アンダー・サスピション(2000年アメリカ)
Under Suspicion
この映画はミステリーの雰囲気を楽しむ人にオススメしたいですね。
と言うのも、ストーリー性を重視する人にはオススメできないというほど、
半ば強引なオチを付けるタイプの映画になっていますので、楽しめない人もいるかとは思います。
個人的にはモーガン・フリーマン演じる警察署長が
被疑者であるジーン・ハックマン演じる大富豪ヘンリーの事情聴取の描き方が
あまり好きにはなれないのですが、それでも発想の奇抜さとしては面白いと思いますね。
監督は『ロスト・イン・スペース』のスティーブン・ホプキンス。
元々は『プレデター2』とか『ゴースト&ダークネス』とか撮っていたので、
てっきりクリーチャーを使ったパニック映画がお得意なのかと思っていたのですが、
本作は驚くほどに真っ当なサスペンス映画の定石を踏襲しており、それはそれで驚きですね(笑)。
いや、ホントに予想外なほどにストレートな映画になっていて、感心させられてしまいましたね。
どうも、この映画のラストの中途半端さが賛否を呼んでいるようなのですが、
僕はこれはこれで良かったと思いますね。映画の中盤から、ヘンリーの美しい妻シャンタルとの
微妙な夫婦関係に触れていた意味が、ここで活かされたようで、このラストはそれなりに意味深長ですね。
夫婦関係が悪化する中で、妻シャンタルとの性生活が途絶えてしまったヘンリーは、
酔っ払って深夜、自らの性欲を満たすために娼婦を求め、一人、危険地帯へと赴く。
勿論、ヘンリーはそんな姿をシャンタルに知られたくないと思いながらも、彼自身、抑え切れないのです。
そもそもシャンタルとの性生活が途絶えてしまったのは、
シャンタルの強い嫉妬心だったわけで、それをキッカケにシャンタルが心を閉ざしてしまうのですが、
つまらない発言をするならば、ここで彼らはよく話し合うべきでしたね。
そうすれば、少なくともヘンリーは自暴自棄な行動に走らずに済んだかもしれません。
このヘンリーの苦悩は深く、シャンタルの疑念を感づいていたヘンリーは、
警察が連続少女強姦殺人事件の犯人として自分を疑っていることが明白になり、
当初は必死に否定しておりましたが、次第に彼の供述は自白へと変わっていきます。
ただ、ここで面白いのでは、ヘンリーの供述がコロコロ変わるので、
警察はより疑念を深めるのですが、実はヘンリーの意図はそこには無かったということ。
そして取調室のブラインドの向こう側にシャンタルがいることを知ったヘンリーは、
自らの性癖を供述するようになり、シャンタルの心は大きく動揺するようになります。
(怒りに満ち溢れシャンタルが窓に唾を吐きかけるシーンが印象的でした)
しかし、映画はラストにチョットしたオチを用意しています。
そこでヘンリーの供述が実にミステリーに溢れていることを強調します。
ただ、これは別に難しいことではなく、ヘンリーがシャンタルのような美女と結婚したことを、
ステータスにしていたのに、その生活が実質的に破綻してしまったことに対する嘆きだったのでしょうね。
それは復讐心にも似た感情だったでしょうし、
或いは今の生活に対する自暴自棄な気持ちだったのかもしれません。
周囲から見れば、「一体、何なんだ、この供述は!?」という感じだったのでしょうが。。。
それにしても、シャンタルを演じたモニカ・ベルッチは当時、
ハリウッドにも呼ばれるぐらい知名度が上がっていたイタリア出身の女優さんでしたが、
さすがに人気絶頂だったことを象徴していますねぇ(笑)。それはそれは、スゴいフェロモン(笑)。
特にこの映画でも、冒頭に思わずドキッとさせられる後姿が映り、これは世のオッサン大喜びでしょう(笑)。
まぁ確かにこんな奥さんが来ちゃって、
何一つ自分にかまってくれないようでは、自暴自棄になるわなぁ〜(笑)。
しかし、ヘンリーが「シャンタルは異常なまでに嫉妬深い」と言っていますが、
そんなシャンタルの美貌であるがゆえ、ヘンリーも十分に嫉妬深いことは明らかで、
常に彼はシャンタルの浮気を疑っていたわけで、おそらくシャンタルも彼のそんな視線に気づいていただろう。
まぁそういう意味で、僕はこの映画、謎解きの要素が強いように感じられますが、
スティーブン・ホプキンスの意図はそこにあるのではなくって、ヘンリーとシャンタルの微妙な夫婦関係が
実はメインに掲げられている映画であり、謎解きはあくまで観客を惑わす要素でしかないと思いますね。
だからこそ、警察署長がヘンリーの決定的な一言を聞いて、「キタぁ!」と思う瞬間は絶妙な味わいがあります。
ちなみに本作はジーン・ハックマンとモーガン・フリーマンが2人とも製作総指揮として参加しています。
2人は実年齢は7歳ほど違い、ジーン・ハックマンの方が年上ではありますが、
2人は92年の『許されざる者』で共演していましたね。ベテラン俳優の対決という構図ではありますが、
どちらかと言えば、ジーン・ハックマンに見せ場を持たせることを主眼に置いた映画ではありますね。
まぁヘンリーの供述による事件の回想シーンに警察署長を登場させるなど、
今までの映画には無かった斬新なシーン演出があるにはあるのですが、
あくまでサスペンス映画としては及第点レヴェルでしかないと思いますが、
それでも更に一枚上を行くドラマがあるという意味で、僕はこの映画は優れた部分があると思います。
ついでにモニカ・ベルッチの美貌を拝みたいと願う人には、
是非ともオススメしたい作品として、リストアップしておきたいところですね。
(上映時間110分)
私の採点★★★★★★★☆☆☆〜7点
監督 スティーブン・ホプキンス
製作 アン・マリー・ギレン
スティーブン・ホプキンス
ロリー・マクレアリー
原作 ジョン・ウェインライト
原案 クロード・ミレール
ジャン・エルマン
ミシェル・オーディアール
脚本 W・ピーター・イリフ
トム・プロヴォスト
撮影 ピーター・レヴィ
編集 ジョン・スミス
音楽 BT
出演 ジーン・ハックマン
モーガン・フリーマン
モニカ・ベルッチ
トーマス・ジェーン
ミゲル・アンヘル・スアレス