プロフェシー(2002年アメリカ)

The Mothman Prophecies

どうでもいい話しだけど...
この映画のタイトルを聞いて、思わずジョン・フランケンハイマーの『プロフェシー/恐怖の予言』の
リメークかと勘違いしたのは、おそらく僕を含めて日本全国でも100人はいるでしょう(苦笑)。

「オイオイ、そんな勘違いするのは、古い映画ファンだけだよ」というユル〜いツッコミを期待しつつも、
正直に白状すると、確かに勘違いはしたけれでも、僕は未だに『プロフェシー/恐怖の予言』は観ていません。
(っていうか、『プロフェシー/恐怖の予言』は今や鑑賞不可能です。何とかしてください!)

とまぁ・・・怪獣騒ぎを描いていると言われる映画の話しは置いといて(笑)、
肝心かなめの本作の場合は、蛾をモチーフにした謎の現象を目撃した人々が次々と現れ、
やがてはこの超常現象が実は、未来に発生する大惨事を予言する内容だった・・・という感じの、
かなりオカルトっぽい匂いのする(笑)、超常現象を扱ったミステリー・サスペンスです。

まぁ僕はこの映画、そこそこ頑張っていると思います。
『隣人は静かに笑う』のマーク・ペリントンの監督作品ですが、音響でビックリさせて、
映画のサスペンスを無理矢理に盛り上げようとする姿は一概に賛同できませんが、
一方で掘り下げ方がなかなか上手く、映画の主義主張に一貫性が感じられて、これは良い仕事だと思います。

欲を言えば、99年に『シックス・センス』でブレイクした、
インド人監督M・ナイト・シャマランなんかも、本作のようなスタイルをもっと参考して欲しいと思います。

映画で描いた出来事なんかは、かなり奇抜な題材で突飛なことと言えば突飛なのですが、
本作のマーク・ペリントンの映像作家としてのアプローチはごくごくオーソドックスなものです。
こういったスタイルって、やっぱり映画作りの基本だなぁと実感させられますね。

この映画はあくまで観客をビックリさせることに目的があったような、
例えば『エクソシスト』のような映画とは異なり、ミステリーの空気を大切にしている映画です。
従って、映画のラストを観れば分かりますが、この映画はある意味で「救い」を描いた作品と言えます。

それまではワシントン・ポストの記者として活躍していた主人公のトムが、
突如として発覚した難病に倒れた妻が書いた謎の“蛾”のようなイラストを手にしたことから、
2年後、彼は不思議な“移動”を体験してたどり着いた600キロ離れた田舎町ポイントプレザントで、
彼は町の人々が次々と不可解な超常現象に悩まされていることを知り、そこで驚愕の現象に接します。
録音した謎の電話の話し相手は人間の声とは思えぬ波長を示し、話した覚えのない自分の声が
町の人の留守番電話に収録されていたり、まるで科学的には説明のつかない超常現象の連続により、
トムは精神的に混乱していきますが、運命の瞬間が刻一刻と迫っていました・・・。

よくある種の話しとして、超常現象は科学によって否定されるか否かが物語の焦点となるのですが、
本作はそういったありがちな焦点にはフォーカスせず、実に実直に超常現象の謎を追究していきます。

それも別に謎の正体を暴くことに目的があるというよりも、
超常現象が示唆していることが何かを追究していくスタンスであり、この辺はミステリーとして成立している。
そしてそのミステリーが明らかになるにつれて、映画のサスペンスは盛り上がっていくわけで、
映画としてのバランスに優れ、上手く掘り下げられているせいか、仕上がりは悪くありません。

音響で観客をビックリさせるシーンがあると前述しましたが、
勿論、これが映画の最終目的ではないにしろ、トムが事故に見舞われて、運転席で彼の妻が窓ガラスに
頭部を強打するシーンが映画の冒頭にあるのですが、このシーンが地味にショッキングで印象的でした。
但し、何故にここまでショッキングな描写をしたのか、僕には意図がよく分かりませんが...。

とは言え、これは映画の導入部としてシーン自体は必要性の高いものです。
ここで劇中、初めて“蛾”による啓示を受けるわけで、この事故で初めて彼女の病が発覚します。

主演のリチャード・ギアがこの手の役を引き受けるようになってからは、随分と良くなりましたねぇ。
80年代の頃なんかは、もう中年のオッサンに差し掛かっていたというのに、いつまでもヤンチャな感じが
抜け切りませんでしたが(笑)、90年代以降の出演作からスタイルを変えてきたようで、
次第に相応の年の重ね方をしてきた役者として、確固たる地位を確立しつつあるように感じます。

チョット、センチな芝居ではありましたが...
映画の後半でローラ・リニー演じる女性警官から諭されて、
思わず「彼女が忘れられないんだ...」と吐露してしまうシーンなどは、若い役者には表現しえないような
強いように見えていた人間の弱さが露になる瞬間を、巧みに表現できていたと思いますね。
(個人的にローラ・リニーは今一つかな。もっと彼女に出番を与えて欲しかった・・・)

まぁ日本ではウケにくいタイプの映画であることは否定できませんが、
そこそこ出来の良い、面白い映画と言ってもいいのではないでしょうか。
マーク・ペリントンはあまり発表作が多くはなく、寡作の映画監督と言っていいと思うのですが、
十分に作り込まれた作品で、演出力の高さは証明できている作品だと思います。

同じオカルト映画という枠組みでも、ホラーに重点を置いた映画が好きな人には向かないかもしれませんが、
ミステリーに重点を置き、雰囲気から作り込んでいくタイプの映画が好きな人にはオススメですね。

(上映時間118分)

私の採点★★★★★★★★☆☆〜8点

監督 マーク・ペリントン
製作 ゲイリー・W・ゴールドスタイン
    ゲイリー・ルチェッシ
    トム・ローゼンバーグ
原作 ジョン・A・キール
脚本 リチャード・ヘイテム
撮影 フレッド・マーフィ
編集 ブライアン・バーダン
音楽 トムアンドアンディ
    ジェフ・ローナ
出演 リチャード・ギア
    ローラ・リニー
    ウィル・パットン
    ルシンダ・ジェニー
    デブラ・メッシング
    アラン・ベイツ
    デビッド・エイゲンバーグ
    ボブ・トレイシー