ロンゲスト・ヤード(1974年アメリカ)

The Longest Yard

かつて八百長疑惑でアメフト引退を強いられ、今はジゴロとして生計を立てていた、
クルーという中年男が、相手にしていた女性を激怒させてしまい、車を盗んだ罪で立件され、
刑務所へ送られた挙句、刑務所内でのフットボール大会に出場させられる様子を描いたスポーツ映画。

01年に『ミーン・マシーン』、05年に『ロンゲスト・ヤード』と2回続けて、
リメークされた作品ではありますが、確かにこれは魅力あるスポ根ムービーですね。

事実か否かは、詳細に描かれてはいませんが、
かつて八百長疑惑をかけられて、アメフト引退を強いられ、ジゴロ生活をしているという
転落っぷりが凄まじいが、多少の悪事をはたらいても、もうどうとも思わなくなり、
8年間のブランクを言い訳にして、体を張ってきたアメフトに誠実に取り組むという姿勢を捨て、
再び刑務所長に八百長を持ちかけられ、アッサリと乗ってしまうダメ男ぶりが板に付いていて、
そんな男がここぞとばかり力を見せつけてきた刑務所長に反抗しようと奮起する姿が何とも爽快ですね。

但し、一つだけ思うのは、
やはりロバート・アルドリッチの演出のせいか...チョット映画が雑な感じが残るのが気になりますね。

分割画面など当時として、かなり斬新であったであろう表現技法も採られており、
当時のロバート・アルドリッチの勢いを象徴しているのですが、例えば“世話役”が放火犯に狙われ、
トンデモない事故に巻き込まれてしまうシーン処理など、お世辞にも上手いとは言い難いですね。
全体的に荒っぽい演出が目立っており、男臭さ全開で、丁寧で繊細な映画とは言えないですね。

肝心かなめのアメフト・シーンも殴る蹴るの暴行が平然と行われているという設定も、
いくらなんでも現実性に乏しく、もっと陰湿にラフプレーがあり、怪我人が続出するという設定にして欲しかった。
(一般人の観覧も実施されており、いくらなんでもあの無法地帯では批難轟々だろう・・・)

看守と囚人のスポーツを通した対立というテーマは製作当時、
ひじょうに奇抜なアイデアとして扱われ、ルール度外視で繰り広げられるラフプレーの連続から、
やがては彼らのプライドを賭けた闘いに昇華し、真っ当に闘い始める姿が実に熱いですね(笑)。

もう画面いっぱいに溢れるかのような、懲役10年を超える連中が平然と並ぶナインの体臭が炸裂し、
それを引っ張るバート・レイノルズも映画の序盤から、ご自慢の胸毛を披露し、ゴキゲンな一作ですね(笑)。

ただ、この辺はどれぐらいバート・レイノルズのムンムンとした、
男性的フェロモンに女性がメロメロになるかによって、女性からの評価は変わってきそうなところで、
体臭ムンムンと胸毛を露にしてベッドに横たわるバート・レイノルズを観て、「わぁ〜っ、セクシー!」と
感じない世の女性たちからは共感を得られない内容でしょうから、男性的な映画なのかもしれませんね。

もう映画の冒頭から、無駄としか思えないような、派手なカー・チェイスがあり、
これはバート・レイノルズのためだけに用意された、サービス・シーンの塊みたいなもんで、
スターダムを駆け上がっていた彼が若干、映画を私物化していたかのようで、どうにも感心できませんね。

まぁこの頃のバート・レイノルズは女性雑誌でヌードになってみたり、
76年の『ゲイター』で監督デビューしてみたりと、何やっても大当たりの時代でしたから、
仕方のないことかもしれませんが、80年代以降の低迷は如実に迫っていたのでしょうね。。。

アメフト・シーンは及第点レヴェルだと思いますが、
この映画の最も良かった点は、看守たちを一貫して“悪”として描き切ったところで、
道徳的に外れていたとしても、こうした一貫性を持って描けたというのは、ひじょうに大きなことだろう。
この構図を単純化して、映画として分かり易くしたのは、ロバート・アルドリッチらしい手法ですね。

そんな中では、憎たらしい刑務所長を好演したエディ・アルバートは忘れ難いし、
看守のリーダー的存在を演じたエディ・ローター演じる、クナウア看守長も忘れてはなりません。

当然、看守ですから囚人たちを監視しなければならない立場なのですが、
あまりに横暴なことばかり言う刑務所長に反目し、最終的には彼に嫌味を言ったり、
スタジアムの出口へ向かって歩いていくクルーを「撃ち殺せ!」と言う刑務所長の言葉を無視して、
ライフルを構えながらもクルーを撃つのにためらう姿など、実に印象的な存在だったと言ってもいい。

ハッキリ言って、アメフト自体は刑務所長の趣味で始めたようなものなのですが、
次第に熱が入り始め、看守たちも命懸けで闘い始める姿が、異様なまでの執念を呼び込み、
やがては看守たちの待遇にまで影響を及ぼすほどの存在になるなんて、刑務所長の公私混同だ。

囚人たちと看守のアメフト・チームを闘わせて、看守たちに八百長試合で勝利させ、
自己満足を得るという究極の手段は、看守たちをも刺激してしまい、反逆の感情が高ぶります。

映画はそんな不満に満ちた環境下で、如何にお互いに力をぶつけ合いながら、
勝利を手にするかを克明に描けており、映画が進むにつれてスポーツの真髄に近づいていきます。
従来の映画とは異なり、ラストもダラダラと描かずに映画がサクッと終了するという幕切れで良いですね。

かつて、つまらないことで若き日の刑務所長を殴ってしまい、
30年以上もの懲役刑を加算されてしまった“オヤジ”に、クルーが問いかけるやり取りが忘れられません。
「オヤジ、刑務所長に30年の価値はあったか?」...「そりゃあ、もう。スカッとしてるよ!」と
笑顔で言い放つなんて、ロバート・アルドリッチは破綻した構図を、力技で爽快なものにしており、
これは彼にしかできない芸当で、なんって粋なことをやってのける映像作家だったんだぁ!

(上映時間120分)

私の採点★★★★★★★☆☆☆〜7点

監督 ロバート・アルドリッチ
製作 アルバート・S・ラディ
原案 アルバート・S・ラディ
脚本 トレイシー・キーナン・ウィン
撮影 ジョセフ・F・バイロック
編集 マイケル・ルチアーノ
音楽 フランク・デ・ヴォール
出演 バート・レイノルズ
    エディ・アルバート
    マイケル・コンラッド
    ジム・ハンプトン
    チャールズ・タイナー
    リチャード・キール
    エド・ローター
    バーナテッド・ピータース

1974年度アカデミー編集賞(マイケル・ルチアーノ) ノミネート
1974年度ゴールデン・グローブ賞作品賞<ミュージカル・コメディ部門> 受賞