ハムナプトラ/失われた砂漠の都(1999年アメリカ)

The Mummy

これは過酷な撮影環境の作品だったらしいですが、劇場公開当時、大ヒットしたアドベンチャー映画。

僕も当時、確かに熱狂したけど、今になって観ると...そうでもないかもしれない(苦笑)。
まぁ・・・でも、そこそこエキサイティングな映画だと思いますよ。少々、尺が長過ぎるのが難点だけど。
よくある夏休み映画のような、イベント映画として考えたら、上出来な作品と言ってもいいと思います。

監督は94年の『ジャングル・ブック』でデビューしたスティーブン・ソマーズで、
本作の直前である98年に『ザ・グリード』というSFパニック映画で評価されたことで、
本作のような莫大な予算を投じた、規模の大きなSF映画の監督を任されることになりましたが、
その期待には十分に応えたと言っていいのではないでしょうか。事実として本作は、興行的に成功したわけですし。
作り手はどこまで、シリーズ化を視野に入れていたかは分かりませんが、後に3本の続編も製作されましたからね。

映画は、1920年代のエジプトを舞台に、約3000年前の時代にイムホテップと密会を重ねていた、
国王の妻アナクスムンが、王に2人の関係がバレたことがキッカケで、生きたまま閉じ込められミイラ化し、
その秘密に触れた冒険者の手によって、1920年代の時代に蘇ったイムホテップがアナクスムンをも蘇られるために、
大暴れして、冒険隊の一人であるイブリンの命を捧げようと襲いかかってきて、必死に抵抗する攻防を描いています。

ストーリー自体は、よくあるタイプの映画ではありますが、
80年代の『インディ・ジョーンズ』シリーズを、大胆に当時のSFX技術を使った映画という感じで、
映画の中盤以降は大多数のシーンで、特殊映像技術を使ったシーン処理が見られ、これは賛否両論でした。

これは作り手も、従来の映画と違った毛色の映画にしたいという意向があったようで、
僕は逆にこれくらい大胆に使ったというのは、面白い発想だったと思う。続編の第2作は、アニメっぽかったけど・・・。

そのせいか、まともに『インディ・ジョーンズ』シリーズと比べられるとチョット苦しいところはある。
頑張って特殊映像技術を駆使しただけあって、肉食の昆虫が襲いかかってくるシーン演出なんて、
逃げ出したくなるぐらい気持ち悪いし、ドキドキ・ワクワクさせられるエキサイティングな映画にはなっている。
ただ、いわゆるアトラクション性は弱いですね。個人的には、もっと役者を走らせるアクションにして欲しかったかなぁ。

ただ、映画の前半でブレンダン・フレーザーが絞首刑にされるシーンで、
実際に彼は死にかけたり、現代だったら速攻で批判されそうな事故が数多くあった撮影現場だったらしいので、
これでキャストが走らせられまくる過酷な芝居を求められていたら、途中降板する人がたくさん出てそうですが・・・。

本作でヒロインのイブリンを演じたレイチェル・ワイズがトップ女優へとブレイクするキッカケとなりました。
確かにレイチェル・ワイズのエキゾチックな魅力がピッタリ合うキャラクターで印象的ではあるのですが、
個人的にはイブリンの兄ジョナサンを演じたジョン・ハナが、コメディな役どころで良い存在感を示していたと思う。
どこかトボけたところがあって、イムホテップの奴隷であるミイラたちに追われ、逃げ場を失ったジョナサンが
ミイラたちと並んで「イムホテップ」と呟きながら行進する姿など、なかなかしぶといキャラクターで上手く演じていました。

この手のアドベンチャー映画には、こういう魅力ある脇役キャラクターは必要不可欠ですね。

劇中、描かれる飛翔性昆虫の大群が飛んでくるシーンは、何故か『エクソシスト2』のイナゴの大群が
襲いかかってくるシーンを思い出させられ、肉食性の昆虫の大群が床を這ってくるシーンも、なんか既視感有り。
そう、この映画、微妙に「このシーン、以前なんかの映画で観た気が・・・」と思わせられるのですよねぇ。
別にパクりというわけではないのだろうけど、映画の題材のせいもあってか、目新しさは無いかもしれません。

ただ、まぁ・・・しっかり楽しませてくれるツボは押さえているので、これはこれでハリウッドの底力を感じます。
映画の序盤にあるイブリンの図書館でのドミノ倒しのシーンなんか、インパクトの強いキャッチーな出だしですしね。

ケビン・J・オコナー演じるベニーのようなクセ者な存在が映画を良い意味でかき乱しますが、
映画のクライマックスまで主要キャラクターとして絡んできますが、彼の末路もインパクトが強いですね。
まぁ・・・元々はブレンダン・フレーザー演じる主人公リックの仲間だったようですが、軽薄な性格ですぐに寝返る。
そういうキャラクターなんで、途中退場してしまうケースが多いような気もしますが、本作は彼を最後まで残します。

CGだらけの映像ではありますが、本作の映像表現には不可欠だったと思っています。
肉食の昆虫が足から体内に入り込んで、身体の中から“殺されていく”なんて描写、CGじゃなきゃ出来ないですから。

但し、ジョナサンが体内に肉食昆虫が入り込んでパニックになるシーンがあって、
助けを求められたリックが咄嗟にナイフを取り出して、肩口からナイフでえぐり取って命を救うシーンがありますが、
これは普通に考えて、ジョナサンが無傷で終わるのは都合が良過ぎるだろう(笑)。仮に助かっても、大怪我は必至。
しかも、体の内部から蝕まれるわけですから、上半身まで体内を駆け上がってくる間に、死んでしまう気もする(笑)。
とまぁ・・・ついつい、どうでもいいところにツッコミの一つでも入れたくなってしまいましたが、これはご愛嬌なのかも。

どうやら、当初の企画はもっとホラー色豊かに撮影される予定だったようで、
監督もスティーブン・ソマーズが予定されていたわけではなかったようだ。そこを路線変更したおかげで、
本作は世界的に大ヒットするエンターテイメントとして評価されるようになった、大きな分岐点だったのかもしれません。
(なんせ、噂では当初はB級ホラー映画専門のジョージ・A・ロメロが監督を務める予定だったそうで・・・)

それでも、ミイラ状態のイムホテップが動き始める描写なんて、結構なホラーっぽい雰囲気だし、
イムホテップに襲われて眼球を奪われたりと、アッサリと残酷な描写もあるので、苦手な人は覚悟が必要かも。

映画の冒頭に登場するのですが、王妃アナクスムンを演じた
パトリシア・ヴェラスケスのインパクトは結構強かったので、彼女をもっと前面に出して欲しかったですね。
確かに僕も映画の終盤で彼女がもっと絡んできて、イムホテップが大暴れするのかと思っていたのですがねぇ・・・。

それがイムホテップの天敵が、実はあまりにポピュラーな存在だったというのが、どこかギャグっぽい。
しかも、ほぼ最強な雰囲気を醸し出すイムホテップに苦戦するわけで、思わず何故、天敵を常に帯同しないのかと
「それを言っては・・・」という、つまらない疑問を持ち続けたまま、クライマックスを観ていたので、盛り上がらなかった。

これさえ、何とかなれば映画の終盤にももっと盛り上がる局面を作れたと思うんだよなぁ。
そう、この映画は終盤がチョット弱い。イムホテップとの対決がどこか盛り上がり切れないまま終わってしまうのが残念。

この辺はスティーブン・ソマーズが何を見せたかったのか、という点がハッキリとさせられなかった印象だ。
僕はリックらの冒険があくまでメインにあって、イムホテップというミイラが蘇って大暴れするのを止めるということが
エッセンスとして加わっているという感じが、この映画には合っているのではないかと思うのですが、
映画のアドベンチャー性が、映画が進むにつれて弱くなっていき、イムホテップの復活がエッセンスというよりも
メインになっていくことで、この映画のベースは冒険ではないように見えてくる。僕は冒険映画に徹して欲しかったなぁ。

そういう意味では、リックらと競うようにハムナプトラに近づく連中が弱過ぎましたね(笑)。
もっとスリリングにお互いに競うのかと思いきや、どちらかと言えばドジを踏んで自滅してばかりで弱過ぎる。
おそらくコメディ色を保ちたかったのでしょうが、チョット弱過ぎて盛り上げ役にもなり切れなかったですね。

まぁ・・・思うところはいっぱいあるけど、個人的には及第点レヴェルで健闘した映画だとは思います。
ただ、アドベンチャー性を映画の終盤まで意識させられ続けられれば、もっとスゴい映画になっていたと思うし、
21世紀版のポスト『インディ・ジョーンズ』のような存在として、息の長いシリーズ化が期待できたかもしれません。

(上映時間124分)

私の採点★★★★★★★☆☆☆〜7点

監督 スティーブン・ソマーズ
製作 ショーン・ダニエル
   ジェームズ・ジャックス
原案 スティーブン・ソマーズ
   ロイド・フォンヴィエール
   ケビン・ジャール
脚本 スティーブン・ソマーズ
撮影 エイドリアン・ビドル
編集 ボブ・ダクセイ
音楽 ジェリー・ゴールドスミス
出演 ブレンダン・フレーザー
   レイチェル・ワイズ
   ジョン・ハナ
   アーノルド・ボスルー
   パトリシア・ヴェラスケス
   オデッド・フェール
   エリック・アヴァリ
   ケビン・J・オコナー

1999年度アカデミー音響賞 ノミネート