ビバリーヒルズ・コップ3(1994年アメリカ)

Beverlyhills Cop V

87年の第2作以来、名刑事アクセルが帰ってきたシリーズ第3作。
今回はニセ札作りを行なうロサンゼルスの遊園地を舞台にアクセルが暴れる姿を描く内容になっている。

監督はエディ・マーフィの盟友ジョン・ランディスで、息がピッタリなのかと思いきや、
正直、ジョン・ランディスはこういうアクション映画には合わなかったですね。思えば、これまでアクション映画が
得意なディレクターがメガホンを取っていて、ジョン・ランディスのようなコメディ寄りの人は初めてでしたね。

そもそもニセ札作りを遊園地の警備員たちがやっていて、デトロイトまで悪さしに行ったという、
映画の設定自体に無理があったと言わざるをえないし、色々と内容的に悪い意味で無茶苦茶にし過ぎてしまった。

本作も映画の冒頭からお約束のアクション・シーンがあって、カー・チェイスにしても銃撃戦にしても、
それなりに臨場感があって悪くないのですが、舞台がロサンゼルスに移ってからは、もうシリーズの良さが無くなる。
当時、エディ・マーフィも興業的には失敗した作品が続いていた影響もあって、この企画は彼にとってもカンフル剤で
シリーズの人気にあやかろうとしたのではないかと思えるのですが、もう少し企画段階からよく練って欲しかったなぁ。

コメディ寄りにしたいのだろうけど、アクセルのギャグは明らかにパワー不足な感じで、
何もかもが良い方向に進まない。アクションも観覧車を使ったアクセルの孤軍奮闘が印象に残るくらいで、
テーマパークを舞台にした良さというのが何も生きていない。ほとんどが地下室に潜ってのアクションに終始してしまう。

後年にエディ・マーフィ自身が本作のことを酷評していたのも後押ししてしまった気がしますが、
全米では興行収入は芳しくなく、エディ・マーフィの勢いに陰りが見えてしまったことを象徴するような作品になりました。

やっぱりリタイヤ生活を送っているという設定なのは仕方ないにしろ、ジョン・アシュトン演じるタガートが
一切出てこないというのは寂しいし、アクセルが相手にする悪党どももあんまり強いようには観えないのも寂しい。
それゆえか、アクセルも事件が解決するまでダラダラとやっているように観えてしまうし、どうせならマシンガン・トークで
エディ・マーフィのファンにサービスするくらい、ギャグに100%寄った内容にしてしまうなど、大胆さがあっても良かった。

どのみち、第3作ともなればマンネリ化することは避けられなかったでしょうから、
ジョン・ランディスとエディ・マーフィが画策して、好き放題やってしまった方が個性ある映画に仕上がっただろう。
結局、この映画の悪い意味での中途半端さが最後まで足を引っ張ってしまっていて、どうにも盛り上がらなかった。

前作までは、いざ敵とのアクション・シーンになればシリアスでソリッドな感覚のある演出にはなっていましたからね。
それが本作になると、コメディ・パートがダラダラと長くなってしまったせいか、全体にメリハリが感じられない。
しかも、ギャグに“全振り”したかと言うと、そういうわけでもなく中途半端。こうなってしまうと、前作までの良さが無い。

それからもう一つ言えば、映画で描かれるロケーションとしてビバリーヒルズらしさが希薄だったのも残念。
もっとセレブリティの生活に土足で入り込むように、アクセルが暴れまくるという荒々しさとギャップが欲しかったし、
結局、そういった楽しさを表現できていた第2作までの流れを踏襲しないと決断をしたことが、足枷となった気がする。

ちなみにジョージ・ルーカス、ジョー・ダンテ、ジョン・シングルトンら映画監督がカメオ出演していて、
驚かされるくらいに豪華な映画ではあるのですが、それらもほぼほぼ生かされることなく“通り過ぎて”しまう感じ。

そうなってくると、エディ・マーフィのギャグも盛り上げにならないし、クライマックスのアクションも今一つ。
特に本作では新キャラとして、ヘクター・エリゾンド演じるロス市警の刑事が登場してくるのですが、彼も目立たない。
ヘクター・エリゾンドは名バイプレイヤーなので、他の作品ならばもっと良い仕事をするはずなのですが、物足りない。
ジョン・ランディスにそれぞれのキャラクターを引き立たせようとする演出がまったく無かったというのが致命的でしたね。

テーマパークを舞台にしたアクションも、テーマパーク全域を舞台にして次から次へとアクションを
展開させるようなシークエンスがあるならまだしも、地下室に入ってのアクションが主となってしまうせいか、
空間的なスケールを感じさせるものではないし、べつに遊園地が舞台でなくともいいようなアクションに終始してしまう。
この地下室でのシーンも実在するアトラクションを使っているらしいけど、それもどことなくチープに見えてしまうのが残念。

しかも、犯人グループがやっていることはコピー機を使ったニセ札作りというのが支離滅裂で
そこにFBI捜査官がアクセルに事あるごとに絡んできて、犯人グループを泳がせているという主張も話しに無理がある。
しかも、それをアクセルも信じちゃっているという納得性の無さが、映画の信憑性を疑わせる結果になってしまっている。

結局、本作が大失敗になってしまったために第4作の企画が立ち上がるたびにエディ・マーフィも尻込みしてしまい、
何度も続編製作の話しが流れてしまいましたが、2024年にNetflixの出資でついに第4作の製作が実現しました。

ジョン・ランディスは80年代の勢いが完全に失速してしまい、90年代になると完全に低迷してしまいました。
元々はコメディに関しては定評があったジョン・ランディスですが、本作はその低迷ぶりを象徴する作品ですね。
ジョン・ランディスも人気シリーズの続編を手掛けることで復調を期待したのかもしれないけど、払拭できなかったですね。

結果論と言われるかもしれないけど、やっぱり本シリーズはアクションに寄った作品にした方が賢明なのでしょうね。
そもそも、ジェリー・ブラッカイマーとドン・シンプソンが離れてしまったことで、映画の軸も失ってしまったようです。
そう考えると、この続編の企画自体に無理があったと言わざるをえないのだけど、少なくともビバリーヒルズの邸宅が
並ぶ環境で暴れ回るアクセルが観たかったし、遊園地だけではなく市街地でのアクションが極めて少ないのは寂しい。

まぁ、こういう第3作になってしまった以上はエディ・マーフィも第4作にえらく慎重だった理由はよく分かる気もする。

心なしか、ナイル・ロジャースが音楽を担当しているのですが、いつものテーマ曲も目立たない感じで寂しい。
やっぱり『ビバリーヒルズ・コップ』シリーズの音楽と言えば、シンセサイザーの軽快なメロディが響く“あれ”じゃないと。
あの曲を聴くと、アクセルのアクションが観れるというワクワクする期待感を持たせる雰囲気が出来上がりますからねぇ。

そういった“合図”が無くなってしまったのも寂しく、手堅く第3作を撮りたかったのかと思いきや、
内容的には全然手堅くなくって、前作までのスタッフが一掃して、独自な第3作にしようとして失敗したということかと。
(本作の脚本を書いたスティーブン・E・デ・スーザはアクション映画のシナリオばかり書いてきた人ではありますが・・・)

製作費がそれなりにかかった作品で、7年ぶりの続編ということもあってか、
劇場公開当時は日本でもそれなりに大々的に宣伝されていた作品で、全国で拡大公開されていましたけど、
全米では不評からくる興業的失敗があり、日本での評判も芳しくなかったことから、シリーズでも不人気作となりました。
これは仕方がない結果と言えばそれまでですが、個人的にはローズウッド刑事が女性と一緒に閉じ込められたり、
それなりに見せ場が用意されていたことは嬉しい部分ですし、まったく見どころのない作品とまでは言えないと思う。

ジョン・ランディスをはじめとして作り手には、新たなシリーズを創出しようというコンセプトがあったのだろうが、
それが結果的に前2作の良さを失わせてしまうこととなり、一方で思い切って新たな方向に向けようとする意図自体が
中途半端なものになってしまい、映画が盛り上がりに欠けるものになった。これはシリーズの難しさでもあると思いました。
本シリーズは作品ごとに監督が交代しているので、シリーズ通しての一貫性を持たせることはとても難しいと思います。

欲を言えば、警察署内の腐敗やセクショナリズムの難しさをストーリーに絡めてきても良かったと思う。
前2作まではそれがあったのですが、前述したタガートやボゴミルが退場してしまったことで、それが無くなってしまった。

型破りな刑事アクセルという設定だからこそ、警察署内でも異端児なアクセルがどうやって活躍するのか、
という観点が無くなってしまうとシリーズの大きな“武器”が無くなってしまう。だから、いっそのこと...ローズウッドが
警察署内で板挟みになって困ってしまうとか、何でもいいので警察署内でも厄介者のアクセルという位置づけが欲しい。
ヘクター・エリゾンド演じるフリント刑事にそれを象徴したかったのかもしれないが、彼だけではそれが表現し切れない。

とは言え、Netflixがパラマウントから権利を買い取って製作した第4作については、
つい先日観ましたけど原点回帰した部分もあって、この第3作よりはだいぶマシな出来になっていて安心しました。
良くも悪くも、この第3作の失敗が色々と慎重にやろうというムードにさせたことが大きかったのではないかと思います。

ただ、こういう企画を大手のスタジオが手掛けなくなっていることが、時代の流れを感じさせますがね・・・。

(上映時間103分)

私の採点★★★★☆☆☆☆☆☆〜4点

監督 ジョン・ランディス
製作 メイス・ニューフェルド
   ロバート・レーメ
脚本 スティーブン・E・デ・スーザ
撮影 マック・アールバーグ
音楽 ナイル・ロジャース
出演 エディ・マーフィ
   ジャッジ・ラインホルド
   ヘクター・エリゾンド
   ジョン・テニー
   ティモシー・カーハート
   テレサ・ランドル
   ブロンソン・ピンチョット
   ジョン・サクソン
   アラン・ヤング

1994年度ゴールデン・ラズベリー賞ワースト監督賞(ジョン・ランディス) ノミネート
1994年度ゴールデン・ラズベリー賞ワースト・リメーク・続編賞 ノミネート