マイレージ、マイライフ(2009年アメリカ)

Up In The Air

最近、つくづく思うのですが...こういう映画、増えたなぁ〜。

結論から言いますと、惜しいんですよね、この映画。これだけではイマイチ、訴求し切れていない。
もう少し、これと言った決定打が感じられる映画であれば、変わっていたのだろうけれども、
残念ながらこの映画には、ここぞといった強いシーンが無くって、最後まで訴求しない映画で終わってしまう。

率直に言うと、アナログの良さ、家族の素晴らしさを描くには、少し露骨過ぎたように感じるし、
もう少し工夫した形で表現すべきだったと思いますね。特にラストのまとめ方は、上手いとは言えません。

まぁ随分と評論家筋には褒められたみたいですけど、
皮肉たっぷりに言えば、如何にも評論家が好みそうな雰囲気を持った映画であり、
ウェス・アンダーソンを踏襲したようなアプローチも、もう少し何とかならないものかと思えてならない。

監督は06年に『サンキュー・スモーキング』で高く評価されたジェイソン・ライトマンで、
彼は84年の『ゴーストバスターズ』に出演して、後にコメディ映画を中心にハリウッドで映画監督として成功する、
アイバン・ライトマンの実の息子であり、昨今、新進気鋭の若手映像作家として注目を集めていますね。

ジョージ・クルーニー演じる主人公のライアンの設定が面白い。
彼はリストラ宣告を専門に扱うコンサルティング会社で、リストラ宣告代理人として活躍しており、
アメリカ国内を1年300日以上は移動し歩いており、1年に膨大な回数で飛行機に搭乗している。
そのおかげで彼のマイレージは貯まる一方で、荷物のまとめ方もプロの域で、言わば出張の神様だ(笑)。

そう、確かに長期出張とか海外出張に慣れてる人って、
常人と比べると、圧倒的に荷物が少なくって、出張の準備もとにかく早いんですよね(笑)。
言ってしまえば、旅慣れしているわけで、当然、海外に渡航してからも行動がスムーズ。

ライアンがキャリーバッグを引いて空港内を歩く光景を観て感じましたね。
彼が如何に旅慣れしているかを(笑)。そしてカードで悩む姿なんかも、ある意味でリアルだ(笑)。

どうでもいい悩みではありますが...
今の社会はカード社会が行き過ぎていて、カードが多過ぎて困りますね。
何処言ってもカードを作らされ、何処の店でもポイントカードを導入し、大方の店で電子マネーが使える。
しかもクレジット機能を付けると、ポイント還元率が違うみたいなキャンペーンもあったりして、
僕はいちいち作らないけど、今の社会は必然的に財布がカードでいっぱいになるようにできていますね。
(同じクレジット会社の機能が、複数のカードで存在するなんてことも・・・)

それだもん、一体どこのカードなのか...
今入ろうとしている店で、どのカードが使えるのか、よく分からなくもなりますよね(苦笑)。
何とかならないものなのでしょうか、この便利なようで、面倒くさくなったこの社会は(笑)。

あと、ライアンはマイレージを貯めることに目標を置いていたので、
デジタル化の波が押し寄せ、自身の出張が無くなることを激しく拒みます(笑)。

但し、僕はライアンの主張していることもあながち間違っているとは言えなくって、
今はTV会議なんかもかなり採用されているようですけど、やっぱり直に話す機会があった方が
仕事が円滑に進むってことはよくある話しだろうし、商談なんかは直のコミュニケーションは欠かせないだろう。

但し、会社命令での出張時に発生するマイレージがまた厄介な話しで、
これはおそらく会社単位で見れば、対応が大きく異なるのではないだろうか。

厳密に言えば、会社命令での出張旅費ってのは当然、会社から支給されるものですから、
マイレージが出張者個人に加算されるようになっていること自体が、誤りと言えば誤りなのです。
しかしながら、そもそも航空チケット発券のためにはメンバーズカードが必要なわけで、
このメンバーズカード発行の際にマイレージクラブに入会するか否かは、今は個人の判断でしかありません。

実は僕の働いている会社はマイレージについては現時点では、うるさく言われないのですが、
会社が法人契約回数券(ビジネス・リピート)を推奨しているので、結構、マイルが加算されるんですよね。
個人単位でもオープンなので、搭乗時間変更が事前であれば可能ですし、会社にとっても、
例えキャンセルになってもキャンセル料は発生しないという、お互いにとって都合がいい契約です。
でもこれ、出張が多い人は1年間でかなりマイレージが貯まるから、いつかは厳しくなるでしょうね。

映画の本編の話しに戻りますが...(笑)
個人的には、もうチョット話しの要点を絞った方が良かったような気がします。
全体的に描きたいエピソードが数多かったせいか、つながりが悪かったような気がします。

まぁそれでも、監督のジェイソン・ライトマンは将来を嘱望されておりますし、
本作でひじょうに高い評価を集めたことから、彼自身にとっては大きなプレッシャーかもしれませんが、
いずれにしても次回作以降の監督作に注目が集まることは必至で、ターニング・ポイントとなる作品でしょうね。

邦題にもある、マイレージに関するエピソードについても、ハッキリ言って中途半端。
確かにライアンの最後の判断は善行を基本とした決断ではありますが、もっと力強いものであって欲しい。

あれもこれもやろうと、欲張ってしまうと、やはり映画にとってプラスには働きませんね。
そういう意味ではヴェラ・ファーミガ演じる“都合のいいオンナ”のアレックスの位置づけも中途半端で、
オマケに彼女に関する真相は、イマイチ説得力が無く、もう少し掘り下げて欲しかったですね。

劇場予告編を観る限りでは、もう少し面白そうだったんだけどなぁ〜(苦笑)。

(上映時間109分)

私の採点★★★★★★★☆☆☆〜7点

監督 ジェイソン・ライトマン
製作 アイバン・ライトマン
    ジェイソン・ライトマン
    ダニエル・ダビッキ
    ジェフリー・クリフォード
原作 ウォルター・カーン
脚本 ジェイソン・ライトマン
    シェルドン・ターナー
撮影 エリック・スティールバーグ
編集 デイナ・E・グローバーマン
音楽 ロルフ・ケント
出演 ジョージ・クルーニー
    ヴェラ・ファーミガ
    アナ・ケンドリック
    ジェイソン・ベイトマン
    ダニー・マクブライト
    メラニー・リンスキー
    エイミー・モートン
    サム・エリオット

2009年度アカデミー作品賞 ノミネート
2009年度アカデミー主演男優賞(ジョージ・クルーニー) ノミネート
2009年度アカデミー助演女優賞(ヴェラ・ファーミガ) ノミネート
2009年度アカデミー助演女優賞(アナ・ケンドリック) ノミネート
2009年度アカデミー監督賞(ジェイソン・ライトマン) ノミネート
2009年度アカデミー脚色賞(ジェイソン・ライトマン、シェルドン・ターナー) ノミネート
2009年度イギリス・アカデミー賞脚色賞(ジェイソン・ライトマン、シェルドン・ターナー) 受賞
2009年度全米脚本家組合賞脚色賞(ジェイソン・ライトマン、シェルドン・ターナー) 受賞
2009年度ナショナル・ボード・オブ・レビュー賞作品賞 受賞
2009年度ナショナル・ボード・オブ・レビュー賞主演男優賞(ジョージ・クルーニー) 受賞
2009年度ナショナル・ボード・オブ・レビュー賞助演女優賞(アナ・ケンドリック) 受賞
2009年度ナショナル・ボード・オブ・レビュー賞脚色賞(ジェイソン・ライトマン、シェルドン・ターナー) 受賞
2009年度ニューヨーク映画批評家協会賞主演男優賞(ジョージ・クルーニー) 受賞
2009年度シカゴ映画批評家協会賞脚色賞(ジェイソン・ライトマン、シェルドン・ターナー) 受賞
2009年度ワシントンDC映画批評家協会賞作品賞 受賞
2009年度ワシントンDC映画批評家協会賞主演男優賞(ジョージ・クルーニー) 受賞
2009年度ワシントンDC映画批評家協会賞脚色賞(ジェイソン・ライトマン、シェルドン・ターナー) 受賞
2009年度インディアナ映画批評家協会賞作品賞 受賞
2009年度インディアナ映画批評家協会賞主演男優賞(ジョージ・クルーニー) 受賞
2009年度インディアナ映画批評家協会賞脚本賞(ジェイソン・ライトマン、シェルドン・ターナー) 受賞
2009年度サウス・イースタン映画批評家協会賞作品賞 受賞
2009年度サウス・イースタン映画批評家協会賞主演男優賞(ジョージ・クルーニー) 受賞
2009年度サウス・イースタン映画批評家協会賞脚色賞(ジェイソン・ライトマン、シェルドン・ターナー) 受賞
2009年度オースティン映画批評家協会賞脚色賞(ジェイソン・ライトマン、シェルドン・ターナー) 受賞
2009年度ダラス・フォートワース映画批評家協会賞作品賞 受賞
2009年度ダラス・フォートワース映画批評家協会賞監督賞(ジェイソン・ライトマン) 受賞
2009年度ダラス・フォートワース映画批評家協会賞主演男優賞(ジョージ・クルーニー) 受賞
2009年度ダラス・フォートワース映画批評家協会賞脚本賞(ジェイソン・ライトマン、シェルドン・ターナー) 受賞
2009年度ユタ映画批評家協会賞作品賞 受賞
2009年度ユタ映画批評家協会賞監督賞(ジェイソン・ライトマン) 受賞
2009年度ヒューストン映画批評家協会賞主演男優賞(ジョージ・クルーニー) 受賞
2009年度ヒューストン映画批評家協会賞脚本賞(ジェイソン・ライトマン、シェルドン・ターナー) 受賞
2009年度セントルイス映画批評家協会賞作品賞 受賞
2009年度セントルイス映画批評家協会賞監督賞(ジェイソン・ライトマン) 受賞
2009年度セントルイス映画批評家協会賞主演男優賞(ジョージ・クルーニー) 受賞
2009年度フロリダ映画批評家協会賞作品賞 受賞
2009年度フロリダ映画批評家協会賞監督賞(ジェイソン・ライトマン) 受賞
2009年度フロリダ映画批評家協会賞主演男優賞(ジョージ・クルーニー) 受賞
2009年度フェニックス映画批評家協会賞主演男優賞(ジョージ・クルーニー) 受賞
2009年度フェニックス映画批評家協会賞脚色賞(ジェイソン・ライトマン、シェルドン・ターナー) 受賞
2009年度オクラホマ映画批評家協会賞主演男優賞(ジョージ・クルーニー) 受賞
2009年度オクラホマ映画批評家協会賞脚色賞(ジェイソン・ライトマン、シェルドン・ターナー) 受賞
2009年度カンザス・シティ映画批評家協会賞作品賞 受賞
2009年度カンザス・シティ映画批評家協会賞主演男優賞(ジョージ・クルーニー) 受賞
2009年度カンザス・シティ映画批評家協会賞脚色賞(ジェイソン・ライトマン、シェルドン・ターナー) 受賞
2009年度セントラル・オハイオ映画批評家協会賞作品賞 受賞
2009年度セントラル・オハイオ映画批評家協会賞監督賞(ジェイソン・ライトマン) 受賞
2009年度セントラル・オハイオ映画批評家協会賞主演男優賞(ジョージ・クルーニー) 受賞
2009年度セントラル・オハイオ映画批評家協会賞脚色賞(ジェイソン・ライトマン、シェルドン・ターナー) 受賞
2009年度ノース・テキサス映画批評家協会賞作品賞 受賞
2009年度ノース・テキサス映画批評家協会賞主演男優賞(ジョージ・クルーニー) 受賞
2009年度デンバー映画批評家協会賞脚本賞(ジェイソン・ライトマン、シェルドン・ターナー) 受賞
2009年度アイオワ映画批評家協会賞作品賞 受賞
2009年度トロント映画批評家協会賞助演女優賞(アナ・ケンドリック) 受賞
2009年度トロント映画批評家協会賞脚本賞(ジェイソン・ライトマン、シェルドン・ターナー) 受賞
2009年度バンクーバー映画批評家協会賞作品賞 受賞
2009年度バンクーバー映画批評家協会賞助演女優賞(ヴェラ・ファーミガ) 受賞
2009年度バンクーバー映画批評家協会賞脚本賞(ジェイソン・ライトマン、シェルドン・ターナー) 受賞
2009年度ゴールデン・グローブ賞脚本賞(ジェイソン・ライトマン、シェルドン・ターナー) 受賞