アザーズ(2001年アメリカ・スペイン・フランス合作)
The Others
この映画は最初、劇場公開前の試写会のチケットに当選したので、大きなスクリーンで無料で観た記憶があります。
その初回鑑賞時の記憶では、『オープン・ユア・アイズ』のアレハンドロ・アメナバールの監督作品だと
知らずに観に行ったためか、下品な言い方で恐縮ですが「やるでねぇーか、この監督」と偉そうな感想を持ちました。
ただ、後々、『オープン・ユア・アイズ』も観て納得できすね。この人、基本的な力はある映像作家なのだと実感しました。
ハッキリ言って、映画のストーリーは分かり切った内容であって、そのオチも誰も考えつかない
驚愕のラストというほどではないので、そういう路線を期待する人にはオススメできる作品とは言えないですね。
ただ、この映画、極めて映画的に撮られたものであって、特殊映像効果に頼らずに映像を作って、
映画の序盤からジックリと外堀りを埋めながら、後半から少しずつ伏線を回収していくという基本に忠実なアプローチ。
これはアレハンドロ・アメナバールの確かな手腕がいかんなく発揮されていて、それを楽しむというのが本筋だと思う。
正直、この時期は『シックス・センス』のメガヒットで似たようなストーリーの映画は、
ほぼほぼ『シックス・センス』との比較になってしまったので、後発の作品は全て既視感があって不利になってしまう。
ただ、明らかに本作が優位だなぁと感じるのでは、光や影、それらを調節するドアや黒板の使い方などがとても上手い。
良く出来過ぎていて逆効果もなくはないかもしれないが、それでもアレハンドロ・アメナバールに力があることの証明だ。
予想される範囲のラストに至るまでの過程を楽しむべき映画だという割り切りは必要で、オチを主体として
ストーリーを楽しもうと思って観たら、そこまで目新しい物語というわけではないので、物足りなさは残ると思います。
映画の最後まで観れば、序盤からどうしてあんな撮り方をしていたのかがよく分かるというパターンでして、
これは映画の序盤から、入念に雰囲気づくりと光の使い方に対して、強いこだわりを持ち続けて撮ったからこそ
映画に強い一貫性を持たせられたし、アレハンドロ・アメナバールの計算され尽くしたアプローチの勝利だったと思う。
本作はトム・クルーズがプロデュースした作品であり、それは『オープン・ユア・アイズ』のハリウッド版リメークの
権利を取得したトム・クルーズが01年に『バニラ・スカイ』を作る予定だったことで、アレハンドロ・アメナバールと一緒に
映画を製作する機会を探っていたのだろうし、当時私生活では妻で離婚が報道されていたニコール・キッドマンを
主演に据えるという随分と大胆なことをやっていたのですね。まぁ、結果として興行的に大成功を収めましたけど。
ゴシック・ホラーと言っていいジャンルの映画ではありますが、どこか最後は物悲しい様相になるのが印象的だ。
劇中、いろいろな風習が描かれていますが、その中でも死者の写真を撮っておくという風習は個人的には奇妙。
勿論、学術的な観点からそういうこともあるだろうが、ご遺体の姿かたちを写真に撮るというのは、僕は受け入れ難い。
まぁ、記憶に留めるという意味が込められた風習なのかもしれず、これが現実にあることなのか知りませんが、
実際にご遺体の写真を保管していても、思わず「それを一体どうするつもりなの?」と聞きたくなってしまいます。
正直、自分も死んだ後にご遺体になって、事件じゃないなら、そんな姿を写真に撮られたいとは思わないしなぁ。
まぁ・・・死んだ後のことなんで、自分には知ったこっちゃない話しですけど、ご遺体のうちは故人の尊厳を大切にしたい。
そもそも写真というのは、故人よりも残された者のためなのだろうけど、元気なうちの写真なら見たいけど・・・。
とまぁ、どうでもいいような話しに引っかかってしまいましたが、この風習も映画の中ではアクセントになっている。
そのカラクリがあったからこそ、自分たちの置かれている状況に気づくという、流れになっていくので重要な要素ですね。
こういうところを本作のアレハンドロ・アメナバールは巧みに利用している感じで、ごく自然な流れでラストに導いている。
そう、この映画はラストのドンデン返しだけを見せたいディレクターなのであれば、
そのラストに至るまでの過程を粗雑に描いてしまう人も多い中で、本作はごく自然な流れでラストに導くという、
丁寧なプロセスづくりに集中している感じがして、これが僕の中で好印象。まぁ、少々、優等生過ぎるくらいですけどね。
劇場公開当時から賛否がありましたけど、この映画のラストのオチは何も驚くほどのレヴェルではないと思います。
観客のある程度の割合の方々が予想のつくラストではないかと思う。しかし、それでもこの映画は魅力的で面白い。
それは何故だろうか...と考えると、実は映画の冒頭で既にこのオチを予想させるような出だしなんですね。
結局はそれをストレートに映画化した、という内容なわけですが、所々で観客の気持ちを惑わせるのが実に上手い。
観客がどうしても先読みしながら映画を観てしまうことを、肩透かしするかのように、少しずつ作り手がけん制している。
そのけん制が実に上手くって、そのために一つ一つの雰囲気をしっかり作り込んで、ジワジワと映画を盛り上げながら、
所々で「ホントにそうかな?」と観客の気持ちを惑わせるかのように、チョットしたトリックを挿し込んでフラフラさせる。
これは意図的にフラフラさせるような部分があって、それでも映画の軸はしっかり持たせるという、
アレハンドロ・アメナバールの演出力がとても際立っていて、本作の大きな武器となっているのは間違いないと思う。
忍耐強く一家と接するお手伝いさんを演じたフィオヌラ・フラナガンの存在感もとっても良いですね。
主演のニコール・キッドマンが少々ヒステリー気味な芝居を要求されてますが、対照的に彼女は抑制が利いている。
それでも「我慢の限界よ」と感情をにじみ出した表情させて、一気に映画はクライマックスへ向かうという展開も上手い。
これもフィオヌラ・フラナガンが最初から抑制の利いた芝居に徹してくれたことで、このラストへの展開が生きましたね。
トム・クルーズが多額の資金を投じてアレハンドロ・アメナバールをハリウッドに呼んで、
本作の監督を任せた理由がよく分かる気がします。『オープン・ユア・アイズ』も良かったけど、本作はもっと良い。
まるでゴシック・ホラーのお手本のような作品であって、個人的にはもっと評価されても良かったのではないかと思う。
そうなだけにアレハンドロ・アメナバールは寡作なタイプの映像作家でして、
結局はハリウッド資本の力を借りて映画を撮ったのは現時点で本作だけというのは、なんだかもどかしいなぁ。
このペースが彼の創作ペースとして合っているのかもしれないけど、もっと積極的に映画を撮って欲しいというのも本音。
本作を観る限り、もっと凄まじい傑作を撮りそうな風格があったんだけどなぁ。なんだか、個人的には勿体なく感じる。
確かに90年代後半から、00年代前半にかけては似たような映画が何本か作られててヒットしたので、
既視感があるストーリー展開ではあったかもしれませんが、その中でも本作は映画の完成度としてはピカイチだと思う。
単純に予想外のオチが決まれば、映画は優れているというわけではないし、脚本ありきの映画というわけでもない。
ホラー映画でありながら、残酷描写は一切ないし血生臭いシーンがあるわけでもない。
派手にCGを使うわけでもなく、登場人物の緊張や焦燥を巧みに利用しながら描いたことで、見事に恐怖心を煽る。
ラストに意外性が無いわけでもないが、納得性あるラストに行き着く。巧みな心理描写を織り交ぜ、観る者の猜疑心や
迷う心を誘い出すかのようで、これは極めて教科書的であり、尚且つスマートな映画の撮り方であったと思います。
そんな非の打ちどころのない映画だとは思っているんだけど・・・
唯一、僕がこの映画で気になったところは、戦地に出征した夫(父親)の描き方が少々中途半端に映ったのも事実。
クリストファー・エクルストン演じる夫がひょっこりと深い霧の中、家に帰ってくるわけですが
もう少し登場時間も含めて積極的に描いて欲しかったなぁ。ひょっこり現れて、ひょっこりいなくなってしまうのは残念。
もっとメイン・ストーリーに対して影響力のあるキャラクターであって欲しかったし、仮にも子どもたちの父親ですからね。
こんな中途半端に現れて、アッサリいなくなってしまうでは、彼をわざわざ描いた意義というのが弱くなってしまうなぁ。
ここは唯一、本作で気になったところで脚本の段階で何とかして欲しかったなぁ。ここは確かに勿体ない。
とは言え、これは傑作と言っていい出来だと思ってます。極めてお手本のような作品と言っていいと思います。
劇場公開当時から『シックス・センス』との類似性が指摘されていましたが、単純比較できるものでもないと思います。
M・ナイト・シャマランも定評のあるディレクターですが、アレハンドロ・アメナバールも負けず劣らずです。
この手の映画は「ひょっとしたら脚本を読んでた方が面白いのでは?」と観客に悟られてはいけないと思っていて、
本作は決してそのようなタイプの映画ではなく、キチッとしたシーン演出のワザで作り込まれていますからね。
やっぱり映画の価値はディレクターの技量で決まる、そんなことを実感させられる作品でした。
(上映時間104分)
私の採点★★★★★★★★★★〜10点
監督 アレハンドロ・アメナバール
製作 フェルナンド・ボバイラ
ホセ・ルイス・クエルダ
パーク・サンミン
脚本 アレハンドロ・アメナバール
撮影 ハビエル・アギーレサロベ
編集 ナチョ・ルイス・カピヤス
音楽 アレハンドロ・アメナバール
出演 ニコール・キッドマン
フィオヌラ・フラナガン
クリストファー・エクルストン
エレイン・キャシディ
エリック・サイクス
アラキーナ・マン
ジェームズ・ベントレー
2001年度ロンドン映画批評家協会賞主演女優賞(ニコール・キッドマン) 受賞
2001年度カンザス・シティ映画批評家協会賞主演女優賞(ニコール・キッドマン) 受賞