉体派なアクションを求められていたわけではないだろうし、
むしろ説得力を持たせるために、直接的に闘う衝動を抑えるのに大変だっただろうが(笑)、これも悪くはないと思う。
主演のユアン・マクレガーとヒロイン役のスカーレット・ヨハンソンのコンビもナンダカンダで悪くなかった。
特にスカーレット・ヨハンソンは当時、ハリウッドでもトップ女優の階段を駆け上がっていた時期でありインパクトが強い。
施設内では恋愛禁止と、昔の校則のようなこと言われてましたが、近くにいつも彼女がいたら、それは無理な話し。
プログラム・ミスと管理側は言うかもしれないが、雑多な環境で施設内という狭い空間で生きてきた、
若い男女ですから彼らが知らなかったとしても、恋愛感情に似たものを持つというのは、ごく自然なことだろう。
だけど・・・この映画を観たら分かりますが、それは全然自然なことではなく、正しく“想定外”だったということですね。
こういう管理社会を描いたSF映画って、かつて数多くありましたがマイケル・ベイに合わないと勝手に思っていた。
ところが本作、なかなかよく頑張っているじゃないですか。上映時間が少々長くなってしまったのが玉に瑕(きず)だが、
“想定外”が異分子として発生した場合、どのようなエスカレーションを見せるのかという観点で面白かったと思います。
この後列なまでの管理社会の秘密は、割りと映画の早い段階で明かされることになりますので
作り手としてはその秘密をポイントとして考えているわけではなくって、あくまでイレギュラーにも自我に目覚めて、
外の世界に憧れて、施設を管理する人間からは反乱分子扱いされていく。この対立構造を要点としたかったのだろう。
その内容の割りには...上映時間が2時間を大きく超えてしまったというのは、さすがに冗長な作りとしか思えない。
当時のマイケル・ベイの監督作品の全体的な傾向として、映画が長尺化していたので、これは彼の悪いクセですね。
本作なんかは原作の世界観、そして作り手が描きたかったであろう物語の要点から言って、
もっと映画自体はシェイプアップして引き締めないといけませんよ。実際、この映画も後半は息切れした感がありました。
予想外に面白かったと言える作品だっただけに、この後半の息切れ感はチョット勿体なかったですねぇ。
ツッコミどころはないとは言えない映画なだけに、もっと映画に勢いを持たせて一気に突っ切って欲しかったなぁ。
そういう力強さというのはマイケル・ベイなら演出と編集で乗り切れる力量がありそうなだけに、それが出来ていれば
本作の印象はもっと変わっていただろうし、さすがにここまで映画自体が酷評されずに済んだかもしれないですよ。
それにしても...ここまで抑圧された生活を送って、人間の基本的な欲求を取り去る生活を送っていることに衝撃。
食事の楽しみを与えずに、それを教えることはない。栄養だけを重視して、明らかに美味しくなさそうなものばかり。
異性の身体的接触を極端に禁じ、人間的な(恋愛)感情を抱くことを防ぐことで、性欲が湧かないように管理している。
これだけ生物の根源的な欲求を取り去った生活を長期間強いることの反動は、きっと大きいでしょうね。
シビアな話し...この映画のラストを観ると、この施設で育った人々は一体どうやって過ごすのだろうか?と
心配になってしまう。しかも、ウジャウジャ施設から出てくる人々を観ると、「こんなにいるのかよ!」と思っちゃうし・・・。
世の中に解き放たれた途端に欲にまみれた生活を送るのか、「やっぱり施設が良かった」と思うのか・・・。
自由を謳歌する権利は誰しもありますけど、本作で描かれた彼らのような出自の人々にとってどうなのかは、
なんとも興味があるところですね。人間はじめとする生物は環境要因が大きいで、自由を順応する人が多そうだけど。
それから、もう一つ気になったのは博士に雇われるモミ消し屋を演じたジャイモン・ハンスウがあまり目立たないこと。
しかも、クライマックスには彼の心変わりもあったりして、冷酷さを貫くのかと思いきや突然の心変わりに驚かされる。
この辺はマイケル・ベイの雑なところが出てしまったのかな。まぁ、マイケル・ベイっぽいと言えばそれまでですけどね。
前述したように、本作は『トランスフォーマー』へ向けた布石とも言える作品になっていると感じる。
ひょっとすると、本作からジェリー・ブラッカイマーのプロデュースを受けるのを止めたのも影響したのかもしれません。
07年の『トランスフォーマー』はマイケル・ベイが復調するキッカケとなった作品であり、その感覚が本作にあるとなると
やっぱりジェリー・ブラッカイマーと離れたことが彼には必要だったのかもしれません。もう十分に稼いだでしょうし。
どうやら本作の原作自体は、もともとはジェリー・ブラッカイマーのところにあったらしく映画化が見送られていました。
そんなボツ企画に目を付けたのがマイケル・ベイだったというわけで、ジェリー・ブラッカイマーは出資しそうになく、
マイケル・ベイが方々当たった結果、スピルバーグの“ドリームワークス”が出資するということで映画化が実現した。
それが失敗作扱いでしたから、ジェリー・ブラッカイマーから見れば「ほれ、見たことか」と笑っていたかもしれない。
しかし、マイケル・ベイにとってはそこから出来た“ドリームワークス”との関係から、『トランスフォーマー』に辿り着いた。
それで『トランスフォーマー』は大成功してシリーズ化されたわけですから、彼にとっては大きい経験だったのでしょう。
まぁ、劇場公開当時、本作の不入りを主演のユアン・マクレガーとスカーレット・ヨハンソンに
責任転嫁する発言をプロデューサーの一人がコメントしたことで話題になりましたが、当のスカーレット・ヨハンソンは
「アタシの演技には満足してるわ」と余裕のコメント(笑)。いや、確かに本作での彼女はそんなに悪くないですよ。
結局、この映画は逃走劇になるので、そういう手に汗握るアクションが好きな人にはオススメという感じで、
あまり強くSFの要素で期待されるとツラい作品かもしれません。個人的には、まずまず面白いとは思うんだけど、
SF映画として面白いというより、単純にエンターテイメントとしての面白さあって、独創的な作品というわけでもないし。
少なくとも興行的大失敗の作品だと否定されて酷評されるほど、退屈な映画だとは思わなかったですけどね・・・。
ただ、もともとは独創的な世界観を作品の中に構築して、SF映画としての魅力を出すべき企画だったのでしょうから、
プロダクションの狙いとは違う、僕の楽しみ方だったのかもしれない。が、マイケル・ベイがやりたかったことは分かる。
だからこそ、勿体ない。これは映画の企画段階で方向性をどこにするのかハッキリと狙いを定めるべきだったと思う。
どうにも、プロダクションと実際の作り手の想いが少々乖離してしまったことが問題だったのではないかと思えます。
(たぶん、マイケル・ベイは個性的なSF映画ではなく、純然たるエンターテイメントを目指していたと思えるので・・・)
(上映時間135分)
私の採点★★★★★★★★☆☆〜8点
監督 マイケル・ベイ
製作 マイケル・ベイ
イアン・ブライス
ローリー・マクドナルド
ウォルター・F・パークス
原作 カスピアン・トレッドウェル=オーウェン
脚本 カスピアン・トレッドウェル=オーウェン
アレックス・カーツマン
ロベルト・オーチー
撮影 マウロ・フィオーレ
美術 ナイジェル・フェルプス
衣装 デボラ・リン・スコット
編集 ポール・ルベル
クリスチャン・ワグナー
ロジャー・バートン
音楽 スティーブ・ジャブロンスキー
出演 ユアン・マクレガー
スカーレット・ヨハンソン
ジャイモン・ハンスウ
スティーブ・ブシェミ
ショーン・ビーン
マイケル・クラーク・ダンカン
イーサン・フィリップス