トゥー・ウィークス・ノーティス(2002年アメリカ)

Two Weeks Notice

映画の前半はイマイチだったが、後半に差し掛かると良くなりましたね。

もはや軽薄なイケメン中年男性を演じるのが“虎の巻”になってきた、
イギリス人俳優ヒュー・グラントが持ち味の(?)薄っぺらい男を演じたラブ・コメディ。

どちらかと言えば、ヒロインのサンドラ・ブロック自身がプロデュースした企画だし、
映画自体も彼女の存在感をプッシュしているのですが、結果的に本作は彼女よりも、
ヒュー・グラントの持ち味の方が前面に強調されており、彼の映画になっていますね(笑)。

前述したように、映画は前半から中盤にかけての流れがイマイチだったけど、
サンドラ・ブロック演じる女性弁護士ルーシーがテニスをやって、腹いせにチリドック食べて、
帰路の高速道路の渋滞で、お腹を壊してトイレを探すシーンあたりから、面白くなっていきます。

思いがけぬところで、ジャズ・シンガーのノラ・ジョーンズが出演していたり、
無駄に豪華なところのある映画なのですが、前述した映画の前半をもっと何とかできていれば、
おそらく映画の印象はもっと良くなったであろうし、映画のテンポ自体ももっと良くなったと思う。

監督のマーク・ローレンスは本作が監督デビュー作となりましたが、
01年にサンドラ・ブロックが主演して大ヒットとなった『デンジャラス・ビューティー』に製作として参加しており、
おそらく『デンジャラス・ビューティー』がキッカケで本作が誕生したのでしょうね。
サンドラ・ブロックとは99年の『恋は嵐のように』からのつながりですから、この頃は彼女の存在が大きい。

けれども、最近は『ラブソングができるまで』や『噂のモーガン夫妻』と
立て続けにヒュー・グラント主演作の監督を務めていますので、少し流れが変わったのかもしれません。

欲を言えば、この映画、ヒュー・グラント演じる会社社長をもっと嫌な奴として描いても良かったかなぁ。
その方がヒロインの存在によって、どれだけ彼の人間性が変わったかを象徴できて良かったと思う。
惜しいことに、この映画、彼は登場した段階から、そこまで嫌な男ってわけじゃないんですよね。

しっかし、サンドラ・ブロックの女優根性には恐れ入ります(笑)。
仮にも彼女は00年代に入った頃、本作のようにプロデュース業にも乗り出していて、
劇場公開されるロマンチック・コメディは次から次へとヒットしている状況で、同世代の女優さんたちが
次々と脱落していく中で、彼女だけが勢いを保ったまま女優活動していただけに、
そんな人気女優がチャレンジを憶するような、何とも微妙に“汚れて”しまうシーンがあります(笑)。

まぁあまりに一人暮らしが板に付き過ぎて、
デリバリー中華をヤケ食いして、過食症を匂わせるシーンがあることを始まりに、
前述した渋滞で立ち止まった高速道路で、車の中でチリドックが胃腸を刺激し始め、
お尻にできるだけ刺激を与えないようにトイレを探し回るなんて、女優根性を思う存分発揮します(笑)。

いや、でも...冗談抜きで、この映画は彼女がこれだけ頑張ったからこそ、
ここまで映画の後半で持ち直したと思うし、それなりに面白さが出てきたんだと思いますねぇ。
おそらく彼女がここまで頑張らなければ、映画は腐ってしまっていたでしょう。

映画とは全然、関係ない話しではありますが...
何気に主人公カップルが野球を観に行くというシーンで、ニューヨーク・メッツ時代の新庄が
打席に入っている姿を映っているのには、さすがに驚きました。構えですぐに分かります(笑)。

さすがに何分も映っているわけではないのですが、
結構、目立つような形でフレームインしているだけに、それも作り手の狙いなのかと勘違いしますね(笑)。
新庄のメジャー時代の活躍はあまり知られていないですから、これは貴重ですね(笑)。

それと、ヒロインがファールボールをフェンス際で、
キャッチャーが捕球しようとしてくるところを、直接、取ってしまうのですが、
当然のように周囲のメッツ・ファンからは大ブーイングなのは分かるとしても、
いらくなんでもあそこまで酷いブーイングの嵐なんだろうか?(笑)
さすがにあんなブーイングを浴びせられたら、心折れて、帰りたくなるでしょうね(苦笑)。

まぁ映画の前半がもう少しどうにかなっていれば、
本作の印象も変わっていたのでしょうけれども、前半の停滞は実に勿体ないですね。

まぁこの手の映画って、お手軽って印象も受け易いんだけど、
“土台”がキチッとできていないと、映画が完全にダメになってしまうこともあるんですよね。
そういう意味では本作、作り手がそれなりに考えて作っていたからか、映画はそこそこ魅力的になっており、
撮り方自体は間違っているとは言えず、むしろしっかりとしたビジョンがあったのだろうと思います。

それと、やっぱり主人公カップルの抜群なコンビネーションですね。
ヒュー・グラントはほとんどアドリブでやってるんではないかと思ってしまうぐらい自然だし(笑)、
サンドラ・ブロックもすっかりコメディエンヌとしての魅力を活かす術を知っている感じです。

とまぁ・・・キャスティングの面では、実に上手くいった映画であり、
やはりキャスティングというものが、映画の成功の大きなウェイトを占めているということを
改めて実感させられてしまう、見事なまでの好例と言ってもいい映画ですね。

僕もこの映画のヒロインのように、“強いもの”を持たなければなりませんね・・・。

(上映時間101分)

私の採点★★★★★★★☆☆☆〜7点

監督 マーク・ローレンス
製作 サンドラ・ブロック
脚本 マーク・ローレンス
撮影 ラズロ・コヴァックス
編集 スーザン・E・モース
音楽 ジョン・パウエル
出演 サンドラ・ブロック
    ヒュー・グラント
    デビッド・ヘイグ
    アリシア・ウィット
    ダナ・アイヴィ
    ロバート・クライン
    ヘザー・バーンズ