ミニミニ大作戦(2003年アメリカ)

The Italian Job

複数メンバーで綿密に組んだ計画を基に、強奪に成功したゴールドを
メンバーの一人の裏切りによって全てを失い、更に頼れる老長だったメンバーを殺害され、
復讐のためにと、老長の娘をメンバーに加えて、ゴールドを取り返そうとする姿を描いたアクション映画。

69年にマイケル・ケイン主演で映画化された同名作品のリメークで、
微妙にこのリメークの意味がよく分からなかったのですが(苦笑)、まずまずの出来かな。

映画は大きく分けると、前半のヴェネツィアを舞台に
綿密な計画を立てて、とある家の金庫をそのまんま強奪するエピソードと、
前述の通り、裏切りによって奪われたゴールドを取り返すエピソードの2つに分けられるのですが、
悔やまれるのは映画の邦題タイトルになるぐらいなのですから、本来的には映画のクライマックスを飾る、
ミニ・クーパーを使ったカー・チェイスが最大の見せ場になるべきだったと思うのですが、
僕にはむしろ、映画の前半のボート・チェイスの方がずっと面白く感じられたことですね。

まぁ地下鉄を絡めたりして、色々と工夫してはいますが、
残念ながら、この程度であれば今の映画界ではノーマルになってしまったせいか、
どうにもインパクトに欠けますね。そういう意味では、かなり難しいリメークだったと思います。

実はヴェネツィアでの撮影には後日談があって、
当初、本作のスタッフが告知していた内容から、行政側が把握していた内容よりも、
かなり激しいボート・アクションだったために、ヴェネツィアでのアクション映画の撮影は、
一切、禁止になってしまったらしく、何とも罪深い映画ではあるのですがね。。。

監督は『交渉人』のF・ゲイリー・グレイで、
さすがに上手いですね。派手なアクション・シーンというほどでもないのですが、
カメラのルックの良さもあってか、スケールを大きく見せるのが、とても上手いですね。

当然、こういった撮り方自体もオリジナルの頃にはできなかった表現技法ですし、
オリジナルと比べれば、アクションのスケールそのものはとても大きく感じられます。

でも、一つ注文を付けたくなるのは、
単純に映画を観た時のインパクトの弱さで、これはオリジナルには到底、敵わないんですよね。
だから僕は本作、前半のヴェネツィアでのシーン演出は良かったと思う反面、
ここで息切れしたかのように、クライマックスのカー・チェイスまで少し間延びしてしまったのが残念ですね。

さすがにオリジナル作品との差別化は必要不可欠だったはずで、
差別化を実現するためには、オリジナルの良さをしっかりと踏襲して、
何かしら一つだけでいいから、リメークで付加する面白さというのを強調すべきだったと思うのです。

そういう意味では、ヴェネツィアでのシーンを入れたのは合格だったのですが、
そのテンションが映画の終盤まで持続しなかったことが残念でならないのですよねぇ。

それと、タイトルにあるぐらいミニ・クーパーが走り回る姿を強調したかったわけなのですから、
もっとミニ・クーパーがチョコチョコ市街地を縦横無尽に走り回る様子を映して欲しかったですね。
全体的にミニ・クーパーが画面の主役になって走り回る姿を映し切れなかった印象が強いですね。

せっかくエドワード・ノートンが憎たらしい裏切り者を演じたというのに、
終わってみれば、中途半端なキャラクターになってしまい、なんか物足りない。。。

それはキャスティング全体に言えることで、無駄に豪華なキャストを実現した作品だというのに、
ジェイソン・ステイサムなど、もっとアクティヴにできる役者も活かし切れませんでしたね。
ヒロインを演じたシャーリーズ・セロンも冒頭のベッドに横たわるシーンは良かったけど(笑)、
結果的にはどことなく、物足りない印象がどうしても拭えないんですよね。
(ついでに言えば、彼女がドナルド・サザーランドと似ているという設定も、さすがに無理がある・・・)

但し、あくまでエンターテイメントとして考えれば十分に及第点を超えた内容でしょう。
オーソドックスなアクション映画ではありますが、これはこれでイージーではない仕事っぷりだ。
思っていた以上に、F・ゲイリー・グレイって力量の高いディレクターですね。

全体的に小じんまりとしたアクション映画にはなってしまいましたが、
しっかりとした芯のある映画にはなりましたし、これはこれで価値のある仕事だと思いますね。

前述したミニ・クーパーがもっと活躍して、オリジナルと違った魅力が少しでもあれば、
オリジナルを凌ぐ出来の映画になったとは思うのですが、ここで詰め切れなかったのは反省材料かな。
でも、全体的な尺は丁度良いですし、これは作り手の力量が高い作品と言っていいと思います。
もっと大きく失敗するリスクがある作品だっただけに、これをオーソドックスにやり遂げた、
本作のスタッフの仕事っぷりは、もっと評価されても良かったように思いますね。

僕の記憶の中では、本作も劇場公開当時、あまり良い扱いを受けたとは言い難かったと記憶しており、
もっとプッシュすれば、そこそこヒットする要素はあった作品だったと思うのですがねぇ。。。

どことなく勿体ない扱いを受けて、終わってしまった作品だと感じています。
極寒のダムに放り出されても、全然弱らないなど、そこそこの矛盾を許容できる人なら、
まずまず楽しめる作品だと思えるだけに、このまま風化させてしまうのは実に勿体ない作品です。

派手さはなくとも、スピード感あるアクション映画が好きな人にはオススメの一本。

(上映時間110分)

私の採点★★★★★★★★☆☆〜8点

監督 F・ゲイリー・グレイ
製作 ドナルド・デ・ライン
脚本 ドナ・パワーズ
    ウェイン・パワーズ
撮影 ウォーリー・フィスター
編集 リチャード・フランシス=ブルース
    クリストファー・ラウズ
音楽 ジョン・パウエル
出演 マーク・ウォルバーグ
    シャーリーズ・セロン
    エドワード・ノートン
    セス・グリーン
    ジェイソン・ステイサム
    ドナルド・サザーランド
    モス・デフ
    フランキー・G