ツインズ(1988年アメリカ)

Twins

80年代に一世を風靡した肉体派スター、アーノルド・シュワルツェネッガーが初めてコメディに挑戦した作品。

監督はコメディ映画では定評があるアイバン・ライトマンで、
シュワちゃんの双子の弟役を演じたのがダニー・デビートと、コメディ映画を撮る土台はキチッと用意されてました。

僕の率直な感想を言えば、確かに“波瀾”は無いが、まぁまぁ楽しい。
突き抜けた部分も、ゲラゲラ笑えるギャグも皆無だが、それでも映画のリズムが良く、まずまず楽しめる。
残念ながら先日、他界してしまいましたが、やはりアイバン・ライトマンはコメディ映画を撮るノウハウは
しっかりと持っていたディレクターで、多少、難があるシナリオや企画でも、それなりのレヴェルには仕上げてくる。

内容や、映画の雰囲気としては80年代の感覚丸出しで、
今となっては時代遅れな感がありますが、それでも極端に古びた感じでないですね。

アイバン・ライトマンも故人となってしまいましたが、シュワちゃんの相手役の女性を演じた、
ケリー・プレストンも数年前に残念ながら、乳がんで亡くなってしまったことを思うと、
なんだか複雑な気分になってしまいますが、彼女もまだ20代の頃の出演作でフレッシュな魅力に満ちてますね。

映画は、かつて遺伝子操作の技術を駆使して、
優秀な精子提供を受けて双子の赤ちゃんを出産したものの、孤児院に預けた母親。
双子の兄弟は離れ離れに成長し、頭脳明晰・肉体美を誇る兄ジュリアスに、自由奔放に生き、
借金で困っている弟のビンセント、弟との再会を待ちわびたジュリアスが単身でアメリカ合衆国を訪れ、
ビンセントと合流して、自分たちの出生を辿り、実の母親に会いに行く珍道中を描いたコメディです。

当時はシュワちゃんのギャラもそこまで高騰していなかったのか、
本作は1億ドルを超える興行収入の大ヒットで、多額の利益をあげることができた作品になりました。
まぁ・・・如何にも80年代らしいコメディ映画ですので、ヒットしたというのもこの時期ならではって感じしますがね。

この映画を観ていて思いましたが、シュワちゃんはコメディ映画が結構合っている。
ボディ・ビルダー出身の肉体ムキムキ・スターで駆け上がったシュワちゃんでしたから、
当時は役者としての幅を広げるためって感じだったのかもしれませんが、案外、上手かったという印象で
何より本人も楽しそうに演じており、僕は違和感がなかった。そういう意味では、適性があったのかもしれない。

シュワちゃんが本作や90年の『キンダガートン・コップ』でコミカルな路線を開拓したから、
それに追従せざるをえなくなったのがシルベスター・スタローンで、彼もまた91年の『オスカー』や
92年の『刑事ジョー/ママにお手上げ』といったコメディ路線で、シュワちゃんに対抗せざるをえなくなった。
(・・・が、結果的にはやはりシュワちゃんの方がコメディ映画に合っていたかな。。。)

映画の出来自体は、平均的な水準かと思いますけど、
本作の場合は、ある意味でキャスティングがハマって、なかなか面白い映画に仕上がったという印象ですね。

ダニー・デビートだけがコメディ演技なのかと思いきや、
どちらかと言えば、シュワちゃん演じるジュリアスがギャグを繰り出すというイメージで、そんなピュアな兄に
付きまとわれて弟のビンセントが手を焼くという構図なのが面白く、どこまでも一途なジュリアスが印象的だ。

まぁ、ビンセントはビンセントで借金まみれの自堕落な生活を送って、
常に借金取りに狙われている立場であって、お世辞にも真面目に生きているとは言い難い。
けど、映画はそこまでシリアスになる部分もなく、実にアッサリとビンセントをピンチの局面を描いています。
この時に彼らを追ってくる悪党も、あんまり強くないあたりが、本作の良さなのかもしれませんね。

映画のクライマックスの攻防も、良い意味でユルい。あくまで本作のハイライトとなるべきところは、
ビンセントが運ぶ物を奪い合うところではなく、双子の兄弟の交流にあると理解しておいて方がいい作品ですね。

だから、確かにこれが作り手が掲げる主題がよく分からない内容であれば、
この悪党との攻防をハイライトにすべきで、僕も「盛り上がらない映画だった」という感想で終わったでしょうが、
映画の企画としても、シュワちゃんがコメディ映画に挑戦するということ自体に意義があったわけで、
やはりダニー・デビートという、とても兄弟には見えない双子が、どう離れ離れだった時間を埋め、
心の交流を進めるのかという点がキチッと描けているのであれば、映画は成立したと見なしていいと思います。

まぁ・・・少々寂しいところがあるとすれば、コメディ映画として突き抜けたものは無い。
シュワちゃんは頑張ったが、ダニー・デビートは彼にピッタリのキャクラターではあったものの、
暴れ回るというわけでも、派手に笑わせてくれるわけでもなくって、もっと笑いの部分で引っ張っても良かった。

どういう内容になるのか、サッパリよく分かりませんが、
実は本作、『トリプレッツ』という原題で続編が製作中だというから、正直、僕もビックリしました(笑)。

いやはや、続編を作るほど面白い映画だったとも思わず、あまりに年月が経ち過ぎてしまい、
さすがに“鉄が熱いうちに”映画をシリーズとして定着させるには、あまりに中途半端なコンセプトだと思う。
この辺は映画撮影前の脚本を読む段階で分かっていたところでしょうし、作り手がフォローして欲しいところ。

監督を務める予定だったアイバン・ライトマンが他界されましたので、
この企画自体がどうなってしまうのか、よく分かりませんが、きっとシュワちゃんにとっても大事な作品なのでしょうね。

どうでもいい話しではありますが...
やっぱりいくら、優秀な遺伝子を集めても、それが子の世代になって優勢な遺伝子として残るとは限りません。
生まれてからの環境要因も凄く大きいので、本作のように双子が生まれて、どちらかに偏るということ自体、
少々、非現実的な気がしますけどね。前述しましたが、ここまで似ていない兄弟というのも珍しいし(笑)。

何気に彼らの母親のメアリー・アンの若き日を演じたのが、ヘザー・グレアムのようですね。
撮影当時、10代後半というハイティーンの頃だと思うのですが、またスゴい役を演じたものですね。

欲を言えば、せっかくロード・ムービーの様相を呈しているにも関わらず、
あまり移動している感覚が伝わってこない内容になっている点で、映画のベースをもっとロード・ムービーに
持っていっても良かったと思う。映画の後半は完全にロード・ムービーになっているだけに、なんだか勿体ない。

その途中のモーテルで、ジュリアスがケリー・プレストンと“初めての夜”を迎える描写が面白くって、
お約束のようにビンセントが部屋を空けて、代わりにすぐに彼女が入って来て、そんな雰囲気アリアリだが、
なかなか女性に晩熟で積極的ではないジュリアスが、床に寝てモジモジしていたところ、それにジレた
ケリー・プレストンが少々呆れた表情で隣にやって来る。それから“終わってから”のジュリアスの表情が最高。

とまぁ・・・抜群の出来というほどではありません、気を張らずに楽しむ分には十分な映画です。
シュワちゃんが出演したコメディ映画として観ても、現時点ではベストと言ってもいいかもしれません。
『キンダガートン・コップ』も『ジュニア』も悪くはないけど、やはり第一弾のインパクトは大きかったと思います。

それにしても、映画の中盤で見せるシュワちゃんの肉体は、やっぱりスゴい・・・(笑)。

(上映時間106分)

私の採点★★★★★★★☆☆☆〜7点

監督 アイバン・ライトマン
製作 アイバン・ライトマン
脚本 ウィリアム・デイビス
   ウィリアム・オズボーン
   ティモシー・ハリス
   ハーシェル・ワイングロット
撮影 アンジェイ・バートコウィアク
音楽 ジョルジュ・ドルリュー
出演 アーノルド・シュワルツェネッガー
   ダニー・デビート
   ケリー・プレストン
   クロエ・ウェップ
   ボニー・バートレット
   マーシャル・ベル
   デビッド・カルーソー
   トレイ・ウィルソン
   ヒュー・オブライエン