隣のヒットマン(2000年アメリカ)

The Whole Nine Yards

うーーーん...一概に、この映画を否定はできないけれども...
内容的には、かなり苦しい映画で一様に他人にはオススメしにくいコメディ映画で悩ましい(笑)。

当時、人気TVシリーズだった『フレンズ』に出演していた
人気俳優マシュー・ペリーが規模の大きな映画では、初めて主役級の配役となった作品で、
その一風変わった作風から、全米ではそこそこヒットしていたように記憶しておりますが、
いざ日本で公開されると、ほとんど大きな話題とはならずに劇場公開が終了してしまった作品だ。

出来が極端に悪い映画というわけではないのですが、
オフビート感覚な映画であるためか、どことなくコメディ・パートの“押し”の弱さが目立ってしまう。

監督のジョナサン・リンは過去にも『いとこのビニー』など、
なかなかの出来映えのコメディ映画を発表したことがあるし、経験もあるとは思うのですが、
この映画の持ち味を出そうと必死になるがゆえ、チョット全体的に歯切れが悪い部分が目立つ。

何となく、ストーリーの運びが悪くって、映画全体のテンポの良さが出なかったのは残念ですね。

しかしながら、キャスティングは凄いですね。よくぞ実現したものです。
マシュー・ペリーはともかく(笑)、特に女優陣を中心として、微妙に豪華なキャストだ(笑)。
特に主人公の歯科医オズを悩まさせる恐妻ソフィを演じたロザンナ・アークエットが怪演だ。

それから役柄的にお色気担当と思われても困るのですが(苦笑)、
オズの同僚ジルを演じたアマンダ・ピートがコメディエンヌとして、悪くない存在感を発揮しています。

映画は大きな括りではコンゲーム(騙し合い)を描いた作品であって、歯科医オズを中心に展開します。
オズは恐妻家ソフィとの生活を送りながら、働く医院の受付ジルに離婚を勧められる毎日。
そんな折、モントリオールの郊外にあるオズの邸宅の隣家にリッチな風貌で引っ越してきたのは...
伝説的なマフィアで、名うての殺し屋であったジミーで、彼はシカゴ在住時代、マフィアのドンの下で
殺し屋として働いていたものの、彼らを裏切り、ドンの息子のヤンニから恨みをかっていた・・・。

ジミーが転居してきたことに恐れたオズをよそ目に、そこに目を付けたのはソフィ。
そしてジミーも別に隠居しに来たわけではないから、ここから一大騒動に発展します・・・。

ここで一つのキー・マンとなるのが、ヤンニに囚われていたジミーの妻シンシア。
そのシンシアを演じるのが『スピーシーズ/種の起源』のナターシャ・ヘンストリッジ。
僕はてっきり、彼女を『スピーシーズ/種の起源』の先入観だけで観ていたので、
シンシアに惚れてしまったオズを利用して、マフィアやジミーから逃走して、オズを殺害して逃亡した挙句、
シンシアが地球に侵略しに来たのかと思いきや、そういう映画じゃありませんでしたね(←当たり前)。

ただ、まだナターシャ・ヘンストリッジが思い切ったコメディ演技を強いられてるわけではなくって、
あくまで本作の中だけで考えると、彼女の役どころが若干、中途半端な感じがあるのが残念でしたね。
おそらく彼女自身も、『スピーシーズ/種の起源』のイメージを脱却したいがために本作への出演を
望んだのでしょうから、もっとコメディエンヌとしての魅力を開眼させるような役どころにしてあげて欲しかった。

これは『いとこのビニー』でマリサ・トメイを輝かせたジョナサン・リンだからこそ、期待してしまうからですね。
(まぁ・・・そういう意味で本作は、アマンダ・ピートが輝いてはいたけど・・・)

一クセも、二クセもある登場人物ばかりが集結する映画ですから、
そりゃ映画は最後の最後まで見逃せないストーリー展開になることは分かっていましたが、
個人的には映画のクライマックスでのドンデン返しは、もっと工夫して描いて欲しかったかなぁ。

こういう結末にしてしまうからこそ、ブラック・コメディとしての体裁を保てたのかもしれませんが、
チョット雑な帰結のように感じられて、映画全体が雑な印象を残してしまったような気がしますね。

まぁそれでも底抜けにハッピーなエンディングになってしまうあたりが妙な映画で(笑)、
僕はここまで乱暴に帰結していった映画であるにも関わらず、ハッピーエンドになった作品というのは、
それなりにいろんな映画を観てきたつもりですが、全く記憶にございません(笑)。

そういえば、ナターシャ・ヘンストリッジで思い出したけど...
僕がこの映画で最も良いと思ったシーンは、シンシアがオズに告白された直後のシーン。
「アタシ、帰るわ」と言って車に乗ってたシーンで、彼女が“ポワァーン”としているシーンで、
さり気なく『美女と野獣』かの如く、とてつもない美人が一般人の素直な告白に心奪われてしまう。
何故か思わず、日本のTVドラマ『101回目のプロポーズ』を思い出してしまいましたね。。。

随分とマッタリした映画で、映画のテンポもお世辞にも良いとは言えないのですが、
この妙なテイストやスピード感に慣れてしまうと、そこそこ楽しめる一本かと思います。

そういう意味では作り手の主義主張に一貫性があって、成功した作品と言えると思います。

まぁ04年には続編も製作されていますし、本作も全米公開時はそこそこヒットしていましたから、
アメリカではそこそこ人気のある作品でしょうし、日本でもカルトな人気を持っていそうな感じがします。
ひょっとしたら、50年後ぐらいには日本でも熱狂的なファンが生じて、カルトな映画として人気を博すかも・・・。

(上映時間98分)

私の採点★★★★★★☆☆☆☆〜6点

監督 ジョナサン・リン
製作 デビッド・ウィリス
    アラン・カウフマン
脚本 ミッチェル・カプナー
撮影 デビッド・フランコ
音楽 ランディ・エデルマン
出演 ブルース・ウィリス
    マシュー・ペリー
    ナターシャ・ヘンストリッジ
    アマンダ・ピート
    ロザンナ・アークエット
    マイケル・クラーク・ダンカン
    ケビン・ポラック
    ハーランド・ウィリアムズ