旅するジーンズと16歳の夏/トラベリング・パンツ(2005年アメリカ)

The Sisterhood Of The Traveling Pants

生まれた時から、一緒に過ごした4人組の少女たちが、16歳の夏休みに初めてバラバラに過ごすことになり、
それぞれ特別な夏休みを体験することになる瑞々しい青春の日々を描いた青春ドラマ。

この4人のそれぞれの夏休みの間は、彼女たちの間で不思議な力を持つとされる一枚のジーンズを
ある種の各エピソードのつなぎ役≠ニして登場してくるのですが、残念ながらこれがチョット弱い。

まぁ決して致命的なミステイクだとは思わないけれども、タイトルにもしているジーンズの存在が
映画の中盤以降、かなり薄くなってきて、何のためにジーンズを登場させたのかよく分からなくなってくる。
個人的には、もう少しジーンズの登場意義を示して欲しかったし、目立たせて欲しかったですね。

映画の出来としては決して悪くないし、出演者たちも存在感ある芝居で良く頑張ったと思います。
羨ましく思うのは、映画として日本とは違って、本作のような青春映画が簡単に誕生しちゃうこと。
勿論、原作の良さもあるとは思いますが、ディレクターの視点の良さが大きいと思いますね。
4人それぞれの配分がひじょうにバランス良く紹介されており、群像劇として優れた作品だと思いますね。

監督は91年に『ヒー・セッド、シー・セッド/彼の言い分、彼女の言い分』のケン・クワピス。
『ヒー・セッド、シー・セッド/彼の言い分、彼女の言い分』は日本劇場未公開作ではありますが、
軽妙なラブコメとして評価が高い作品であり、男女それぞれの言い分を描いた作品です。
そういう意味では、このケン・クワピスというディレクターはそれぞれ主張の異なる登場人物、
あるいは全く異なる性格を持つ複数のエピソードを一つの形にまとめるのが得意な人なのかもしれません。

あるアイテムが複数の登場人物のエピソードをつなげるって話しはよくあるんですけど、
やっぱりこういう群像劇スタイルの映画って、バランス良く撮るのが凄く難しいと思いますね。

やっぱり多少なりとも、この映画にも苦慮した後があって、最終的にバランス良く配分するために編集するのって、
凄く難しかったと思いますね。僕個人としては、父親の再婚にショックを受けるプエルトリコ系のカルメンの
エピソードが一番、魅力的だったとは思うのですが、それでも他のエピソードもほぼ遜色ない作りだ。

おそらくカルメンのエピソードが僕の中で突出したインパクトを持っていた理由は、
映画のクライマックスで後日談的に追加描写されていたせいでしょう。

消化不良では終わらせたくなかったのかもしれませんが、
あそこまでキレイに終わらせなくとも十分に魅力的なエピソードだったとは思いますがねぇ。。。
とは言え、結婚式会場で彼女たちが見せた笑顔こそが、作り手たちが一番撮りたかったショットなのでしょう。

思えば16歳の夏って、確かに重要な時期ですよね(笑)。
僕もその時は何も考えずに、ノー天気に過ごしていましたが(笑)、今になって思えば、
「ああ、●●を○○すれば良かった・・・」とか「▲▲しておくべきだった」とか、後悔していることが多々あります。
しかし、常に完璧な人生なんてありはしないと考えておりますので、あまり深く考えないようにしています。

とは言え、こういう映画を観て大事だなぁと実感するのは、
10代のああいった瑞々しい感覚が今となっては希薄になってしまったことで、
確かに大人にならないと理解できない感覚なんかもあるとは思いますが、
10代の頃にしか味わえない感覚や楽しみって、もっとたくさんあると思うんですよね。
だからこそ、こういう映画を観て、そういうエネルギーを強く感じ取って、思い出すことによって、
ティーンの時代の気持ちを常に忘れないようにしたいと考えています。
(正しくイエモン≠フ『So Young』のような世界ですが。。。)

実際、僕も教育実習で卒業から約3年半経ってから高校へ行った時に、実感しましたね。
生徒たちが何をどう面白いと感じるのか、よく分からないなぁって。

まぁ早い話が、自分が年をとっただけではあるのですが(笑)、
とは言え、やはりこれも「時代の変化」なのだろうと。形は違えど、自分たちが生徒という立場だった頃には、
ほぼ間違いなくそういった自分らにしか分からない楽しさってのがあったのだろうと思うのです。

何がどう面白いかってのは、答えは一様ではないと思いますが、
少なくともティーンの時代に味わう気持ち、感覚ってのは何時の世代にも共通したものだろうと思うのです。
(まぁ・・・何故か、もはや青春を悟ってしまうというのも、それはそれで悲しいのですが...)

僕は本作なんかは、そういった気持ちを再び思い出させてくれるような素晴らしい内容だと思うんですよね。
勿論、各々、生活環境が異なるし、本作で描かれた世界観とのギャップはあると思います。
但し、この映画にはそれでも青春時代の感覚とはどのようなものかを感じさせるだけの、力強い力がある。
それは個人差をも埋めてしまうぐらいの、とても力強いものと言っても語弊は無いと思いますね。

ティーンの時代までって、早く大人になりたがる傾向があると思うんですけど、
何故か急激に成人すると10代に戻りたくなるという、何とも不条理な心理が人の世の常ですが(笑)、
正に本作で描かれた事柄って、ティーンに戻りたいって思わせてくれるような瑞々しい内容だと思う。

映画の役割って、こういうことが大切でして、
観客に観終わった後に何を体感させ、何を残すのかがひじょうに重要だと思います。
そういう意味でも、こういう映画は大切にしなければならないと思うのです。

(上映時間118分)

私の採点★★★★★★★★★☆〜9点

監督 ケン・クワピス
製作 デブラ・マーティン・チェイス
    デニーズ・ディ・ノヴィ
    ブロデリック・ジョンソン
    アンドリュー・A・コソーヴ
原作 アン・ブラッシェアーズ
脚本 デリア・エフロン
    エリザベス・チャンドラー
撮影 ジョン・ベイリー
美術 ゲイ・S・バックリー
編集 キャスリン・ヒモフ
音楽 クリフ・エデルマン
出演 アンバー・タンブリン
    アレクシス・ブレデル
    アメリカ・フェレーラ
    ブレイク・ライヴリー
    ジェナ・ボイド
    ブラッドリー・ウィットフォード
    ナンシー・トラビス
    レイチェル・ティコティン