渡辺 貞夫/75th Anniversary -Into Tomorrow-

2026年8月27日(木)[札幌市教育文化会館 大ホール]

        

01 Peace
02 One For You
03 Groovin' High
04 Confirmation
05 But Beautiful
06 I'll Be Around
07 I Fall In Love Too Easily
08 Nostalgia In Times Square
09 Tadd's Delight
休憩(15分)
10 Quilombo
11 Winds & Trees
12 Front Seat
13 Doce Seducao
14 Tree Tops
15 Easy To Love
16 Lopin'
17 Tembea
18 You'd Be So Nice To Come Home To
19 Shosholoza
20 Harambee
初めての「世界のナベサダ」でした。ほぼほぼ毎年、札幌に来ているし、コロナ禍でも活動を続けていました。

今年で御歳93。こういう言い方は失礼ですが...普通、93歳となるとご健在であるだけでも長寿という感じだし、
街を出歩くこともしんどく、あまり長い旅などはできないだろう。足腰も弱り、杖や歩行器のお世話になっている人も多い。
それでもナベサダは、サックスを抱えたまま、ゆっくりとした足取りではあるが誰の介助も借りずに一人でステージに。
いざステージで演奏が始まると、途中、他のメンバーにソロを任せる部分であっても、どこにもつかまらず立っている。

いや、これを仮に自分が93歳まで生きていて真似ができるかと言うと...これは無理だろう(苦笑)。ホントに驚異的。

確かに少しずつ受け答えが遅くなったり、言葉が出づらくなったり、演奏でトチったりすることは増えるのだろうけど、
いやはや全くそんなことは問題に感じないぐらいに正確で、相変わらず“艶っぽい”ナベサダの素晴らしい音が響く。
世の中にこんな93歳がいるのだろうか!?と言いたくもなるほど、他の追従を許さぬ驚きのステージでしたね。

この日も開演予定時刻どおりの18時30分キッチリに客電が落ちて、すぐにナベサダさんはステージに登場。
丁寧に1曲1曲に最初に説明をするので、何の曲を演奏したのかは分かるようになっているのは、とても親切ですね。

最初は厳かに最近の定番曲であるようですが『Peace』から始まります。
そこからは、スタンダード・ジャズっぽいのから、バラード、ややサンバっぽいリズミカルな曲とバランス良く配分。
4曲目の『Confirmation』では途中、ナベサダさんが入るところを間違えたのか、思わずピアニストとニヤニヤしちゃう。
なんとなくカワイイ、ナベサダさん(笑)。曲の最後にはナベサダさんも「失礼しました。ヤバいですね(笑)」とコメント。

そして前半の1stセットで僕が一番良かったと感じたのは『Nostalgia In Times Square』ですね。
これはチャールズ・ミンガスの曲で、ナベサダさんが1962年に200ドルを持って、ボストンのバークリー音楽院に
留学することになり、すぐに連れて行ってもらったナイト・クラブでチャールズ・ミンガスと演奏する機会をもらったそうで
ナベサダさん曰くは「おそらくお世辞だとは思うけど」と前置きして、バンドのツアーに誘ってもらったことは嬉しかった、
と貴重なエピソードも紹介してくれて、さすがにキャリアの長さを感じますね。たぶん、こんな日本人、ナベサダさんだけ。

続く『Tadd's Delight』で1stセットは終わり、ここで15分の休憩です。1stセットはだいたい55分くらいでしょうか。
でもね、前述したとおり、この55分9曲をずっと座りもせず立ち続けて演奏するわけですから、スゴい体力ですよ。

休憩後、2ndセットは1、2曲のバラード以外はバラエティに富んだ曲ばかりが並びますが、
やはり民族音楽っぽいのが流行りなのかな。世界を旅したナベサダさんが、あらゆる土地で出会った音楽を吸収し、
その土地の良さを自分の音楽に反芻したという感じで、『Quilombo』なんかはブラジルとの出会いから生まれた曲。

終盤に差し掛かると、クヮルテットの演奏も熱を帯びていく感じになっていきましたが、
唯一、80年代のオリジナル曲かと思いますが『Front Seat』はどちらかと言えば、クールでカッコ良かったですね。

それ以外にも、MCで「どんな意味なんですかね?」と言って客席の笑いをとっていた『Lopin'』も素晴らしい。
そして、『You'd Be So Nice To Come Home To』を演奏しながら、「そろそろ終わりにしたいと思います」と言い、
僕も「あぁ、終わってしまうんだ」とは思いましたが、年齢のことを言っては失礼ですが93歳のナベサダさんですから、
もうここで終わりでも十分という満足感はありました。すると、クヮルテットがステージで並んで挨拶するかと思いきや、
ベースの人がアフリカの民族音楽を歌い始めて、『Shosholoza』が始まる。ここからは実質的なアンコールですね。

正直、このパターンは初めてのアンコール?のスタイルでしたけど、これはこれで良いですね(笑)。
そしてこの日のホントの最後の曲『Harambee』はコロナ禍、ナベサダさんもYoutubeなどで配信していた歌。
最後の最後まで国際色豊かな選曲で、「世界のナベサダ」を象徴するかのようなコンサートの素敵なフィナーレでした。

コンサートが終わったら20時35分頃でしたので、休憩15分を挟んだとは言え、
ナベサダさん自身は1時間50分は演奏をしたということで、93歳というご年齢から想像されるのを遥かに上回りました。
(あんまり年齢のことばかり言うと、失礼かとは思いますが・・・ここは一般論から言ってます)

客層の年齢層はかなり高かったですが、40代くらいの人もチラホラといる感じでレジェンドを観たい人もいたでしょう。
かく言う、自分もその一人だったのですが、実にハートフルで良い意味でお茶目なステージで観れて良かったです。
初めて、札幌市教育文化会館でコンサートを観ましたが、会場も丁度良いサイズ感でとっても見易いし、音も悪くない。

2階席ということでしたが、思いのほかステージからも近くて、正直ビックリしてしまいました。
なんせナベサダさんの息づかいが聞こえてくるかのようで、臨場感もあるし。古いですが、綺麗に維持されてます。

最後の『Harambee』はアンコールだったのか、それともそのまま突入したのか微妙なところでしたけど、
最後の『ShoSholoza』からはクヮルテット全員で、肩を組みあって歌い演奏するフィナーレで、これは良かったですね。
いやはや...普通に考えて、驚異のステージングですよ。年齢のことばかり言って失礼だけど、93歳ですよ!(笑)
これはやっぱりナベサダさんが唯一無二の存在であることを証明するものだし、なかなか真似できるものではない。

チョット調べたら...ナベサダさんのコンサートのスケジュールがスゴいですね(笑)。
毎年、札幌に来ているのは勿論のこと、この日の前夜も旭川でステージやってきたようですし、札幌の2日後は北見。
こんな移動を伴うスケジュールをこなせるというのは、やはり体力があって体調が良くないとできないことですからね。
ナベサダさん本人がMCで「数日前に痛風やりまして・・・」と苦笑いしてましたから、食欲もまだまだ健在なのでしょう。

正直に白状すると、僕はナベサダさんの熱心なファンというわけではなかったので、
コンサートに行くことにしてからナベサダさんのCDを買ったりして予習したという不届き者ですけど(笑)、
このコンサートだけのことを思えば、ほとんどナベサダさんのスタンダードと言うべきフュージョンを演奏しなかったので
あんまり予習になったとは言えないなぁ(笑)。でも、ナベサダさんの80年代前半のリーダー作はスゴく良いですよ。

個人的には『My Dear Life』、『California Shower』、『Nice Shot』、『Orage Express』などのヒット曲も良いんだけど、
84年の『Rendezvous』が何とも忘れられない魅力に溢れた演奏で、あの時期の曲を聴きたかったなぁとは思ったけど。
でも、現在進行形のナベサダさんを表現したいステージであって、それは往年の名プレイヤーたちのスタンダードを
ナベサダさん流の解釈で演奏したり、世界各国で出会った音楽を広く演奏したい、そんな気持ちが強いのでしょうね。

でも、それもまた魅力の一つですし、ナベサダさんの凄みでもあると思います。あくまで表現者なのかもしれません。

さすがに知名度が高いナベサダさんなだけあって、客入りは上々という感じで客席はほぼ埋まっていました。
年齢層は高く、かなり高齢な方もいました。若い方はチラホラとという感じ。だけど、静かにしっかり聴かせてくれます。
途中の15分の休憩も良い塩梅ですよね。おかげで途中で入退場する人もほぼおらず、ステージに集中できました。

おそらくナベサダさんは常に、ある一定の覚悟を持って音楽活動をされているのだと思います。
体調を維持するための準備も相当でしょうし、やっぱり93歳というご高齢な中でのハード・スケジュールは大変です。

予定表見たら、北見公演が終わったら1週半後に東京で1公演やって、9月の後半は中国地方を回る。
その後も関東に戻ってきたかと思えば、中部地方に行き、また関東に戻ってきて数回の公演をこなして、
今度は九州でのツアーですからね。そして12月にはビルボード・ライヴが連日入っているというのは尋常じゃない。
くれぐれもお身体、気を付けて・・・と言いたいですね。まぁ、言われないでも気を付けているのでしょうけど・・・(笑)。

何気に最後に「また会いましょう!」と言ってステージを去れるなんて、やっぱりこれはスゴいことですよ!