魔法使いの弟子(2010年アメリカ)

The Sorcerer's Apprentice

たいへん失礼な言い方で、恐縮なのですが...
ただの夏休み映画みたいなノリで観たら、これが予想以上に面白くってビックリしました(笑)。

いや、日本で劇場公開されたとは言え、
さすがに今は映画産業が斜陽なせいか、あまり大きな話題とならずに劇場公開が終了していた記憶があって、
本作に関する良い評判をほとんど聞いていなかったので、正直言って、全然、期待していなかったのですが、
これがしっかりと見せ場のある映画になっていて、エンターテイメント性も十分にある良質な映画でした。

手放しで絶賛できるとまでは言いませんが、
これはエンターテイメントとしては十分な出来と、僕は思いますね。
技術力あるハリウッドですから、似たような企画はたくさんあるでしょうが、ポイントを押さえた良い映画です。

映画は“選ばれし者”になり、魔法が使えるようになる能力を持った、
分子物理学に没頭する20歳の青年を主人公に、1000年以上前に生きた善なる魔法使い、
バルサザールと邪悪な魔法使いホルバートとの闘いを描いたアドベンチャー映画なのですが、
とにかく映画のテンポが良く、無駄なエピソードもほとんど無く、上手く凝縮された内容に感じられましたね。

さすがはジェリー・ブラッカイマーのプロダクションって感じはしましたが、
『ナショナル・トレジャー』シリーズにしてもそうなのですが、ディレクターのジョン・タートルトーブの
映像作家としての役割がひじょうに大きく、彼の手腕の高さが功を奏した企画なのかもしれませんね。
(思えば、彼は95年の『あなたが寝てる間に…』なんかも、ひじょうに映画の出来は良かった)

少しラストの戦いがアッサリ終わってしまった感があり、
物足りない感じがしましたが、それ以外は健闘しており、映像処理も見応えがあります。

次から次へと、姿・形を変え、目まぐるしく展開するアクション・シーンは見どころ満載だし、
たっぷり贅沢に使ったCGによる映像表現も長くなり過ぎると、映画が全体的にダレる傾向にあるのを
避けるように、一つ一つのシーンをできるだけ簡潔に分断し、映画をスマートに仕上げていますね。

この辺は賛否両論あれど、ジェリー・ブラッカイマーのプロダクションが長年に渡って、
ハリウッドという群雄割拠な世界で、培ってきた何物にも替え難い経験値の高さが生み出したものだろう。
確かに彼らの方法論は間違ってはおらず、映画が描きたいテーマ、見せたいパートはハッキリしています。

とっ散らかすだけ、とっ散らかしておきながら、
結局、何がやりたいんだかよく分からない映画って、数多くあるのですが、
本作は断じてそういった類いの映画にはなっておらず、これは彼らが世界の映画界をリードする象徴ですね。
そういう意味で、彼らとニコラス・ケイジが映画をヒットさせるブランドを作り出したのは、ひじょうに大きいですね。

おそらく日本でシネコン全盛期を迎えて、
規模の大きな劇場公開が主流だった10年ほど前であれば、本作はもっとヒットしたことでしょう。

そういう意味では、不遇の作品という感じはするんですよね。
映画の前半のコメディ・パートも悪くないし、どことなく間抜けな青年が主人公という設定も悪くない。
でも、イマイチ時代の流れに乗り切れない部分があるというか、どこか一昔前の映画って感じがして、
やっぱり「10年前なら、もっとヒットしたんだろうなぁ〜」と思えてしまうあたり、この映画の苦しさなんですね。

あまり特大ヒットにならなかったせいか、
どうも続編の存在を匂わす、エンド・クレジット後にあるオマケのシーンも寂しい感じがしますね。
『パイレーツ・オブ・カリビアン』シリーズのようにはいかなかったようで、蛇足的なシーンでしかありませんね。
(っていうか、こういうエンド・クレジット後のオマケを乱発するのもやめて欲しいなぁ・・・)

まぁジェリー・ブラッカイマーは続編の製作そのものは否定していないようですが、
正直言って、この程度の扱いしか受けられなかったことを考えると、続編はないでしょうね。。。

そういえば、この映画にモニカ・ベルッチが出演していましたね。
ハリウッド映画で彼女を観たのは、凄い久しぶりのように思いましたが、
かつて“イタリアの宝石”と呼ばれて、日本でも人気があった時代が懐かしいですねぇ。

映画はタイトル通り、魔法使いの見習いとして修行する若者を描いているのですが、
最初は上手くコントロールできていなくて、何度も失敗を重ねて魔法も上手くなっていくという人間臭さ(笑)。

でも、チョット残念だったのは映画の終盤での魔法を使って闘うシーンで、
何故か“カメカメ波”、或いは“破動拳”の打ち合いになるという描写が安っぽくて、残念。
あれはほぼ確実に日本のアニメをモデルにした描写だと思うのですが、劇中、「サケは日本の酒だよ」という
台詞が出てきたり、やたらと日本を意識させるシーンがあったのは、日本に対する敬意なのでしょうか?(笑)

この映画、少しだけB級映画のような雰囲気を感じるのですが、
ニコラス・ケイジがやたらと最近、こういうB級っぽい雰囲気のある映画を中心に出演しているのが
気になっていて、この流れは『ウィッカーマン』からずっと続いているんですよねぇ。

何はともあれ、あまり期待せずに観たら、そこそこ楽しめる映画かと思います。
特に『ドラゴンボール』が好きな人には、何気にオススメしたい一本で、もっと評価されてもいいとは思いますね。

とすると、ニコラス・ケイジって、亀仙人だったのかも(笑)。

(上映時間109分)

私の採点★★★★★★★★☆☆〜8点

監督 ジョン・タートルトーブ
製作 ジェリー・ブラッカイマー
原案 マット・ロペス
    ローレンス・コナー
    マーク・ローゼンタール
脚本 ダグ・ミロ
    カルロ・バーナード
    マット・ロペス
撮影 ボジャン・バゼリ
編集 ウィリアム・ゴールデンバーグ
音楽 トレバー・ラビン
出演 ニコラス・ケイジ
    ジェイ・バルシェル
    アルフレッド・モリーナ
    テリーサ・パーマー
    モニカ・ベルッチ
    トビー・ケベル
    オマー・ベンソン・ミラー
    アリス・クリーグ