スコア(2001年アメリカ)

The Score

いつもはコメディ映画を専門にしている印象が強いフランク・オズが、
モントリオールで金庫破りを目論み、3000万ドルもの高価な“灼”を強奪しようと、
用意周到な準備を重ねて実行に移す様子を描いた、サスペンス・アクション。

確かに驚くほど、オーソドックスな内容の映画で、
あまりにストレートに勝負してきた、ある種、職人気質な映画ではあるので、
面を食らうほどではあるのですが、僕はこの映画、ひじょうに出来が良い作品と判断しています。

エドワード・ノートン演じるブライアンも、過去の彼の出演作を考えれば、
ハッキリ言って、これぐらいできて当然な芝居で、むしろステレオタイプに見えるかもしれません。

しかし、相変わらずエドワード・ノートンは目が良いですね。
彼が視線で作るキャラクターというアプローチの上手さは、やはり昨今のハリウッドでは一つ抜けていますね。
(まぁそれこそ、本作で彼が共演するロバート・デ・ニーロも視線の芝居は上手いんだけれども・・・)

但し、あくまでフランク・オズの監督作という観点から考えますと、
思いのほか、シビれるようなカッコ良さ、そしてクールさを持ち合わせて、
主人公が愛好するジャズのようなスタイルを持った作品ということができて、下手にジタバタして、
冒険してしまう映画にならず、最後の最後まで破綻しないように配慮されていて、好感が持てますね。

晩年のマーロン・ブランドの出演作の一つでもありますが、
個人的には最後のプールでのシーンでは、かなり弱っているように見えて複雑ですね(←役作り?)。

おそらく古くからの犯罪映画が好きな人なら、楽しめる一本でしょうね。
陳腐な言葉で例えると、どちらかと言えば、本作のフランク・オズからは懐古趣味みたいなものを感じます。
まぁクライマックスの金庫破りのシーンは、水圧を使ったり、色々と複雑な工作をして実行するのですが、
なんか観ていると、「そんな面倒くさいことをしなくとも、開くんじゃないの?」と言いたくなりますが(笑)、
まるで花火でも打ち上げるかのように、火花を散らして金庫を破ろうとするシーンは良かったと思いますね。

そしてオチも予想できる範囲とは言え、決して無理な形ではなく好感が持てる。
特にこのオチの付け方は上手かったと思いますね。フランク・オズのバランス感覚の良さを象徴してます。
やはり映画全体としての調和を意識して撮っていなければ、こういうオチの付け方はできませんよね。

クライマックスの金庫破りシーンに至っては、たぶんスタントを使っているんでしょうが、
デ・ニーロの当時の年齢を考えれば、これは凄いしんどいシーンですよね(笑)。

映画は、少々、金庫破りの準備にかける時間が長いため、やや冗長な部分はあります。
しかしながら、僕はこれは否定しません。むしろ映画に一貫性を持たせられて、良かったと思いますね。
ただ抜群に良くなるのは、肝心かなめの金庫破りが始まってからで、映画は急にテンポが良くなります。
特にエドワード・ノートン演じるブライアンとデ・ニーロ演じるニックの駆け引きが感じられるあたりが良いですね。

確かにフランク・オズって、88年の『ペテン師とサギ師/だまされてリビエラ』で
凄くユニークなコンゲームを描いていましたから、この手の話しの映像化は経験が皆無なわけではないのかも。
(『ペテン師とサギ師/だまされてリビエラ』はホントに良く出来た、コンゲーム映画です!)

欲を言えば、もう少しダークなイメージを利用しても良かったかなぁ。
事実、ニックは地下水路を利用するわけだし、どこか物語に陰気クサさというものが必要だったと思う。
映画の雰囲気が全体的に明る過ぎるような気がして、もう少し暗くても良かったとは思いますけどね。

しかし、ニックは「盗みは他所の街でやる。モントリオールは暮らす街だ」ということを
信念にしてきたみたいなのですが、つい信頼していたマーロン・ブランド演じるマックスから口説かれ、
自分の家の近くで盗みに入る決意をするのですが、またこれはマックスが上手いですよね。
どこまで真実をニックに話しているのかよく分からない部分もあるのですが、上手くニックを取り込みます。
(実は演じるデ・ニーロとマーロン・ブランドの2人の共演シーンは、ほとんどが即興演技だとか...)

この割り切りがニックの仕事の鮮やかさにつながっているのでしょうが、
それならば映画の冒頭で、さり気なく失敗しそうになるなんてエピソードはいらなかったなぁ〜。
あんな簡単に人が入ってくるような環境で盗みをトライするなんて、明らかなイージー・ミスでしょう(笑)。

ニックは入念な準備に準備を重ねて、ほぼ100%上手くいく状況を作ってから、
計画を実行に移すタイプなので、あんなイージー・ミスを犯すとなると、彼のキャラクターに納得性が出ないかな。
そのイージー・ミスをカヴァーする術も準備していないのですから、まるでリスク管理ができてません(苦笑)。
さすがにこれではニックの金庫破りとしての腕を疑う観客も多くいたのではないかと心配になってしまいます。

とまぁ・・・色々と重箱の隅を突けば、不満もあるにはあるのですが、
何より本作はフランク・オズが新たな境地を開拓した作品として、高く評価するに値する一本と言えるでしょう。
特に犯罪映画はそう容易いジャンルではないので、彼の手腕はもっと評価されても良かったと思います。

フランク・オズはあまり頻繁に映画を撮るディレクターではないので、
なんか勿体なく思えるのですが、これだけ出来るのであれば、もっと磨けば凄い映画が撮れると思いますね。

(上映時間123分)

私の採点★★★★★★★★★☆〜9点

監督 フランク・オズ
製作 ゲイリー・フォスター
    リー・リッチ
原案 ダニエル・E・テイラー
    カリオ・セイラム
脚本 カリオ・セイラム
    レム・ドブス
    スコット・マーシャル・スミス
撮影 ロブ・ハーン
音楽 ハワード・ショア
出演 ロバート・デ・ニーロ
    エドワード・ノートン
    マーロン・ブランド
    アンジェラ・バセット
    ゲイリー・ファーマー
    ポール・ソールズ