ワーロック(1959年アメリカ)

Warlock

これは結構独特な西部劇ですね。定期的に無法者が荒らしにくることに悩まされる町、
ワーロックを舞台に無法者への対応のために、悪名高いよそ者を保安官に任命し、解決しようとする姿を描きます。

その悪名高いよそ者にヘンリー・フォンダと、その相棒としてアンソニー・クインというのが
ハリウッドを代表する好漢と、アクの強い性格俳優を起用したという異色な顔合わせで、少々異様な様相を呈している。

監督は50年代半ばに吹き荒れた“赤狩り”で標的となってしまったエドワード・ドミトリクで、
本作あたりからハリウッドでも本格復帰したという感じでしたけど、“赤狩り”でハリウッドを追放状態になっただけでなく、
逮捕された挙句、収監となって裁判ではイデオロギー的に意見を同じとする“仲間”を証言させられたことで、
当時のエドワード・ドミトリクはほぼ四面楚歌のような状態になっていたところで、本作は救いの企画となったようだ。

ヘンリー・フォンダ演じるよそ者のクレイは、町の依頼を引き受ける際に実に的確な予想をしている。

@最初は町の人々は無法者を退治したい一心で、私たちを頼りにする
A私の強引な方法で無法者が町に寄り付かなくなれば、町の人々は喜ぶ
Bやがて、私のあまりに強引なやり方に私を恐れ、否定的な声が集まる
Cそして私を追い出そうという声があがる

これは確かに的確な予想であり、いつもクレイが経験いていることなのかもしれませんが、
それくらいクレイは強引な方法をとるし、理想論が消えない町の人々にとっては合わない方法論だと自覚している。
“目には目を、歯には歯を”ばりにクレイは徹底してやっつける方針ですが、西部の掟は昔気質に守るプライドもある。

だからこそ、無法者の何でもアリなズルいやり方を一切許容することなく、クレイは徹底したスタイルを貫きます。
そんなクレイの徹底したやり方を見て、「これはヤバい」と悟った無法者グループの一味でもあるジョニー役には
名悪役のリチャード・ウィドマークなのですが、ヘンリー・フォンダとアンソニー・クインと並ぶと、なんだか温和に見える。

いつものリチャード・ウィドマークとは、少々調子が異なるので、そこは観る前に頭に入れておいた方がいいかも。

これはクレイからも指摘されているけど、民主的な考え方からすれば、いろんな考えがあるのは普通だけれども、
確かにワーロックの町の人々は非暴力や、理想論ばかりで結局何もやらない人とかいて、意見がまとまっていない。
結局この状態でクレイと柔和にやっていけるわけもなく、常に不協和音が鳴り響くし、それにクレイも気付ている。

この辺は色々な経験をしてきたエドワード・ドミトリクだからこそ、物事が単純に上手く進むわけではないということを
まるで悟っているかのように描いているように見える。西部の哲学を描いた映画ではあるのですが、その哲学にも
限界があることを悟っているかのようだ。だからこそ、映画のクライマックスの展開はなんとも微妙な感じになってくる。

ただ、どうしても僕にはアンソニー・クイン演じる相棒モーガンが酔っ払ってとった行動がよく分からなかった。

色々とクレイと意見がぶつかることがあったからこそ、モーガンとしてもヤケになってしまった面もあるとは思うけど、
何故に突如として酔っ払って命の無駄にするような行動に出てしまうのか、映画を観ていてもよく分からなかった。
まぁ泥酔していれば、そんなものだとも思うけど、モーガンには最後まで情のある行動をとる姿であって欲しかったなぁ。
だって、ヘンリー・フォンダとアンソニー・クインがコンビって時点で本作の意外性を支えていると思うんだけれども、
最後にヤケになってしまうのであれば、ほぼほぼ大方の観客の予想通りというか、意外性は覆されてしまいますからね。

まぁ、こういったところがエドワード・ドミトリクの監督作品が一筋縄ではいかないところを象徴してますけど、
僕はヘンリー・フォンダを少々アウトローな保安官として描いた時点で、意外性を持たせているのだから最後まで
そのスタンスは貫いて欲しかったなぁ。まぁ、モーガンがヤケを起こすにしても、もっと説得力ある行動にして欲しかった。

どうでもいい話しですが...この映画を観ていて、どうしても気になったのは
ヘンリー・フォンダが妙にメル・ギブソンっぽく見えてしまったことと、アンソニー・クインがドーラン塗り過ぎなこと。
特にアンソニー・クインは顔が妙に白くて、なんだか血色が悪いように見えるし、舞台俳優みたいな感じで変(笑)。

豪傑なキャラクターを演じることが多いアンソニー・クインですから、彼の持ち味がフルに出たかは微妙だけど、
まぁ、ヘンリー・フォンダにしても同様だけど馬上のガン・アクションをバリバリこなすようなイメージもないので、
これくらいメイクでインパクトを出して、王道な西部劇と同じ土俵にならないようにしたのは賢明だったのかもしれない。
やっぱり当時はジョン・フォードとジョン・ウェインの西部劇が王道でしたから、それと比較されると本作の良さが出ない。

そんなクレイとモーガンと比較すると、リチャード・ウィドマーク演じるジョニーはかなりおとなしく見えてしまう。
前述したように無法者のグループにいたジョニーでしたが、善悪の分別はつく人間性でクレイとまともに対決することの
無謀さを察知し、その無謀にもクレイに決闘を挑んだ血気盛んな弟を必死に止めようとしていた賢さが彼にはあります。

そのリチャード・ウィドマークも、無法者のグループで仲間割れ状態になってしまい、意見しに行ったら銃を向けられ、
挙句の果てにテーブルについた手にナイフを刺されるというショッキングな出来事が起こり、彼は銃を撃てなくなる。
ここまでくると、リチャード・ウィドマーク演じるジョニーは悪党という感じではなくなり、ワーロックを守る側になっている。
映画の序盤から、さり気なくジョニーはグループの中でも異端であったようなニュアンスで描かれてはいましたからね。

いつもの悪役だったら、リチャード・ウィドマークは実に憎たらしいキャラクターを巧みに演じていることが多いけど、
本作でのリチャード・ウィドマークはまた一味違った感じであり、存在感としてはそこまで強烈なものではないですね。

映画の物語の基本骨格としては『OK牧場の決斗』を踏襲したようなストーリーであって、
確かに保安官と賭博師が互いに協力関係を作って、悪党と対決するという構図は本作も完全に一緒ではある。
ただ、『OK牧場の決斗』よりは本作の方が保安官はアウトローな感じだし、賭博師側がスゴい恩義を感じている様子。
そう、だからこそモーガンはクレイと意見がぶつかってしまったことが、モーガンにとっては大きなことだったのだろう。

そういう意味では、男同士の友情と信頼が壊れることが、西部では殺し合いになり得るというのが印象的ですね。
これは無法者のグループ内でもそうですし、クレイとモーガンを見ていても同様でこれが西部の掟なのだろうか?

ヘンリー・フォンダ演じるクレイはスゴ腕のガンマンで早撃ちは誰よりも正確で早いという設定だ。
それゆえ、1対1の決闘になると高い確率で勝利するものだから、次々と悪党たちを退治するのに“利用”されてきた。
しかし、強過ぎるがゆえに次々と異を呈する者を排除するようになり、クレイの予想通りワーロックから追い出される。

それは皮肉なことに、クレイが愛する女性を見つけて、ワーロックに永住しようと決心してからの出来事だ。
僕の中では、このロマンスは少々ウザったい印象が残ってしまっていて、もう少し上手く挿し込んで欲しかったなぁ。
そもそもこの頃のヘンリー・フォンダは若い女性とのロマンスを演じるには、正直、年をとり過ぎていたように思うし。

非暴力を訴える女性との淡いロマンスというわけですが、これもまた唐突にキスシーンになるから余計にウザったい。
お互いに惹かれ合う過程をほとんど描いていないし、お互いにマジックが生じたような情欲の強さがあるわけでもない。
この辺はエドワード・ドミトリクも上手いディレクターではないので、無理して描く必要があったのかなと疑問には思った。
確かに愛する女性がいて、無法者を排除するというミッションを達成したのに、町を去るというのは皮肉ですけどね・・・。

とまぁ・・・少し独特な西部劇ではありますけど、それなりに見応えはあるドラマを展開しているし、
何よりヘンリー・フォンダとアンソニー・クインという異色なコンビで西部劇を展開するという、奇想天外さが面白い。

欲を言えば、2時間程度の上映時間である作品なのですが、その上映時間が少々長く感じられたので、
映画全体を俯瞰して見ると、やや間延びした部分はあったと思う。各々のドラマを絡み合うように描いたので、
エピソードが多くなってしまう傾向にはあり、ある程度は仕方ない部分もあるけど、もう少しコンパクトにまとめて欲しい。

原作もあるから難しいところですが、それを上手く脚色することが脚本を書いた段階でできたのではないだろうか。

もう少し映画自体をタイトにシェイプアップして、クレイが乞われてワーロックに来て結果を残しつつも、
彼が強過ぎるために民衆から恐れられて町を出て行かざるをえなくなる、というシンプルな構成に注力して欲しかった。

(上映時間122分)

私の採点★★★★★★★☆☆☆〜7点

監督 エドワード・ドミトリク
製作 エドワード・ドミトリク
原作 オークレイ・ホール
脚本 ロバート・アラン・アーサー
撮影 ジョー・マクドナルド
編集 ジャック・W・ホームズ
音楽 リー・ハーライン
出演 ヘンリー・フォンダ
   リチャード・ウィドマーク
   アンソニー・クイン
   ドロシー・マローン
   ドロレス・マイケルズ
   ウォーレス・フォード