Black & White/ブラック&ホワイト(2012年アメリカ)

This Means War

CIAのトップ・エージェントの2人が同僚としての意識を越えて、
一人の製品調査会社に勤める女性のハートをゲットするために、あれやこれやの争いをするコメディ。

監督は『チャーリーズ・エンジェル』のマックGですが、如何にも彼らしい映画ですね。
アクション・シーンはハイテンションに表現するために、やたらと音楽をガンガン流して、
スピード感いっぱいのカット割りを連続させて、半ば強制的に映画の流れを作ろうとしています。

個人的には、こういう画面作りは好きではないんだけど、これが最近の主流だから仕方ないのかな。

どうにも画面がうるさ過ぎるし、音響的にも騒がし過ぎる。
映画が全然落ち着かないし、思わず「こうしないと、エキサイティングな映画にできないのだろうか?」と
最近の映画界の画一的な映像表現に、アイデアの枯渇を感じるというか、アイデアの乏しさを感じる。

結局、CIAのトップ・エージェントが一人の女性を取り合うために、
CIAの総力を結集させて、肝心かなめのロシア・マフィアの捜査そっちのけで、
あの手この手を尽くして女性をゲットしようと悪戦苦闘するなんて設定自体が突拍子も無い感じなんだけど、
それは個人的にはどうでもよくって、欲を言えば、描くからにはロシア・マフィアをもっと真剣に描いて欲しかった。

これは結局、映画の冒頭から2人の宿敵であるかのように描いておきながら、
実のところ、中途半端に悪役を描いてしまったがために、映画そのものが中途半端に映ってしまう。
こんなに中途半端に描くのであれば、いっそのことロシア・マフィアのことは最初っから描かないで、
ヒロインを大の大人の2人が取り合うというエピソードだけに注力してしまえば良かったのに・・・とは思う。

僕の正直な意見としては、これが本作の致命的な部分であって、
肝心かなめのアクション映画としての魅力が中途半端にしか表現できておらず、ちっともエキサイティングではない。

本作の製作費は、ほとんどリース・ウィザースプーンのギャラに使われたのではないかと、
余計な邪推を入れたくもなるほど、映画の中盤は盛り上がりに欠ける作りになっていて、
映画の冒頭で描かれた、ロシア・マフィアを検挙するという大きなファクターが、完全に放置されてしまう。
これでは、本来的には盛り上げたかったであろう、映画の終盤にも良い意味で盛り上げることができないのですよね。

個人的にはリース・ウィザースプーンという女優さんも、
この手の映画のヒロインとして引っ張り出すには、正直言って、10年は遅かったのではないか?と
思えてならないのだけれども、彼女の存在感に対して、主演男優2人の存在がもの凄く薄いというのも残念。

結果として...映画全体としてバランスがしっかり取れていないような印象が残ってしまうんですよね。。。

個人的には『チャーリーズ・エンジェル』なんかのことを考えても、
マックGなら、本作の企画自体、もっと違う観点から映画を撮れたのではないかと思います。
つまり、本作はあまりに正攻法過ぎたんだけど、本来、正攻法で撮ること自体が適していないと思うんです。

「じゃあ、どうしたらいいのか?」という結果論を言わざるをえない話しなんだけれども・・・
僕は恋愛の要素はほどほどにして、アクション映画に傾倒させるのか、コメディ映画に傾倒させるのか、
もっとハッキリさせるべきだったと思う。正攻法で撮ると、結局は両方の良いトコ取りをしようとしてしまう。
言いたくはないけど、本作の場合は結局、そんな作り手の思惑が仇(あだ)になってしまった感が強い。

どの道、オリジナル・シナリオの映画化なのですから、もっとシナリオの段階で
練り直すことは十分にできたはずですし、マックGのプロダクションなら、映画をもっと面白くできたはずなのです。

映画を観る限り、冒頭の香港でのシーン演出なんかはCGもバリバリ使っての映像表現で、
スタリッシュにアクションを撮ろうとしていたわけだから、開き直ってアクションに注力した方が良かったと思う。
勿論、CIAのトップ・エージェントが公私混同上等で、職権乱用の如く、次から次へと力を投入して、
ヒロインの行動を監視したり、恋敵の動きを見張るなどといったことにでる発想そのものが面白いという
ことなんだろうけど、それだけでこれだけの規模の映画を引っ張っていくという前提条件は、かなりキツい。

この辺は、シナリオ(素材)をどう活かすか、どう映像表現するか、
そしてどう編集するかという点で、マックGがキチッと作品として体系化するために工夫しなければなりません。

00年代以降、ハリウッドでマックGはすっかり売れっ子映画監督になりましたが、
この映画が好きな人には大変申し訳ないけど...僕は正直言って、この映画は失敗作だと思うのです。

上映時間が比較的、短く、スッキリとした尺でまとめられたという点では良かったけど、
いざ本編を観て強く感じたことなのですが、カット割りでアクションをスピード感持って表現し、
作り手も意識して映画のテンポを上げようと工夫しているけど、そこまでテンポが良くなっていない。
上映時間の割りに、どこか長く感じられたというのが本音。これが本作の完成度を如実に物語っていると思う。

映画は要は二股交際を敢えてヒロインにさせるということがコンセプトなんだけど、
ここまで上手く二股交際ができるのかということは、チョット疑問あり(笑)。まぁ、現実でもよくある話しだけど(笑)。
ヒロインはヒロインで、元カレのことを忘れられず、咄嗟に利かせた機転のおかげで二股交際になっていくのですが、
男と女、双方に不都合な事実があるからこそ成り立つ話しであって、やはりフィクションならではの話しかも(笑)。

でも、そういう意味ではヒロインであるローレンの良さってのも、
もう少し映画の中で具体的にしっかりと描いて欲しかったし、映画を観ていても違和感を感じましたねぇ。

リース・ウィザースプーン曰く、「女性の強さが認められたからこそ、出来た映画」とコメントしていたようですが、
確かにヒロインの精神的な強さを描いている映画だとは思いますが、そういった社会的な部分を反映した映画かと
聞かれると...それはなんとも微妙なところで、個人的にはそこまでの深さは本作にないと思う。

どちらかと言えば、エンターテイメントに徹した映画であって、
あまり深く考えずにサクッと観れてしまうというのが、本作のコンセプトなのだろうと思います。
だからこそ、マックGの演出が活きるところなはずですが、上手く機能していないところが致命的。

どうでもいいのですが・・・この映画って、ウィル・スミスがプロデューサーとして参加してたんですね(笑)。

(上映時間97分)

私の採点★★★★☆☆☆☆☆☆〜4点

監督 マックG
製作 ロバート・シモンズ
    ジェームズ・ラシター
    ウィル・スミス
    サイモン・キンバーグ
原案 ティモシー・ダウリング
    マーカス・ガウテセン
脚本 ティモシー・ダウリング
    サイモン・キンバーグ
撮影 ラッセル・カーペンター
編集 ニコラス・デ・トス
音楽 クリストフ・ベック
出演 リース・ウィザースプーン
    クリス・パイン
    トム・ハーディ
    ティル・シュヴァイガー
    チェルシー・ハンドラー
    アンジェラ・バセット
    ジョン・ポール・ルタン