ソーシャル・ネットワーク(2010年アメリカ)

The Social Network

2003年暮れから、全米の大学を中心に急速に広まった、
SNS(ソーシャル・ネットワーク・サービス)の先駆けとも言える、“フェイスブック”の創設者である、
実在の人物マーク・ザッカーバーグの成功と挫折を描いた、2010年度アカデミー賞に於いて、
作品賞含む主要8部門でノミネートされ、世界的に大きな話題となった大ヒット作。

監督は『エイリアン3』のデビッド・フィンチャーで、彼の個性的な映像感覚は
固有のファンが多くいるのですが、本作の前作『ベンジャミン・バトン/数奇な人生』あたりから、
デビッド・フィンチャーの監督作品は随分とマイルドになって、正攻法な映画に変わってきました。

で、本作。
僕も観る前から大きな期待を持って鑑賞したのですが、
確かに面白い。惹きつけられる。とても良く出来ている...とは思うのですが、
あくまで映画という枠組みの中で考えたとき、至上の感動と言うには、いささか大袈裟かもしれませんが、
少なくとも僕が期待していたレヴェルで、心を強く揺さぶったり、突き動かすほどの原動力は感じられなかった。

単純に面白いと感じた理由は、おそらく“フェイスブック”の立ち上げを
実話をベースに脚色しながらも、しっかりとドキュメントできているからだろう。
そう、ある意味で、この映画は劇場公開当時、“旬な”題材を映画化していたわけですからね。

しかし、僕にはこの映画がアカデミー賞を獲得できなかった理由は分かるし、
同じデビッド・フィンチャーの監督作品という意味では、前作『ベンジャミン・バトン/数奇な人生』の方が、
大きな意外性と、大きな感動をもたらす原動力があったと思うし、映画の出来自体も前作の方が良かったと思う。

それはストーリーのことを論じているわけではなく、
どうしても僕には、本作がスタイルを追っているだけの映画にしか見えなかったことが大きい。

欲を言えば、もっとザッカーバーグの発想の源を追究して欲しかったし、
共同創業者であるエドゥアルドのこともしっかりと描いて欲しかったし、この編集もどうにかして欲しかった。
おそらくこの編集はデビッド・フィンチャーのこだわりなのだろうけど、この程度の物語を語るのに、
ここまで幾度となく時制を入れ替える必要性を感じないし、特に映画に前半は観ていて戸惑った部分が大きかった。

まぁ・・・僕の理解力の問題も大きいのですが(笑)、
この映画はもっとストレートに描いていれば、もっと凄い傑作になっていたと思うのですよね。

デビッド・フィンチャーも映像作家として、色々とチャレンジしてみたいことは多いのだろうけど、
基本的にはそこまで器用なタイプではないですからねぇ。どうしても、僕も尖った見方をしてしまうのですが(笑)。

これをサクセス・ストーリーと言っていいのか、どうなのかよく分かりませんが(苦笑)、
あくまで結果としてマーク・ザッカーバーグは今は世界を代表する億万長者であり、
“フェイスブック”は未だに人気のあるコンテンツですので、当時、ザッカーバーグが思い描いていたことは
決して的外れなことではなかったということだろうし、彼のヴィジョンは間違っていなかったということでしょう。

それにしても、この映画で描かれたことの全てが真実ではないようで、
かなりの部分がフィクションになっていることを前提とはしていますけど、
それにしても、ザッカーバーグはよくこの映画の企画に対して、難色を示さなかったなぁと感心する。
(どうやら脚本のアーロン・ソーキンが取材したいと申し出たらしいが、それは断ったらしい・・・)

と言うのも、映画の序盤に登場するザッカーバーグは驚くほどイヤな奴に映っている。

いや、ひょっとしたら、実在のザッカーバーグもこんな人間なのかもしれませんが、
まるで現実逃避するかのように、自分をフった女の子に復讐する一心で、
いくら酔った勢いとは言え、人として御法度なことをやってしまい、大学内では四面楚歌になってしまいます。

現実にこんなことが動機で、“フェイスブック”が始まったとすれば、
あまりにショッキングな現実ではあるのですが、ホントにこの映画の序盤で登場してくる、
ザッカーバーグは驚くほどにイヤな奴で、ハッキリ言って、観客のストレスになる存在に映る。

これも作り手の一つの狙いではあるのでしょうけど、
映画の中では、あくまでこういうザッカーバーグの性格的な難点がメインというわけではないのですが、
さすがに彼の性格が災いしてしまったという点が大きかったのではないかと思いますがね。
(まぁ・・・彼が早い段階から自身の性格を反省してれば、“フェイスブック”も誕生しなかったかもしれませんが...)

ザッカーバーグの性格面での難点を克服できていれば、
ひょっとしたらあんなに数多くの訴訟を抱えずに済んだかもしれませんね。

“ナップスター”を開発して、やはり大金持ちになった、
実在の人物ショーン・パーカーも、ある種、トラブルメーカー的な存在として描かれており、
おそらくこういう周辺の人物にしても、本作の内容について快く思っていない人も多いのかもしれませんね。

本作はデビッド・フィンチャーの監督作品の中では、
現時点では最も高く評価された作品でしょう。彼のコアなファンにとっては、
あまりにノーマルな内容で驚いただろうが、これも一つの変化として受け入れなければならないと思います。

それでも、本作は編集段階に於いて、色々と工夫されており、
当初はキャストの大半がもっと遅い口調で台詞を発していたらしいのですが、
上映時間が長くなり過ぎたということもあって、かなりのシーンを割愛したことに加えて、
各キャストを早口に見せて、映画をスリムにさせる工夫が施されたようで、これはテンポアップにもつながっている。

故意に早口にさせることによって、
ザッカーバーグがやたらとガツガツしたところがあるように見せることもでき、
成功を夢見る者たちの象徴させることで、映画のテンポを作り出すことに見事に成功していますね。

今となっては、SNS(ソーシャル・ネットワーク・サービス)は
日本でも10年ほど前から“ミクシィ”が流行ったりして、ごくありふれたメディアになりましたが、
その先駆けとして、どのようにして、SNSが誕生し拡散したのかを知る上でも、良い映画だと思いますね。

まぁ・・・映画で描かれたマーク・ザッカーバーグという人物に共感を得るかは
何とも言えないところではありますが、こういった経験をして、今があることを考えると、
人物像という面に於いては、本作を一つの成長物語として捉える方が適切なのでしょう。

だからこそ、ザッカーバーグも映画自体を嫌悪しなかったのかもしれませんね。

(上映時間120分)

私の採点★★★★★★★★☆☆〜8点

日本公開時[PG−12]

監督 デビッド・フィンチャー
製作 スコット・ルーディン
    デイナ・ブルネッティ
    マイケル・デ・ルカ
    セアン・チャフィン
原作 ベン・メズリック
脚本 アーロン・ソーキン
撮影 ジェフ・クローネンウェス
編集 アンガス・ウォール
    カーク・バクスター
音楽 トレント・レズナー
    アッティカス・ロス
音楽 ジェシー・アイゼンバーグ
    アンドリュー・ガーフィールド
    ジャスティン・ティンバーレイク
    アーミー・ハマー
    ルーニー・マーラ
    マックス・ミンゲラ
    ブレンダ・ソング
    ジョセフ・マッゼロー
    ジョン・ゲッツ
    ラシダ・ジョーンズ
    バリー・リヴィングストン
    ダグラス・アーバンスキー

2010年度アカデミー作品賞 ノミネート
2010年度アカデミー主演男優賞(ジェシー・アイゼンバーグ) ノミネート
2010年度アカデミー監督賞(デビッド・フィンチャー) ノミネート
2010年度アカデミー脚色賞(アーロン・ソーキン) 受賞
2010年度アカデミー撮影賞(ジェフ・クローネンウェス) ノミネート
2010年度アカデミー作曲賞(トレント・レズナー、アッティカス・ロス) 受賞
2010年度アカデミー音響調整賞 ノミネート
2010年度アカデミー編集賞(アンガス・ウォール、カーク・バクスター) 受賞
2010年度イギリス・アカデミー賞監督賞(デビッド・フィンチャー) 受賞
2010年度イギリス・アカデミー賞脚色賞(アーロン・ソーキン) 受賞
2010年度イギリス・アカデミー賞編集賞(アンガス・ウォール、カーク・バクスター) 受賞
2010年度全米脚本家組合賞脚色賞(アーロン・ソーキン) 受賞
2010年度全米映画批評家協会賞作品賞 受賞
2010年度全米映画批評家協会賞主演男優賞(ジェシー・アイゼンバーグ) 受賞
2010年度全米映画批評家協会賞監督賞(デビッド・フィンチャー) 受賞
2010年度全米映画批評家協会賞脚本賞(アーロン・ソーキン) 受賞
2010年度ナショナル・ボード・オブ・レビュー賞作品賞 受賞
2010年度ナショナル・ボード・オブ・レビュー賞主演男優賞(ジェシー・アイゼンバーグ) 受賞
2010年度ナショナル・ボード・オブ・レビュー賞監督賞(デビッド・フィンチャー) 受賞
2010年度ナショナル・ボード・オブ・レビュー賞脚色賞(アーロン・ソーキン) 受賞
2010年度ニューヨーク映画批評家協会賞作品賞 受賞
2010年度ニューヨーク映画批評家協会賞監督賞(デビッド・フィンチャー) 受賞
2010年度ロサンゼルス映画批評家協会賞作品賞 受賞
2010年度ロサンゼルス映画批評家協会賞監督賞(デビッド・フィンチャー) 受賞
2010年度ロサンゼルス映画批評家協会賞脚本賞(アーロン・ソーキン) 受賞
2010年度ロサンゼルス映画批評家協会賞音楽賞(トレント・レズナー、アッティカス・ロス) 受賞
2010年度ボストン映画批評家協会賞作品賞 受賞
2010年度ボストン映画批評家協会賞主演男優賞(ジェシー・アイゼンバーグ) 受賞
2010年度ボストン映画批評家協会賞監督賞(デビッド・フィンチャー) 受賞
2010年度ボストン映画批評家協会賞脚本賞(アーロン・ソーキン) 受賞
2010年度ボストン映画批評家協会賞音楽賞(トレント・レズナー、アッティカス・ロス) 受賞
2010年度シカゴ映画批評家協会賞作品賞 受賞
2010年度シカゴ映画批評家協会賞監督賞(デビッド・フィンチャー) 受賞
2010年度シカゴ映画批評家協会賞脚本賞(アーロン・ソーキン) 受賞
2010年度ラスベガス映画批評家協会賞作品賞 受賞
2010年度ラスベガス映画批評家協会賞監督賞(デビッド・フィンチャー) 受賞
2010年度ラスベガス映画批評家協会賞脚本賞(アーロン・ソーキン) 受賞
2010年度ラスベガス映画批評家協会賞作曲賞(トレント・レズナー、アッティカス・ロス) 受賞
2010年度ワシントンDC映画批評家協会賞作品賞 受賞
2010年度ワシントンDC映画批評家協会賞監督賞(デビッド・フィンチャー) 受賞
2010年度ワシントンDC映画批評家協会賞脚色賞(アーロン・ソーキン) 受賞
2010年度サンフランシスコ映画批評家協会賞作品賞 受賞
2010年度サンフランシスコ映画批評家協会賞監督賞(デビッド・フィンチャー) 受賞
2010年度サンフランシスコ映画批評家協会賞脚色賞(アーロン・ソーキン) 受賞
2010年度インディアナ映画批評家協会賞作品賞 受賞
2010年度インディアナ映画批評家協会賞脚本賞(アーロン・ソーキン) 受賞
2010年度サウス・イースタン映画批評家協会賞作品賞 受賞
2010年度サウス・イースタン映画批評家協会賞監督賞(デビッド・フィンチャー) 受賞
2010年度サウス・イースタン映画批評家協会賞脚色賞(アーロン・ソーキン) 受賞
2010年度サンディエゴ映画批評家協会賞脚色賞(アーロン・ソーキン) 受賞
2010年度デトロイト映画批評家協会賞作品賞 受賞
2010年度ダラス・フォートワース映画批評家協会賞作品賞 受賞
2010年度ダラス・フォートワース映画批評家協会賞監督賞(デビッド・フィンチャー) 受賞
2010年度ダラス・フォートワース映画批評家協会賞脚本賞(アーロン・ソーキン) 受賞
2010年度ヒューストン映画批評家協会賞作品賞 受賞
2010年度ヒューストン映画批評家協会賞主演男優賞(ジェシー・アイゼンバーグ) 受賞
2010年度ヒューストン映画批評家協会賞監督賞(デビッド・フィンチャー) 受賞
2010年度ヒューストン映画批評家協会賞脚本賞(アーロン・ソーキン) 受賞
2010年度セントルイス映画批評家協会賞作品賞 受賞
2010年度セントルイス映画批評家協会賞監督賞(デビッド・フィンチャー) 受賞
2010年度セントルイス映画批評家協会賞脚本賞(アーロン・ソーキン) 受賞
2010年度フロリダ映画批評家協会賞作品賞 受賞
2010年度フロリダ映画批評家協会賞監督賞(デビッド・フィンチャー) 受賞
2010年度フロリダ映画批評家協会賞脚色賞(アーロン・ソーキン) 受賞
2010年度オクラホマ映画批評家協会賞作品賞 受賞
2010年度オクラホマ映画批評家協会賞主演男優賞(ジェシー・アイゼンバーグ) 受賞
2010年度オクラホマ映画批評家協会賞監督賞(デビッド・フィンチャー) 受賞
2010年度オクラホマ映画批評家協会賞脚色賞(アーロン・ソーキン) 受賞
2010年度オースティン映画批評家協会賞脚色賞(アーロン・ソーキン) 受賞
2010年度ユタ映画批評家協会賞作品賞 受賞
2010年度ユタ映画批評家協会賞監督賞(デビッド・フィンチャー) 受賞
2010年度ユタ映画批評家協会賞脚本賞(アーロン・ソーキン) 受賞
2010年度フェニックス映画批評家協会賞脚色賞(アーロン・ソーキン) 受賞
2010年度カンザス・シティ映画批評家協会賞作品賞 受賞
2010年度カンザス・シティ映画批評家協会賞脚色賞(アーロン・ソーキン) 受賞
2010年度セントラル・オハイオ映画批評家協会賞脚色賞(アーロン・ソーキン) 受賞
2010年度アイオワ映画批評家協会賞作品賞 受賞
2010年度アイオワ映画批評家協会賞監督賞(デビッド・フィンチャー) 受賞
2010年度デンバー映画批評家協会賞作品賞 受賞
2010年度デンバー映画批評家協会賞監督賞(デビッド・フィンチャー) 受賞
2010年度デンバー映画批評家協会賞脚色賞(アーロン・ソーキン) 受賞
2010年度トロント映画批評家協会賞作品賞 受賞
2010年度トロント映画批評家協会賞主演男優賞(ジェシー・アイゼンバーグ) 受賞
2010年度トロント映画批評家協会賞助演男優賞(アーミー・ハマー) 受賞
2010年度トロント映画批評家協会賞監督賞(デビッド・フィンチャー) 受賞
2010年度トロント映画批評家協会賞脚本賞(アーロン・ソーキン) 受賞
2010年度ヴァンクーヴァー映画批評家協会賞作品賞 受賞
2010年度ヴァンクーヴァー映画批評家協会賞監督賞(デビッド・フィンチャー) 受賞
2010年度ヴァンクーヴァー映画批評家協会賞脚本賞(アーロン・ソーキン) 受賞
2010年度ロンドン映画批評家協会賞作品賞 受賞
2010年度ロンドン映画批評家協会賞監督賞(デビッド・フィンチャー) 受賞
2010年度ロンドン映画批評家協会賞脚本賞(アーロン・ソーキン) 受賞
2010年度ゴールデン・グローブ賞作品賞<ドラマ部門> 受賞
2010年度ゴールデン・グローブ賞監督賞(デビッド・フィンチャー) 受賞
2010年度ゴールデン・グローブ賞脚本賞(アーロン・ソーキン) 受賞
2010年度ゴールデン・グローブ賞音楽賞(トレント・レズナー、アッティカス・ロス) 受賞