ウェディング・シンガー(1998年アメリカ)

The Wedding Singer

この映画のドリュー・バリモアって、凄いカワイイですね(笑)。

いや、冗談抜きで、それだけでこの映画の評価点は高くなりますって(笑)。
映画にとって大きな加点要素になりうる、登場人物を魅力的に描くということに成功しているわけですから。

ここまで気持ちの良い映画ってのは、そうそう簡単に作れるもんじゃありませんよ。
内容的には実に不変的な内容ではありますが、恋愛映画としては欠かせてはならない部分を大切にし、
主演2人の魅力をしっかりと尊重するというスタイルは一貫して貫いたため、映画がしっかりできていますね。

ヒロインのジュリアを演じたドリュー・バリモアって、
本作以前はスキャンダルばかりで有名になってしまった子役出身女優ってイメージしかなかったから、
本作のヒットで一気にラブコメのヒロインとしての魅力を開花させた感がありますね。

事実、彼女は本作の後にハリウッド女優として次のステージへとキャリアアップしています。

相手役のアダム・サンドラーは当時、スクリーンの世界ではあまり有名ではなく、
あくまで『サタデー・ナイト・ライヴ』というTV番組のコメディアンとして全米で高い人気を誇っていたわけですが、
持ち前の過剰なまでのギャグの応酬を展開するわけではなく、映画の空気に合わせていますね。

とにかくこの映画が上手かったのは、物語の舞台を1985年と敢えて指定したところだ。

確かに当時の時代性を理解しないとチョット分かりにくい部分はありますけど、
70年代後半にあれだけフィーバーしたディスコ・ブームがアッという間に消え去り、
その残骸として残ったディスコ世代だけど、30〜40代になってしまったオッサンたちの苦悩や、
やたらとバブリーな振る舞い、そして時代の空気などが見事に映画の中で調和をとっている。

ある意味では社会全体が新たな社会病理を抱え始めていた頃で、
そんな時代の中で敢えてロビーとジュリアの純愛を描こうとするギャップが、不思議なぐらい気持ち良い。

それを形作って、上手く演出するためにと、
コメディ・パートであっても、ほとんどがアダム・サンドラーに依存しないギャグに終始しており、
これはロビーを軟弱なキャラクターにして、彼の役の説得力を落とさないための配慮だと思いますね。
普通に考えれば、アダム・サンドラーぐらいなら、もっと多くのギャグを入れることができたはずなのです。

それと同時に、ヒロインのジュリアを可愛く描くためなら、とにかく余念がありません。
ドリュー・バリモアが普段はどんな女性かは知りませんが、表情の豊かさ、仕草、立ち振る舞い、
その全てがとにかくカワイイ(笑)。世の男たちの多くは、メロメロにさせられます(笑)。

まぁこの辺は、作り手の主義主張に一貫性があって良いと思うんですよね。
(確かにアダム・サンドラーに好き放題やらせたら、もっと違う面白さは出せたかもしれませんが...)

映画の始めの設定から言えば、お互いに興味を惹かれながらも、
お互いに婚約者がいるという大きな障害を感じて、本音で語り合えない空気。
そしてやがて感情的に近づき合っても、やはり告白することができない難しさ。
スムーズに恋愛を進めることができない、2人が感じ合うもどかしさという感情を、上手く表現できていますね。

日本では“ウェディング・シンガー”という職業自体の認知度があまりに低いけれども、
まぁ結婚式の司会を職業としている人という感覚で見れば、チョットは馴染んでくるかもしれません(笑)。

印象的なのは映画の冒頭の結婚式シーンで、
スティーブ・ブシェミ演じる花婿のアルコール依存症の兄貴が酔っ払ってスピーチして、
大爆弾発言をしてしまい、結婚式がメチャクチャになりかけたところで、ロビーが機転を利かせて、
結婚式そのものを救うというもの。現実的にああいった状況になったら、そりゃ大変ですよ(笑)。
まぁ“ウェディング・シンガー”って、あそこまでケアできる人でなければ勤まらない仕事なのかもしれませんね。

かつて、結婚式という一大イベントを舞台にした映画は数多くありましたが、
本作はほぼ間違いなく、90年代を代表するウェディング・ムービーと言ってもいいと思いますね。

チョットご都合主義的なところはありますが、ラスベガスへ向かう飛行機の中でのシーンは印象的ですね。
何故か“反逆のアイドル”ことビリー・アイドル本人がゲスト出演していますが、彼の強烈な違和感をはじめ(笑)、
最後にジュリアのために歌うアダム・サンドラーの曲が、抜群に素晴らしいですね。これはホントに良い曲だ。

まぁ正直に言うと、コテコテの恋愛映画が苦手な人にはキビしいかもしれません。
しかし、一つだけ認めてあげて欲しいのは、本作はひじょうに上手くデザインされているという点。
これだけ可愛らしい映画に仕上げられるというのは、それだけ映画に力があるという証拠です。
力強い一貫性があり、これだけの映画に仕上げるというのは、そう容易いことではありません。

やはり、これだけの一貫性がある映画というのが、僕はホントに強いと思うんですよね。

とりあえず、世の男たちは騙されたと思って、
この映画のドリュー・バリモアを一回でいいから観て欲しい(笑)。きっと後悔はしないから(笑)。

(上映時間96分)

私の採点★★★★★★★★★★〜10点

監督 フランク・コラチ
製作 ロバート・シモンズ
    ジャック・ジャラプト
脚本 ティム・ハーリヒー
撮影 ティム・サーステッド
音楽 テディ・カステルッチ
出演 ドリュー・バリモア
    アダム・サンドラー
    クリスティーン・テイラー
    アレン・コヴァート
    アンジェラ・フェザーストーン
    スティーブ・ブシェミ
    マシュー・グレイブ
    アレクシス・アークエット
    ビリー・アイドル