ローズ家の戦争(1989年アメリカ)

The War Of The Roses

84年に『ロマンシング・ストーン/秘宝の谷』、85年に『ナイルの宝石』からの
仲良しトリオとして知られる、マイケル・ダグラス、キャスリン・ターナー、ダニー・デビートが再び集結して、
中年夫婦の壮絶な離婚問題を徹底したブラック・ユーモアで過激に押し通したコメディ映画。

ダニー・デビートの第2回監督作品ですが、
ダニー・デビートが売れない頃から一緒に活動してきたマイケル・ダグラスなだけに、
おそらく彼が映画監督として飛躍することをアシストしたいとする気持ちが強く、本作が実現したのでしょうね。

映画はとある孤島で弁護士を勤めるオリバーが、
大雨の日にオークション会場で一目惚れした美女バーバラとその日のうちに結ばれ、
アッという間に結婚し、2人の子供を授かり、順調に日常生活にまい進するところから始まります。

オリバーの弁護士稼業は順調、2人の子供は一時期、肥満に悩みましたが、
大学生まで順調に成長し、バーバラはバーバラで自慢のパテを絶賛されたことから、
ケータリング業に乗り出し、かなり背伸びして購入した豪邸に大満足の日々だった・・・はずだったのです。

妻バーバラは次第に苛立ちを隠せなくなってしまいます。
もう、オリバーの一挙一動に我慢ならないのです。言動、口癖、彼が立てる音、彼の趣味までもが
どうしても許せません。オリバーもオリバーで家庭を顧みないタイプの人間だったものですから、
少しずつバーバラが発していたはずのサインを完全に見逃し、自分勝手に振る舞ってしまいます。

バーバラがオリバーの何もかもが気に入らず、
苛立っている様子は子供たちにもオープンになってしまい、子供たちも心配でたまりません。

次第に2人の攻防は過激になり、サウナに閉じ込めたり、
ゲストがいる前でキッチンのグリルに小便をかけたり、車をメチャクチャにしたりとやりたい放題。
やがてはお互いを殺し合うまでに発展してしまい、手が付けられなくなってしまいます。

トンデモない離婚戦争が題材となっている映画なので、
あまり万人に強くオススメできるタイプの映画ではないのですが、これはユニークな存在で面白い作品だ。
ダニー・デビートの演出もなかなか悪くなく、映画のテンポも良く、細部にわたってソツがない。
意外にも丁寧に撮られた作品であり、それなりにキチッとした画面設計は感じられる作品で好感が持てる。
少なくとも本作は、ただ漫然とオリバーとバーバラの闘いを映した映画ではなく、全て計算されてる作品です。

これは事故なのですが、オリバーが誤ってバーバラの愛猫を車で轢き殺してしまったことを知り、
怒ったバーバラがサウナに入っていたオリバーを、サウナ内に閉じ込めるシーンの迫力ときたら秀逸でした。
(このシーンでのガラス越しに話す2人を映したカメラのルックは素晴らしい)

これだけダニー・デビートは映画監督として出来るのであれば、
僕はもっとたくさん映画を撮ればいいのに・・・と思うのですが、どうやら映画以外にもレストランなどの
サイド・ビジネスに精を出しているようで、最近は映画への出演自体もあまり積極的ではないですね。
一時期は数多くのヒット作に出演していただけに、何だか残念な気もしますがねぇ。。。

本作でもダニー・デビートはオリバーの同僚ギャビンとして出演しており、
映画は彼があくまでストーリーテラーとして進んでおり、オリバーとバーバラの物語も
ノンフィクションなのかフィクションなのか、最後の最後まで観客にはよく分からないあたりも上手いですね。
これはギャビン自身が「これはまるで御伽噺みたいだろ?」と語るシーンが、よ〜く利いています。

ひょっとすると、これはギャビンが離婚裁判の相談に訪れたクライアントに
今一度、裁判について考え直してもらうための作り話ではないかと観客に疑わせるんですよね。
だからこそ映画のクライマックスでガラス窓に反射して映る、ギャビンのニヤリ顔が効果的なんですね。

かつて離婚を題材にした映画というのは数多くありましたが、
さすがにここまで暴走していく内容になっているのは珍しいかもしれませんね。

ちなみにこの映画あたりからマイケル・ダグラスが
いろんな意味でダラしない男を演じる姿が似合ってきたようで、87年の『危険な情事』に続いて、
女性から痛い目に遭うキャラクターをコメディ演技の面で活かし、92年の『氷の微笑』でそれを爆発させます。

さすがに自分が脱腸だったとは言え、心筋梗塞を疑わせる症状でレストランから救急搬送され、
勘違いとは言え、遺書まで書く状況だったというのに、妻は病院へ迎えに来る気配もなく、
いざ家に帰ってきた妻から、「看護婦から大丈夫だと聞かされたから病院へは行かなかったのよ」と
開き直られ、挙句の果てには「貴方が死んだと感じて...幸せに感じたから、怖くなったのよ」と言いたい放題。

それで口論になった挙句、「貴方を見ているとイライラして殴りたくなるのよ!」と妻に怒鳴られ、
頭にきて、「じゃあ、殴れよ!」と切り返したら、アッサリと顔面を殴られて、出血なんて情けなさ過ぎる(苦笑)。

そんな役柄でも、まるで嬉々としてマイケル・ダグラスは演じているかのようで、
この頃のマイケル・ダグラスはいろんな意味でマゾっ気全開って感じで、妙に微笑ましいですね(笑)。

そんな彼も、今回は相手が悪かったのか。
なんせ相手は『シリアル・ママ』でも怖〜いマダムを演じたキャスリン・ターナー。
元体操選手なだけあって、両足で締め付けられて悶絶し、結果として脱腸になるなど、ほぼ完敗状態。

そして最後の最後。倒れこむバーバラと手をつなごうとオリバーが執念を見せるものの、
やっぱりバーバラは彼の手を押しのけて、オリバーを拒絶するというのが最後までニクいですね。

(上映時間116分)

私の採点★★★★★★★★★☆〜9点

監督 ダニー・デビート
製作 アーノン・ミルチャン
    ジェームズ・L・ブルックス
原作 ウォーレン・アドラー
脚本 マイケル・リーソン
撮影 スティーブン・H・ブラム
音楽 デビッド・ニューマン
出演 マイケル・ダグラス
    キャスリン・ターナー
    ダニー・デビート
    マリアンネ・ゼーゲブレヒト
    ショーン・アスティン
    ヘザー・フェアフィールド
    ピーター・ドーナット
    ダン・カステラネタ