ズーランダー(2001年アメリカ)

Zoolander

いやぁ、これはホントにくだらない映画だ(笑)。

いや、別に僕はこの映画を否定しているわけではなく、むしろこのくだらなさに感心しています。
まぁ如何にもベン・スティラーの趣味って感じの映画ではありますが、この映画は凄いエネルギーです(笑)。

映画の主人公はベテランの売れっ子男性モデル、デレク・ズーランダー。
彼はファッションモデル界で大活躍していますが、世代交代の時が突如やって来て、
彼のライバルであるハンセルに敗れてしまいます。一度は田舎の炭鉱に戻りますが、
まるで戦力にならず、父親に絶縁を宣言され、結局、彼はファッション業界へ戻ってきます。
ところがあまりに常識ハズレなズーランダーに目をつけたのは、売れっ子デザイナーのムガトゥ。
ムガトゥはズーランダーを洗脳して、マレーシアの首相を暗殺させようと画策します・・・。

あまりにくだらない内容ではあるのですが、
ベン・スティラーのあまりにキッチュなキャラクターがお見事で、映画を見事に盛り上げます。

ベン・スティラーのお仲間である、オーウェン・ウィルソンとウィル・フェレルが出演していますが、
彼らも決して悪くはないけど、やっぱりこの映画の決定打はベン・スティラーでしょう。
彼の表情一つ一つが、驚くほどツボを押さえた上手いんですよね(笑)。

そして本作はベン・スティラーの豊かな人脈がモノを言っている映画で、
クリスチャン・スレーターやキューバ・グッディングJrらがインタビュー・シーンに登場してきてビックリなのですが、
何よりビックリさせられたのは、映画の中盤にある“ウォーキング勝負”のシーンで、
どういったルールなのか、何が凄いのかよく分からない勝負(笑)の審判として、デビッド・ボウイが登場したこと。

しかも撮影当時、50代半ばという年齢であったにも関わらず、
相変わらずのカッコ良さで、文字通りのクールさ!
(このシーン一発で、デビッド・ボウイが映画の美味しい部分をさらっていった感じだ...)

まぁ内容が内容なだけに、こういったカルトな面白さが理解できるか否かで、
本作の印象は大きく変わってしまうでしょうが、おそらく好きな人はおそろしくハマるでしょう。

80年代のアメリカン・カルチャーが好きな人には自信をもってオススメできる作品です。
おそらくベン・スティラー自身が、もの凄く思い入れの強い時代なのでしょうね。
前述したデビッド・ボウイの『Let's Dance』(レッツ・ダンス)を筆頭に、
ワム!≠竍フランキー・ゴーズ・トゥ・ハリウッド≠ネど、次から次へと懐かしい曲が続きます。

特にワム!≠フ『Wake Me Up Before You Go - Go』(ウキウキ・ウェイク・ミー・アップ)が
バックで流れながら、ズーランダーたちがガソリンスタンドでガソリンをかけ合いながら、
テレビCMさながらのスローモーション処理の映像の中で、トンデモない結果になるシーンは大爆笑。

このコミカルさは、ベン・スティラーのコメディ・センスが光る部分ですね。

もう一つ面白かったのは、形態模写を行った、映画の終盤でパソコンを前に葛藤するシーンで、
ズーランダーとハンセルの2人がまるでチンパンジーのようにパソコンの前で暴れ始め、
まんま『2001年宇宙の旅』なギャグを違和感なく取り入れる要領の良さですね。

まぁ映画にとって、一連のギャグというのは、何ら大きな意味はないし、
無くとも映画は何一つ問題なく成立するのですが(笑)、それでも敢えて取り入れるスタイルが良い。
そしてくだらないことに、良さを見い出すスタンスを堂々と展開しているのには、思わず感心させられますね。
確かに過剰なのは感心しないけど、僕はこういったスタンスは嫌いじゃないんですよね。

ちなみにズーランダーを取材する女性雑誌記者を演じたクリスティーン・テイラーは
今や実生活でのベン・スティラーの妻とのことですが、キレイな女優さんですねぇ。
本作なんかでも、あまり大きく話題になることはありませんでしたが、やっぱり気を引く存在感ですね。

但し、僕は敢えて思うのですが...
この映画はもっと毒を持ち続けて欲しかったですね。どことなくブラックなニュアンスのある映画なのですが、
映画は最後の最後で、急激に模範的になってしまい、毒っ気が中途半端で終息してしまいます。
そう、かなり乱暴に言ってしまうと、僕はこの映画のラストがどうしても気に入らないのです。
僕の本音としては、この映画には最後の最後まで“くっだらない”内容であって欲しかったのですよね。

まぁこうして、最後までブラックに通せないというのは、良く言えばベン・スティラーの良心なのかもしれませんね。

大真面目にふざけるというのは、正に本作のような映画のことですね。
このスタンスは今までも数多くの映画でありましたけど、大真面目にふざけることの見本は本作にありますね。
そういう意味で本作は、ひょっとしたらベン・スティラーの一つの到達点になるのかもしれません。

本作以前にも彼は『リアリティ・バイツ』と『ケーブル・ガイ』などを監督していますが、
本作が一番、彼のコメディアンとしての能力が最も顕著に表現できているのではないでしょうか。

それと余談ですが、映画の中で幾度となく登場してくる“キメ顔”の存在が面白い。
「そもそもが“キメ顔”って何よ?」って話しではありますが、この“キメ顔”の演出が良いですね。
ホントに周囲が驚くほどの圧倒的な表情なんだろうなぁと思わず感心させられる説得力があります。

まぁくだらない映画が好きな人には是非ともオススメした作品だが、
シュールな笑いについていけない人には、少しキツい内容かもしれません。。。

(上映時間89分)

私の採点★★★★★★★★☆☆〜8点

監督 ベン・スティラー
製作 スチュワート・コーンフェルド
    スコット・ルーディン
    ベン・スティラー
原案 ドレイク・セイザー
    ベン・スティラー
脚本 ドレイク・セイザー
    ベン・スティラー
    ジョン・ハンバーグ
撮影 バリー・ピーターソン
音楽 デビッド・アーノルド
出演 ベン・スティラー
    オーウェン・ウィルソン
    クリスティーン・テイラー
    ウィル・フェレル
    ミラ・ジョボビッチ
    ジェリー・スティラー
    デビッド・ドゥカブニー
    ジョン・ボイト
    ドナルド・トランプ
    デビッド・ボウイ
    クリスチャン・スレーター
    ナタリー・ポートマン
    キューバ・グッディングJr
    ウィノナ・ライダー
    レニー・クラビッツ
    ビリー・ゼーン
    クローディア・シファー
    スティーブン・ドーフ