団塊ボーイズ(2007年アメリカ)

Wild Hogs

ん? 団塊?
あれれ、団塊の世代って、第二次世界大戦後のベビーブームに生まれた世代じゃなかったっけ?

と思いつつ、まぁよくよく考えてみれば...ジョン・トラボルタもギリギリで団塊の世代かもしれません。
とは言え、唯一の黒人俳優として果敢にロード・トリップに参加したマーチン・ローレンスは
1965年生まれだから、他の役者たちよりも10歳以上若いのだから、同じ世代とは言えないでしょ(笑)。

ってか、アメリカにも「団塊の世代」っていう括りってあるんでしょうか?(笑)

チョット企画的に心配な映画ではありましたが...
いざ観てみると、観る前の予想以上に楽しい映画で、全米でヒットした理由はなんとなく分かる気がします。

監督のウォルト・ベッカーは本作が監督第2作目らしいのですが、
基本的な部分はキチッとケアされているし、演出も小気味良く、映画に良いテンポを与えていますね。
多少、キャスティングに恵まれ、助けられた面があることは否めませんが、それだけの作品ではありません。
中年も過ぎかかったオッサンたちの無謀とも思えるバイク旅行という、なんとも盛り上げにくい題材を
実に上手く“料理”できており、それなりにクスッと笑わせてくれるシーンはありましたね。

あまりにマニアックな小ネタ過ぎて見過ごされそうなやり取りではありますが、
僕は72年のジョン・ブアマンが撮った映画『脱出』に関する小ネタが楽しかったですね。

映画の序盤のダイナーで4人のオッサンたちが談笑するシーンで、
ロード・トリップに出るために結束を促すシーンで、ティム・アレンが微妙な顔をして、
「“脱出”?」と何度も気にするシーンがあるのですが、この『脱出』という映画もやはり中年オッサン4人で
川下りに出かけて、エキサイティングな旅行になる予定だったものが、安易に近づいた山男に
ネッド・ビーティ演じる小太りな中年のオッサンがレイプされて、トンデモないことになってしまうという映画。

やはり本作も中年のオッサンが旅行に出るという話しで、
そのことを意識してティム・アレン演じる歯科医が微妙な顔をするのですが、
映画は上手く、この後もこの『脱出』に関する小ネタから、ゲイに関するセオリーに移行し、
ジョン・C・マッギンレー演じる主人公4人の友情を、ゲイ仲間と勘違いして「オレも混ぜろ!」と
執拗に絡んでくるギャグを混ぜており、いい年こいたオッサンがみんな全裸で楽しそうに芝居してます(笑)。

キチッとネタの“種まき”も行っている作品ですし、
このウォルト・ベッカーというディレクターは、しっかりと仕事をしていると感じましたね。
もっと積極的に映画を撮れば、もっともっと良い出来のコメディ映画を製作することもできると思います。

途中で主人公4人に因縁を付ける、こちらもやはり中年の暴走族リーダー(笑)のジャックを
レイ・リオッタが演じているのですが、よくこんな役を引き受けたなと、妙に感心してしまいました。
そして彼が崇拝するライダーとして、ピーター・フォンダがゲスト出演しておりますが、
最後に捨て台詞のように「そうだ。時計は外しとけ」と言い放つクールさには、何故か笑ってしまった。
(これは『イージー・ライダー』の有名なシーンからきた、彼なりのギャグだろう・・・)

まぁただ・・・やはり日本では売りづらい作品だったでしょうね。
一応、日本でも劇場公開されてはおりますが、全米公開から約1年遅れての公開でしたし、
全米ではそこそこヒットしたものの、日本では限定的な規模で公開され、アッサリと上映終了してしまいました。

やはり日本の配給会社も、本作の日本でのウケが心配だったのでしょうねぇ。。。
その証拠に邦題にも苦慮したみたいで、公開当時、「これから団塊の世代の定年を迎えます」と
何度も報道され、これから予想される社会現象の一つとして注目されていた団塊の世代をタイトルにして、
比較的、日本でも受け入れられ易いコマーシャルを作ったりと、劇場公開前から苦慮したみたいですね。
(でも...その苦慮も報われず、日本ではほとんど話題になることなく劇場公開が終了してしまった・・・)

まぁ仕方ないですね、これはアメリカだからこそ成り立つ話しですし。
アメリカは国土面積が広いからこそ、大陸を横断する旅行というのは、ある種のチャレンジなのでしょうね。
当然、日本でもバイクでの日本一周も一般化された旅行ではありますが、アメリカの場合はロマンなんですね。

だから、中年を過ぎ、まるで若い頃を思い出すかのように
バイクを使って大陸横断を目指すというのが、多くの同世代の方々にとっての夢なのでしょう。

それと、彼らの青春の思い出の多くに『イージー・ライダー』があるのでしょうね。
僕は正直言って、同じアメリカン・ニューシネマだとは言え、彼らの青春の『イージー・ライダー』は
そこまで好きな映画ではないのですが、やはり公開当時の衝撃度というのは半端じゃなかったのでしょうね。
だからこそ、今でもアメリカでは60年代に青春を味わった世代には、根強い人気を誇っているのですよね。
これは日本では、なかなか浸透しない本作の大きなバックグラウンドの一つだと思いますね。

この映画の功績者はドジなウィリアム・H・メイシーでしょう。
TVシリーズ『ER −緊急救命室−』でモーゲンスタン部長を演じていて、他の映画なんかでも、
クセのある役柄を多く演じてきただけに、ここまで開き直ったかのようにコメディ演技をするのは予想外で、
映画の序盤はあんまり似合わないなぁと感じてはいましたが、率先して池に全裸で飛び込んだあたりから、
彼のどこかブッ飛んだ性格そのものが、本作の魅力の根底を支えていることに気づかされましたね。

それから、酒場の女性経営者を演じたマリサ・トメイ。
正直言って、年は着実に重ねてるけど...相変わらずキュートに見えますね。
最近、再びハリウッドでも出番の増えてきた彼女ですから、これからがまた楽しみな女優さんの一人です。

個人的にはもっと良い邦題を付けてあげて欲しかったとは思いますが、
あまり過度な期待さえしなければ、そこそこ楽しめる作品ではあると思いますけどね。

ある意味で、また最近、日本では映画産業の勢いが落ちてきたように感じますが、
配給会社の苦労が色々とうかがえる、教訓にもなる作品として位置づけたい貴重な作品ですね。

(上映時間99分)

私の採点★★★★★★★★☆☆〜8点

監督 ウォルト・ベッカー
製作 マイク・トーリン
    ブライアン・ロビンス
    トッド・リーバーマン
脚本 ブラッド・コープランド
撮影 ロビー・グリーンバーグ
編集 クリストファー・グリーンバリー
    スチュアート・パペ
音楽 テディ・カステルッチ
出演 ジョン・トラボルタ
    ティム・アレン
    マーチン・ローレンス
    ウィリアム・H・メイシー
    マリサ・トメイ
    ジル・ヘネシー
    レイ・リオッタ
    ケビン・デュランド
    M・C・ゲイニー
    スティーブン・トボロウスキー
    ドミニク・ジェーンズ
    ピーター・フォンダ
    ジョン・C・マッギンレー