ある日どこかで(1980年アメリカ)
Somewhere In Time
これは実に不思議な映画でした。未だに熱烈な本作のファンがいるというのも、なんとなく分かる気がする。
当時、『スーパーマン』で大人気だった今は亡きクリストファー・リーブが主演のSFラブ・ロマンスというわけで、
相手役となるヒロインには『007/死ぬのは奴らだ』でボンドガールを演じたジェーン・シーモアが配役されていて、
人気女優である彼女をマネージャーとして支える男として、ベテラン俳優のクリストファー・プラマーというキャスティング。
とあるリゾートホテルを舞台に、主人公が妙に惹かれた往年の舞台女優に会いたい一心で、
大学教授から自己暗示をかける“時間旅行”の話しを聞き、それを実践に移して成功する様子を描いています。
ジャンル的にはサイエンス・フィクション(SF)なのですが、ただ主流とは言い難いカルトっぽさを持った作品で、
当時のSF映画のスタンダードを考えても、かなり異端な内容であり、どちらかと言えばB級映画の感覚に近いです。
監督が『ジョーズ2』を撮ったヤノット・シュワルツでスピルバーグと旧知の仲であったことから、抜擢されたそうです。
確かに本作のジェーン・シーモアはどことなく大人な雰囲気の持つ、それでいてクラシカルな魅力がある
正しくベスト・キャスティングな感じで、主演のクリストファー・リーブの真面目っぽいところも良いんだけれども、
本作は何よりジェーン・シーモアが支えているように見えました。実際、彼女じゃなきゃ映画の魅力は半減でしょう。
まぁ、SF映画ではありますが、タイム・パラドックスに関わる部分とか細かなところに関しては、
正直言って、ラフに作られた映画なのであまりツッコミは入れない方がいい(笑)。そこまで器用な映画ではないので。
この映画はある種の既視感(デジャ・ヴ)を利用した作品だと思っていて、そもそも主人公はヒロインの写真から
既に何か妙な親近感を抱いていて、四苦八苦してタイムスリップした後にヒロインを見つけた彼は、ヒロインから
「あなたなの?」と謎の言葉を初対面でかけられる。つまり、お互いに初めて会った感覚ではなかったということだ。
ヒロインは予言を受けていたからこそ、という設定にしていたのですが、それでも誰でも彼でもそんな言葉はかけない。
それでも、思わずそんな言葉が漏れてしまったというのは、明確に記憶にあるわけではないけれども、
お互いに以前会ったような感覚があったということかと思う。初対面ではない気がするほどに運命的な出会いは、
すぐに2人が恋に落ちるというベクトルに向くわけですが、欲を言えば、もう少し2人のロマンスは慎重に描いて欲しい。
僕には少々、全体的に性急な展開となっていたように感じられ、燃えるような恋愛という感じではないのが残念。
どこか浮遊感があって、フワフワしたような感覚の不思議なロマンスというのが本作の特徴ではあるのだろうけど、
どうせならもっとピリッとしたものが欲しいし、特にヒロインが主人公に心を開くまでの過程には、もっと葛藤が欲しい。
特に口うるさく、まるでヒロインを奴隷であるかのように扱うマネージャーが近くにいて、主人公も直接的に忠告を受け、
映画の中では観客にとってストレスな存在になることは明確なのだから、ヒロインをもっと強く牽制しても良かったなぁ。
何か全体的にフワッとした感じで、なんだか良くも悪くもそれが本作の特徴になっている感じだ。
しかし、そこはもっと2人のロマンスに大きな障害があって、なかなかヒロインは思い切れなくて・・・みたいな展開で
それでもお互いの気持ちを高め合っていくみたいなところが、やはり恋愛映画には必要だったのではないだろうか。
まぁ、それでも映画は成立させたあたりは素晴らしかったのだけれども、デジャ・ヴがあったとは言え、
もう恋に落ちる前提みたいなところがあるのは、映画の魅力が磨かれないと思うんですよね。何か障害がないと。
それがクリストファー・プラマー演じるマネージャーの存在だけというのは少々力不足な感じが否めず、
あれよあれよという間にクライマックスが近づいていって、物語は収拾に向かっていく。この終盤も結構な力技(笑)。
正直言って、僕はこのラストのB級感に好感が持てなかったなぁ。テレビドラマならまだいいけど、映画ですからねぇ。
思わずビックリする表情のカットを割ったり、格調すら感じさせた恋愛劇が急激に安っぽくなってしまった印象が残る。
この辺を観ると、やっぱり単にSF映画というだけではなく、恋愛劇を撮るのが得手なブレーンが欲しかったなぁと思う。
これはとっても切ない物語であって、多くの人々の心に触れる良い土台を持った作品だったとは思うのです。
しかし、それを“料理”するのが上手くない。それゆえか、全体的に詰めが甘いなぁという印象が強く残ってしまった。
まぁ、過去を生きた女性に憧れの念を抱いて、時空を超えて会いに行って、恋に落ちるなんて素敵な物語ですよね。
本作のクリストファー・リーブは好青年な印象ですが、恋焦がれるジェーン・シーモアはどことなく年上な雰囲気が漂う。
前述した「あなたなの?」とヒロインが言う、浜辺で最初に出会ったシーンのでジェーン・シーモアはホントに魅惑的だ。
行きたい時代に想いを馳せて念じていればタイムスリップするという、時間旅行の方法を具体的に描いたのも珍しく、
ある意味では『バック・トゥ・ザ・フューチャー』の発想って、本作から失敬したのではないかと思える内容でもある。
本作は劇場公開当時、酷評されたということですので、本作の失敗を生かしてシナリオを作り直したのかもしれない。
そういう意味では、魅力たっぷりな作品だっただけに...僕の中ではなんとも勿体ない作品でもあるのです。
思わずヤノット・シュワルツではなくって、スピルバーグが本作を撮っていたらどうなっていたかと考えちゃいますね。
映画のラストはなんとも切ない。過去に取りつかれてしまったかのように主人公が憔悴してしまうのですが、
それはヒロインとの時間を失ってしまったことへの悔いもあるかもしれないが、何よりも「もう会えない」という思いが
主人公にとっては大きかったのだろう。そんな憔悴してしまった彼の姿を映したことで、本作はより感傷的なものに。
ここは賛否が分かれるところかもしれませんが、僕はこのラストの描き方については、むしろこれが良かったと思います。
「チャンスは一瞬」なんて言いますけど、何度も時間旅行が出来るものではないですから、
恋焦がれた過去の女性と出会うチャンスをモノにしたというのに、それを逃してしまった代償は大きかったということ。
こういう感傷的なところが強調される映画だったからこそ、本作は唯一無二のSF映画というポジションを得たと思う。
それくらい、本作は隠れた良作として根強い人気を誇るSF映画でもありますから、このラストで正解だったのだろう。
いつの時代でもありがちな話しですが、1910年代に舞台女優として人気を誇ったヒロインは自由な生活ではなく、
マネージャーから厳しく私生活への口出しもありで、プライベートも何も無いような生活を強いられている有様です。
そんな奴隷のような扱いにヒロインは拒絶反応を示すわけですが、マネージャーにも葛藤はあるように見える。
それでもドライに人気舞台女優のマネージャーに徹するクリストファー・プラマーが上手いのですが、
ヒロインの舞台劇を観劇する主人公を呼び出して、忠告するシーンはもっと緊張感を演出しても良かったですね。
それから、どうしてももう一つ気になっていたのは、映画の冒頭に主人公に気づかせるキッカケとなる、
パーティー会場に年老いた気品ある女性が現れるシーンで、これは観終わってから蛇足的に感じられたことだなぁ。
確かにその後のストーリー展開を納得させるためのシーンではあったんだけれども、もっと違う形で描いて欲しかった。
まぁ、これがキッカケで主人公が行動するので納得性はあるんだけど、あまりに直球過ぎるなぁというのが本音。
ここは他のメッセージが主人公を突き動かすようなことの方が良かったかもしれない。運命のホテルに辿り着いて、
あのヒロインの写真を見てビビッとくる、という流れが観たかった。特にこの写真については、ジェーン・シーモアが
どこから見てもカメラ目線で映るように工夫されたショットだとのことで、良い写真なだけにこれだけで十分だったと思う。
そこから不思議と取りつかれたように図書館で彼女に関する資料を読み漁っては、
勢い余って大学教授に時間旅行の方法を聞き出して、自分の部屋で実際に試してみちゃうという奇想天外さ。
冷静に考えれば、「んなわけじゃないじゃん」とツッコミの一つでも入れたくなるくらい、非現実的な話しではあるけど、
それでも何かに突き動かされるように主人公が、彼女の写真に魅力を感じてのめり込むというエネルギーが眩しい。
恋は盲目だからこそですけど、そうなだけに失ったものの喪失はとっても大きい。それが実に切ないのです。
その儚さを表現できたからこそ、本作は未だに根強い人気を誇っているのでしょうし、
それがSF的要素と見事にミックスさせたのは面白かったですね。だからこそ、もう一押し頑張って欲しかったなぁ。
そりゃ『ジョーズ2』よりはヤノット・シュワルツは監督として良い仕事したとは思うけど、どこか物足りなさと違和感が
残ってしまったことは否定できず、個人的には傑作になり損ねてしまった映画という印象でもあるのですよねぇ・・・。
何はともあれ、クリストファー・リーブが純朴な青年として元気そうなのも、何とも切なく見えますねぇ・・・。
(上映時間103分)
私の採点★★★★★★★☆☆☆〜7点
監督 ヤノット・シュワルツ
製作 スティーブン・ドイッチ
原作 リチャード・マシスン
脚本 リチャード・マシスン
撮影 イシドア・マンコフスキー
音楽 ジョン・バリー
出演 クリストファー・リーブ
ジェーン・シーモア
クリストファー・プラマー
テレサ・ライト
スーザン・フレッチ
ビル・エルウィン
ジョージ・ヴォスコヴェック
ウィリアム・H・メイシー
1980年度アカデミー衣装デザイン賞 ノミネート