ウェディング・プランナー(2001年アメリカ)

The Wedding Planner

ジェニファー・ロペスが女優業を本格化させて、スターダムを駆け上がっていたときに
満を持して主演を務めたロマンチック・コメディで、僕の記憶では全米ではそこそこヒットしていたと思います。

監督は振付師のアダム・シャンクマンで、本作は彼の映画監督デビュー作にあたります。
僕もせっかくのジェニファー・ロペスのラブコメ初挑戦作品だったということもあって、どんな出来なのかと
それなりに期待して観たのですが...何度観ても感想は変わらず、本作はそこまでの出来ではないですね。

まぁ・・・残念ながら、当時、ジェニファー・ロペスがゴールデン・ラズベリー賞にノミネートされてしまったという、
不名誉な結果をもたらしてしまったというのも、なんとなく分かるような気がします。決して、彼女がこの手の映画に
合わないということではないと思うのですが、シナリオや企画の段階から問題を抱えた内容だったという印象です。
(ラジー賞は同年の『エンジェル・アイズ』と合わせて、ということでのノミネートでした)

おそらく、本作あたりはジェニファー・ロペスにとって、ハリウッド女優として一つのステップを上がるための
大きな挑戦だっただろうと思うのですが、もう少し“選球眼”を磨いた方が良かっただろうなぁ・・・。

結婚式をプロデュースする“ウェディング・プランナー”という職業自体が、
この頃から社会的にもフォーカスされ、本作と同じような頃に日本でもテレビドラマ化された記憶がありますが、
日本でも一時期、人気があった職業になりかけていたと思います。ただ、約20年が経った今では、
どちらかと言えば斜陽な感じがして、そもそも晩婚化と少子化の影響で結婚するカップルが減っており、
更に今は結婚しても結婚式を挙げない選択をするカップルも増えているので、かなりの苦境ではないかと察します。

それでも、冠婚葬祭の業界はあの手この手で色々と工夫しているのでしょうが、
この20年間でブライダル業界も大きく変わりましたからね。特に日本では、結婚式の在り方が大きく変容したと思う。

本作が製作された当時で既に、ホテルの大きな会場を貸し切って、
親戚・同僚・友人ら大勢を呼んで、盛大に結婚式を挙げるという文化自体は衰退しつつあったと記憶してますが、
それでもまだ残っていましたし、ウェディング専門のレストランや教会などもまだ増えつつある時代でした。

ただ、今は結婚式自体は当然あるし、費用も減ってはいないのだろうけど、
式自体を大きくやるというよりも、小じんまりとしながらも料理や演出に費用をかけるようになり、
割りと定型な結婚式になりがちなホテルなどは、結婚式の需要が減っているようで、形態は様変わりしています。
そうなると、おそらくですが、“ウェディング・プランナー”として活躍する人材も、減りつつあるのではないかと思います。

そういう意味では、あらためて“ウェディング・プランナー”という職業のやりがいや尊さを伝える映画で
あって欲しかったのだけれども、20年以上経ったいまになって観返しても、そんな感じじゃないのが残念ですね。

個人的にはヒロインの恋愛を描くのも良いのだけど、もっと“ウェディング・プランナー”として
禁忌とも言えるクライアントに恋してしまった難しさを描いて欲しかったし、修羅場が全く描かれないのも理解できない。
これではラブコメとしての面白さが出るわけがない。“ウェディング・プランナー”をメインにした意義を描いて欲しかった。

ジェニファー・ロペスも、この路線でヒット作に恵まれていれば、この後のキャリアも変わっていたと思うんですがね。
02年に『メイド・イン・マンハッタン』、05年に『ウェディング宣言』と散発的にラブコメ路線にチャレンジしましたが、
結局、ヒット作に恵まれることなく、00年代後半以降はスキャンダルもあり、女優としても低調になってしまいました。

僕が感じたのは、“ウェディング・プランナー”という職業にフォーカスし切れなかったことと、
ヒロインの恋愛に修羅場が無いことに加えて、それぞれのキャラクターにも納得性が無いということですね。

ヒロインも父親に一方的に結婚を望まれ、勝手に幼い頃からイヤな印象しかないマッシモという
イタリア人の青年と付き合いなさいと説得されて、一方的に付きまとわれるのですが、突如として真面目な感じで
プロポーズを受けたからと言って、その場の感情に流されたとしても、何故にヒロインが受け入れるのか理解不能だ。
このマッシモという青年、相変わらずヒロインに失礼なことしか言わないし、どこに魅力があるのかが分からない。

マッスモだけでなく、ヒロインの父親のキャラクターにしても結構、支離滅裂な感じなんですよね。

いくら娘のアパートの合鍵を預かっているとは言え、朝に勝手に入り込んで、
ベッドで寝ている娘を前に、ウェディング・ドレスの採寸をするなんて、親子とは言え理解できない行動だし、
映画の終盤でも、散々、マッシモとの恋をプッシュしておきながら、全てを引っくり返すなんてホントに支離滅裂である。

この辺は監督のアダム・シャンクマンがもっと映画全体のことを考えて構成しなきゃいけないところで、
脚本を書き直させるくらいの勢いが欲しかったですね。そういう意味では、マシュー・マコノヒー演じる相手役の
医師エディソンにしても、もっと考え直して欲しかった。これでは、ただの軽薄な浮気男ではないかとしか思えない。

ラブコメとして成立させるには、こういうところで足を引っ張ってしまっていては、成立しないですね。
もっと何とかして欲しかった。こういうところを観ると、ラブコメで定評のある人に撮ってもらった方が良かったですね。

言ってしまえば、クライアントが“ウェディング・プランナー”に新郎を取られるかもしれないという話し。
ヒロインも中盤で、結婚式前夜に恋人である新郎を取られた経験があって、心に深い傷があると語られるだけに
ヒロインは自分がされたことと同じことをやるという、一般になかなか受け入れられ難いことが描かれているわけです。

クライアントの花嫁を演じたブリジット・ウィルソンも、あまり見せ場を与えられている感じではないし、
その上、アッサリと退場してしまうなんて、いくら分かり切ったハッピーエンドの映画であるとは言え、酷過ぎるなぁ。
どうせなら、全員集合って感じで修羅場になるくらいの盛り上げがあった方が良かったし、その方が見せ場になった。
ラブコメの醍醐味って、そういう困難であったり、周囲に迷惑かけちゃったりすることを乗り越えることにあると思うので。

だからこそ、主人公カップルはもっと魅力的な存在として描かないと、映画が磨かれませんね。
単にジェニファー・ロペスの美貌というだけでは、映画が磨かれるということはないし、長続きしません。
一応、映画は商業的に成功したのですが、劇場公開当時の評判は散々であったことは納得の展開だと思いました。

まぁ・・・こう言っちゃあナンですが、これから結婚するって人には向かない内容だと思います(苦笑)。

なんせ、今から結婚するってカップルがクライアントとなるわけで、
そのクライアントの仲に亀裂を入れるのが、式をプロデュースする“ウェディング・プランナー”なのですから。
もし現実にそんなことがあれば、凄まじい金額の損害賠償を請求されそうな裁判に発展しそうな感じすらします(笑)。
(訴訟社会と言われるアメリカですから、現実にこんな話しがあったら、それは大変なことになるでしょうね・・・)

2000年頃はハリウッド映画が日本でも次から次へと全国の映画館で拡大されて劇場公開されていて、
本作も地方都市のシネコンなどでも上映されていましたが、当時は似たような映画でも今一つな内容の作品も
多く量産されていた時代で、そんな作品が次々と全国でロードショーされていたなんて、今思えば贅沢な時代でした。

ハッキリ言って、本作もジェニファー・ロペス主演というだけで宣伝されていたようなものですからねぇ・・・。

映画のテンポを良くするという意味で、もっとコミカルなエピソードは強化して欲しかったなぁ。
ヒロインの同僚などコメディ・パートを担う脇役も登場しますが、あんまり笑える映画という感じではないのがツラい。
結婚式でオリビア・ニュートン=ジョンの曲を使うと離婚率が高いとか、ことごとくギャグが空振りしてるように見える。

どうせならジェニファー・ロペスのコメディエンヌとしての魅力を引き出して欲しかったところだし、
ラブコメとして映画を成功させるためには、ヒロインが輝いて見えない映画では、さすがにキビしいですね。
これは正直言って、作り手の責任だと思います。やっぱり、この手の映画に定評のある人が撮って欲しかったですね。

ちなみに以前、この映画の続編を製作するという噂がありましたが結局、実現しませんでしたね・・・。

(上映時間103分)

私の採点★★★★★☆☆☆☆☆〜5点

監督 アダム・シャンクマン
製作 ピーター・エイブラムス
   デボラ・デル・プレト
   ガイ・イースト
   ジェニファー・ギブゴット
   ロバート・L・レヴィ
脚本 パメラ・フォーク
   マイケル・エリス
撮影 ジュリオ・マカット
音楽 マービン・ウォーレン
出演 ジェニファー・ロペス
   マシュー・マコノヒー
   ブリジット・ウィルソン
   ジャスティン・チェンバース
   ジュディ・グリア
   ケビン・ポラック
   フレッド・ウィラード
   アレックス・ロッコ
   キャシー・ナジミー
   ジョアンナ・グリーソン

2001年度ゴールデン・ラズベリー賞ワースト主演女優賞(ジェニファー・ロペス) ノミネート