男と女の不都合な真実(2009年アメリカ)

The Ugry Truth

意外に面白かったけど、よくまぁ・・・キャサリン・ハイグルって、こんな役やったなぁ(笑)。

キャサリン・ハイグルって、93年の『恋人はパパ/ひと夏の恋』で一目惚れした少年をゲットするために、
ジェラール・ドパルデュー演じる父親を勝手に「愛人なの」と偽る少女を演じていたり、
その後も95年の『暴走特急』でまったく似ていないことを前提に、スティーブン・セガールの娘を演じたり、
子役時代に数多くの映画に出演していた印象があったのですが、しばらくハリウッドでも出番に恵まれず、
20代後半に入ってから、TVシリーズ『グレイズ・アナトミー』への出演などで人気が復活したそうですね。

映画は実力をかわれて抜擢された若手女性TVプロデューサーのアビーが、
自身の抱える朝番組の低視聴率に悩まされて、上司が視聴率を上げるために勝手に招聘した、
下品で放送コードも気にしない自称恋愛アドバイザーのマイクを雇ったことから、
自身の恋愛観も含めて、振り回されながらも、大きな変容をもたらされていく様子を描いたコメディです。

日本では、レイティングの対象となったことから分かるように、
内容的にはかなりキワどい内容も扱っており、これは確かに大人向け映画でしょう(笑)。

キャサリン・ハイグルは女優魂を見せ付けるかのような熱演で(笑)、
映画中盤のレストランで自分のTV番組をお偉いさんに力説するシーンは、ホントによくやりましたね(笑)。
さすがにここまでの大熱演はなかなか無いですね(笑)。これは確かにレイティングの対象になるわけだ。。。

ジェラルド・バトラー演じるマイクの恋愛アドバイザーという職業も実にアヤしいが、
実際にマイクがどれだけ、女性をクドく上で凄腕なのか見せて欲しいと思っていたのですが、
これは映画の終盤で明らかにされますが、マイクのハッタリがかなりの部分を占めていたようで、
いざ目の前のアビーに好意を持っていることを悟っても、いつもの調子でアタックできません。
この辺が妙に人間臭くて、映画は面白くなるのですが、こういう芝居はジェラルド・バトラーが上手かった。

そうそう、個人的にはあまりうジェラルド・バトラーって馴染みのある役者ではないのですが、
ヒロインを演じたキャサリン・ハイグルも頑張ったけど、この映画の場合はジェラルド・バトラーも大きい。
特に前述したレストランのシーンで、アビーが何故、違和感いっぱいの熱弁をふるっていたのか、
その理由が分かった後に彼が見せる、何とも言えないイタズラっぽいニヤリ顔は、上手かったですね(笑)。

しかし、マイクも言っていた通り、真実とは醜いものなのかもしれませんね。
何故、マイクの発言が視聴者にウケていたのか、この映画は明確に描けていないのですが、
それでも彼ぐらい、男女の恋愛をハッキリと論じてしまえば、ある意味で爽快感があるのかもしれませんね。

監督のロバート・ルケティックは、これまでも何本かロマンチック・コメディを撮っていますが、
過去に撮った作品と比べると、本作はかなり毒っ気があって、男女それぞれの立場から描いていますね。
やはりどうしても、ロマンチック・コメディって女性向け映画みたいな烙印を押されがちなのですが、
本作は決してそれだけで切り捨てられるべきものではなく、男性的な目線も強く感じさせる作りですね。

しかし、一つだけ埋めて欲しかったところは、
やはりマイクとアビーが惹かれ合うまでの描き込みの弱さかな。これは結構、大事な要素だったはずです。

どうしても、この映画に於いて、マイクとアビーが惹かれ合うというよりも、
一時的に“燃え上がった”だけで、お互いに継続的な恋愛関係に及ぶ要素が見当たらないように思います。
さすがにこれでは、恋愛映画として大きな手落ちがあると、言わざるをえないと思うんですよね。
まぁそれを言い始めたら、アビーが医師のコリンに熱を上げて、猛アタックするあたりも同様なのですが、
コリンとの関係については、アビー自身が語るように、そうとうに無理していたことが前提ですからねぇ。

そういう意味では、マイクとアビーの恋愛をまとめ上げるクライマックスも、
お世辞にも上手いまとめ方とは言えないかもしれませんね。2人も気球に乗せてしまうという発想は、
なかなか力技を選択しましたが、個人的にはもっとこのクライマックスは、ジックリ描いても良かったと思います。
(但し、映画のラストシーンがベッドシーンというのも、皮肉が利いていて悪くなかったけど・・・)

これ以上、上映時間を長くすると、映画が冗長に感じられてしまったかもしれませんが、
やはり恋愛映画のセオリーはキチッと守って描いて欲しかったし、特にマイクとアビーの恋愛に関しては、
もっと納得性の高いものとして描けないと、恋愛映画として磨かれるわけがないと思うんですよね。

この映画にはアビーがマイクの教えを守って、学習するという流れがあるのですが、
僕は思うのですが...恋愛こそ、思いっ切り人間の感情が絡み合い、ぶつかり合うわけですから、
「こうすれば必ず!」みたいな標準って、まずありえないんじゃないかと思いますがねぇ。
そういう恋愛必勝法って、雑誌なんかでもよくありますけど、失敗ゼロという保証があるなら、
是非とも僕も利用してみたいですし、たぶん大儲けできるノウハウになるでしょうね。

現にマイクの教えを世の女性たちが全員守ったとして、
必ずそのアタックが上手くいくかと聞かれれば、それは違うと言わざるをえませんね。
それは「人それぞれ」だからです。これは世の中の宿命であり、だから世の中は面白いのでしょう。

でも、恋愛まで標準化が進んでしまうと、それはそれで面白くない世の中になりそうな気がしますけどね。。。

ちなみに邦題はアル・ゴアの『不都合な真実』から失敬したのでしょうが、
まぁいざ本編を観てみると分かりますが、確かに的を得た邦題で思わず納得してしまいますね。

本作、劇場公開当時も同じような触れ込みがあったらしいのですが、
間違ってもポップなラブコメだと思って、家族揃って本作を観るような真似はしない方がいいです(笑)。
それと、まだ交際歴の浅いカップルが仲睦まじく楽しめるタイプの恋愛映画とも言えず、
おそらく観た後は、お互いに何とも微妙な空気が漂ってしまうでしょうから、一人で観ることをオススメします。

むしろパートナーがいなくて寂しさを感じている人の方が、楽しめる作品かもしれませんね。

まぁ今は“肉食系”と言われる女性が目立つ世の中ですので、
こういうアビーのような悩みと葛藤するという女性も、少なくなったのかもしれませんが。。。

(上映時間95分)

私の採点★★★★★★★★☆☆〜8点

日本公開時[R−15+]

監督 ロバート・ルケティック
製作 トム・ローゼンバーグ
    ゲイリー・ルチェッシ
    スティーブン・ルーサー
    キンバリー・ディ・ニューマイヤー
    デボラ・ジェリン・ニューマイヤー
原案 ニコール・イーストマン
脚本 ニコール・イーストマン
    カレン・マックラー・ラッツ
    キルステン・スミス
撮影 ラッセル・カーペンター
編集 リサ・ゼノ・チャージン
音楽 アーロン・ジグマン
出演 キャサリン・ハイグル
    ジェラルド・バトラー
    エリック・ウィンター
    ジョン・マイケル・ヒギンズ
    ニック・サーシー
    ケビン・コナリー
    シェリル・ハインズ
    ブリー・ターナー