ブラザーサンタ(2007年アメリカ)
Fred Claus
全米での評価は芳しくなかったようですが、実は結構面白かった・・・というのが本音(笑)。
サンタクロースを弟に持つ、ニューヨークに暮らす色々と他人のせいばかりにして、
自分では何も義務を果たさないようなタイプの中年男を主人公に、故郷の北極でサンタクロースを勤めながらも、
実は“経費削減”のために窮地に陥っている弟のサンタクロースを助けようとする姿を描いた、少々ブラックなコメディ。
製作にジョエル・シルバーが加わっているというのが意外でしたけど、こういうタイプの映画も手掛けてますからね。
少しばかりシニカルなエッセンスもあったりして、良い意味でサンタの世界をアドベンチャーにしてしまっている。
まぁ、いろんな意見があるかとは思いますが...サンタはいます(笑)。この映画はそういった心に対して、
真っ向から対立するスタンスなのかもしれませんが、白々しいと言われようがナンだろうが、信じる心は尊いよね(笑)。
子分が子どものときには、あんまりそんなことを考えなかったけれども、今はサンタを信じる心の尊さを強く感じます。
サンタの兄は自堕落なトンデモ兄だったという設定自体が、奇想天外な映画ではあるのですが、
確かにしょうもない話しではあるけど(笑)、ベースとなっている御伽噺にブラック・ユーモアを上手く交えたなぁと思った。
監督のデビッド・ドブキンは『シャンハイ・ナイト』で規模の大きな企画を任されるようになって、
05年に『ウェディング・クラッシャーズ』で評価されて、同作でヴィンス・ヴォーンをキャスティングしていました。
ある意味では『ウェディング・クラッシャーズ』の延長線にあるような雰囲気ですが、コメディが得意なようですね。
本作もテンポ良くポンポンと進んでいくし、北極のサンタの町のメルヘンな雰囲気も含め、デザイン力のある人だと思う。
途中から、サンタの雇用主から派遣されたクライドというビジネスマン風の男が登場してきますが、
後にハリウッドでスキャンダルが取り沙汰されて実質的に追放状態となってしまったケビン・スペイシーが演じている。
ビジネスライクにサンタの仕事を評価し、サンタの“追い出し屋”として働くために悪知恵を巡らせる、言わば悪役だ。
映画のラストのクライドの心変わりは納得性に欠ける気もしましたが、彼にピッタリの役どころではあったのでしょう。
どうしても、ケビン・スペイシーの芝居って、どこか嫌味に感じられる部分があるように思ってまして、
これ見よがしな芝居がどうにかならないかと思っていた作品もあるのですが、本作は実に良い塩梅だったと思う。
コメディへの出演はそう多くはないのだけれども、彼自身、こういう映画がまんざら嫌いではないのではないだろうか。
主人公のフレッド演じたヴィンス・ヴォーンのダメ男ぶりは賛否が分かれるところでしょうけど、
彼が強制的に乗せられるニューヨークから北極の町への向かう、トナカイのソリは確かに恐怖の乗り物でしかない(笑)。
そういう現実に置き換えたことを考えてしまうのは大人の悪いところですが(笑)、あんな乗り物は僕も乗れないな(笑)。
サンタクロース役はポール・ジアマッティが演じているのですが、過去、何本かの映画でサンタクロースを
描いてきましたが、本作のポール・ジアマッティは肥満なオッサンであんまり清潔感がなく見えるのが印象的でした。
まぁ、サンタはイケメンではないでしょうけど(笑)、ポール・ジアマッティはフツーなオッサンの感覚が突出していますね。
ヴィンス・ヴォーンがプレゼントを持って、世界中の子どもたちに配るということ自体、イメージしにくい(笑)。
ただそれ以上にポール・ジアマッティの運動不足の感じのする普通のオッサン感が、なんだかスゴいインパクト(笑)。
サンタが運動不足で生活習慣病に苦しむ、どことなく清潔感の無い中年オッサンであることに加えて、
そんなサンタの弟は性格に難があり、大人になり切れないようなオッサンであるという、人間的な魅力に欠ける2人。
そんな凸凹な2人の中年のオッサンが、世界中の子どもたちの夢を叶える夜であるクリスマスに孤軍奮闘します。
そんなサンタとサンタの家族を描くこと自体、珍しい映画と言えますが、メルヘンっぽさを忘れてないのは良いですね。
加えて言うなら、募金を装った詐欺行為で逮捕されてしまったダメ弟のためにと懇願されたとは、
あのサンタクロースが弟の保釈金を支払うというのはシュールで面白い。こういうさり気ないギャグが面白かった。
これで恩を売られた弟はサンタの仕事を手伝うわけですが、それが“いい子”と“悪い子”の仕分けというのもシュール。
ただ、そんなシュールさがギャグとして行き過ぎたところがあると、現代の感覚では感じ取られるかもしれません。
“エルフ”と呼ばれる小人たちの造形もそうですし、謎に日本人レストランが狂乱状態で主人公の恋人が放置されて、
激怒するというギャグのネタに使われているのは、観る人が観れば不快に感じられるという意見は普通にあるだろう。
全てのギャグが万人ウケするものではないというのが、また本作の特徴なのかもしれませんけどね・・・。
まぁ、03年にコーエン兄弟が製作総指揮を務めた『バッド・サンタ』というブラック・コメディがありましたから、
この時期にサンタクロースをモチーフにした喜劇がありましたけど、本作は『バッド・サンタ』ほどはブラックではない。
どちらかと言えば、ファミリーで観れる内容に軸足を置いている感じで、全体的にはバランスのとれた仕上がりだ。
欲を言えば、せっかく主人公の恋人役でレイチェル・ワイズがキャスティングされたにも関わらず、
彼女があまりに目立たず、サンタの国へ行っても彼女を怒らせて、帰ってしまうという展開ではあまりに可哀想。
こういう部分も含めて、作り手がもう少し気を配ってくれていれば映画はもっと良くなっていただろうと思えてしまう。
やっぱり監督のデビッド・ドブキンはコメディが得意なのでしょうけど、恋愛を描くことは今一つなのかなと思える。
それにしても、レイチェル・ワイズ演じる恋人をつまらないことで怒らせるだけなら、無理して北極に終結する一人として
描く必要はなかったのではないかと思えてならなかった。彼女のような女優さんを、こういう扱いにしたのは勿体ない。
それから、もう一つ感じたのはキャシー・ベーツ演じるサンタ兄弟の母親の存在ですが、
いくら主人公がダメな兄とは言え、あそこまで露骨に兄にツラく当たる理由がよく分からなかったんですよね。
最終的には親子愛を匂わせる終わり方をしている点では、ウェルメイドな感じで良いとおもうのですが、
どうして兄には明らかに態度を変えるくらい冷淡に接するというのは、もう少し納得性ある描き方をして欲しかった。
あまりに一方的な感じだったので、観客から見ても違和感は拭えないだろう。これでは母親の印象が悪いままだ。
だからこそ、親子の和解を匂わせるラストに突如として帰結するというのは、あまりに無茶な力技に見えてしまう。
淀みのない映画の終わり方をして欲しかったというのが本音なので、この親子関係はもう少しブラックさを抑えて、
中年のオッサンにはなってしまったけど、真の親子関係を築けるような雰囲気で映画を終わらせて欲しかったかな。
弟が性格的にヒネくれてしまったことには、母親が弟優先で育ててしまったことも要因にはなってますからね。
ここは本作のポイントの一つでもあるので、親子の再生ということは本来的にはテーマの一つになるべきだったはず。
しっかりと描いていれば、キャシー・ベーツももう少し印象は良くなったはず。なんだかチョット可哀想な感じに見える。
北極のサンタの町では多くの“エルフ”たちを雇用して、世界中の子どもたちからのオーダーを受けて、
流れ作業でオーダーメイドでプレゼントを製造して梱包しているというメルヘンな“ワンダーランド”ぶりが印象的だ。
効率が良さそうに見えて、実は効率が悪そうだから(笑)...クライドがメスを入れにくる理由が分かる気がする。
とまぁ・・・つい大人の観点から見てしまうのでイヤなもんですが(笑)、上手く世界観が表現されていると感じました。
ちなみにサンタクロースはフィンランド生まれということだったはずと思いますが、
本作では具体的にフィンランドという国名が出てきませんけど、この辺は大丈夫なのかな?と心配になった(笑)。
と言うのも、フィンランドってサンタクロースを半ば観光資源としていますが、映画の中では北極としか表現してません。
それから、どんな人脈があったのは知りませんが...主人公がヒネくれたことでセラピーを受けるシーンで、
何故かシルベスター・スタローンの実弟である俳優のフランク・スタローンや、クリントン前大統領の実弟である
ロジャー・クリントン、俳優一家でもあるボールドウィン一家の末弟であるスティーブン・ボールドウィンが本人役で
セラピーを受ける同士としてゲスト出演している。これはこれでアメリカのセレブ界を知る人に向けたギャグなのだろう。
やたらと気性が荒く、途中でスティーブン・ボールドウィンが怒り始めるというのは妙に生々しく、
実際に俳優業としては低迷し始めていた時期であり、本作の後にケビン・コスナーと私生活で揉めて裁判を起こしたり、
結構なトラブルの渦中の俳優として知られるようになってしまい、プロダクションも起用しづらくなってしまった気がします。
(裁判で敗訴してしまい、挙句の果てには税金の滞納で逮捕までされてしまいましたからね・・・)
あっ、繰り返しになりますけど映画は面白いですよ。ファミリーが安心して観れるというには、少々ブラックですけど・・・。
(上映時間115分)
私の採点★★★★★★★★☆☆〜8点
監督 デビッド・ドブキン
製作 ジョエル・シルバー
ジェシー・ネルソン
デビッド・ドブキン
原案 ジェシー・ネルソン
ダン・フォーゲルマン
脚本 ダン・フォーゲルマン
撮影 レミ・アデファラシン
編集 マーク・リボルシー
音楽 クリストフ・ベック
出演 ヴィンス・ヴォーン
ポール・ジアマッティ
レイチェル・ワイズ
ケビン・スペイシー
キャシー・ベーツ
エリザベス・バンクス
ミランダ・リチャードソン
ジョン・マイケル・ヒギンズ
クリス・“リュダクリス”・ブリッジス