愛と青春の旅だち(1982年アメリカ)

An Officer And A Gentleman

80年代を代表する恋愛映画の一つで、名優リチャード・ギアの初期の代表作となってます。
とは言え、僕には全体的に雑な作りの映画に観えてしまって、そこまで良い映画だなぁって感じではないんですよね。

監督は『カリブの熱い夜』、『プルーフ・オブ・ライフ』などのテイラー・ハックフォードで
本作のメガヒットのおかげでハリウッドでも地位を確立したわけですが、いろんなジャンルの映画を撮る人ですね。

まぁ、そういう器用な面が良い方向で機能することもあるのですが、本作のように恋愛を描かせても
そこまで光らないというか、あまり丁寧に作り込むことをしないせいか、映画が磨かれる感じではないですね。
本作もリチャード・ギアとデブラ・ウィンガーの若さに助けられていて、特段、2人の恋愛が盛り上がるという感じでもない。

あまりストーリーだけで映画の最終評価を下しちゃうというのも好きじゃないんだけど、
やっぱり映画の後半で主人公ザックの親友であったシドが、彼のガールフレンドから妊娠したかもしれないと
告げられて、故郷で待つ両親の許嫁との結婚を拒否して、軍を途中でリタイアしてでもガールフレンドに求婚して、
新たな幸せを求めようとしたところを、大きな落とし穴が待っていたというストーリー展開が僕には受け入れられない。

パイロット養成を目的とした施設ということもあってか、現実にああいったことはあったのだろうけど、
あまりに純粋な若い男にはツラ過ぎる恋愛になってしまう。それをまざまざと見せつけられるのは、あまりにツラいよ。。。

僕の勝手な思いではあるのだけれども、この手の映画はやっぱりキレイに終わらせて欲しいなんだよなぁ。
こういうエピソードが描かれると、どうしても後味が良くない。映画がキレイに収まり良く終わるという感じではなくなる。
それがスゴく勿体なくって、このシナリオ自体も評価されたようですが、どうしても自分には受け入れ難い物語でした。

こういう姿を描かれると、男も女も救われない。感情的にお互いをなじり合って、消耗し合う。
えてして、人間のやることってこういう残酷なことはあるんだけど、それでも恋愛映画で無理して描くことはないと思う。
ヒロインの友人であるリネット役を演じたリサ・ブロントは、完全に損な役回りになってしまったようにしか思えない。

そりゃ、ジョー・コッカーとジェニファー・ウォーンズがデュエットで熱唱した、
主題歌である Up, Where We Belong(愛と青春の旅だち)は何度聴いても良いですよ。でも、それが精いっぱい。
この映画のことを思うと、まずこの主題歌が思い浮かんでしまう。でも、それじゃ映画としてはダメだと思うんですよね。

テイラー・ハックフォードはチャック・ベリーやレイ・チャールズの映画の撮ったことがあり、音楽にはこだわりを感じる。
後に撮った『カリブの熱い夜』でも大ヒットしたフィル・コリンズの主題歌を使ったりと、音楽の使い方が上手いですね。

まぁ、オスカーも獲得しましたが...軍曹を演じたルイス・ゴセットJrは確かに好演ですね。
後に『フルメタル・ジャケット』なる、遥か上を行くような軍隊の訓練を描いた映画が登場してしまったがために、
本作のインパクトが弱くなったような気もしますが、この軍曹の高圧的な訓練はしっかりと描けていると思いました。
ここが本作のストロング・ポイントなのは間違いないので、主人公カップルの恋愛をもっとしっかりと描いて欲しかった。

なんだか若さゆえに愛し合うというのはいいけど、ザックの感覚から言ってもヒロインとの恋愛に
真剣になっていくというのが説得力が無いし、お互いの本音が見えづらいのでよく分からないうちにケンカしたり、
愛し合ったり2人の感情の揺れ動きが明瞭でないまま映画がドンドンと進行していってしまって、盛り上がらない。

リチャード・ギアの甘いマスク、デブラ・ウィンガーの初々しさというのは魅力があったので、
肝心かなめの恋愛の描き方がイマイチに終わってしまっては、映画が果たすべき役割を果たせなかった気がする。
この辺はテイラー・ハックフォードのアプローチがあまりに中途半端で、もっと違うアプローチをした欲しかったなぁ。

まぁ、そこから突如として卒業式を終わって、工場で働くヒロインを抱きかかえに行ってキスしたって、
映画のラストとしてキマったかと聞かれるとなんだか微妙な感じで、あのラストまでの過程も大事にいって欲しかった。

まぁ、80年代の恋愛映画のバイブルのようになったのは、主人公のザックに幾多の困難があって、
過酷な訓練の日々を乗り越えていく姿と、成就しそうにないと思われたヒロインとの恋愛がドンデン返しかの如く、
最終的に成就する方向に向かっていくことが上手い具合にシンクロすることで当時の若い人たちに響いたのでしょう。
確かに前述したヒロインを抱きかかえるシルエットは印象的で、それだけ訴求力あるショットだったということだろう。

それから、ザックの訓練シーンはそんなに悪い構成ではないのですが、ザック自身が苦労するよりも
周囲の訓練生の方が色々と苦労が待ち受けていて、前述した親友が低酸素トレーニングで失敗する話しだったり、
唯一の女性訓練生で乗り越え難い壁にトライするも何度も失敗し、ザックが一緒に壁を越えようとするシーンも印象的。
そう、何かと軍曹からツラく当たられてきた女性訓練生を演じたリサ・アイルバッハーを観ていると、応援したくなる。

こういったシーンがあるからこそ、卒業してラストに軍曹の階級を越えるというエピソードが映えるんですね。
軍曹からすると、何年も繰り返す“儀式”なのだろうけど、卒業生の立場から見ると忘れ難い経験であるでしょう。
数多くの困難があり、それらを学友たちと一緒に乗り越えてきたからこそ、それらは忘れ難い良い経験に変わる。

だからこそ、学校での訓練についてはザック自身にとっても何か一つでいいから、困難があっても良かったなぁ。
観ているとキツい訓練ではあるようには見えるけど、ザック自身がスゴい“壁”に当たっている感はないですからね。
やっぱり、何も苦にしないような訓練に見えてしまうのは面白くない。ザックにとっては軍曹が“壁”だったのですがね。

そういう意味では、ザックが軍曹に反抗的な態度をとって、懲罰として腕立て伏せをさせられたり、
親友の死という怒りを軍曹にぶつけて、血だらけになりながらも軍曹に拳闘を挑むファイト・シーンなどが見せ場になる。

このファイト・シーンは長々と描かれるわけではないけれども、実に“昭和”的な解決方法で面白かった。
本作の問題はこういったザックの成長に関わるエピソードの数々が、肝心かなめの恋愛劇と上手く絡まないこと。
僕にはザックとヒロインの恋愛が、どこか投げやりな感じで描かれているようにも見えちゃって、イライラさせられた。
どうしてもっと丁寧に描かないのか、そうでなければ軍曹との話しも光り輝かないことに作り手も分かっていたはずだ。
(どうでもいい話しですが...軍曹の股間蹴りが決定打になるというのは、少々反則に見えましたけどね)

同じようなことをもう一つ言うと、卒業式までの流れもあまりに急展開過ぎて、雑に見えてしまった。
いろいろと軍曹と衝突する中で、お互いに分かり合う部分もあっての卒業かと思いきや、いきなり卒業式になる。
軍曹からしても事務的に巣立つザックを見送ったのかもしれないが、あまりに端折って描き過ぎだと感じましたね。

この辺はテイラー・ハックフォードがもっとしっかりと制御しなきゃいけないところで、
前述したヒロインを抱きかかえるシルエットは良かったけど、作り手も「あのショットがあればいいだろう」みたいに
安易な考えで出来栄えに満足してしまったのではないかと邪推してしまう。まぁ、決してそうではないのでしょうけどね。

ザックにとっては厳しい訓練の日々の中で、女の子と遊ぶことは楽しみの一つではあったのでしょうけど、
ヒロインのことをいつしか本気で愛していることに気付きます。とは言え、ある意味では“関門”が待ち受けてました。

映画の中盤で描かれますが、ヒロインに招かれて彼女の実家でランチをするシーンがあります。
そんな食卓では彼女の義理の父親が、明らかにウェルカムではない態度で接し続けるので、何とも気まずい(笑)。
あれはザックにとっては拷問そのものでしたね。ある意味では、早い段階でその形勢が分かったことは良かったけど、
まだ年齢的に若いザックにとっては、結構、過酷な経験でしょう。こういう経験がザックの精神を強くするのかな・・・。

本作がブレイクのキッカケだったのかもしれませんが、80年代のデブラ・ウィンガーは輝いていますね。
本作もリチャード・ギアとのカップルは似合ってるし、透明感溢れる感じでありながも芯の強さを感じさせる女性像だ。
ザックとの性愛に溺れながらも、ザックの卒業が近づくにつれて心が離れていくことを悟っているような面持ちも良い。

良い部分もないわけではありませんが、それでも自分はあまり感心しないタイプの作品でした。
これはもっとしっかりと撮っていれば、もっと魅力的な映画になっていたと思われますし、あまりに勿体ない。
ヒットして商業的成功を収めた作品でもあったので、根強い人気はある作品ですが、自分には合わなかったなぁ。

仮に映画で描かれた通りなら、ザックが最後にヒロインの職場に乗り込んで行くなんて考えられないですよ。
そんな様子を「おめでとう」と涙ウルウルで見ちゃう同僚も変だし...要するに、説得力が弱いと感じちゃいましたね。

(上映時間124分)

私の採点★★★★☆☆☆☆☆☆〜4点

監督 テイラー・ハックフォード
製作 マーティン・エルファンド
脚本 ダグラス・デイ・スチュワート
撮影 ドナルド・ソーリン
音楽 ジャック・ニッチェ
出演 リチャード・ギア
   デブラ・ウィンガー
   ルイス・ゴセットJr
   デビッド・キース
   ロバート・ロジア
   リサ・ブロント
   リサ・アイルバッハー
   デビッド・カルーソ

1982年度アカデミー主演女優賞(デブラ・ウィンガー) ノミネート
1982年度アカデミー助演男優賞(ルイス・ゴセットJr) 受賞
1982年度アカデミーオリジナル脚本賞(ダグラス・デイ・スチュワート) ノミネート
1982年度アカデミー作曲賞(ジャック・ニッチェ) ノミネート
1982年度アカデミー歌曲賞 受賞
1982年度アカデミー編集賞 ノミネート
1983年度イギリス・アカデミー賞主題歌賞 受賞
1982年度ゴールデン・グローブ賞助演男優賞(ルイス・ゴセットJr) 受賞
1982年度ゴールデン・グローブ賞歌曲賞 受賞