ベガス・バケーション(1997年アメリカ)

Vegas Vacation

『ナショナル・ランプーン』シリーズで大騒動を巻き起こしたグリズウォルド一家を描いたドタバタ・コメディ。

まぁ過去に83年、85年、89年に映画化されており、本作は久しぶりの第4作となりますが、
もうキビしいですね、このシリーズ。何もかもが綱渡り的な映画になってしまっているのがツラいですね。
主演のチェビー・チェイスも、、もう勢いの無いギャグを連発するもんだから、映画自体が盛り上がらない。

まぁ食品添加物の会社の技術者だったグリズウォルド家の大黒柱クラークが会社から休暇を奨励されて、
成長した子供たちを前にして、「これが最後の家族旅行」と決め込んで、ラスベガスへ旅行するのですが、
滞在したホテルのカジノに家族ほったらかしで夢中になり、疫病神のエディにつきまとわれ、
愛する妻エレンは歌手のウェイン・ニュートンにメロメロ、子供たちはベガスのネオンに魅了され、
結局、クラークはギャンブルで大負けしまくり、自己破産寸前までいってしまうという自業自得なお話し。

チェビー・チェイスのお家芸、とことんツキの無い男の情けない芝居が映画の軸なのですが、
一向にアクセルがかからず、最後の最後まで低調なまま映画が進んでしまった感じがします。
もう変わらなきゃダメなのかもしれませんね。なんか時代遅れな感じがします。
今から10年も前の映画であるということを差し引いても、やっぱり80年代のノリなんですよね。

そんなノリが映画に対してプラスに働いているというのなら良いのですが、
このノリは明らかに映画の足を引っ張ってしまっています。チョット、微妙なテンションで居心地が悪いですね。

クラークの妻ビバリー・ダンジェロは相変わらずキレイな女優さんですね。
実生活では名優アル・パチーノと97年に婚約して、子供も授かりましたが、破局。
ゴシップで話題となってしまいましたが、もっと映画に数多く出ていてもいい存在感だと思いますね。
今回も、どう考えてもセクシーな歌手とは思えないが(笑)、アメリカを代表するエンターティナー、
ウェイン・ニュートンに誘惑され、心が揺れ動きながらも、家族を守る少しドジなママを好演。
たぶん、この映画の中では一番、頑張っていて好印象だった気がしますね。

疫病神エディとして前作に続いてランディ・クエイドが登場してきますが、
さすがに今回の役作りはやり過ぎです。役作りとしては過剰すぎて、逆効果になってしまった好例ですね。

まぁラスベガスは行ったことありませんが、最近は確かにギャンブルの街から、
家族連れでも安心して楽しめるエンターテイメントの街へと転身を目指しているらしく、
実に数多くのイベントが多くのホテルなどで組まれているらしいですね。
ただ、ベガスと言ったら、やっぱりカジノですよね。あれだけの規模でのカジノは、おそらくベガスだけでしょう。
東京なんかでもカジノ場を作るなんて話しはありますが、ベガスは先駆者的優位性がありますからね。
おそらく半永久的にギャンブルの街としてのイメージが君臨し続けるのでしょうね。

映画の前半のギャグはまだ面白いとは思います。
ギャンブルの街としてのオーラを出すように、街の煌めくネオンに魅せられ、
高級車から眺めるベガスの街の空気はまるで夢の世界のよう。この空気を吸うだけでリッチな気分になれそうだ。

そんな中、ホテルにチェックインするまでに幾つかのギャグを織り交ぜながら映画を進めます。
しかし本作、ここからがいけない。ギャンブルに熱中するクラークをはじめ、家族がバラバラになっていくのですが、
各々のエピソードが致命的と呼べるほどに盛り上がりに欠け、映画自体にメリハリが感じられません。

おそらく映画の目玉の一つとしたかったであろう、
有名なフーバー・ダムでのドタバタ劇も、やればやるだけ逆効果。チェビー・チェイスの芸の限界すら感じさせます。

このフーバー・ダムでのロケを経て、今度は破産するほどギャンブルにお金をつぎ込むクラークと、
家族旅行そっちのけでウェイン・ニュートンの誘惑に心ワクワクさせる妻エレンにスポットライトが当たるのですが、
自身の役で出演したウェイン・ニュートンの訳の分かんない役作りが妙に印象的だ。

ウェイン・ニュートンはアメリカでは人気エンターティナーとして有名ですが、日本ではあまり知られておりません。
まぁエレンが何故にいかにもギラギラしたウェイン・ニュートンの何処に惹かれたのかよく分かりませんが、
いかにもディナーショー向けの歌手って感じで、日本で言えばホテル回りしてる歌手ってとこですね。

映画のラストはやっぱりギャンブルで終わる。
さすがにハッピーエンドは迎えますが、今一つ盛り上がらないまま終わってしまったせいか、
映画のラストにも何とも言えない物足りなさを感じてしまいます。確かに一発逆転のラストなのですが、
こういうラストにするよりは、ウハウハに儲かってた息子のラスティというビギナーズ・ラック的な存在を
もっと上手く利用した方が良かった気がしますね。クラークの運の無さっぷりを、もっと強調して欲しかったですね。

映画のラストで、“ああいった形”で幸運を手にするということは、
最後の最後でクラークが運に恵まれたことになりますからね。それでは、映画の収まりの悪さを感じてしまいます。
「グリズウォルド家の父、クラークは最後の最後まで運の無い男でした」というラストの方がスッキリしています。

ちなみにこの『ナショナル・ランプーン』シリーズの第1作は、
83年の『ナショナル・ランプーン/ホリデーロード4000キロ』。かなり強烈なブラック・コメディでした。
基本的にこのシリーズは、グリズウォルド家の家族旅行での大騒動を描いているのですが、
89年の第3作『ナショナル・ランプーン/クリスマス・バケーション』だけは旅行に出ていません。
残念ながらシリーズを重ねるごとに映画のテンションが落ちていったシリーズの典型例ではありますが、
今一度、このシリーズを再評価して、日本でも認知度を上げたいところです。

できることならば、このシリーズ完結編として、もう一本。ドギツいコメディの新作を期待したいのですがねぇ。。。

(上映時間94分)

私の採点★★★★☆☆☆☆☆☆〜4点

監督 スティーブン・ケスラー
製作 ジェリー・ワイントローブ
脚本 エリザ・ベル
撮影 ウィリアム・A・フレイカー
音楽 ジョエル・マクニーリー
出演 チェビー・チェイス
    ビバリー・ダンジェロ
    ランディ・クエイド
    イーサン・エンブリー
    ウェイン・ニュートン
    マリソル・ニコルズ
    ウォーレン・ショーン