理想の彼氏(2009年アメリカ)

The Rebound

40歳にしてシングルマザーになった女性と、
24歳のお人好しの青年がひょんなことから知り合い、やがて恋に落ちる様子を描いたラブ・コメディ。

本作のヒロインであるサンディは大学院を修了後、恋人と結婚し、
2人の子供を授かり、郊外の住宅街でインターネットでプロ・スポーツに関する資料をまとめることを趣味とし、
すっかり幸せな家族を守っているものと思い込んでいたが、夫が知り合いの女性と浮気していることを知り、
激怒したサンディは2人の子供を連れて家を出て、ニューヨークで経歴を活かした職探しを始めます。

一方、24歳になってまでも両親に経済的援助をもらい、
アルバイト生活を続ける青年アラムは“永住権”を目的にしたフランス人女性に騙され、
結婚した挙句、元からの恋人のもとへ逃げられ、「可哀想だから...」の理由一つで離婚できない小心者。

ニューヨークでのアパート探しに訪れたコーヒーショップでアルバイトしていたアラムと
偶然、知り合ったサンディはアラムをデータイムの子守に雇ったことから2人は急接近し、
お互いに意識し始めますが、15歳もの年の差もあり、2人の間には微妙な戸惑いが生まれます。

まず、この映画の邦題はノホホンとした恋愛映画を想起させますが、
結構、ドキッ!とさせられるシーンも多く、予想外に大人向けな映画であることに驚かされてしまいました。

オリジナル劇場予告編なんかも軽いラブコメ調であるかのような紹介でしたが、
あまり映画のテーマと合ってはおらず、子役たちも巻き込んでまでも、かなり過激なギャグがあったりと、
こういうコマーシャルを作るときは、余計なお世話ではありますが...もっと映画の中身を精査して欲しい。
(これ、間違って家族で観ちゃう人もいたのではないかと思うのですが、ファミリー向けとは言い難い・・・)

また、子宮外妊娠によりお互いの気持ちに溝が生じてしまうという、
男女の恋愛に於けるシリアスなテーマも出てきており、映画は終盤で一気に重たい空気に・・・。
この辺の起伏の付け方なんかも、おそらく観る者の好みによって、大きく評価が割るでしょうね。

やはりライトな感覚で観れる、ラブコメとしてはあまりに重過ぎるテーマだった感はありますし、
映画の最後の最後で、5年後のニューヨークのレストランで無理矢理、再会させるという力業は
あまりに強引な展開で、これは映画のバランスを最後で一気に失うキッカケを作ってしまいましたね。
作り手にもう少し映画監督経験があれば、このバランスの悪さには気づいたと思うんですよねぇ。
(ちなみに監督のバート・フレインドリッチは、女優ジュリアン・ムーアの実生活での亭主)

たいへん申し訳ない言い方ではありますが...
このミステイクは作り手も試写(ラッシュ)の段階で、気づいていたのではないでしょうかねぇ?

しかし、まさかキャサリン・ゼタ=ジョーンズがこんな中年女性を演じる時が来るとは。。。
僕も映画を観始めて5年ぐらい経った頃に、『エントラップメント』で魅力を全開にしてる話題が、
当時、購読していた映画雑誌に取り上げられていた頃の彼女はまだ20代でした。
そんな彼女が本作のような役柄で映画に出演しているなんて、複雑ですね(苦笑)。
まぁ・・・それだけ僕も同時に、年をとったということにもなるのですがねぇ〜。

どうも、彼女はずっと自分が演じるに最適なコメディ映画の企画を探していたらしいのですが、
やはり私生活では、様々なスキャンダルに見舞われたマイケル・ダグラスの妻なわけで、
マイケル・ダグラスの方が25歳も年上ですが、波風立たずに上手くいっていることから察するに、
彼女は見た目通り(?)、そうとうに太い芯のある、強い女性なのでしょうね(...ということは、役柄通り?)。

まぁそういう意味では、このキャスティングは正解だったのでしょうね。
年下の24歳の恋人を演じたジャスティン・バーサも巧みに冴えない男を演じており、好印象ですね。

但し、前述した映画のバランスの悪さが最後の最後まで災いしてしまい、
映画が磨かれなかった気がしますね。特に最後に駆け込むように5年後のエピソードが
描かれており、映画が急激に雑になったような気がして、ひじょうに勿体ない気がしましたね。

抽象的な終わり方をしているのですが、
この5年後のエピソードはしっかりとした形で終わらせて欲しかったし、
偶然、出会ったレストランで唐突に映画が終わるという幕切れは、あまりに性急な処理でしたね。
(やはり2人の会話をキチッと描いて、映画の方向性、姿勢をハッキリさせて終わらせて欲しかった・・・)

ちなみにこの原題“The Rebound”というのは意味深長ですね。
まぁ40歳にしてシングルマザーになって、独身に戻ったことの反動から、
男性との恋愛に刺激を受けて起こる“Rebound”(跳ね返り、反動)という意味もあるだろうし、
もう一つは40歳になって、若い男性との恋愛に“Rebound”(立ち直り)を見い出すという意味もあるでしょう。

派生語としての面白さもありますが、
意外に深いテーマを持つ作品だっただけに、アイデアは良かったんですよね。
それを活かし切れなかったというのが、ひじょうに勿体なくて、違うディレクターに任せても良かったかも。。。

どうでもいい話しですが...
映画を観終わってから知ったのですが、ジャスティン・バーサ演じる青年アラムの父親を演じたのは、
なんとサイモン&ガーファンクル≠フアート・ガーファンクルだったんですねぇ!

かつて映画俳優として活動していた時期もありましたが、
最近は再結成ツアーなんかもやっているだけに、もう少し若く見えるのかと思いきや、
いつの間にかスゲェ爺さんになっていて、思わず驚いてしまいました(苦笑)。。。

(上映時間94分)

私の採点★★★★★★☆☆☆☆〜6点

日本公開時[PG―12]

監督 バート・フレインドリッチ
製作 ティム・ペレル
    バート・フレインドリッチ
    マーク・ギル
    ロバート・カッツ
脚本 バート・フレインドリッチ
撮影 ジョナサン・フリーマン
編集 クリストファー・テレフセン
音楽 クリント・マンセル
出演 キャサリン・ゼタ=ジョーンズ
    ジャスティン・バーサ
    リン・ウィットフィールド
    ケリー・グールド
    アンドリュー・チェリー
    ローブ・カーゴヴィッチ
    サム・ロバーズ
    ケイト・ジェニングス・グラント
    アート・ガーファンクル