ハート・オブ・ウーマン(2000年アメリカ)
What Woman Want
大都会シカゴの広告会社に勤めるニックは売れっ子広告マン。
幼少期からラスベガスの踊り子たちに囲まれ育ち、40歳を過ぎた今でもバツイチのプレーボーイ。
15歳の多感な長女がいるものの、女性に関しては自信満々で常に女性をモノにすることだけ考えてる。
映画はそんなニックが当然、自分が出世できると思っていたポジションに、
他社からやり手のキャリアウーマン、ダーシーが就任したことをキッカケにピンチを迎える。
しかし、チョットしたことから女性の心の声が聞こえるという特殊能力を身に付け、
嫌味な中年オヤジというレッテルを返上すべく、面目躍如の活躍をしていく姿をコミカルに描いています。
監督は『恋愛適齢期』などで知られる女流監督ナンシー・マイヤーズで、
彼女は本作が監督2作目であり、全米ではクリスマス・シーズンに公開され、大ヒットとなりました。
ただ、僕はそんな映画の出来は良くないと感じました。
あくまで感覚ではありますが、まず映画の尺が長過ぎて、ほぼ完全に中盤で中ダルみしている。
申し訳ない言い方だけど、この内容で2時間を越えてしまうのは、たいへん映画として苦しいですね。
もっと序盤から中盤にかけての展開を詰めて編集し、せめて2時間以内に収まる内容にしないといけません。
主演のメル・ギブソンが珍しくゴールデン・グローブ賞の主演男優賞にノミネートされているのですが、
その評価も納得できる彼のサービス精神旺盛なコメディ演技はお見事で、特に映画の序盤で酔っ払いながら
フランク・シナトラの歌に合わせて踊るシーンなんかは、往年のクラシック映画の良さを再現している。
ヒロインを務めたヘレン・ハントも本作製作当時は97年の『恋愛小説家』で、
初めてオスカーを獲得したばかりということもあり、とにかく勢いに乗っていた頃でしたね。
何だか本作での彼女はイマイチに感じられましたが、役のコンセプトとしては悪くなかったのではないだろうか。
ナンシー・マイヤーズは実生活での夫チャールズ・シャイアと共に創作活動を続け、
彼の監督作の脚本などを執筆していましたが、99年から彼と別居しているそうで、
本作以降はほぼ彼女のみのプロジェクトとして動いているようですね。
僕は彼女は映像作家として、悪くないフィーリングを持っていると思っていて、
本作なんかも温かみを感じさせ、時に古き良きハリウッドの懐の深さを感じさせるテイストを持っていますね。
そういう意味で、僕は十分に高い能力を持ったディレクターだと思っています。
そうなだけに、本作はチョット勿体ないんですよねぇ。
おそらく、もう少し映画の全体像を意識しながら編集できるブレーンが付いていれば、
前述したような中ダルみは避けられただろうし、映画も全体的にスリムにできたと思いますね。
別に不出来なエピソードではないのだけど、ニックと彼の娘とのエピソードに時間をかけ過ぎましたね。
この親子愛に時間を割き過ぎたがために、映画の主旨がややブレてしまった感が残ります。
結局、親子愛を描きたいのか、ニックとダーシーの恋の駆け引きを描きたいのか、
焦点がブレちゃってて、よく分かんない構成になってしまっているんですよねぇ。これは実に勿体ない。
劇場公開時に言われていた、女性の憧れを映画化したというのは、僕にはあまりピンと来なかったなぁ〜。
勿論、男女の仲は気が合うところばかりの方が、すんなりと上手くいくだろうけど、全てが同じだと、
その分だけ反動が大きいだろうし、チョット違うとこがあった方が面白いという場合もあるからなぁ。
だから女性にとっても、心の内に読んで全て都合のいいようにもてなしてくれる男って、どうなんだろ?(笑)。
まぁ...女性に聞いてみなきゃ分かりませんが、「理想の男性」には当てはまるのかもしれませんね。
ただまぁ・・・他人の本音が聞こえてくるってのは、何だかイヤだなぁ(苦笑)。。。
本音を隠せとまでは言いませんけど、全ての人々が本音だけで生きるようになったら、
それは大変な世の中になってしまいますからねぇ。みんな、そこは理性があるから制御できるわけで。
この“本音の出し入れ”ってのは、社会性にも通じるもので人として大切な素養だと思うんですよね。
そうなだけに本作のニックは、女性の心の声が聞こえてくるという能力をプラスに使ったけれども、
やっぱり不必要な能力だと思いますね。まぁ・・・興味本位で言えば、少し羨ましい側面もありますが(笑)。
一人の男性に訪れた奇跡を描いた映画、或いはプレーボーイが真の意味で、
モテる男に変身する過程を描いた映画というのなら、そこそこの評価に値するとは思いますが、
女性映画、或いはロマンチック・コメディとしては、正直言って良い出来とは言えないと思います。
どうでもいいけど、コーヒーショップでニックがナンパするローラという女優志望の女性で
マリサ・トメイが出ているんですけど、なんかこの役柄と扱いの悪さに落ち込んでしまいました。
若くしてオスカーを獲得して、94年の『オンリー・ユー』なんて素敵な映画でヒロインを演じて、
30代に入って、ハリウッドのトップ女優かなぁと期待してたら、なんですの、この扱いの悪さは(涙)。。。
まぁ90年代後半は規模の小さな映画ばかりに出演したりして、嫌な予感はあったのですが、
久しぶりのメジャー映画で、こうも扱いが悪いと、さすがに損な仕事だったとしか思えませんね。。。
(上映時間127分)
私の採点★★★★★★☆☆☆☆〜6点
監督 ナンシー・マイヤーズ
製作 スーザン・カートソニス
ブルース・デイヴィ
ジーナ・マシューズ
ナンシー・マイヤーズ
マット・ウィリアムズ
原案 ジョシュ・ゴールドスミス
キャシー・ユスパ
ダイアン・ドレイク
脚本 ジョシュ・ゴールドスミス
キャシー・ユスパ
撮影 ディーン・カンディ
音楽 アラン・シルベストリ
出演 メル・ギブソン
ヘレン・ハント
マリサ・トメイ
アラン・アルダ
ローレン・ホリー
アシュレー・ジョンソン
マーク・フォイアスタイン
ベット・ミドラー
バレリー・ペリン
ローガン・ラーマン