ハリウッド・ミューズ(1999年アメリカ)

The Muse

まぁ・・・微妙な面白さと言われれば、それは否定できませんが(笑)、
映画好きで、ある程度、ハリウッドの内情に興味がある人なら、そこそこ楽しめる内容でしょう。

ただ、言ってしまえば、内輪ネタの映画なわけで、
正直言って、業界人が業界を皮肉っているような映画になってしまっているので、
ほとんどの映画ファンが一般人であることを考えると、この映画の位置づけが極めて微妙だ。

僕も正直、内輪ネタだけで盛り上がっているような映画は好きじゃないので、
少しだけでもいいから、多くの観客が楽しめる要素を映画の中で盛り込んで欲しいと思っています。
本作はそのギリギリのラインで救われましたね。まぁ中盤の展開なんかは、チョット面白かった。

ただ、本作の主人公スティーブンは映画脚本家で、自分の脚本をエージェントや映画会社に売り込んでも、
一様に「脚本の出来は悪くないが、良くもない。キレが感じられないね」と言われてしまい、落ち込みます。

そこで彼が友人で、ハリウッドで成功した映画脚本家ジャックに紹介してもらい、
自称ミューズ(女神)こと、サラという女性と交友を持ち、アドバイスをもらい再び上昇を狙うのですが、
サラの要求は底なし状態で、スティーブンは多額の出費を強いられてしまいます・・・。

ビックリなのは、アルバート・ブルックスの人脈の凄さというか、
サラを訪ねる業界人という設定で惜しみなく登場してくる、大物映画監督のカメオ出演の数々だ。
ジェームズ・キャメロン、マーチン・スコセッシ、ロブ・ライナーと確かにハリウッドを代表する映像作家たちだ。
(それにしても、相変わらずマーチン・スコセッシは凄いせっかちで、凄い早口だ...)

ナンダカンダ言って、現代で映画を製作するにあたって必要不可欠である脚本を題材に、
結果としてヒットする映画の脚本を執筆することが如何に難しく、また同時に競争激しいハリウッドで
創作活動することが如何に難しいかを、時にシニカルに時に辛らつに描くというコンセプトは良いと思う。
但し、この映画の場合はその皮肉の数々が、あまりに現実的なニュアンスになっており、
例えば02年の『アダプテーション』のようにドラスティックな展開にならなかったがゆえに、
コメディ映画としての魅力がイマイチ出し切れなかった感が強く残ってしまいましたねぇ。

まぁコメディエンヌとしての魅力を開花させようと、シャロン・ストーンも必死に頑張りましたが、
「君の脚本にはキレがない」という感想が、文字通り、本作の悩みでもあり、彼女の頑張りが活きませんでした。

たいへん申し訳ない言い方だけど、
本作で描かれたスティーブンの苦悩というのは、アルバート・ブルックス本人の苦悩なのかもしれませんね。
結果としてコメディ映画にはなっていますが、ひょっとしたらアルバート・ブルックスも悩んでいたのかも(笑)。

それと、この手の映画は、やはりラストの結び方が重要なはずなのですが、
あまり詳細に説明しないまま、半ば勢いだけで映画が終わってしまうので、妙な中途半端さがありますね。
最後はチョット油断してしまうと大変です。アッという間に映画が終わってしまいます。
(ただ正直に白状すると、僕は未だに本作のラストが上手く説明できないのです・・・)

もう一点、残念だったのは、サラに“投資”してアイデアを頂戴しようと目論んでいたのは、
スティーブン本人だったのですが、フタを開けてみたら、サラは妻ローラと仲良くなってしまい、
クッキー屋を経営しなさいとのサラのお告げに従ったローラが、ホントにクッキー屋で大成功。
このエピソードが映画の終盤でほとんど活きてこないのは残念ですね。あまりに中途半端なラストです。

サラの贅沢の限りを尽くす姿や、素っ裸でベッドに入る姿に共同生活のしづらさを感じるローラですが、
本来的に目的としていたはずのスティーブンの執筆が上手くいかず、ローラが成功してしまうことのチグハグさで
映画の面白さを演出しようとしていたはずで、僕はローラの戸惑いが映画のラストを作りにくくしてしまったと思う。

映画の最後まで、ローラがサラの支持者であることが明確であれば、
もうチョット面白味があって、納得性の高いラストにできたと思うんですよねぇ。。。

細かなギャグではあるのだけれども、
妻が招待されたパーティーに出席したスティーブンがシャンパングラス片手に、
初めて知り合った30代くらいの男性と話しているシーンが面白くって、あれが本作の真骨頂(笑)。
相手がまるで人の話しを理解できず、ヤケになったスティーブンは話しを飛躍させて答え続けます。

映画のアイデアは悪くないと思うんだけど、
本音を言えば、僕はこの映画の監督はアルバート・ブルックス以外の人に任せれば良かったと思う。

確かにアルバート・ブルックスって、多才な人だとは思うんだけど、
こうして自身の出演を演出するという意味では、客観性に欠けていたと思うんですよね。
この映画なんで、“ミューズ”ことサラがメインな内容なわけですから、前述した映画のラストも含めて、
サラをもっとたくさん描くべきだったと思うんです。ハッキリ言えば、サラの視点が欠けているとしか思えません。

それこそカメオ出演してましたけど、ロブ・ライナーが監督していたら、映画はもっと変わっていたかも。。。

(上映時間96分)

私の採点★★★★★★☆☆☆☆〜6点

監督 アルバート・ブルックス
製作 ハーブ・ナナス
脚本 アルバート・ブルックス
    モニカ・ジョンソン
撮影 トーマス・アッカーマン
音楽 エルトン・ジョン
出演 シャロン・ストーン
    アルバート・ブルックス
    アンディ・マクダウェル
    ジェフ・ブリッジス
    スティーブン・ライト
    シビル・シェパード
    ジェームズ・キャメロン
    ロブ・ライナー
    マーチン・スコセッシ