ブラッド・ダイヤモンド(2006年アメリカ)
Blood Diamond
これは内戦続くシオラレオネで実際に発生した、ダイヤモンドを巡る争いを描いたサスペンス・アクション。
シエラレオネの反政府勢力であるRUFと呼ばれる集団が、自国民たちにもやりたい放題やっている連中で
「シエラレオネのためにやってんだ!」と言いながらも、残酷な虐殺行為を繰り返し、ダイヤモンド争奪戦による
利権を取ろうと自国民たちを半ば奴隷のように扱って、その凶行を真正面から包み隠さずに描いているのが衝撃的だ。
特に映画の序盤では、生贄のように子どもたちの腕を容赦なく切り落とすというショッキングなシーンもあって、
それを直視し難い人たちにとってはキツい内容の映画だと思うけど、これはこれで現実を反映した作品に感じます。
正直言って、エドワード・ズウィックがここまで真に迫った演出をするとは思ってもいなかったので、
この衝撃的な内容は意外でしたけど、本作は03年の『ラスト サムライ』よりもずっと良い仕上がりだなぁと思いましたね。
2時間を大きく超えるヴォリュームなので、結構観るのに根気が必要ですが、本作の方が出来はずっと良いと思います。
これだけの映画が撮れるというのは、予想外な収穫だったので、またまたこれに匹敵する映画を期待したいですね。
需要があるから供給があるというのは真理ですが、映画で描かれるのは“ピンク・ダイヤモンド”という
希少価値の高いダイヤで強制労働させられていたソロモンが発見して、内密に現物を隠したもののソロモンも
シエラレオネの政府軍に捕まってしまい発掘現場から離れてしまう。そんな“ピンク・ダイヤモンド”発見の噂を聞いた、
ダイヤの密売を行っている傭兵のアーチャーに目を付けられ、再び発掘現場に戻る姿を緊張感いっぱいに描きます。
この手の映画のディカプリオはもはや定評があるような気がしますけど(笑)、本作も大奮闘ですね。
一緒に発掘現場へ同行する“ピンク・ダイヤモンド”を見つけた張本人のソロモン役のジャイモン・ハンスウも良いです。
やっぱり、映画で描かれるRUFの存在感があまりに強烈で、映画の序盤にかなりキツい描写を続けたおかげで、
映画の最後の最後まで、それがしっかり効いている。やっぱり、「RUFに見つかったらどうしよう・・・」とか、
「どうやってRUFの監視をかいくぐろう・・・」とか思い悩むのでキー・ポイントとなっていて、終始、緊張感でいっぱいだ。
野戦的な内容がずっと続くのですが、その中で傭兵のアーチャーが目を付けたのがジェニファー・コネリー演じる
女性ジャーナリストのマディー。彼女は彼女でしたたかなところがあって、アーチャーに取材しようと近づくのですが、
自分のスタンスに批判的な取材をされることに危機意識の高かったアーチャーは、彼女に気を取られながらも警戒する。
この塩梅がなんとも絶妙で、アーチャーとマディーの関係も近づきそうで近づかないという
ややプラトニックな関係っぽく描かれるのですが、張り詰めた緊張感の中で2時間30分近く続く映画の中では
ジェニファー・コネリーは紅一点な存在として機能していて、個人的にはもっと彼女の出番が欲しかったとも思いますが、
それでも絶妙に映画の終盤にも彼女の存在が効いていて、上手く構成された映画だなぁと実感させられましたね。
そう、ディカプリオ主演なのでついロマンスも期待しちゃうところはあったと思うのですが、
ここはアーチャーとマディーがイージーに恋愛関係になっちゃうような展開にはしなかった作り手の冷静が光りますね。
RUFのことを随分と一方的に描いているのですが、強制的に拉致した子どもたちを洗脳して教育する恐ろしさ。
中には生贄的に殺されてしまう子どももいるし、生かされた子どもたちはRUFの構成員としての教育を受けている。
ソロモンの子どもも拉致されて、ライフルを持たされて射撃の訓練を日常的にやらされ、戦闘員としての洗脳も受ける。
その中では、身柄を拘束した一般人や政府軍の兵士を敢えて銃撃させて殺害させたりして、
人間を撃つということに対する抵抗感を無くさせてしまう。映画の終盤に描かれていますが、ソロモンの息子も
しっかりと洗脳され教育されたことで、自らの父親ですらしっかり認識できなくなってしまい、ソロモンを“敵”だと言う。
そんな息子の変貌ぶりにショックを受けつつも、それでも息子を保護して連れ帰ろうとするソロモンの家族愛がスゴい。
アーチャーからすれば、ソロモンが息子を奪還したいという希望を“利用”して、「RUFの拠点に行くしかない!」と言い、
ソロモンを感化させますがアーチャーは当初は息子の安否はどうでも良かったのだろう。しかし、ソロモンの強い愛を
目の当たりにして途中からはソロモンのことを理解し始める。対立しながらも危険地帯に潜入し、幾度となく命の危険に
晒されながらも、次第にアーチャーとソロモンの間には不思議な友情が芽生え、お互いに助け合いながら進んでいく。
一方で、映画は良く出来てはいるのですが、やや欲張り過ぎたなぁという部分はあったと思う。
映画のラストで、ソロモンが安保理委員会の場で演説する機会をもらうシーンなんかは描く必要がなかった気がする。
まぁ、実際に演説するシーンは無かったけど、その場に立つシーンは時代が動く様子を描きたかったのでしょうけど、
時代が動く瞬間を描きたかったのであれば、演説シーンはしっかりと描くべきだったと思うし、アーチャーとソロモンの
物語にフォーカスしたかったのであれば、安保理委員会の場自体を匂わせるように描く必要はまったく無かったと思う。
タイトルになっている“ブラッド・ダイヤモンド”とは、紛争当事者の資金源となっている現実を象徴した
「血塗られたダイヤモンド」を意味する言葉であり、国連安保理の場で紛争地帯で産出されたダイヤモンドは
サプライチェーンが取引しないようにして、外貨が流れ込んで内紛が長引かないようにコンセンサスがとられている。
これはシエラレオネだけの問題ではなく、アフリカ諸国で噴出した問題だったために大きな国際問題となりました。
だからこそ、この安保理でのソロモンの証言を描くか描かないかは、映画の方向性を決める上で重要だったと思う。
エドワード・ズウィックは本作を社会派映画として描きたかったのだろうけど、僕は最後まで観た感想としては
アーチャーとソロモンの不思議な関係の方がメインになっていて、映画の途中では完全に社会派な部分が失われ、
最後は家族愛の話しになっていたので、個人的には安保理委員会の描写はテロップで流す程度で良かったと思う。
それからソロモン自らロンドンに出て、“ピンク・ダイヤモンド”の売買のために企業の重役と接触するシーンは
もはや取って付けたようにしか見えず、無理矢理に社会派映画にシフトさせた力技に見えた。しかし、これが不発。
必死に社会派映画にシフトさせようとしても、映画全体のバランスを欠いてしまう方向にしか見えなかったんだよなぁ。
これが何となくアンバランスに感じられる理由であって、作り手は少し欲張り過ぎたかなぁと感じてしまった。
決して映画として致命的なことではないけれども、社会派なテーマよりもドラマ部分の方が魅力的に磨かれたと思う。
だからこそ、もう完全にドラマにシフトして良かったと思うんですよね。ここだけは割り切っちゃっても良かったと思います。
まぁ、本作の背景に興味がある人からすれば逆な意見にはなるんだろうなぁと思う。
要するに社会派な映画としての期待が大きい人にとっては、むしろアーチャーとソロモンのドラマの方が蛇足に見える。
でも、映画としては途中から完全に“そっち”に行っちゃってますからね。僕には社会派映画です、と言われた方が
少々無理がある構成としか思えないんですよね。作り手の意図は社会派なメッセージの方にあったのでしょうけどね。
とは言え、アクション映画としてはまずまずの臨場感と緊張感で、この仕上がりは悪くないと思いますよ。
前述したように映画の序盤で執拗に描かれたRUFの残酷な蛮行の数々が、最後まで支配的に機能しているのが良い。
しかも、アーチャーが慕う将軍が率いる部隊の追撃、そしてRUFの抵抗の激しさなど迫真に迫った良いアクションです。
そして、そういったアクションのスケール感を演出するのに十分なロケーションの素晴らしさも際立ちますね。
この辺はさすがはハリウッド資本の映画だなぁと感心しました。正直、こういう仕事は他国のスタジオはマネできない。
予算もそれなりに要した作品でしょうし、これだけのスケール感を出すのは容易なことではなく、見事な仕事ぶりです。
結局は戦争にしても、紛争にしても資金と技術が必要なので色々と関連産業が活発化します。
昨今の中東情勢を見ていても、オイル・マネーが軍需産業や外貨獲得に流れ、より武装資金に回される構図でしょう。
挙句の果てには、ホルムズ海峡封鎖の件で世界が困ったように、石油は中東依存度が高いからこそ狙われますよね。
ホルムズ海峡封鎖によって、オイルタンカーが通れなくなるからこそ世界は困るわけで、通行料が話題となりました。
この映画で描かれた紛争ダイヤモンドは、今や紛争オイルと言わんばかりの現実になっていて、
常に戦争継続、戦争激化のために貿易が利用されるわけですね。なかなか世界から戦争や紛争が無くならないので、
こういう国際問題は無くなりませんが、今やダイヤモンドよりも石油が流通しない影響の方が大きいような気もします。
そんなことをも考えさせられるメッセージを含んだ作品ではありますけど、見応えのある質の高いアクションだと思う。
ちなみに今は“キンバリー・プロセス”というダイヤモンドの認証制度の確立されていて、紛争に関係しないダイヤを
認証するスキームらしいのですが、これはこれで認証取得にお金が動いているんじゃないの?と疑問には思うが・・・。
(上映時間143分)
私の採点★★★★★★★★☆☆〜8点
監督 エドワード・ズウィック
製作 ジリアン・ゴーフィル
マーシャル・ハースコビッツ
グレアム・キング
ダレル・ジェームズ・ルート
ポーラ・ワインスタイン
エドワード・ズウィック
原案 チャールズ・リーヴィット
C・ギャビー・ミッチェル
脚本 チャールズ・リーヴィット
撮影 エドゥアルド・セラ
編集 スティーブン・ローゼンブラム
音楽 ジェームズ・ニュートン・ハワード
出演 レオナルド・ディカプリオ
ジャイモン・ハンスウ
ジェニファー・コネリー
マイケル・シーン
アーノルド・ボスルー
カギソ・クイパーズ
デビッド・ヘアウッド
ベイジル・ウォレス
2006年度アカデミー主演男優賞(レオナルド・ディカプリオ) ノミネート
2006年度アカデミー助演男優賞(ジャイモン・ハンスウ) ノミネート
2006年度アカデミー音響編集賞 ノミネート
2006年度アカデミー音響調整賞 ノミネート
2006年度アカデミー編集賞(スティーブン・ローゼンブラム) ノミネート
2006年度ナショナル・ボード・オブ・レビュー賞助演男優賞(ジャイモン・ハンスウ) 受賞
2006年度ラスベガス映画批評家協会賞助演男優賞(ジャイモン・ハンスウ) 受賞
2006年度ワシントンDC映画批評家協会賞助演男優賞(ジャイモン・ハンスウ) 受賞
2006年度セントルイス映画批評家協会賞助演男優賞(ジャイモン・ハンスウ) 受賞