フェイク シティ ある男のルール(2008年アメリカ)
Street Kings
腐敗したロサンゼルス警察のスキャンダルをキッカケに、窮地に追いやられる刑事を描いたサスペンス・アクション。
『スピード』でブレイクしたキアヌ・リーブスでしたが、00年代に入ってからはヒット作に恵まれず、
ハリウッドで活躍するタフガイなアクション・スターとしても低迷していたように見えていた頃に出演した作品。
2014年の『ジョン・ウィック』の世界的な大ヒットで復活した感がありますが、それまでが長かった印象があります。
そんな中でも、個人的には本作は面白かったと思っています。確かにキアヌ・リーブスにはあまり似合わない、
バイオレントで少々ダーティなところのある刑事を演じていて、これはこれで新境地を開拓したかったのかもしれない。
監督は『U−571』や『トレーニング・デイ』の脚本を担当していたデビッド・エアーで、それなりに力があると思う。
個々のアクション・シーンにはキレがあって決して悪くないです。シューティング・ゲームをやっているかのような
錯覚があるのですが、映画の前半にあるコンビニで同僚の刑事が銃撃を受けるシーンなんかも実に上手く見せている。
正直言って、ストーリー的にはありがちに映る部分はあるので、さして驚かされることがない分だけ
本作の場合はアクション・シーンでしっかり見せなければいけなかったのだろう。とは言え、ダーティなところがある
刑事と彼の動向を調査するロス警察の内務調査官との攻防も見応えがあるし、外濠が埋められていく過程も面白い。
まるで八方塞がりで主人公はドンドンと追い詰められてしまい、彼が頼れる存在がいなくなってしまう。
同僚の刑事たちも、それまでは仲良く接してきたものの、次第に信用が置ける存在ではないことが分かってくる。
裏切りに次ぐ裏切りという感じで、警察内部の腐敗構造をしっかりと描けていて、奇をてらった部分が無いのも好感。
原作は人気小説家ジェームズ・エルロイであり、脚本にも参加しているだけにキチンと世界観が反映されていると思う。
『L.A.コンフィデンシャル』のように高く評価された映画ではないけど、本作は結構ジェームズ・エルロイの世界ですよ。
惜しいのは、主人公の上司を演じたフォレスト・ウィテカーなのですが...彼が最初っから、怪し過ぎる(笑)。
一筋縄にはいかないキャラクターとして描きたかったのは分かるけど、もっと怪しさはマイルドにして欲しかったなぁ。
終いには、「全ては壁の向こうに秘密がある」と言って何故か一人で自白してしまうのだけれども、
実に壮大なことをやってのけていたにも関わらず、主人公に突如として弱さを見せるという不可解さがなんとも微妙。
絶対的な権力を行使して部下たちを操っていたということなのだろうが、それならば往生際悪いふてぶてしさが欲しい。
と言うのも、この映画にとって主人公と敵対するのは誰であり、その理由は何なのかということは重要だったからです。
そのポイントはフォレスト・ウィテカーだったと思うのですが、突如として弱々しくなっちゃうのは理解し難い。
その表情一つ一つをとっても、フォレスト・ウィテカーにはあまり似合わないキャラクターだったのかもしれませんがねぇ。
そういう意味では腐敗構造の謎を解くことを楽しむというタイプの映画ではないのかもしれませんね。
どこまで本音を喋っているのかが分からない世界なので、次第に誰を信用していいのか判断がつかない世界。
警察組織がそんな感じになってしまうという前提が面白くって、縦社会でもある警察だからこそ根深い問題になります。
謎の寵愛を受けているように見えた主人公ですが、組織的には彼は利用し易い存在でもあったのかもしれません。
ですから、謎解きを楽しみたい人には向かない作品かと思いますね。
どちらかと言えば、腐敗した組織がどのように内部崩壊していくのかを描いている作品と言った方がいいと思いますね。
それと、この邦題というか...副題にある“ある男のルール”は最後まで観ても、意味がよく分からなかった(苦笑)。
おそらく主人公のことを意味しているのだろうと思うけど、彼の中でのマイルールが描かれた作品とは言い難いし、
特に彼のポリシーが描かれているように見えなかったので、敢えてこの副題を付けた意味が僕にはよく分からない。
恋人との関係もなんだか微妙なまま、まるで途中放棄したかのように終わってしまうし、
もう少し上手く描けなかったものかなぁと思うところがあって、こういうドラマ部分がもっと充実していれば、
本作に対する印象は変わっていたでしょうし、もっと主人公が追い込まれていく過程を楽しめたのかもしれませんね。
確かにジェームズ・エルロイ自身が脚本に参加しているけど、もっとハードボイルド性があった方が楽しめたと思う。
主人公のストイックさというよりも、どこか我の強い部分だけが悪目立ちしてしまっていて、
ハードボイルドに生きる男ではなく、単に粗暴な刑事がハメられる凡庸なアクション映画に映ってしまいますからね。
まぁ、警察組織の腐敗を内部的に捜査する内務調査と悪徳警察官の対立を描いた作品というのはよくあるのですが、
本作でキアヌ・リーブスが演じた主人公は、完全なる悪党な警察かと言われると決してそうとも言い切れないですね。
確かに裏切ったのではないかと邪推していた同僚刑事をブン殴りに行くという荒れっぷりですが、周囲の悪に染まった
他の刑事たちとは一線を画す存在であるかのように描かれるあたりは、キアヌ・リーブスらしい描かれ方ですね(笑)。
そういう意味では、腐敗した組織に毒された刑事役というのはキアヌ・リーブスっぽくはないし、
映画の冒頭から起床時にいきなり嘔吐したり、潜入捜査でボコボコにされたりとタフガイなイメージとは真反対ですね。
そして、どういう夫婦関係だったのかは知りませんけど、浮気していた妻が不倫相手と密会中に急死したことを
未だに納得できずにいて、精神的に引きずり続けているという設定であるにも関わらず、看護師と交際していて
その看護師との時間では過去のことを全く見せないというのは、ある意味でスゴいけど...なんだか一貫性に欠ける。
観客に「結局はそういう軽薄な男なのか!?」という印象を抱かせてしまうのは、映画として失敗だったと思いますね。
この辺を観ると主人公の描き方にも、もう少し改善の余地があったのではないかと思えてしまうのですよねぇ。
それにしても警察や検察組織の不正というのは、万国共通で起こっていることのように感じます。
日本でもスキャンダラスな報道もありますが、何でもかんでも透明になる組織でもないがゆえに自律性が求められる。
しかし、本作の主人公のように「目的のためであれば手段は選ばない」という考えであったり、「多少の歪曲はOK」とか
事実に基づかないことを容認したり、権限が肥大化し易い組織でもあるのかもしれない。やっぱり牽制は必要なのかも。
だからこそ、内務調査を行う部署が必要ということなのでしょうけど、それだって容易な業務ではない。
よく「自律的な改善」とか一般企業の組織にも求められる言葉ですけど、これは実に意味深長で難しいことだと思う。
肥大化した権力を牽制するとしても、やはり人が行うこととなれば、そこには色々な障害や問題が発生するものだろう。
本作でも内務調査部門がなかなか手出しできないセクションがあるということであったり、
主人公に接触してくる内務調査官自体が、どことなく怪しい空気を漂わせているなど、不穏な雰囲気も描かれている。
この関係性を描いているあたりはジェームズ・エルロイらしいのですが、もっと駆け引きさせた方が良かったですね。
警察組織内部の攻防でもあるので、実力行使での衝突だけではなく、もっと内部の政治的な駆け引きがあったはず。
そういう警察組織のダーティな部分を軸にして、追い詰められていく主人公を描いたわけですから、
もっと掘り下げることはできたはずなのですよね。まぁまぁ面白いアクション映画なので満足度は低くないですけど、
この映画を観終わって、どことなく勿体ないなぁと思ってしまったのも、また事実。特に終盤はもっと上手く出来たはず。
チョット、この映画を観ていて解せないところがあって...主人公的には、(周囲の同僚たちも)やり過ぎな
捜査手法をとることがある仲間たちなのは分かっているという前提なのだろうけど、本性を知らなかったというのは
少々出来過ぎなところに思えて、さすがにこれだけ堂々と違法捜査、悪事の隠ぺいや改ざん、捏造を行っていれば、
主人公だって同様たちの危うさに気づいていたはずだ。そこがまったくの無警戒というのは、納得性に欠けるかなぁ。
まぁ...「クリーンではないのは知ってたけど、ここまでとは思っていなかった・・・」みたいな感じなんですかねぇ?
銃撃シーンの迫力・臨場感については、文句なしの出来栄え。これは特筆に値すると思いましたね。
やっぱりこういうのを観ると、『プライベート・ライアン』あたりからこうした映像表現のスタンダードが変わったと感じる。
明らかに観客に体感させることを主眼に、撮り方や音の使い方が技術の進展と共に変わってきていると思います。
本作なんかはその賜物で、前述した映画の前半にあるコンビニで“蜂の巣”になる銃撃シーンなどは
何度観ても凄まじい迫力に臨場感。こういう表現を当たり前に出来るようになったのは、大きな変革だと思いますね。
実は本作、数年前から企画が立ち上がっていて、スパイク・リーやオリバー・ストーンに監督オファーがあったものの、
撮影開始まで話しがまとまらず、仕切り直して映画化に至ったそう。他の監督だったら、どうなっていただろうか?
(上映時間108分)
私の採点★★★★★★★☆☆☆〜7点
日本公開時[PG−12]
監督 デビッド・エアー
製作 ルーカス・フォスター
アレクサンドラ・ミルチャン
アーウィン・ストフ
原案 ジェームズ・エルロイ
脚本 ジェームズ・エルロイ
カート・ウィマー
ジェイミー・モス
撮影 ガブリエル・ベリスタイン
編集 ジェフリー・フォード
音楽 グレーム・レヴェル
出演 キアヌ・リーブス
フォレスト・ウィテカー
ヒュー・ローリー
クリス・エヴァンス
コモン
ザ・ゲーム
マルタ・イガレータ
ナオミ・ハリス
ジェイ・モーア