ヤングガン(1988年アメリカ)

Young Guns

確かにこれは少し風変わりな西部劇と言っていいかもしれない。
80年代に活躍した若手俳優たちを集めた作品で、当時、勢いのあったエミリオ・エステベスを主演に据えて、
彼が目指していたアメリカン・ニューシネマちっくなテイストを内包した、刹那的に生きる若者を描いた作品だ。

内容的にはかなり賛否が分かれる作品ではないかと思いますが、これは確かにありそうで無かったタイプの映画だ。

アウトローに生きる若者たちを集めて、面倒を看ながら彼らを教育しているイギリス人が殺され、
このイギリス人を慕っていた若者たちが蜂起して、イギリス人を殺害した腐敗した町の有力者に復讐の闘いを挑み、
計画性なく行動していた枯れたが追い詰められた結果、町の有力者の部下たちに包囲されてしまう姿を描きます。

このクライマックスの銃撃戦のシーンはなかなかの迫力で、本作最大の見せ場となっている。
西部劇とは言え、これは青春映画にカテゴライズされると思います。結構シリアスになっていく内容なんだけれども、
メインキャストたちの若さ炸裂した魅力ゆえか、映画はどこか最後に近づけば近づくほど明るい空気が流れる。

派手さは無いが、敵対する町の有力者を演じたジャック・パランスも悪くない悪党ぶりで印象に残るし、
映画の序盤だけの登場ではありましたが、荒くれ若者たちを囲っているテレンス・スタンプも存在感は弱くない。

が、しかし・・・映画はそこまで盛り上がらなかった。結論から言いますと...そこまで面白くはない。
具体的にここが・・・と言うのは難しい映画ではありますが、もっと一貫したものを持った映画であって欲しかった。
エミリオ・エステベス演じる主人公のウィリアムにしても、良くも悪くも芯の無い、支離滅裂なキャラクターなせいか、
それはそれで本作の特徴なのだろうけど...どうにも魅力的な主人公として磨かれず、映画自体も磨かれず終わる。

実際、本作の物語のモデルとなった実話はあったようで細部は異なっているようですが、
テレンス・スタンプ演じるジョン・タントールとは実在の人物であり、彼が殺害されたことがキッカケとなって、
1870年代後半に起こったリンカーン郡戦争という、大規模な派閥争いに発展したという歴史的事実があるみたいです。

正直、僕はこのリンカーン郡戦争自体を知らなかったのですが...でも、これが実話だとは驚きですね。

まぁ、ウィリアムをはじめとした若者たちは、言わば自警団をやっていたわけですが、
ボスでもあったタントールが派閥争いの中で殺されたことに憤慨して、彼らなりに復讐を誓っていたというわけで、
この自警団からの復讐を意識していた敵対勢力の悪党からすれば、町の警察やら軍隊も買収してしまっていて、
金で指示された連中はウィリアムら自警団をトコトン追い詰めて、挙句の果てには殺してしまおうとやりたい放題。

それでもウィリアムは堂々と闘うというストーリー展開なのですが、前述したように主人公に魅力が感じられない。
そして、エミリオ・エステベス自身が憧れていたであろう、若者のカリスマにもなり切れていないのが、とても残念だ。
これなら、彼自身が監督した86年の『ウィズダム/夢のかけら』の方がずっとカリスマ性ある、魅力的な作品でした。

この映画の主人公ウィリアムは伝説的な強盗である“ビリー・ザ・キッド”がモデルになっているらしい。
“ビリー・ザ・キッド”は21歳の若さで射殺されるまで義賊として名を轟かせていたのですが、どこか英雄的に描かれ、
数多くの映画で描かれていましたが、その中でも本作はとりわけ大胆に脚色された作品と言っていいでしょうね。

特にクライマックスの主人公の不意打ちとも観れなくはないシーンは妙にカッコ良く撮られていて、
これは敢えて“ビリー・ザ・キッド”をヒロイックに描きたかったのかもしれませんね。作り手の狙いの一つだったのかも。

このラストシーンで見せるジャック・パランス演じる悪党と、不意打ちのように現れるウィリアムのカット割りは良かった。
90年代からはカット割りを多用するディレクターが多くて、次第に意味のないカット割りがウザったく思えてたんだけど、
本作のように映画の最後にインパクトを持たせたいために使って、映画としての決定打を打つためなら効果的になる。
特にタントールを殺害され、それ以外にも様々な理不尽を見せられてきたウィリアムの復讐心を象徴するラストでした。

ウィリアムらの義賊が追い詰められた住宅での銃撃戦は、なかなかの迫力をもって描かれていますが、
この絶体絶命のピンチと思える状況から、どうして抜け出すかということについては、もっとキチッと描いて欲しかった。
仕方がない面もありますが、少々大雑把に撮られてしまった印象で、色々と端折られてラストシーンへつながっている。

と言うのも、“ビリー・ザ・キッド”は21歳で射殺されてしまうのですが、かなりの脚色がある映画とは言え、
これだけ追い詰められても死ななかったという運命なわけですからね。この家からの脱出は奇跡的なものであって、
町を牛耳る悪党に勝利して映画が終わるという寓話的なニュアンスを活かす上では、とても大事な部分だったと思う。

本作の続編である『ヤングガン2』はウィリアムの最期を描いた作品だとのことで、この第1作の後日談らしい。
そういう意味では本作だけで完結しているはずなので、この映画のラスト・シークエンスの描写はとても重要でした。

主演のエミリオ・エステベスは80年代に活躍した若手俳優グループの“ブラット・パック”でも、
デミ・ムーアらと並んで牽引する立場にあったリーダー格でしたが、80年代後半からは勢いを失っていきました。
前述した彼の初監督作品『ウィズダム/夢のかけら』などもそれなりに評価され、次世代スターとして活躍を期待され、
名優マーチン・シーンの息子ということもあってか、“親の七光り”と見られることを嫌がっていたのではないかと思う。

実際、そんなことはないと思いますし、低迷してしまった後も06年の監督作品『ボビー』は高く評価されました。
一時期はエミリオ・エステベスを上回る活躍をしていた弟のチャーリー・シーンよりも、堅実に活動している方ではある。
ただ、エミリオ・エステベスはキャリア的には勿体なかったというか...もっと活躍できた俳優さんだと思っています。
本作あたりは彼の転換期でもあったと思うし、この手の青春映画からもっと早く脱却した方が良かったのかもしれない。

まぁ、本作もある種のファッション的感覚があるというか、“ブラット・パック”を象徴した作品だったとは思う。
実際問題として、19世紀の西部時代にエミリオ・エステベスやキーファー・サザーランドのような風貌のガンマンは
皆無だっただろうし、どことなく清潔感が漂っていて、アクションの一つ一つにも良くも悪くも泥臭さが感じられない。

つまりはキレイ過ぎる西部劇と感じてしまうのですよね。でも、これは本作のコンセプトでもあったのでしょう。
次から次へとこういう映画が企画された時代だったからこそ、彼らは大人の俳優へと転換することは難しかったでしょう。
(キーファー・サザーランドは00年代に入ってから大ヒットしたテレビ・シリーズで再ブレイクしましたが・・・)

本作はもっと主人公に一貫性を持たせたキャラクターにして、芯の感じられる人物像にして欲しかったですね。
刹那的に生きた“ビリー・ザ・キッド”ということだったのでしょうが、彼だけにフォーカスしたかった映画ではなく、
群像劇のようなアプローチをとっているだけに、この主人公はもっと芯のある義賊のリーダーであって欲しかったなぁ。
その方が映画自体にもメリハリが出て、主人公のカリスマ性も磨かれたのではないかと思えて、とても勿体なく思える。

この群像劇ちっくに作られたのも、エミリオ・エステベスが当時は“ブラット・パック”を象徴する俳優だったからでしょう。
だからこそ、僕は彼を魅力あるリーダーとして描く必要があったと思うのです。これでは、仲間が何故付いて行くのか、
あまり説得力が無いように思えてしまう。普通に考えたら、本作のウィリアムならすぐに仲間の信頼を失いますよ(笑)。

すぐに誰かを殺してしまって、何をしでかすか分からないし一緒に行動してたら命が幾つあっても足りないように思える。

それでも、本作で意外に思えたことは主人公の恋愛についてはあまり強くクローズアップしなかったことだ。
この手の青春を描いた映画ですから、フィクションであってもヒロインを登場させてロマンスを展開するのはお約束だ。
しかし、本作は敢えて描かなかったようだ。キーファー・サザーランド演じるドクは中国系女性に一目惚れするのだが。

これはゴシップ的なネタになってしまうけど、エミリオ・エステベス演じる主人公の恋愛を描かなかったのは、
ひょっとすると私生活で婚約していたデミ・ムーアとの破局が影響したのではないかと、どうしても邪推してしまう。

だって、どう考えても、このストーリーとコンセプトで主人公のロマンスが描かれないのは変な話しです。
ひょっとすると破局が無ければ、無理矢理にでもデミ・ムーアをヒロインにキャストしていたっておかしくない気がする。
(まぁ・・・破局してヒロインにキャスティングできなくなったから、脚本を変えたというのは無いと思うけど・・・)

それは考え過ぎだとしても、作り手も敢えて主人公の恋愛を前には出さなかったという印象が残る。
まぁ、こういうチョット変わった部分は、結果的に逆に新鮮に感じられる要素にもなったわけだけれども。。。

(上映時間107分)

私の採点★★★★★★☆☆☆☆〜6点

監督 クリストファー・ケイン
製作 クリストファー・ケイン
脚本 ジョン・フスコ
撮影 ディーン・セムラー
音楽 アンソニー・マリネリ
   ブライアン・バンクス
出演 エミリオ・エステベス
   キーファー・サザーランド
   ルー・ダイアモンド・フィリップス
   チャーリー・シーン
   ケーシー・シマーシュコ
   ジャック・パランス
   ダーモット・マローニー
   テレンス・スタンプ
   パトリック・ウェイン
   コディ・パランス