グリーンマイル(1999年アメリカ)

The Green Mile

これは劇場公開当時も話題となった作品でしたし、かなりヒットしていた記憶があります。

人気小説家のスティーブン・キング原作のファンタジー映画であり、『ショーシャンクの空に』も監督した、
フランク・ダラポンが再びメガホンを取り、名優トム・ハンクスを主演に据えるというヒット作の要件を満たした企画だ。

原作がある作品ですので、ある程度は仕方ないとは思いますが...
ファンタジーな演出に無理矢理、持っていこうとしているように見えて、どうにもノレないなぁと感じられてしまいました。

それから、正直言って...この内容で上映時間3時間超えは長過ぎる・・・(苦笑)。
エピソード的にはほぼほぼ刑務所内での出来事だけで構成されていて、確かに面白いストーリーではあるのだけど、
さすがに途中は間延びしてしまった部分もあったと思うし、もう少しタイトに出来た映画ではあったと思うんですよね。

それから、ここはファンタジー映画なので仕方ないのかもしれませんけど、超常現象の描写は余計に感じたなぁ。
これも原作にあるから・・・というところなのでしょうけど、敢えてハッキリと映像にしない選択肢もあったと思うのです。
敢えてこのような描き方をして、内容の過酷さに対してファンタジックに描くことで中和したかったのかなぁと感じたけど、
僕はどうせ3時間を超える長編だし、刑務所を舞台にした映画なんで、もっとタフな映画にしても良かったと思いました。

そこはスティーブン・キングとフランク・ダラポンの組み合わせなんで、こういう映画になることは予想できたけど、
ドラマ部分とファンタジーな部分が、あまりに中途半端に映った。なんだか不思議な能力を持ってる囚人がいる、
という設定までは良いけど、刑務所長の自宅まで行くエピソードをハッキリと描いてしまうのは蛇足に感じられた。

ただ単に僕がこの原作自体に賛同できないだけなのかもしれないけど・・・(笑)
この映画の場合は不思議な能力を敢えてボカして描いた方が、ずっと魅力的なものに仕上がっていた気がします。

確かにSFファンタジー的に構成するという選択が間違いだとは言い切れないし、この物語は広く支持されている。
それを踏まえると、本作で描かれた世界はそれはそれで魅力があるのだろうけど、僕にはずっと違和感がありました。
それは刑務官たちの過酷な日常の中で起こる出来事は、“ほんの少し”ファンタジーなだけで映えるはずなのに、
ものスゴくあり得ないくらいのファンタジーを描くことで、映画が悪い意味で軽くなってしまったように感じられたから。

そして、その流れも結構な力技に感じられて、映画の作り手の狙いもあまりに露骨過ぎて、どうにもノレない・・・。

あくまで映画の原題にもなっている“グリーンマイル”での出来事にフォーカスして描いて欲しかったんですね。
そこにはネズミとのエピソードもあれば、通路の奥に閉じ込められる隔離部屋もあったりして、いろんな出来事がある。
そこにマイケル・クラーク・ダンカン演じる不思議な能力を持った大男がいるだけで、魅力的な物語になったはず。

そこを敢えて、捏ねくり回そうとしたように感じられて、どうしても僕自身も素直に観れなくなっていましたね(苦笑)。
もっと自然体に描いて欲しかったというのが本音。ここでつまづいてしまったので、僕にはキツい部分もありましたね。

劇中、死刑執行に関わる描写が幾度となく出てきますが、リハーサルなんてことがあるとは驚きですね。
現実にリハーサルしていたのかどうかは分かりませんが、死刑執行人からしても決してやりたい仕事ではないでしょう。
主人公をはじめとして、舞台となる刑務所に勤務する者たちは死刑執行に誇りを持っていて、最期を迎える囚人たちを
動揺させないようにとしていることが印象的で、それが彼らが仕事人に徹するための矜持でもあったのかもしれない。

それゆえか、リハーサルでは(半ば儀式的ではあるが...)最後の問いかけなどを
一語一句間違えないように練習し、実際に死刑囚を椅子に座らせて電極などをセットする手順を一つずつ確認する。

死刑とは刑罰である。よほどのことがない限り、刑が確定した死刑囚の刑罰が変わることはないだろう。
そして、死刑執行には複数名の立会人がいる様子が描かれている。これは復讐心にかられる被害者家族もいる。
中には関わり合いになりたくないがゆえに、死刑執行を見たくないという人もいるだろうが、逆に立ち会いたい人もいる。

しかし、そこであまりに醜悪な執行を見せてしまうと、被害者家族に妙な罪悪感を抱かせてしまうかもしれない。
それは決して立会者にとってプラスにはならないのです。それゆえ、刑務官たちには粛々と執行することが求められる。
つまりは、死刑執行も失敗はできないということです。多少なりとも囚人の最期への気持ちもあるのかもしれないが、
死刑執行でミスを犯すことは、被害者家族にも過酷なものを背負わせてしまうということです。善良な市民なのだから。

そんな緊張感があるからこそ、こういったリハーサルは必要だということが慣習化されているように思いました。
僕は今まで、こういったリハーサルについて考えたことはありませんでしたが、実は結構意義深いものなのかも・・・。

そんな中で人間関係も描かれるわけですが、一枚岩でなければならない刑務官たちの間にも
素行の悪い粗暴なコネで入所してきた新人刑務官パーシーの存在が、彼らの間に波紋を及ぼすことになります。
パーシーを演じるダグ・ハッチソンも上手くて、彼の性格の悪さと屈折した感情が映画の良いアクセントにはなっている。

正直、ファンタジーな部分にクローズアップするよりも、もっとパーシーのことを主軸に描けば良かったのに・・・と思う。
確かにパーシーが執拗に絡んでくるキャラクターとして描かれるのですが、最後まで中途半端にイヤな奴という
ポジションで描かれて、彼自身が破綻に向かっていくという描かれ方は「作り手も意地悪いなぁ」と感じてしまった。
いや、徹底した悪党として描くならいいとは思うのですが、実は小心者で柔和な表情を見せる瞬間があったりして、
なんだか作り手がパーシーのことをどう描きたいのか、フラフラと中途半端になって焦点ボケしているように感じた。

そうなのであれば、パーシーをもっと掘り下げて描いた方がドラマに深みがでたと思ったのですが、
それにはあまり掘り下げられた感じもなくって、悪い意味で中途半端に感じられてしまったのは否めないなぁ。
まぁ、卑劣なところがあるイヤな性格のキャラクターとして描きたかったのは分かりますが、最後の扱いはチョットなぁ。
(彼の最後の姿で何かしらのメッセージがあるのであれば違ったけど、そういうわけでもなさそうですしね・・・)

本作は劇場公開当時、映画賞レースのメインのような触れ込みで宣伝されていた記憶がありますが、
確かに99年度アカデミー賞で作品賞含む主要4部門でノミネートはされたものの、ほぼ受賞できずに終わりました。
これはオスカー前哨戦の各映画賞も同様の傾向でしたので、口コミの評判とは対照的な結果となってしまいましたね。

でも、個人的にはその結果は分かるような気がします。僕にはそこまでの力がある映画とは感じられなかったので。

とは言え、本作にも魅力的だった部分はあります。個人的にはネズミのエピソードは印象に残りましたし、
なかなか琴線に触れるものがあったと思う。どこまで原作通りだったのかは分かりませんが、これは泣かせる話しだ。
踏み潰されてからの出来事はともかくとしても、多少なりともファンタジックに描く意味でネズミの存在は悪くないと思う。

本来は臆病な生き物なんで、あんなに人前に出てきて走り回るというのは考えにくいですが、
隠れ家であろう部屋の荷物を全て出したのに、隠れたはずのネズミが見つからないとか、“神隠し”みたいで印象的。
他のシーンにしても無理にCG使ったりしないで、もっと自然体に奇跡を描いた方が良かったのに・・・と感じましたね。

ちなみに主人公が映画の序盤から、おそらく尿路結石で苦しんでいると思わしき描写が
ずっと続くのですが、かなりツラそうな症状ですので奇跡が起こらなければ、彼は命を落としていたかもしれません。
もう、トイレに行くことすら精神的にしんどいだろうとは思いますが、あそこまで我慢できることも驚きでしかないですね。
こういう部分は、フランク・ダラポンはユーモアとして描きたかったのかもしれませんが、妙にシリアスにに感じられる。

まぁ、昨今のSNSの発達などで様々な意見が拡散される状況を見るに、
現代的な感覚では本作を感動作として受け止めてもらうことは、難しいかもしれない。それだけ、社会は変容してます。

死刑制度の是非も未だ社会的な議論としてはありますが...犯罪には被害者が存在することは大半ですからね。
僕は『デッドマン・ウォーキング』みたいな、メッセージ性の強い作品も避けたくなる性格なので何とも言えませんが、
マイケル・クラーク・ダンカンを除いて、本作の死刑囚たちの描き方については賛否が分かれるかもしれない。
(やはり更生など求められない彼らに対する扱いも、過酷なものであるべきという意見は多いですからね)

まぁ、この3時間の長さを感じなかった人にとっては、波長が合う良い映画ということなのだろう。
僕の中ではやはり、チョット長さを感じてしまう映画。脚色はしたのだろうけど、もっとタイトに出来ただろう・・・と思える。

(上映時間188分)

私の採点★★★★★★☆☆☆☆〜6点

日本公開時[PGー12]

監督 フランク・ダラポン
製作 デビッド・ヴァルデス
   フランク・ダラポン
原作 スティーブン・キング
脚本 フランク・ダラポン
撮影 デビッド・タッターサル
音楽 トーマス・ニューマン
出演 トム・ハンクス
   デビッド・モース
   ボニー・ハント
   マイケル・クラーク・ダンカン
   ジェームズ・クロムウェル
   ダグ・ハッチソン
   マイケル・ジェッター
   グレアム・グリーン
   サム・ロックウェル
   パトリシア・クラークソン
   バリー・ペッパー
   ハリー・ディーン・スタントン
   ゲーリー・シニーズ
   ウィリアム・サドラー
   ジェフリー・デマン

1999年度アカデミー作品賞 ノミネート
1999年度アカデミー助演男優賞(マイケル・クラーク・ダンカン) ノミネート
1999年度アカデミー脚色賞(フランク・ダラポン) ノミネート
1999年度アカデミー音響賞 ノミネート