ベガスの恋に勝つルール(2008年アメリカ)

What Happens In Vegas

決して面白くない映画、というわけではないのだが・・・

あまり女優さんに年齢のことを言うべきではないけれども、
さすがにこの頃はもう、キャメロン・ディアスにキャピキャピしたキャラクターでラブコメのヒロインを演じさせるには、
少々無理があったというか、どうにもこうにも、彼女が逆に可哀想に見えてしまったのは僕だけだろうか。。。

いや、この映画のキャメロン・ディアスが悪いわけでは、、決してない。
映画の後半に描かれる、舞踏会の夜にフラーの前にキャメロン・ディアス演じるジェイが現れるシーンで、
思わず通り過ぎる男が振り返るというのが分かるオーラは、画面から感じ取れるだけの輝きは放っていた。

でも、映画全編を観通しての僕の正直な感想は、「それでも、やっぱりもうそろそろ・・・」というところ。
(こういう理由ではないにしろ、2014年以降は女優活動を休止しましたが)

それにしても、ノーメイクというわけではないのだろうけど、
酔っ払って結婚までしてしまったベガスでの一夜の翌朝、スッピンにも見える寝起き姿を
当時のキャメロン・ディアスがよく演じましたね。僕には何故だか、妙に生々しく見えたシーンでしたから。

映画はキャメロン・ディアスにアシュトン・カッチャーという、
当時はこの2人がラブコメで共演するというだけで話題を呼び、全米では大ヒットとなったので、
ラブコメのヒロインとしてのキャメロン・ディアスの人気は相変わらず健在であったことを証明しましたけど、
映画の出来としては今一つで、良くも悪くも想像以上のものを見せてはくれなかった作品という感じがします。

やはりラブコメは、作り手のセンスが要求されるジャンルだと思う。
正直、映画のストーリー上では訳の分からないドンデン返しみたいなことはやりづらく、
おおむね映画を観る前から結末が約束された分野ではあるし、映像表現や編集も突飛なことは馴染まない。
すると、キャスティングの位置づけも高くなり、映画の印象の良し悪しも大きく左右し始める。

そうなると、映画は悪い意味での破綻なく、相応の納得感を出さないと
観客は心情的に落ち着きませんし、それでいてロマンチックなムードを味わえて、
ラブコメの醍醐味みたいな感覚を得られないと満足しないわけです。作り手には相当なセンスとバランス感覚が必要だ。

そういう意味で本作は微妙な内容だ。監督のトム・ヴォーンも本作がデビュー作のようですが、
正直、どこまで出来る人なのか、よく分からなかった。それなりに楽しませてはくれるけど、
金に執着して、裁判所の命令によって無理矢理、夫婦生活を送ることになった2人があれだけお互いに
嫌がらせをして、足を引っ張り合っていたのに、突如として好意を持ち始めるのかが、ナチュラルに描けていない。

そして、肝心かなめの裁判所の命令も何を意図したものだったのかよく分からず、なんだか謎。
賞金の所有権を吟味するために、結婚したんだから夫婦生活を送れというのは、あまりに現実離れしたものかと。

恋はミステリーなんて言っちゃえば、なんだってそれで解決になってしまいそうですが、
この手の映画は、男女の心揺れ動きはキチッと描けないと、チョット苦しい。ただ単に子供好きとか、
そんなことだけで全てを語ってしまおうとするのは、少々都合が良過ぎるというか、強引だと感じられてしまうかな。

結局、この映画はこの点が大きな難点だと思います。恋愛映画としては最も重要なところですね。
やはりカップルになる2人の恋愛が成就する過程に難点があるというのは、この手の映画としては致命的ですね。

正直、キャメロン・ディアスがヒロインを演じるラブコメは、どうしても『メリーに首ったけ』の印象が強いせいか、
結構ドギツい下ネタ中心の映画という印象も無くはないのですが、本作はそこまで下ネタが横行するわけではない。
それをどう解釈するかは、彼女のどういう側面を見たいかによって評価は変わるでしょうけど、悪くはないですよ。
僕はキャメロン・ディアスは、結構上手い女優さんだと感じているので、下ネタが無くとも十分に演じられます(笑)。

映画のストーリーとしては、彼氏に尽くしてきたつもりの株のブローカーとして出世を目指すヒロインが、
思いがけないタイミングで彼氏にフラれ、傷心旅行先としてラスベガスへ。一方で将来的には社長業を継ぐと
予想していた道楽息子のジャックが、あまりに不真面目だったことを見かねて、父親から解雇されたことで
リフレッシュのためにラスベガスで一攫千金を目指すことに。そんな2人がホテルの手配ミスで出会い、
酔った勢いで何故か結婚してしまったものの、翌朝に冷静になった2人が別れ際にトライしたスロットで
300万ドルの大当たりをしたことで、お互いに賞金の権利を主張するが故に、夫婦生活を送るハメになります。

映画はそんな2人がお互いにいがみ合いながらも、夫婦生活を送る努力をしなければならないことから、
定期的にセラピストのもとに通いながら、ケンカしながらもお互いの心の距離を縮めていく過程を描いています。

ジャックを演じたアシュトン・カッチャーは当時、私生活ではデミ・ムーアと結婚していたことばかりが
話題となっていましたが、本作でのキャメロン・ディアスとのコンビも息がピッタリ合っていて、そう悪くはない。
ただ正直、イケメンかと言われると...個人的には、「それはどうかなぁ・・・」と思えてしまう。
彼も彼で、他にもっと悪ノリしたコメディ映画に出演していますので、本作のキャラクターはかなり大人しめ。

まぁ、ラスベガスで結婚式を挙げるというのは、一種のステータスというか、
カジノで有名なラスベガスは、ドライブスルー結婚式場のように、結婚する土地としても有名です。
そういう意味で、“勢いで”結婚したということも、現実に何件かあるのかもしれませんね。
(ラスベガスは結婚証明書を即日交付できるよう、条例を改正したことで一気に結婚式の町になったようです)

ただ、劇中登場するヒロインの会社の社長が、目立った理由もなく、
アジア系女性(ヒロインのライバル)と、彼女のフィアンセを毛嫌いする描写は賛否両論かもしれませんね。
見方によっては差別的と感じることもあるでしょう。この辺は作り手の意図が、僕もよく分からなかったですね。

そういう意味では、チョットしたギャグは好き嫌いが分かれるタイプのギャグかな。
ジャックの友人である弁護士がどちらかと言えばギャグを繰り出す存在で登場するのですが、
独特なギャグで結構、“明後日な方向”を見たギャグに見えて、映画の流れにキチッと乗れていない。

それから主人公カップルが通わなければならなくなったセラピストを演じたのがクイーン・ラティファ。
彼女もあまり出番が無かったのが残念ですね。もう少し見せ場を作ってあげて欲しかったです。

もう少し脇役キャラクターを大切にして、主人公カップルの恋愛を納得性もって描けていれば、
きっとキャメロン・ディアスの代表作の一つになったであろう、その土台はあった作品だと思います。
もう少し経験豊かで、この手の映画のノウハウがある人が撮っていれば、違った出来映えの映画になったでしょう。

もっと違う出来映えの映画になっていれば、クライマックスのキスシーンの印象も変わっていたでしょう。

ちなみに映画のエンド・クレジットは最後まで観ましょう。
この映画はある意味では重要な後日談に、サブ・エピソードをエンド・クレジット中に挿入しています。
こういうのは、中にはどうでもいいシーンが入っていることもあるのですが、本作は観る価値のある“オマケ”だ。

(上映時間98分)

私の採点★★★★★★☆☆☆☆〜6点

監督 トム・ヴォーン
製作 マイケル・アグィラー
   ショーン・レヴィ
   ジミー・ミラー
脚本 デイナ・フォックス
撮影 マシュー・レオネッティ
編集 マシュー・フリードマン
音楽 クリストフ・ベック
出演 キャメロン・ディアス
   アシュトン・カッチャー
   ロブ・コードリー
   トリート・ウィリアムス
   デニス・ミラー
   レイク・ベル
   デニス・ファリーナ
   クイーン・ラティファ

2008年度ゴールデン・ラズベリー賞ワースト主演女優賞(キャメロン・ディアス) ノミネート
2008年度ゴールデン・ラズベリー賞ワースト・スクリーン・カップル賞(アシュトン・カッチャー、キャメロン・ディアス) ノミネート