レッド・オクトーバーを追え!(1990年アメリカ)
The Hunt For Red October
人気小説家トム・クランシーが原作のCIA分析官ジャック・ライアンを主人公としたアクション映画。
これはとても良く出来た作品で面白い。この作品でのジョン・マクティアナンの仕事はもっと評価されて良いと思う。
本作でジャック・ライアンを演じるのはアレック・ボールドウィンなので、後にハリソン・フォードが演じる同役とは違って、
アクション・スターが活躍する映画というイメージではなく、どちらかと言えば終始、シリアスで硬派な内容に徹している。
まだ若手俳優の頃ですけど、本作のアレック・ボールドウィンは知的な雰囲気もあってスゴく良いと思いました。
映画はソ連のラミウス大佐が艦長を務める原潜��レッド・オクトーバー�≠ェキューバへ向かって航行するも、
実はラミウスはソ連政府に不信感を持ったことでアメリカへの亡命を画策していて、ソナーに引っ掛からない最新鋭の
システムを搭載した��レッド・オクトーバー�≠ェラミウスに奪われたことでソ連政府は、原潜を急ぎ追跡するものの
アメリカ東部の海域であったために米海軍へ協力を求めざる得ず、虚偽の理由で外交官を通じて交渉するも、
合衆国政府にアドバイスを送っていたジャック・ライアンが既にラミウスの目的を察知し、現地に飛ぶ姿を描きます。
同じ潜水艦を舞台にした映画という意味では、95年に製作された『クリムゾン・タイド』ほどではないにしろ、
本作も艦内での緊迫感溢れるやり取りがメインとなって構成されており、映画自体に緊張感があって良いですね。
ジョン・マクティアナンは派手なアクション・シーンを撮ることがあるディレクターなのですが、ILMの特撮の力を借りつつ、
それでも根底にあるのはジャック・ライアンが合衆国高官たちを説得したり、潜水艦内での駆け引きとなっています。
ジャック・ライアンの推察はあったものの、傍から見るとラミウス大佐の真の目的はよく分からないし、
最新鋭の原潜である��レッド・オクトーバー�≠ヘどこに居て、どこに向かっているのかもよく分からないために、
ややもすると米海軍が攻撃して、米ソが冷戦を超えて、実際に開戦することにつながる危機でもある状況なわけで、
この映画で描かれたシチュエーションはかなり特殊ですが、国際関係上の緊張感が高まる危機的状況であると言える。
まぁ、ロシア人たちが英語で喋ってたりするので、そういうことを気にする人には向かない映画でしょうから、
全く何一つ違和感や疑問のない映画というわけではないのですが、僕の中ではこの程度のことであれば許容できる。
ハリソン・フォードが演じるジャック・ライアンのシリーズになってくると、やや超人的な活躍があったり、
随分と相手が実力行使にでてくるのを回避するジャック・ライアンの危機を描いたものが中心になっていくのですが、
本作でアレック・ボールドウィンが演じたジャック・ライアンは時差ボケなのか、長距離フライトの睡眠不足に悩まされ、
ワシントンへ到着してからも周囲から、やたらと心配の声をかけられるという設定。それがラストに落ち着くのも良い。
合わせて言うと、ラミウス大佐の話しになった際、実際にラミウスに会ったことがあるジャックの印象から、
かけ離れたようにジャックの言うことを全否定する高官に対して、異を呈して自分の意見を通す芯の強さも描かれる。
つい得意分野であることと、実際にラミウスと対面としたという自信から強く出てしまうというのも、どこか人間らしい。
そう、本作のジャック・ライアンは人間性においても、完璧で理想的な人間性であるかのように
描かれているわけではなく、彼の意見や要望に周囲も困らせられますが、それでも前に進めようとする力強さがある。
本作のジャックには激しいガン・アクションがあるわけでも、腕っぷしが強いわけでもないけど、芯の強い男でもある。
行動的なジャックを追っていく作品だからこそ、次第にラミウスに近づいていくというストーリー展開ですが、
やはり映画の中では最初っから最後まで、一歩間違えると米ソ開戦につながるという大変な事態が頭にあるので、
ジャックがラミウスに近づいていって、実際に接触しラミウスの目的をハッキリさせるに至るまで、ジックリと核心に迫り、
緊迫した状況が後押しするように、画面を支配する緊張感もジワジワと高まっていく感覚が、絶妙な素晴らしさです。
勿論、ジャック・ライアンが接触するラミウス大佐を演じたショーン・コネリーのドッシリ感も印象的で、
すっかりベテラン俳優としての安定感・存在感が抜群であったせいか、ショーン・コネリーの影響もデカかったです。
ただ、映画の終盤に��レッド・オクトーバー�%烽ノまだいた、ソ連に忠誠を誓う男が艦内で奥に逃走し、
少しだけ銃撃戦になるシーンがあるのですが、これは長く描く必要はないにしろ、もう少し分かり易く描いて欲しかった。
なんだかドサクサに紛れて起きた銃撃という印象があったせいか、観ていて悪い意味で中途半端に映りましたね。
ここだけは、追々のジョン・マクティアナンの監督作品を観ても、もっと上手く描くことができたと思えるだけに勿体ない。
まぁ、それともう一点...敢えて言うとしたら、ジャックが過去に一度会った程度で何故にそこまで自信を持って、
ラミウスの真の目的がアメリカ合衆国への亡命であるとい、自信をもって言い切ることができたのかも謎なんですよね。
これはこれでジャックの勘なのかもしれませんが、この辺はもっと彼の自信の根拠を明確に描いて欲しかったですね。
脇役も地味に豪華なのが嬉しいですね。ほぼほぼチョイ役みたいな扱いではありますがティム・カリーも存在感あるし、
ジャックが利用する米軍の潜水艦である��ダラス�≠フ乗組員を演じたスコット・グレンも地味ながらも良い仕事ぶり。
やっぱり、こうして脇がしっかり固めている映画は良いですね。映画のカラーもあって、女優陣はほぼいませんが。
監督のジョン・マクティアナンは88年の『ダイ・ハード』で、実に気合の入った良いアクションを撮って
世界的な大ヒット作となったおかげで高く評価され、本作も引き続いての大役を任されたわけですが、脂が乗っている。
本作は『ダイ・ハード』以上にソリッドな仕上がりで大人な映画ですが、それでも派手な演出にわき目を振ることなく、
映画の最初から最後まで初志貫徹、終始一貫したスタイルを通していて、一切の無駄も排したキビキビした良い演出。
上映時間は2時間を超えるヴォリュームになってしまいましたが、それでも本作は上手くまとめた方だと思う。
トム・クランシーの原作のファンにはどう映ったかは分かりませんが、ここまでコンパクトにまとめることは難しいだろう。
それでも、ジョン・マクティアナンっぽい部分はしっかりと残していて、自身の個性と上手く融合した感じが好感が持てる。
ラミウスを演じたショーン・コネリーはロシア人に見えるかと言われると、それは微妙なところですが・・・
それでも力技で押してやってのける。彼は米海軍と近接した状況で、部下には「自沈する」と言って英雄的行動を
見せかけたおかげで、部下たちは目の前で繰り広げられる闘いが“最後の抵抗”だと信じて、ラミウスを称え続ける。
しかし、実際には違っていて、皮肉にもそんな目の前の戦いが激しくなればなるほど、部下たちの士気は高まっていく。
これはショーン・コネリーが演じたからこそ説得力を帯びたのかもしれませんが、
もし仮に、その全てがラミウスの計画通りだったとしたら...神業と言っていいほどに見事な亡命と言っていいですね。
だって、ソ連に嫌気が差したラミウスは無事に亡命するし、部下たちからは英雄視されるし、言うことない結果ですから。
(とは言え、部下たちは事後にラミウスのとった行動の真実を知るところにはなるわけですがね・・・)
ただ、ラミウスの亡命計画を聞かされたサム・ニール演じる副艦長(?)が、ディナーを食べながら
「私も実はモンタナを見たいと思ってました」と語って、アメリカ談議にふけるシーンはややアメリカの都合に映ります。
確かに当時のロシア人もアメリカへの亡命を試みたケースは多くあるとは思いますが、アメリカへの憧れを持った
ロシア人を敢えて描くというのは、アメリカにとって都合の良いソ連軍という感じ。もっとシビアに描けばいいのに・・・。
おそらく、行き当たりばったりに亡命したロシア人もいたでしょうから、言葉は少ない方がロシア人っぽい。
でもまぁ・・・ハリウッド資本の作品なので、多少なりともこういう部分があるのは仕方のないことなのかもしれませんね。
ともあれ、ジョン・マクティアナンは90年代の前半くらいまではそこそこヒット作を手掛けていましたが、
90年代後半に入るとハリウッドでも影響力を失ってしまい、快心の監督作品は少なくなりヒット作も無くなっていきます。
そうなると、規模の大きな企画も回ってこなくなり、ハリウッドでもすっかり斜陽な存在となったことが残念でなりません。
ホントはもっともっと活躍できた映像作家だったと思うのですが、予想外にも失速してしまった印象がありますね。
それにしても、当時のプロダクションは本作のアレック・ボールドウィンが気に入らなかったのかな?(苦笑)
何故に92年の『パトリオット・ゲーム』からハリソン・フォードに交代することになったのか、その理由が何だったのか?
トム・クランシーの原作のイメージがどっちが近いのか分かりませんが、
ナンダカンダで超人的なアクションをこなしちゃうハリソン・フォードよりも、本作のアレック・ボールドウィンの方が
CIAアナリストっぽくて僕は合っているような気がするんですがね。本作だけで終わってしまったのが残念だし、
ジョン・マクティアナンの手で『パトリオット・ゲーム』以降を撮っていたら、どうなっていたのかが気になりますね。
“ジャック・ライアン・シリーズ”の形勢もジョン・マクティアナンのキャリアも、まったく違うものになっていたでしょう。
(勿論、アレック・ボールドウィンのキャリアも変わっていたでしょうねぇ・・・)
(上映時間135分)
私の採点★★★★★★★★★☆〜9点
監督 ジョン・マクティアナン
製作 メイス・ニューフェルド
原作 トム・クランシー
脚本 ラリー・ファーガソン
ドナルド・スチュワート
撮影 ヤン・デ・ボン
特撮 ILM
美術 テレンス・マーシュ
音楽 ベイジル・ポールドゥリス
出演 ショーン・コネリー
アレック・ボールドウィン
スコット・グレン
サム・ニール
ジェームズ・アール・ジョーンズ
ピーター・ファース
ティム・カリー
コートニー・B・バンス
ステラン・スカルスゲールド
ジェフリー・ジョーンズ
リチャード・ジョーダン
ジョス・アックランド
1990年度アカデミー音響賞 ノミネート
1990年度アカデミー音響効果編集賞 受賞
1990年度アカデミー編集賞 ノミネート