v.s.o.p./ジャパン・ツアー2007

v.s.o.p./Very Special One time Performance Japan Tour 2007

2007年10月17日(水)[札幌コンサートホール Kitara]

       

01 So What ソー・ホワット
02 Maiden Voyage 処女航海
03 Seven Steps To Heaven セヴン・ステップス・トゥ・ヘヴン
04 I Thought About You アイ・ソート・アバウト・ユー
05 Aung San Suu Kyi アウン・サン・スー・チー
06 Someday My Prince Will Come サムデイ・マイ・プリンス・ウィル・カム
07 Eighty - One 81
08 All Blues オール・ブルース
アンコール
09 Footprints フットプリンツ
“v. s. o. p.”とはVery Special One-time Performanceの略なんですって。
つまり、とっても特別な1回限りのパフォーマンスって意味で、この企画は70年代中頃から始まりました。

この企画は60年代半ばにジャズ・シーンを支配したと言っても過言ではない、
マイルス・デイヴィス・クィンテット≠フサウンドを再現しようと、ハービー・ハンコックの呼びかけで
76年のニュー・ポート・ジャズ・フェスティヴァルにて初めて催されて以来、不定期に行われており、
中でも79年の来日公演は、実況盤として発売されるほど伝説的なツアーとして、超有名です。

今回はピアノのハービー・ハンコック(67歳)、サックスのウェイン・ショーター(74歳)、
ベースのロン・カーター(70歳)、ドラムのジャック・ディジョネット(65歳)と皆、65歳オーバーの超高齢。

しかも今回は日本公演直前に、ウェイン・ショーターがウェザー・リポート℃梠繧ノ
キーボーディストとして一緒だったジョー・サビヌルが他界したばかりで、開催自体が心配だったのですが、
トリビュート的な内容も一切なく、相変わらずのマイルス・デイヴィス・クィンテット≠ノ固執した内容でした。

今回、Kitaraで音楽イベントを鑑賞したのは3回目で、
2階席からの鑑賞でしたが、ステージがとても観易いポジションで、音響も良かったように思います。
(しかしながら、チケット完売と発表されるも、ところどころに空席が目立つ・・・)

開演時間は19時でしたが、5分ほど遅れて客電が落ち、ステージにゆっくりと4人が登場します。
日本びいきのハービーは随分と丁寧に長々、お辞儀しておりましたが、カジュアルな服装で若いですね。
ジャックは年相応でしたが(笑)、ロンはスラッとした長身でメチャクチャ渋い!

そして、最高齢のウェイン・ショーターは随分とまた、お太りになられたようで(笑)、
登場してきたときは「どこのちゃんこ屋のオヤジよ?」とツッコミの一つでも入れたくなるような風貌で、
腹が随分とタプタプ揺れている感じで、ただでさえ大柄なのに更にデカいサイズのシャツを着ていたよう。
メンバーの中では一際、反応が遅い感じで、まるで他のメンバーから「爺さん、次はあっちだよ」と
促されて方々に挨拶しているような感じで、さすがに加齢には勝てないようでした。

いきなり始まったのは、マイルスの名作So What(ソー・ホワット)。
ハッキリ言って、マイルス・デイヴィス・クィンテット℃梠繧フ曲ではないのですが、
4人のバトルのようなゴツゴツした演奏から入らないように配慮していたかのようで、
マイルスの曲にしてはかなりポップな曲を敢えて選んだのかもしれませんね。

ほどよい緊張感を持って、約7〜8分ほどSo What(ソー・ホワット)を演奏して、
メンバーを代表してハービーが日本語を交えて、メンバーの紹介をしながら平易な英語でお喋り。

そしてここからはアンコール1曲のフィニッシュまで、一切MCなし。
とにかく4人は弾いて、弾いて、弾きまくる感じで、次第にバトルのような緊迫感を帯びていきました。

2曲目のMaiden Voyage(処女航海)はハービーのリーダー作での傑作なのですが、
今回はかなり大胆なアレンジメントを加えたような感じで、オリジナルとは全然、違って聴こえます。
アレンジするのは構わないけど、個人的にはウェインにはソプラノ・サックス吹いて、リードして欲しかったなぁ。
直立不動でテナー・サックスを微動だにせず、ただひたすらブカブカと吹いているだけなんだもの・・・。

ジャックのドラムとハービーのピアノの応酬が素晴らしい、
Seven Steps To Heaven(セヴン・ステップス・トゥ・ヘヴン)はノリノリに演奏され、印象的でしたね。

そしてスローなI Thought About You(アイ・ソート・アバウト・ユー)も絶品で、
おそらくMy Funny Vanlentine(マイ・ファニー・ヴァレンタイン)といずれかの選択だったと思うのですが、
思わずマイルス・デイヴィスの名演を思い出させるような、ウェインの熱演が忘れられません。

そしてウェインのソロ作からAung San Suu Kyi(アウン・サン・スー・チー)でもウェイン大活躍で、
1フレーズ吹いたらヨロめいていましたが(笑)、今のウェインができる精いっぱいのパフォーマンスでしょう。

Someday My Prince Will Come(サムデイ・マイ・プリンス・ウィル・カム)も良かったなぁ。
これはマイルス・デイヴィス・クィンテット≠フ影響力を語る上では、避けては通れない名作。
さすがに火花散る煽り合いというほどではないにしろ、キチッとしたセオリーを踏んだ演奏合戦って感じで、
ジャズの醍醐味を示しながらも、正反対な慎みを感じさせる懐の深いコンサートでしたね。

アンコールのFootprints(フットプリンツ)が終わったときには、
さすがに一曲一曲の演奏時間が長いせいか、開演から2時間10分という時間が経過していました。

まぁ何を期待していたのか、よく分かりませんが...
確かに似たような演奏が続いたせいか、暇そうにしていた観客もいたことは事実ですが、
個人的にはかつて、ジャズがとてもエキサイティングな存在だった頃の良さを確実に残していました。

まぁ正直言って、もう“v. s. o. p.”としての来日はもう最後かもしれません。
そりゃハービーとウェインの体力が続く限り、企画自体は生き続けるような気がしますが、
これは文字通り、Very Special One-time Performanceと呼ぶに相応しい、価値あるステージだったと思います。

この日、一番、良かったのはAung San Suu Kyi(アウン・サン・スー・チー)でしたが、
もう少しアップテンポな曲をチョイスしても良かったかもしれませんね。若干、内容的にメリハリには欠けたかも。