ポルターガイスト(1982年アメリカ)
Poltergeist
郊外の一軒家で起こる、怪奇現象に悩まされる一家の姿を描いた大ヒットしたホラー映画。
当時、勢いに乗っていたスピルバーグが製作した作品で、確かにこれは当時としては斬新な内容だったでしょう。
タイトルになっている“ポルターガイスト”とは、騒々しい心霊現象とでも日本語で訳されるようですけど、
この映画で描かれた心霊現象というか...超常現象は、確かに荒々しくも騒々しく随分と表沙汰に派手にやっている。
この辺は心霊現象の在り方が欧米と日本ではまるで違うようで、日本はどちらかと言えば、
心霊現象を「背筋が凍るような・・・」と形容することからも分かる通り、静寂の中にヒヤリとさせられるような
騒々しさとはまるで対極にあるような感覚である。何を怖いと感じるか、ということ自体が正反対であることに驚きです。
まぁ、かつてはハリウッドでも『エクソシスト』で“ポルターガイスト”のような超常現象は描かれていましたが、
ここまでストレートに堂々と超常現象が発生しまくる様子を描いた映画というのも、かなり珍しいような気がしましたね。
まぁ、劇場公開当時から監督のトビー・フーパーが酷いアル中だったため、撮影現場では監督らしいことを
何一つできていなかったことを暴露されたり、製作だったはずのスピルバーグが大きく介入していたことが噂されたり、
色々と多くのゴシップが流れた作品でもあったわけですが、めでたく本作は世界各国でヒットするに至りました。
それは、このあまりにストレートというかピュアとも解釈できるくらい、超常現象を真っ直ぐに描いている点で
ここまで実直に超常現象を描いているのを観ると、逆に新鮮に感じられるのも事実。調子に乗って3本の続編を
製作してしまったことは玉に瑕(きず)だが、これはこれで当時のハリウッドのセオリーであったので仕方ない面もある。
映画の内容が内容なだけに、こういうことも話題になりがちでしたが、
超常現象に見舞われる“消えた少女”であるキャロルを演じた子役のヘザー・オルークが本作を含めて、
このシリーズの続編にも出演したのですが、1988年に13歳という若さで急死したことも、ゴシップのネタとなります。
べつに本作は呪われた作品というわけではないと思うのですが、色々なゴシップが付いて回ったのは少し不運でした。
映画としては、まずまず面白いと思います。ショッキングさという観点では斬新さは感じられませんが、
トビー・フーパーが実際にどれだけまともに演出していたかはともかくとして、この時代なりに出来ることはやっています。
これはスピルバーグの力が大きかったのではないかと推察されますけど、
本作が相応の満足度だったおかげで、かなりヒットしましたし、“ポルターガイスト”という言葉自体が認知されました。
家族はおかしいと認識したら、娘を取り戻すためにも霊媒師に任せっきりにすることなく、真正面から闘う決断をします。
この相談先である霊媒師を演じたのが、76年の『ネットワーク』で最短出演時間でオスカーを獲得した、
ベアトリス・ストレイトでして彼女がまた、あんまり頼りになる感じではないというのが、映画を面白くさせていますね。
彼女が連れてきた仲間たちもあんまり強そうでもないし、実際にすぐに弱音を吐いてしまうので、まったく頼もしくない。
それでも、妙に子どもたちが屋外にある木を怖がっていたかと思えば、その木が家の中に倒れかかってきて、
子どもたちに襲い掛かってきたり、もの凄い渦巻く強風に吸い込まれるように家具や身体を持っていかれたりと、
映像的にはアトラクション性豊かな表現ができていて、当時の映像技術を考えると、これは先進的な表現だと思います。
これはスピルバーグの力が大きく、特にILMの技術力の賜物という感じではありますが、他には無い映像だったと思う。
どことなくファミリー映画のような雰囲気が色濃く残るのも、スピルバーグっぽさではありますが、
トビー・フーパーのファンには申し訳ないけど、トビー・フーパーの調子で演出していればここまで娯楽色豊かな
映画にはならなかったでしょうし、本作がここまでヒットして評価されることもなく、カルト映画になっていたかもしれない。
まぁ、それはそれで望むファンもいるけど、『悪魔のいけにえ』のような執拗なショック描写は本作に合わないでしょう。
それでも、映画の終盤は結構なトビー・フーパーっぽい演出が炸裂するところがあって、ここは見どころの一つ。
グロテスクな描写も無いわけではなく、鏡で皮膚に指がめり込んでいくシーンなど、それなりにやることはやっている。
チョット面白かったのは、上映時間が80分くらい過ぎたところで物語は一旦解決したような区切りを付けていること。
観客を一時的に落ち着かせてから、再び一気に襲い掛かるかのように畳みかけるクライマックスの攻防に至ります。
但し、映画を全編観ると感じますが、そういったトビー・フーパーのカラーはメインに据えることなく、
やっぱりスピルバーグのテイストが強く、むしろこっちがメインですね。そう思うと、やっぱり本作の撮影現場では
トビー・フーパーではなくスピルバーグがイニシアティヴをとっていたのだろう。なので、トビー・フーパーが機能不全で
実質的な本作の監督はスピルバーグだったというゴシップは、あながち間違いではないのだろうと思えますよね。
そういう意味では、本作がヒットしたおかげで第3作まで続編が製作されることになったことについては、
スピルバーグはどう考えていたのだろう?と気になりますね。続編にはスピルバーグは絡んでいないらしいですから。
しかし、問題の超常現象がなんで起こるようになったかという契機については、
人間のエゴが為した結果というのは妙に説教臭い(笑)。郊外のニュータウン開発にあたって、開発業者が元々あった
墓場を一方的に移転させて、突貫工事のように宅地化させて住居を作るというのは、かなりバチ当たりな行為ですね。
日本でも墓場に近いとか、もともとの土地のイメージが悪い場所の住宅街はなかなか売れないという
実例は数多くありまして、地震大国の日本であれば土地の地盤についても加わるなど、ルーツが原因で開発が
上手くいかなかったということもあります。さすがに“ポルターガイスト”が頻発しているという話しは聞きませんが(笑)、
開発の在り方というものを考えさせられますね。これはこれでスピルバーグなりの人間社会への警鐘でもあるのだろう。
一方で、映画の序盤に舞台となる住宅街を映して、一家の様子へとつながる導入部分があるのですが、
ここは買った缶入り炭酸飲料が“暴発”したり、隣家とテレビのチャンネルを巡って争いをしていたりと、
妙に本題に入るまでが無駄なエピソードの連続で冗長に感じられる面はある。これは脚本の問題も大きいだろう。
まぁ、スピルバーグ的には『未知との遭遇』をホラー映画にしたらどうなるか?くらいの感覚だったのかもしれない。
発想としては面白く、映画の出来もそんなに悪くはないのですが、今一つ突き抜けたものが感じられないのも事実。
ILMの特撮も悪くないですし、映画の終わり方もなかなか良いです。でも、なんかやっぱり突き抜けたものが欲しい。
この時期のスピルバーグが絡んだ映画なので、必要以上にハードルが高くなってしまっているのかもしれませんが、
それでも映画としての決定打があるように感じられなかったのは、この映画の物足りなさを象徴している気がします。
何か一つでもいいので、インパクトあるシーン演出で観客にガツン!と一発かますくらいの“ハッタリ”は欲しかったなぁ。
まぁ、ある種の事故物件を描いた映画に留まってしまったせいか、得体の知れない恐怖を煽る感じは無いですよね。
これは前述した『エクソシスト』との大きな違いかな。勿論、映画の方向性が違うので単純比較はできないですけど。
ただ、やっぱり...ホラー映画として必要な技術は結集した企画だっただけに、もっとガツン!と来るものが欲しかった。
それでも、軽く及第点レヴェルには達した映画と言っていいと思えるから、それはそれでスゴいことだとは思います。
それがスピルバーグのスゴさであり、スピルバーグらしい部分でもあると思う。これはなかなか出来ることではないです。
ちなみに、こういった“ポルターガイスト”と呼ばれる超常現象について、欧米では学術的に研究している
研究者がいるんですね。日本ではなかなか認知され難い分野ではあると思いますが、個人的にはビックリしました。
科学の分野では再現性というのが重視されますし、統計的に処理されたデータでなければ認められませんが、
この辺のデータ採りを真面目にやっているのかもしれませんね。ただ、どうやって体系化した学問にするのか・・・と
僕の中では幾つもの疑問もあるので、そのうちに機会があれば研究者の話しを聞いてみたいなぁと思いますね。
日本でも超心理学という学問があるみたいで、結構古くから研究していた人はいるらしいけど、
学問としては90年代以降に認知が広がったようで、僕は知らなかったのですが学会もあるようで正直、驚きました。
スピルバーグは本作や同じ年に製作した『E.T.』などで培った経験を生かしたのは確かで、
85年から続いたTVシリーズ『世にも不思議なアメージング・ストーリー』には、着実に生かされていると思いますね。
だからこそ...やっぱり本作はトビー・フーパーの映画を観るという感覚よりも、
スピルバーグの映画を観るって感じなんだよなぁ。そこが特にホラー映画好きからすると、賛否が分かれるところ。
どうしても、スピルバーグだとスプラッタ映画にはならないですしね。でもまぁ・・・本作にはそれが合っていたとも思う。
(上映時間115分)
私の採点★★★★★★★☆☆☆〜7点
監督 トビー・フーパー
製作 スティーブン・スピルバーグ
フランク・マーシャル
原案 スティーブン・スピルバーグ
脚本 スティーブン・スピルバーグ
マイケル・グレイス
マーク・ヴィクター
撮影 マシュー・F・レオネッティ
特撮 リチャード・エドランド
ILM
編集 マイケル・カーン
音楽 ジェリー・ゴールドスミス
出演 クレイグ・T・ネルソン
ジョベス・ウィリアムズ
ヘザー・オルーク
ベアトリス・ストレイト
ドミニク・ダン
オリバー・ロビンス
1982年度アカデミー作曲賞(ジェリー・ゴールドスミス) ノミネート
1982年度アカデミー視覚効果賞 ノミネート
1982年度アカデミー音響効果編集賞 ノミネート
1982年度イギリス・アカデミー賞特殊視覚効果賞 受賞