ターミナル(2004年アメリカ)

The Terminal

よくよく調べてみたら、この映画、日本での評判はあんまり良くなかったみたいですね。。。

いや、と言うのも...僕は結構、面白いと思うんですよね、この映画は。
ナンダカンダ言って、如何にもスピルバーグらしい作りの映画になっているし、
ビザ発給の関係で空港に足止めされてしまい、結果的に空港に住むという発想が面白い。
(とは言え、これってにわかに信じ難いのですが...モデルとなる実話があったみたいですね・・・)

映画の舞台はアメリカを代表する大都市ニューヨークの空の玄関口ジョン・F・ケネディ空港。
ロシア連邦にほど近い小国クラコウジアから、ジャズマンのサインを求めてニューヨークへやって来た、
中年男性ナボルスキーはクラコウジアの政情不安のため、アメリカ合衆国への入国を拒否され、
同時に彼が搭乗した飛行機がクラコウジアから出発した直後に軍事クーデターが発生したため、
クラコウジアへの帰国の許可もありず、実質的に空港ロビーから出られない難民となってしまう。

そんな「法の隙間」にハマって動けなくなってしまったナボルスキーが、
言葉も通じず、同時に英語も理解できない状況下、お金もクレジットカードもない中で、
一つ一つ学習していき、何とかして空港内でたくましく生きていこうとする姿を描いたヒューマン・ドラマです。

このジョン・F・ケネディ空港って、当然、僕はアメリカへ行ったことがないので、
想像もつかないのですが、色々と調べるに...旅客ターミナルが7つ、うち1つが24時間対応って凄いですね。
空港施設の規模としても、成田空港の約2倍あって、貨物の取り扱い量も多く9社が貨物専用便を就航。
一日の国際線の離発着は400便に達し、更にその2倍以上の国内線を就航って、トンデモないレヴェルですよ。

世界を代表する大都市の玄関口としてだけでなく、
更に膨大な航路を持つハブ空港として機能しているなんて、正直言って...想像を絶する世界ですね(笑)。

この物語は、某TV番組でも紹介されていましたが、
88年から約16年にも渡って、パリのシャルル・ドゴール空港に足止めされ、実質的に生活していた
イラン人難民がモデルケースと言われていましたが、本作の製作サイドは敢えてそれを否定し続けています。

本作の原案を書いたのは、97年のSF映画『ガタカ』を監督したアンドリュー・ニコルで、
彼は『トゥルーマン・ショー』など奇抜な物語のシナリオを書いた実績もあり、多くのファンがいます。

今回はSF的な発想とは無縁な内容ではあるのですが、
それでもユニークな設定の物語に、ロマンスとコメディのエッセンスを上手くブレンドして面白い発想だ。
おそらくスピルバーグもこのアイデアに惚れ込んで、本作のメガホンを取る気になったのでしょうね。

映画の前半は特に主人公のナボルスキーが片言の英語しか喋れず、
周囲の人々が喋っている内容がよく分からないまま、半ばパニック状態に陥り、
何をやっても上手くいかず、更に母国のクーデターを知って、ショックを受ける姿をよく描けていると思う。

特に異国の地であるという環境の中で、
加えて一方的に英語でしか喋ってくれない空港保安関係者の不親切な対応や、
分かりにくいシステムなど、如何に非英語圏の人々が訪問し、予期せぬ事態に陥った場合は、
恐怖を覚え易い環境であるかということを、上手く描けていると思いますね。

同じことは日本にも言えるわけで、やはり観光国であったり、ビジネスシティであるという側面を考えれば、
こういったパブリック空間に於けるアメニティを全ての人を対象に、向上させていく姿勢が必要なんでしょうね。

ちなみに本作の撮影にあたっては、ジョン・F・ケネディ空港の外観や内部の撮影が必要だったのですが、
「9・11」の影響や、撮影場所の性格もあって、アッサリと協力を断られてしまったため、
カリフォルニアのスタジオにジョン・F・ケネディ空港の内部を再現した大規模なセットを実際に組んだそうです。

当然、この撮影にはテナントショップの協力も必要不可避というわけで、
劇中、クロースアップされるバーガーキングは勿論のこと、日本からは吉野家も撮影に協力し、
エキストラとして実際の店員も撮影現場に派遣されて、撮影に全面協力したとのこと。

ここまでスケールの大きな仕事を完成させてしまうのは、スピルバーグならではですね。

但し、劇場公開時から言われていたことではありますが、
劇中、トラブルを起こしていたロシア人男性をナボルスキーが説得するシーンなど、
部分的にイマイチなシーン処理に陥ってしまった手落ちな部分もあり、映画は傑作とは呼べない。
この辺が本作の弱い部分で、どうしても最終的な第三者評価が高まらなかった原因と言わざるをえません。

相変わらず映画のテンポは良いので、2時間以上ある上映時間であるにも関わらず、
アッサリと観れてしまうあたりは、さすがのスピルバーグの手腕ではあるのですが、
一方で彼が撮った前作『キャッチ・ミー・イフ・ユー・キャン』のような小気味良さは本作には無かったのも残念。
(ちなみに『キャッチ・ミー・イフ・ユー・キャン』はもっと長い映画だったけど・・・)

キャストの面で言えば、終始、出ずっぱりの主演のトム・ハンクスは勿論のこと、
紅一点、ロマンスのニュアンスを残すCAのアメリアを演じたキャサリン・ゼタ=ジョーンズも良いのですが、
何と言っても、この映画はまるで子供じみたいやらしさを出した保安局長を演じたスタンリー・トゥッチだろう。

色々と印象深いキャラクターはいるけど、彼が圧倒的に一番、素晴らしかったと僕は思う。

(上映時間128分)

私の採点★★★★★★★★☆☆〜8点

監督 スティーブン・スピルバーグ
製作 ローリー・マクドナルド
    ウォルター・F・パークス
    スティーブン・スピルバーグ
原案 アンドリュー・ニコル
    サーシャ・ガヴァシ
脚本 サーシャ・ガヴァシ
    ジェフ・ナサンソン
撮影 ヤヌス・カミンスキー
編集 マイケル・カーン
音楽 ジョン・ウィリアムズ
出演 トム・ハンクス
    キャサリン・ゼタ=ジョーンズ
    スタンリー・トゥッチ
    チ・マクブライド
    ディエゴ・ルナ
    バリー・シャバカ・ヘンリー
    ゾーイ・サルダナ