ザ・コンサルタント(2016年アメリカ)

The Accountant

これは面白かった。近年のベン・アフレックの当たり役と言っていい作品でしょう。

と言うか、そもそも会計士という映画の主人公になりにくそうな地味な職業がクローズアップされること自体、
ハリウッド映画では珍しいことだと思うのですが、それがアクション映画になるというのが、また予想外な展開だ。

この映画には数々の伏線が張り巡らされているのですが、その全てを読み取ろうとしたら、
チョット疲れてしまうタイプの映画なので、あまり深読みして観ない方が逆に楽しめるのではないかと思います。
なにか意味ありげに、ホワイトハウスの長官が登場してきたり、主人公の幼少期のエピソードが何度も挿入されたり、
作り手が何かを言いたげに描いているように見えますが、まぁ・・・意図はあるのでしょうが、僕はそれらに興味が無い。

それよりも、このストイックにも見える、やや特殊な主人公のキャラクターでしょう。
時にアウトローにも見えなくはないのですが、こういった暗躍する会計士が実は腕っぷしも強いという設定が面白い。
前述したホワイトハウスの長官の存在も、主人公の過去に何か関係ありそうに匂わせているのですが、
そういったことは全て、カラクリとして描かれている。ただ、このカラクリは少々、悪い意味でクドく見えてしまったかな。

物語の焦点となるのは、主人公が会計監査を依頼される会社である。ここ辿り着くまでが、やや長い。
この会社の社長をジョン・リスゴーが演じているのですが、彼はまた、経営に関する知識がないと自称している。
個人的には「バランスシートはよく分からない」と公言する経営者がいるのかよ・・・とツッコミの一つでも入れたくなるが、
会社経営するにあたって、経営指標はあまり意識していないという経営者もいるだろう。しかし、それは中小企業の話し。

本作で描かれる、“リビング・ロボティクス社”のように急成長した規模の大きな会社の経営者となれば、
標準以上の会計学に関する知識は必要でしょうし、いわゆる会計リテラシーに乏しいことは致命傷になるでしょう。

思えば、映画の主人公になりにくい会計士という職業にクローズアップしたというのは良い着眼点ですし、
続編も製作されたり、スピンオフも噂されたりしているくらいですので、本作のキャラクターの良さが際立っていて
ベン・アフレックの代名詞ともなれるだけのポテンシャルがあると思う。会計士という職業なのが、また特徴的ですしね。

そんな会計士が腕っぷしが強く、まるでスナイパーのように射撃の腕前もプロ級という謎めいた存在でもある。
これは確かに映画的には“オイシい”キャラクターですよね。会計士ということもあって、数字に強いというのも良い。
この意外性こそが、映画の大きな武器となるものであって、本作の作り手は巧みにそういった武器を生かしている。
その意外性が生かされていて、会計監査に明け暮れている姿から一転して、キレあるアクションがあるのが良い。

まぁ、これくらいのアクション・シーンであれば今の映画界では標準的な水準ではあるけれども...
でも、悪くないと思いますよ。やっぱりそこは、会計士がそんなアクションをこなすというギャップがあるからこそ面白い。

ただ、これはどちらかと言えば、ストーリーへの注文になってしまうのですが...
主人公と敵対する勢力のリーダーの正体が映画の終盤になって明かされますけど、この関係性は少々お粗末。
これはもっと違う在り方で描いて欲しかった。さすがにあまりに安直過ぎるというか、どこか胡散クサく見えてしまう。

こういう部分はもっと慎重に描いて欲しかったなぁ。同じオチだったとしても、もっと伏線をしっかりと描いて、
確実に回収するように描くことで映画の納得性は上がったはずだと思うので、これは脚本の問題もあるように思える。
主人公がストイックに葛藤する姿と、キレ味鋭いアクションに転じるギャップが面白かったのに、この展開はイマイチだ。

この映画の主人公は自閉症スペクトラムを抱えているということで、だからこそ周囲の理解が必要なのですが、
彼は幼少期に親からの理解を得られることなく、元軍人である父親にやたらとスパルタに鍛えられるという、
通常じゃあり得ない育ち方をしたのですが、これが皮肉にも主人公の成長にも影響を与え、屈強さを与えたという
常人には理解し難いエッセンスを加えている。それでいて、一つのことに集中すると凄まじい集中力を発揮することから、
その能力が会計士という職業に生かされるわけですね。この辺の生い立ちに関するエピソードは総じて良いと思う。

だからこそ、クドいようだけど...映画の終盤に明かされる関係性は、あまりに稚拙に見えてしまった。
これがもっと上手く、自然な形で描かれていれば映画は更に良くなっていただろうし、もっと魅力的になったと思う。
結果的にこういうところが、本作の「何かが少しずつ足りないんだよなぁ」と感じさせる原因になってしまっていると思う。

あと、これは映画の問題というよりも日本の映画会社の問題なんだけど・・・
本作の主人公はべつにコンサルティングをやっているわけではないと思うんだけど、なんでこの邦題なんだろ?

会社経営や会計・経理に関するコンサルティングをやっているわけではなく、依頼されて民間企業の不正会計を
調べることになった会計監査員ですからね。依頼された会社のオフィスを借りて、実質的に缶詰め状態で書類を眺め、
徹夜をして不正を見つけるという役回りで、これまでも裏社会の会計に触れる立場であって、不正のパターンは
おそらく数多く知っているという、言わば専門家でしょう。これは地味な仕事ですけど(笑)、大切な仕事ですからね。

特に昨今はコンプライアンス重視という社会が世界的にも形成されていますので、
以前にも増して会計リテラシーを強く求められる時代のように思います。そういう意味では主人公のスキルというのは、
より社会的にニーズが高まっているのかもしれませんが、単純な経理業務であればAIに置き換わっているからなぁ。

主人公のような監査ができたり、不正を見抜く力がある会計士であれば、まだまだ人間が行う領域でしょうけどね。

そんな堅物がやりそうな仕事に就くものが、実は徹底して鍛えられた過去があって、
腕っぷしも強く、射撃の腕もプロフェッショナルというギャップが面白いのです。内省的な生活なのかと思いきや、
自分の部屋ではハードロックを聴いていたり、エモーショナルな部分を自ら高めていく方法を知っているかのようですね。

そんなセルフ・コントロールに長けた性格だが、やはり自分を出し切れず感情を表に出しにくい。
そんな主人公のことを理解するように描かれるのは、不正会計を告発した“リビング・ロボティクス社”の女性職員だ。
アナ・ケンドリックが演じているヒロインですが、彼女とのエピソードはどことなく中途半端というか不発な感じで残念。
これはこれで続編を予期させるエッセンスではあったのかもしれないけど、個人的にはもっとハッキリと描いて欲しい。

敢えて、中途半端に描いて、なんとも微妙なロマンスの良さを表現するということもありますが、
この映画はそういうタイプではないと思った。近づきそうで近づかないよりは、本作はハッキリと近づいた方が良い。
この辺は監督のギャヴィン・オコナーもしっかりと見極めて欲しかったが、まぁ・・・続編が作られたので良しとすべきか。

その続編もずっと製作されると噂されていながらも、なかなか撮影が始まらず色々と悶着があったそうで、
第1作の製作から8年が経過した2025年にようやっと劇場公開されました。この第1作はそこそこ評判も良かったし、
脚本もほぼほぼ完成していたらしいので、すぐに続編ができると思っていたのですが今の時代は難しいようですね。

それから、もう一点。作り手の意図は分かるにしても、財務省の動きがメイン・ストーリーに上手く絡んでいない。
僕にはスゴく中途半端な描き方にしか見えなくて、女性分析官の経歴を見抜いていた局長を演じたJ・K・シモンズも
一体何のために登場させたのか、作り手自ら悪い意味で中途半端にしか描けなかったように見えてしまいましたね。
もっとメイン・ストーリーと直接的に絡ませても良かったと思うし、意味ありげに過去のエピソードを紹介していくものの、
どれもそこまで影響するものと思えず、上手く主人公の捜査の全容を描けていないことが気になって仕方がなかった。

それに、主人公の父親役もJ・K・シモンズの雰囲気を持っているような気がして、余計な邪推をしてしまった(笑)。
結局どれも上手くメイン・ストーリーと絡ませて、映画を盛り上げることに寄与せず、それぞれがバラバラに見えてしまう。

こういった部分は続編で解決されていることを期待していますし、ベン・アフレックの当たり役として
人気シリーズになればいいなぁとも思っています。ただ一方で、往々にしてシリーズ化するとダメになっていく作品が
世の中にはスゴく多いので、これはスタッフにシリーズ作品を手掛けることに長けた人を加えた方がいいかもしれない。

おそらく...ベン・アフレックの盟友であるマット・デイモンには“ジェイソン・ボーン・シリーズ”という
代名詞的人気アクション・シリーズがありますので、ベン・アフレックにもそういう作品が欲しかったのではないだろうか。
とまぁ・・・勝手に邪推してしまったりしますが、本作は十分にそのポテンシャルと魅力がある企画だったと思います。
超人みたいなスーパー・アクションというのともチョット違うんだけど、勧善懲悪で受け入れられやすい内容でしょう。

注文付けたくなるところがないわけでもないんだけど(苦笑)、続編には期待してます。

(上映時間128分)

私の採点★★★★★★★★★☆〜9点

監督 ギャヴィン・オコナー
製作 マーク・ウィリアムズ
   リネット・ハウエル・テイラー
脚本 ビル・ドゥビューク
編集 リチャード・ピアソン
音楽 マーク・アイシャム
出演 ベン・アフレック
   アナ・ケンドリック
   J・K・シモンズ
   ジョン・バーンサル
   ジェフリー・タンバー
   シンシア・アダイ=ロビンソン
   ジーン・スマート
   ジョン・リスゴー