バトルランナー(1987年アメリカ)

The Running Man

ヤバい、これは面白い(笑)。あのシュワちゃん映画とは思えないくらいの超カルトなSF映画ですがね。。。

スティーブン・キングの原作(クレジットはスティーブン・キングの変名)らしいのですが、
2017年という本作製作から30年後の“未来”を舞台にしていて、当時の空想上ではかなりの近未来な世界観でした。

映画の要点はシンプルで、“The Running Man”と称された超人気テレビ番組があって、
その番組では犯罪者が「ランナー」として逃げ回り、「ストーカー」と呼ばれる処刑人として「ランナー」を狩る様子を、
テレビゲームのような感覚で生中継することで、視聴者たちが熱狂するのですが、無実の罪で投獄されてしまい、
「ランナー」となることに必死に抵抗していた主人公リチャーズが、いつしか番組に駆り出される姿を描いています。

監督はアンドリュー・デービスだったのに、ポール・マイケル・グレイザーに交代となったらしく、
主演のシュワちゃんもポール・マイケル・グレイザーの仕事ぶりに否定的なコメントを出していたようですけど、
僕はそこまで悪い仕事ぶりだったとは思わない。そりゃ、原作からはかなり脚色したらしく賛否はあるのだろうけど。

ただ、作り手も確信犯的にB級テイストいっぱいに演出したことは正解だったと思うし、
かつての『ローラーボール』をよりエスカレートさせたような、残酷かつ暴力的なゲームの内容は斬新に見える。
こんなテレビ番組に熱狂していること自体、にわかに信じ難いのですが、この世紀末感は何とも言えないテイストだ。

「ストーカー」がなんか弱っちいというのが玉に瑕(きず)なんですけど、
やたらと番組の司会者が権力を握っていて、過剰にショーアップ化させることで視聴者は過剰に熱狂していく。
公然と処刑するように殺人を容認するという、現実的にはあり得ない番組ではありますが、「ランナー」と「ストーカー」の
攻防について結末を視聴者が賭けているという光景も、どことなくシュールなものでモラルが崩壊しているのが面白い。

そして何よりビックリさせられるのは、番組の司会者が「ランナー」に対する批判を高めるためにと、
いわゆるディープフェイクの映像を仕込んで、それをサブリミナルに放送することで世論形成を図っているということ。
これは現代社会でも問題提起されるような構図であり、未来の社会を警鐘しているような描写で的確なものである。

合成技術を使ってフェイクニュースを流すという手法は、結構古くからあったようですけど、
本作では政治的に、というよりも営利目的でフェイクニュースを流し、機械に学習させて熟練させるような技術を
使っているように見えるのが印象的で、AIが発達する未来を予見していたかのような映画になっているのがスゴい。

本作が不評に終わってしまったのは、やっぱり当時のシュワちゃん主演の映画だということだろう。

ボディビルダーとして活躍して、80年代を代表するハリウッド・スターという位置づけですから、
シュワちゃんが大活躍のSFアクションという内容を期待していた人も多かったのでしょうが、内容的に思いっ切り
B級でチープな雰囲気の映画だったものだから、当時の映画ファンも拍子抜けしたというのもあったのではないかと。

まぁ、スティーブン・キング原作のSF映画ですから個性的な内容になるのは明らかだったと思うのですが、
典型的なシュワちゃんのアクション映画を期待する人と、スティーブン・キングの世界を期待する人との板挟みでしたね。

映画の焦点となるテレビ番組のルールもまったくもって謎で、「ランナー」となった犯罪者は上半身を拘束され、
いきなりボブスレーのような乗り物に乗せられて、猛スピードでトンネルの中を下っていくのですが、これも意味不明。
トンネルから出たら、乗り物から降りて今度は襲い掛かってくる「ストーカー」から逃げ回るというゲームのルールで、
派手な武器や防具を持つ「ストーカー」とは対照的に、「ランナー」は無防備でほとんどの「ランナー」は殺されてしまう。

ところがシュワちゃん演じる主人公のリチャーズはメチャクチャ強く、最強の「ストーカー」と呼ばれる連中は
なんか弱いのでリチャードはアッという間に「ストーカー」を殺しちゃうものだから、視聴者たちは次第にリチャードを
応援し始める始末で、番組の視聴率が上がると同時にリチャーズの人気はうなぎ上り、番組の司会者も目を付けます。

リチャードは番組側から「ストーカー」として番組に出演しないか?と、メチャクチャな提案を受けますが、
そもそも無実の罪で逮捕されていたリチャーズからすると、怒り心頭な提案であり拒否して、反抗することを決意します。

まぁ、「ランナー」は何らかの犯罪を犯して身柄を拘束されていて、そのペナルティとして番組出演するという設定で
番組司会者の影響力が絶大だとは言え、勝手に「ランナー」を「ストーカー」にしようとか、恣意的に「ランナー」を
殺害するように仕向けるとか、警察の存在をも越えて番組司会者が犯罪者の処遇を操作できる社会は怖いですね。
番組の視聴率のためならと、やりたい放題やっていた番組司会者には天罰が下るという勧善懲悪な物語ですが、
欲を言えば、これだけ雰囲気満点のカルトSF映画なので、もっと不条理なニュアンスを出しても良かったかとは思った。
(しかし、この番組...最後まで「ストーカー」から逃げ切ったら無罪放免になるという設定もスゴい・・・)

それから、マリア・コンチータ・アロンゾ演じるリチャーズの濡れ衣の事実を知ったテレビ局の女性アンバーの存在が
今一つで彼女を描く必要性を持たせて欲しかった。彼女も一緒になってレオタード姿で番組出演を強いられるなんて、
かなりの力技なストーリー展開なので、紅一点的扱いではなくって、ちゃんと彼女のキャラクターを磨いて欲しかった。

それゆえか、最後にシュワちゃんとキスして映画が終わるなんて、
思わず「アナタたちにそんな気持ちの高ぶりは無かったでしょ」とツッコミの一つでも入れずにはいられないですね。

ちなみにクイズ番組でも、本作自体の原題になっているのは“The Running Man”というくらいですから、
主人公含めて走って逃げ回る映画なのかなと思いきや、確かに走るシーンはあるけど、走りまくるというほどではない。
映画自体もそこまでスピード感ある展開というわけでもないので、完全にこのタイトルは名前負けしている気がします。

せめて「ストーカー」に追われるシーンくらいは、疾走感と緊張感あるシーン演出にして欲しかったのですが、
残念ながら本作はそんな感じではないので、アクション映画としての物足りなさを助長してしまった気はしますね。
この辺がシュワちゃんから、「お手軽映画にされてしまった」と否定的なコメントを出した理由なのかもしれませんね。

ある程度はSFX技術が発達していた時代だと思うのですが、本作はセット撮影の手作り感が素晴らしい。
リチャーズにやられる「ストーカー」たちの派手なやられっぷりも、迫力ある映像で表現されているのが印象的だ。
「ストーカー」のコスチュームがチープ過ぎるのがB級どころか、C級な感じを増長させますが、それが本作の特徴です。
きっと、往年の人気ゲーム『ストリート・ファイター』などが好きだった人からすると、妙に懐かしい造形だと思いますね。

なんとも間抜けな感じに見えてしまうのは、リチャーズの快進撃をテレビで見ている控室の「ストーカー」たち。
あまりに強いリチャーズを見ていると、自分の出番が近づくことを自覚し、自分で太刀打ちできるか不安な表情になる。
最終的には気合を入れていくのですが、そんな控室の様子を同時進行的に見せているのには、風刺の要素を感じる。

そう、結局はこの映画の大きなテーマとしては、メディアの恐ろしさとそれを風刺することにあったと思うのですよね。
本作はそういった部分は少々過小評価に終わってしまった気がして、不遇の作品だったようにも思いますね。

本作で描かれた2017年のような未来は、実際の2017年とは程遠い雰囲気ではありましたが、
この手のSF映画の未来像は、きまって大気汚染などの環境破壊が進んで、人々の秩序やモラルが乱れに乱れ、
挙句の果てには法治国家が崩壊したかのように荒れ狂い、より格差社会が助長されているようなイメージが定番だ。

その例に漏れずに本作の原作でスティーブン・キングが描いた世界観も同様でして、
当時の消費社会に対する警鐘でもあったのだろう。だからこそ、エスカレートした世界を見せることで成り立つわけで、
そうなると当然、映画自体がドラスティックな内容になって、行き場の無い世紀末感が漂う作品になるのですよね。

自分もSF小説マニアではないので、まったく詳しくないのですが...
テレビというメディアが衰退して、存在感を弱めていく未来を予測したSF小説家は、かつて居たのでしょうか?
(昨今はテレビはあるけど、テレビ放送を観るというよりサブスクや動画配信をメインに観ている人が多いですから)

ちなみに、本作は最近になってリメークの企画が立ち上がっていて、製作が進んでいるようですね。
どのような内容になるのかは知りませんが、原題の技術を起点に未来を予測した内容になるのかとも思います。
でも、正直、この第1回の映画化で描くべきことの全てを描いてしまった感があるので、二番煎じにならないかと
一抹の不安がありますね。当時のシュワちゃんのようなインパクトを持った主演俳優を起用しないと、キビしいでしょう。
どうやらスティーブン・キングの原作の熱心なファンからは不評のようなので、ハードルが高い企画だとも思います。

ところでさ...フリートウッド・マック≠フミック・フリートウッドが出演しているんだけど、なんで出演したんだろ?

(上映時間100分)

私の採点★★★★★★★☆☆☆〜7点

監督 ポール・マイケル・グレイザー
製作 ティム・ジンネマン
   ジョージ・リンダー
   ロブ・コーエン
原作 リチャード・バックマン
脚本 スティーブン・E・デ・スーザ
撮影 トーマス・デル・ルース
   レイナルド・ヴィラロボス
編集 マーク・ワーナー
   エドワード・A・ウォーシルカ
   ジョン・ライト
音楽 ハロルド・フォルターメイヤー
出演 アーノルド・シュワルツェネッガー
   マリア・コンチータ・アロンゾ
   ヤフェット・コットー
   リチャード・ドーソン
   ジム・ブラウン
   ジェシー・ヴェンチュラ
   アーランド・ヴァン・リドス
   ミック・フリートウッド