隣のヒットマンズ 全弾発射(2004年アメリカ)

The Whole Ten Yards

確かにカルトな人気を集める要素はあるけど、続編を作るほどの映画かなぁ・・・(苦笑)。

00年に製作され、全米ではそこそこのヒットを飛ばした『隣のヒットマン』の続編で、
既にアクション・スターとしてはピークを過ぎ、俳優としての転換期を迎えていた、
ブルース・ウィリスが自身のイメージを上手く利用しながら、ブラック・ユーモアを表現した作品で
日本でも劇場公開されていたのですが、続編である本作はほとんど印象に残らず、劇場公開が終了でした。

そもそも『隣のヒットマン』のヒットって、
当時、全米のお茶の間の話題を奪っていた、人気シリーズ『フレンズ』でチャンドラー役を降りて、
ハリウッドで映画俳優として本格的に活動しようとしていたマシュー・ペリーが出演したということで、
『フレンズ』のファンが動員できたってことが大きかったのではないかと思うんですよねぇ。

前作ではジョナサン・リンがメガホンを取って、
何とも言えない絶妙な間合いを持った作品に仕上げていたのですが、
本作はコメディ映画を専門に撮っている、ハワード・ドイッチに監督が交代し、映画のカラーが変わりましたね。

思ったほど、ベタなコメディ映画というほどではないのですが、
おそらくハワード・ドイッチも前作の流れを意識して映画を撮ったのか、どことなく中途半端というか、
映画にコメディ映画として持つべき勢いや、パワーといったものが足りていない印象が残っていますね。
他のハワード・ドイッチの監督作品と比較すると、正直言って、本作はかなり物足りないなぁ。

まぁ、ブルース・ウィリスも悪くないし、マシュー・ペリーも頑張っている。
前作でセクシーな役回りだったアマンダ・ピートも、前作ほどではないにしろ、インパクトはあるし、
すっかり紅一点という存在になった(笑)、ナターシャ・ヘンストリッジも存在感はしっかり残っている。

でも、映画の出来含め、その印象から言うと、前作以上のものは無かったですね。
オマケに監督交代が災いしてか、ブラック・ユーモアのパンチ力は落ちてしまい、映画のカラーが少し変わった。

メイクしてまで老け役の悪党を演じたケビン・ポラックもどこか狙い過ぎで、
半ば無理に前作を意識して撮ってしまったせいか、ハワード・ドイッチの手腕を発揮できなかったですね。
これを前作から4年も経過して、言ってしまえば、旬な時期を大きく過ぎてから、製作した意味がよく分かりません。
あくまで可能性として言えば、これが前作の劇場公開が終わって、すぐに製作していれば変わっていたでしょう。
たいへんキツい言い方で申し訳ありませんが、これは失敗するべくして失敗してしまった企画という気がします。

80年代は『プリティ・イン・ピンク/恋人たちの街角』、『恋しくて』と、
立て続けに“ブラット・パック”の世代を引っ張り出して、瑞々しい青春映画をヒットさせてましたが、
やはり時代の流れについて行けなかったのでしょうかね、90年代以降、すっかり低迷してしまっています。
(決して、“デキない”映像作家ではないと僕は思っているのですがねぇ〜。。。)

あまりに話題にならなかった続編だったせいか、
邦題では“全弾発射”などと余計なサブタイトルが付いていますが、
銃撃戦シーンについても、前作並みで特にこの続編で激しく描かれたわけではありません。

こういう余計な誇張表現が、映画の価値を過剰に損なってしまうのも残念ですね。
確かに映画の出来、内容、キャスティングからも大きな話題性はありませんが、もっと上手に宣伝して欲しい。

まぁ、ブルース・ウィリス演じる非情な殺し屋ジミーが、殺し屋稼業を引退して、
悠々自適な隠居生活を送っているという設定なんですが、映画の冒頭からどこかチグハグな感じ。
おそらく裏で色々と企んでいるのだろうと、観客も勘ぐるように映画はできているのですが、
どうも彼の描写に一貫性がないせいか、やたらと“専業主夫”化するジミーの姿が胡散クサい。

この辺も、もっと上手く描こうと思えば、もっと別なアプローチはあったはずで、
こういうマイペースなストーリー展開を観ると、ブラック・ユーモアと独特なユルさが特長だった、
前作のファンのためだけに作られた映画という感じで、この作り方は賛否が分かれるところだろう。

この作り方の良し悪しはともかく、こういう感じになってしまうと映画は苦しくなりますねぇ。

しかし、映画の中盤はそこまで悪くないと思う。
映画のテンポは悪くないし、夫婦ゲンカを混ぜながら、上手くコメディ映画としてのバランスをとっている。
この辺はシナリオ上の工夫もあるでしょうけど、コミカルさを出すという意味では、上手いですね。
ブルース・ウィリスもアクション映画並みに、コメディ映画に出演しているせいか、すっかり慣れた感じだ。
(クロロホルムを嗅がされて、ヨダレを垂らしながら昏睡する芝居も、やたらとリアルだ・・・)

それでいながら、この映画はクライマックスでまた失速してしまう。
色々と一悶着があって、映画は終わるのですが、この一連の処理が上手くなかった。
ハワード・ドイッチも意識していたとは思うけど、このラストはとても重要だっただけに勿体ない。

得てして、この手の映画はクライマックスで上手くやると、
それまで不出来だった部分がかき消されるように、映画の印象が良くなることがあるだけに勿体ない。
個人的にはここで、思わず「やられたなぁ〜♪」と思わせて欲しかったし、全てを取り返して欲しかった。

ひょっとしたら、本作の作り手も「上手いことやったぜ」と思ってるのかもしれないけど、
この手の映画に必要な痛快さというテイストを、上手く演出できていない分だけ、そういう印象はほとんど無い。

別にコンゲーム(騙し合い)を前面に押し出した映画というわけではないけれども、
映画のクライマックスで、一つの大きな秘密を明かすだけに、もっと上手いことやって欲しかったなぁ〜。
過去に数多くの映画でお手本となるべき作品があるだけに、映画を良く見せる術はいくらでもあったと思う。

さすがに、これ以上の続編が製作されていることがない現状を考えると、
プロダクションも、もうこれ以上続けてもヒットする見込みはないと考えているのでしょう。

結局、マシュー・ペリーも映画俳優としては大成し切れないなぁ・・・。

(上映時間98分)

私の採点★★★★★☆☆☆☆☆〜5点

監督 ハワード・ドイッチ
製作 アラン・カウフマン
    アーノルド・リフキン
    エリー・サマハ
    デビッド・ウィリス
原案 ミッチェル・カプナー
脚本 ジョージ・ギャロ
撮影 ニール・ローチ
音楽 ジョン・デブニー
出演 ブルース・ウィリス
    マシュー・ペリー
    アマンダ・ピート
    ナターシャ・ヘンストリッジ
    ケビン・ポラック
    フランク・コリソン
    ジョニー・メスナー