素顔のままで(1996年アメリカ)
Striptease
まぁ、これは劇場公開当時、色々な意味で大きな話題となっていた作品だったと記憶してます(笑)。
何よりも、当時は大人気女優であり、アクション・スターのブルース・ウィリスの私生活の妻として、
世界的にも有名であったデミ・ムーアがストリッパー役として、ヌードになって踊っているという設定で話題になった。
(ちなみにデミ・ムーアは映画の中でヌードになったのは、べつに本作が初めてというわけではない・・・)
その結果...というわけでもないのだろうけど、本作はゴールデン・ラズベリー賞に大量ノミネートされて、
不名誉なことにワースト作品賞をはじめとして、6部門を受賞するという快挙(?)を成し遂げたことでも話題になりました。
で、どんな映画なのだろう?と不思議に思って、いざ本編を観てみたところ...
観る前の自分の勝手な予想に反して、この映画はコメディだったんですね。てっきり、シリアスな作品かと思ってた。
まぁ・・・若干、サスペンス的な要素も無くはないのですが、全体的にピリッとした緊張感があるわけでもない。
監督が『ドン・サバティーニ』などのアンドリュー・バーグマンということで、コメディを主体として活動する
ディレクターなのでこのような内容になるのは自然なことなのかもしれない。ただ、悪い意味で散漫な映画ですね。
これは確かに褒められた出来ではないかな。コメディ映画としても中途半端、ミステリーとしても魅力に欠ける。
これでは映画としては苦しいです。せっかくデミ・ムーアが頑張っても、なんだか空回りしているようで虚しく見えちゃう。
オマケに謎にヒロインに惚れ込んで、気持ち悪いことも平然と言いのける政治家を演じたバート・レイノルズも、
どことなく奇妙な雰囲気でこれは逆効果。しかし、彼の存在がコメディとして盛り上げているとも言い難く、とっても微妙。
こうなってしまうのであれば、彼のキャスティングにはもっとコメディ演技が得意な人を置かないと、映えないですね。
彼が演じたディルベック下院議員もただの変態にしか見えないし、とてもじゃないけど有能な政治家には見えない。
そしてもう一人、ヒロインに惚れているかのようなニュアンスを見せる刑事役にアーマンド・アサンテが登場する。
しかし、彼もまた、本作での姿はなんだか冴えない感じ。良く言えば、デミ・ムーアに骨抜きにされたということなのかな。
さすがに映画の後半で初めてディルベックが側近に手引きしてもらって、ヒロインと接近できると分かってから、
政治パーティーで待機してるホテルで、全身にローションを塗りまくって側近を呆れさせるとか、まったくの意味不明。
まぁ、ディルベックは生粋の変態であるようですから普通なのかもしれませんが、あれでパーティーに出るのもスゴい。
(たぶん、シャワーを浴びてローションを落とさない限り、とてもじゃないけど人前に出れない・・・)
徹底的にシェイプアップして鍛え上げられたデミ・ムーアの身体は、ストリッパーとしてというよりも、
感覚的にはボディビルダーに近いような気がします。彼女の踊りに下品さは感じられませんが、彼女が撮影のために
作ってきた身体はボディビルダーとしては優秀な気がします。どこかアーティスティックなダンスという感じも合ってる。
ただ、映画の見どころとしてはハッキリ言って、これだけ。ですから、よほどのデミ・ムーアのファンにしか薦められない。
そもそもこのストーリーでアンドリュー・バーグマンが何をどう描きたかったのかが、これではよく分からないし、
これといった盛り上げどころがなく、あまりに中途半端な感じでクライマックスの攻防も不完全燃焼で終わってしまう。
これといった謎解きがあるわけでもなく、ミステリーとしても中途半端。正直言って、ラジー賞も納得できるところがある。
物語としては、離婚によって親権を奪われたヒロインが、やむを得ずストリッパーとして働いていたところ、
たまたま客として訪れていたディルベック下院議員が彼女に一目惚れし、ステージに上がり込んでヒロインに絡んだ、
サラリーマンをブン殴るという傷害事件が発生し、それを写真に撮っていたヒロインのファンが何者かに殺されてしまう。
下院議員側は事件をもみ消そうと工作活動を行うと同時に、議員たっての希望でヒロインに近づこうとしてきて、
そんな最中で殺人事件の捜査で刑事が、ヒロインの安全を警告すべく接近してきて、大きな騒動に発展していきます。
まぁ、下院議員の資金集めパーティーが描かれたり、どう考えても時間の無駄としか思えないシーンもあるし、
正直言って、アーマンド・アサンテ演じる刑事の存在とかも必要なのか、かなり微妙に思える登場人物もいます。
おそらく、デミ・ムーアありきの企画だったのだろうと思いますけど、そもそもの企画自体に無理がある作品ですね。
デミ・ムーアのストリップ・シーンがあるというだけで、客寄せができるというほど甘い時代ではなかったと思うし、
久しぶりのバート・レイノルズもこんな気持ち悪い爺の役とは、あまりに可哀想。でも、これではウケなくて当然ですよ。
言葉は悪いですが...プロダクションの安直な発想から映画化に至ったような気がして、どうしても気になってしまう。
この映画で描かれた政治家のスキャンダラスな不祥事については、本作の劇場公開直後に
当時の合衆国大統領のビル・クリントンのスキャンダルが明るみになり、世界的に大きく報道されて話題となりました。
まぁ、本作で描かれたティルベック下院議員の変態ぶりもなかなかですが、クリントンの一件も笑えないレヴェルだ。
そういう意味では、本作で描かれたようなことも、まんざら絵空事とも言えず、現実に起こり得ることなのかもしれない。
この映画ではセンシティヴなところが描かれていて、ヒロインの娘が母親のストリップを見てしまうシーンがあって、
娘も気を遣ってか(?)、本音なのか分かりませんが...「キレイだったよ」と母親に言います。さすがに幼少期には、
キツい光景だったかと思います。母親のストリップで、世の中のオヤジが盛り上がっている光景を受け入れられるのは、
とても難しく、譲って子どもが大人になってからかなぁという気がします。こういうシチュエーションを描いたというのは、
本作が一歩踏み込んだ部分の象徴だと思いますけど、ここは触れるだけではなくって、もっとしっかり描いて欲しかった。
なんだか娘の「キレイだったよ」の一言を聞いて、複雑な表情に陥るヒロインを映すだけで終わってしまって、
その後の母親としての行動や言動の変容に表れなかったというのが、この映画の物足りなさにつながったとも思う。
きっと、このヒロインにしてもストリッパーとして働くことにプライドはあったと思うんですよね。
元FBI職員だったという経歴からしても、職業の特性をよく理解した上でそれでもストリッパーという道を選んだわけで、
娘への負い目を感じつつも、それでも最終的にはこの職業に愛着とプライドを持っているというプロフェッショナルさを
映画の中で表現して欲しかったのですが、そういったことがほとんど残らないような形で映画が終わるのは残念・・・。
映画の中で、こういう職業に就くことの難しさを真正面から描いたということも多くはないように思うので、
ヒロインの葛藤を本作のメインテーマにしても良かったと思うんですよね。殺人事件のミステリーがあまりにも弱いので。
それでいて、クドいようですが...変態ジジイのバート・レイノルズを観て笑ってくれと言われても、これは難しい。
そして、てっきり恋に落ちるのかなと思いきや、ヒロインにやたらと絡んでくる刑事ともロマンスの香りが弱い。
当時は怪しいオッサンを演じさせたら上手かったアーマンド・アサンテをキャスティングしたというのに、これも勿体ない。
となってしまうと、最終的にはデミ・ムーアの魅力のみということになります。しかし、それには遅過ぎた作品ですね・・・。
言葉は悪いですが...これはデミ・ムーアが当時のハリウッド女優として最高額のギャラを勝ち取るために、
何度も出てくるストリップ・シーンを引き受けたということなのではないかと、下世話な邪推してしまいたくなりますよ。
でも、こんな内容の映画になってしまうのであれば微妙ですよね。べつに彼女の踊りが無くても、問題ないですもの。
クライマックスの全員集合状態も、なんだか盛り上がらない結末ですよね。もっと上手い描き方があったと思うけど。
やっぱり、この映画はサスペンス劇を撮ることが得意な人が撮った方が、楽しめる内容になった気がしますねぇ。
その全員集合の中に、ヒロインの別れた夫も絡んでくるのですが、これがまたなんとも情けない男なんだ。
親権を取った娘を利用して生活費を稼ぐような男だし、クライマックスでも余計なことをやってくる男として描かれる。
正直言って、映画の前半を観ていると、そこまで重要なキャラクターではないのかなと思っていたのですが、
予想外なことに、この別れた夫は映画の最後までヒロインに絡んでくるので、なんだかウザったい存在になっている。
おそらくコメディ・パートの役割を担わせたかったのだろうとは思うのですが、彼もまた悪い意味で中途半端な扱いだ。
映画の出来としては、お世辞にも褒められた出来とは言えないし、何を狙っていたのかがよく分からない作品だ。
デミ・ムーアのファンは勿論のことではありますが、ゴールデン・ラズベリー賞を大量受賞した作品が好きな人や
豪華キャストで迷走した珍品に興味があるという人は、話しのタネに一度は観てもいい作品なのかもしれません。
しかし、重ね重ねですが...デミ・ムーアのストリップ・シーンは場末のストリップ・バーでオヤジたちに
ピーピー言われているようなタイプとは到底見えないし、どちらかと言えば、逞しく鍛えられた肉体という感じです。
(上映時間115分)
私の採点★★★★☆☆☆☆☆☆〜4点
監督 アンドリュー・バーグマン
製作 マイク・ロベル
原作 カール・ハイアセン
脚本 アンドリュー・バーグマン
撮影 スティーブン・ゴールドブラット
音楽 ハワード・ショア
出演 デミ・ムーア
バート・レイノルズ
アーマンド・アサンテ
ビング・レイムス
ロバート・パトリック
ルーマー・ウィリス
ディナ・スパイビー
1996年度ゴールデン・ラズベリー賞ワースト作品賞 受賞
1996年度ゴールデン・ラズベリー賞ワースト主演女優賞(デミ・ムーア) 受賞
1996年度ゴールデン・ラズベリー賞ワースト助演男優賞(バート・レイノルズ) ノミネート
1996年度ゴールデン・ラズベリー賞ワースト監督賞(アンドリュー・バーグマン) 受賞
1996年度ゴールデン・ラズベリー賞ワースト脚本賞(アンドリュー・バーグマン) 受賞
1996年度ゴールデン・ラズベリー賞ワースト音楽賞 受賞
1996年度ゴールデン・ラズベリー賞ワースト・スクリーン・カップル賞(デミ・ムーア、バート・レイノルズ) 受賞
1996年度ゴールデン・ラズベリー賞この10年ワースト作品賞 ノミネート