007/サンダーボール作戦(1965年イギリス)

Thunderball

まぁこの辺から、少しずつシリーズの方向性が狂ってくることを示唆していたかのようですが、
まだまだ観れるレヴェルの極上のエンターテイメントと言ってもいい、シリーズ第4弾の人気作ですね。

前作『007/ゴールドフィンガー』では、ガイ・ハミルトンがメガホンを取りましたが、
今回は第1作・第2作と監督したテレンス・ヤングに戻っておりますが、あまり気にならない交代でしたね。

ハッキリ言えば、もう第1作のようなスタンスではないせいか、ガイ・ハミルトンとそう変わりありません。

さすがに今回も莫大な予算を用意していたせいか、
テレンス・ヤングも随分と気合の入ったスケールのデカい演出に執着しており、
当時、最先端であったと思われる合成技術を駆使したり、目まぐるしいカット割りの連続で、
鋭いアクション・シーンを連続して投入するなど、観客を楽しませることに余念がありません。

次第に小道具で楽しませる傾向が強まっており、
映画の中盤で早くも登場してきますが、ボンドが奇妙なボンベのようなものを背負って、
追っ手の追跡を回避するためにと、空を飛んで逃走するシーンなんて飛び道具まで登場します。

さすがに作り手も描きたいことが多かったせいか、
上映時間が2時間を超えてしまうなど、長編になる勢いで撮影を続けていたようですが、
クライマックスのラルゴとの対決シーンで急展開にするなど、そこそこ上手くまとめております。

しかしながら、僕の中で大きな不満点として残るのは、
やはりクライマックスの海中での大乱闘であり、これはイマイチ見せ場として盛り上がりに欠けましたね。

マイアミ付近で原爆を爆発させる計画だったラルゴの野望を打ち砕くためにと、
ボンドと彼に協力するCIAのフェリックスライターは現地の協力隊に応援を頼んで、
全員、ボンベを背負ったまま、海中での大乱闘に発展するのですが、途中で鮫の襲撃を回避したり、
水中銃を使ったりと、大混乱の合戦シーンになってしまい、誰が誰だかよく分からない(苦笑)。

このクライマックスは、ハッキリ言って、失敗だったのではないかと思いますね。
おそらくテレンス・ヤングにとっても、大きなチャレンジであったクライマックスのアクション・シーンだったとは
思うのですが、さすがにここまで混沌とした構図になってしまったのは、このシリーズには似合わないかな。

オマケにラストシーンなんて、お約束のボートを小道具のように扱っているのですが、
このラストシーンは作り手には申し訳ないけど、笑っちゃいますよ。あまりにブッ飛んでて(笑)。

やっぱり、小道具のバリエーションで見せるという苦しい展開に陥ってしまうと、
こういう多少、キワどいネタでも使ってしまわざるをえなくなってしまい、映画の流れを停滞させてしまいますね。
率先して、Qがボンドに接触して、ボンドに小道具を与えますが、僕にとってはこれは不必要な流れかな。
こんなことに気を遣うぐらいなら、個人的にはもっとアクション・シーンをしっかり撮って欲しかったし、
007シリーズの本来的な魅力をもっとしっかり継承しながら、新たな境地を開拓して欲しかったですね。

映画の冒頭で流れるトム・ジョーンズの主題歌はそんなに悪いとは思いませんが、
やはり前作のシャーリー・バッシーの主題歌が良過ぎたせいか、あまり強いインパクトは残せていませんね。

但し、上映時間の割りに、映画のテンポが最後の最後まで悪くならなかったのは感心しましたね。
通常だと、こういう詰め込んだアクション映画になってしまうと、必ずと言っていいほど、中ダルみがあるのですが、
クライマックスのアクション・シーン以外は大きな不満が無く、ひじょうに映画がシャープな印象を残しますね。

それと、ラルゴは人食い鮫を飼育しており、気にくわない奴らを片っ端から
プールに投げ落とし、人食い鮫のエサにしていましたが、この発想から描き方まで、
75年にスピルバーグが撮った大傑作『JAWS/ジョーズ』と同じであることに驚きを禁じ得ない。
確かに鮫の恐怖を描いていたことはあったとは思うけど、実際に人間が食われてしまう描写を
スピルバーグよりも早い段階で本作が行っている事実は、僕は特筆に値すると思うし、再評価を促したい。

さすがに直接的なショック描写はできなかったせいか、
テレンス・ヤングは工夫を凝らしており、水中カメラの正面の水域に血液を流すなど、アイデアが素晴らしい。

クライマックスの決闘にしても、海中でのアクション・シーンはお粗末だったけれども、
それ以降の外側を切り離して疾走する、ボートの操縦室内での格闘シーンはそこまで悪くない。
操縦室から見える、前方のビューで猛スピードで蛇行するボートが、幾度となく岩場に衝突しそうになる様子を
合成映像で表現するのですが、何度も同じ映像を使い回しているように思えるのは、ご愛嬌ですがねぇ。。。

映画の冒頭でボンドが療養施設みたいなところに行っていて、
そこでセクハラをやりたい放題なボンドでしたが、ベッドにうつ伏せ寝になって体を固定され、
脊椎を伸ばすかのような運動をするマシーンに15分にわたり付き合わされることになり、
しっかり施設の女性職員から復讐されるのですが、世界を股にかけるスパイがトンデモないセクハラ親父で
あったという設定も凄いけど(笑)、あの謎の動きをするマシーンの意味もよく分からない(笑)。

そこで悪巧みをする男が部屋に侵入してきて、
猛烈なスピードにされるという拷問にあってしまうボンドですが、しっかりと復讐しに行くし、
ドサクサに紛れて、担当した女性職員をシャワールームに連れ込むという女ったらしっぷりが凄い(笑)。

まぁ時代が時代なだけに、女性蔑視の傾向も感じなくはないのですが、
さすがにここまでボンドの女ったらしっぷりが徹底してるなると、笑えてくるんですよね。

ちなみに本作は83年に何故かハリウッド・リメークされており、
当時、50歳を過ぎたショーン・コネリーが12年ぶりにボンド役に再起用され、
莫大な予算を投じて『ネバーセイ・ネバーアゲイン』というタイトルで全世界で劇場公開されました。

(上映時間130分)

私の採点★★★★★★★★☆☆〜8点

監督 テレンス・ヤング
製作 ケビン・マクローリー
原作 イアン・フレミング
脚本 リチャード・メイボーム
    ジョン・ホプキンス
    ジャック・ホイッティンガム
撮影 テッド・ムーア
音楽 ジョン・バリー
    モンティ・ノーマン
出演 ショーン・コネリー
    クローディーヌ・オージェ
    アドルフォ・チェリ
    マルティーヌ・ベズウィック
    ルチアナ・パルッツィ
    リク・ヴァン・ヌッター
    バーナード・リー
    ロイス・マクスウェル
    デスモンド・リュウェリン

1965年度アカデミー特殊視覚効果賞 受賞